No. 859. オジロサナエの産卵観察.2022.7.17.

今日は戻り梅雨の一時晴れ間.かねてより計画していたオジロサナエの産卵を見に行くことにしました.ちょっとまだ時期的に早い感じはしますが,このあとも天候があまり芳しくなく,7月下旬にはヤンマも見に行きたいので,今日はオジロサナエ一本に絞って観察に行くことにしました.果たして先日の場所は当たりかどうか....

オジロサナエは結構朝早く産卵に来ることがあるので,8時前には現地に入りました.川を上っていくと,まず飛び出したのはミルンヤンマの羽化個体でした.


▲川から飛び出てきたミルンヤンマの羽化個体.▲

もう秋のヤンマが出てきています.ヒメサナエもまだ道沿いに止まっていました.


▲川に出る前のヒメサナエ.▲

ということで,8時少し前に,先日見つけておいた場所に到着しました.まだトンボは何もいません.腰をかけて空を見上げると,1頭のヤンマが摂食飛翔をしていました.逆光で種名が分からないのですが,飛び方と,写真を拡大してみると腹部に縞模様が見られるので,ミルンヤンマと判断しました.


▲悠然と摂食飛翔を続けるミルンヤンマ.たくさんの小虫がいることが分かる.▲

肝心のオジロサナエの方ですが,8:20ごろに私の目をつけているポイントにオジロサナエが入りました.近づくと慌てて転がるように飛んで逃げました.オジロサナエには間違いありませんが,オスかメスかは分かりませんでした.

8:59,ヒメサナエが産卵に入りました.ヒメサナエももうピークは過ぎているようで,オスの姿がありません.メスは朝日を浴びながら,落ち着いて産卵をしていました.


▲オジロサナエのポイントのすぐ前に産卵に入ったヒメサナエ.▲

さらに待ちました.しかしなかなかオジロサナエは姿を現しません.9:30ぐらいに,またオジロサナエがポイントに入りましたが,これも近づくとすぐに飛んで逃げてしまいました.これはどうもオスのようでした.待てども待てども,オジロサナエのメスは姿を見せません.時刻は10:00を過ぎました.先日来たときにはオスたちは結構集まってきたのですが,今日はオスすら姿を見せません.やはりこのポイントはだめなのか,とだんだん焦りが出てきます.でも自分の今までの勘を信じて,待つしかありません.付近を回って見た感じでは,ここ以上に産卵に適した条件の場所はありません.

10:04,やっとオジロサナエのメスが姿を見せました.まさに私がここだと目をつけた場所で産卵をしています.


▲産卵にやってきたオジロサナエのメス.静止して卵塊を作り,飛んで打水する.▲

自分の経験と勘が当たった瞬間は,とても嬉しいものです.やはりこの場所に産卵に来ました.ただ毎回そうなのですが,その年の初ものは,緊張感が高いのか,あまりピントが来ないのです.たくさんピンボケを出してしまいました.


▲産卵するオジロサナエのメス.もう一つピントが甘い.▲

やっときたのですが,写真はもう一つぱっとしません.また来ることを期待して待ち続けました.しかし,全く姿を見せません.オスも来ないし,この場所はあまり良くないのかなと思い始めました.そこで,念のためもう一度周辺を探索することにしました.オスが集まっている場所はないかどうか.

しかし,やはりオスの姿はどこにもありません.オジロサナエの個体数自体が少ないのかもしれません.ヒメサナエはたくさんいることを,6月下旬の探索で確かめています.オジロサナエの数はそれに比べるととても少ないように感じます.場所より個体数なのかもしれません.まあしかし,メスが来たことは成果で,また個体数が多い年に来れば,たくさん産卵に来るかもしれません.この場所を大切にしていくことにしました.

帰り際にオスが1頭降りてきました.しかしこのオスもすぐに姿を消しました.


▲オジロサナエのオス.▲

12:00少し前,今日はこれくらいにすることにしました.すぐそばでずっと止まっていたミヤマカワトンボに挨拶をし,この場所を後にしました.そうそう,最後の方に降りてきたヒメサナエのオスにも挨拶を忘れないようにしました.このオス全然私の動きに動じることなく,ずっと同じ場所に止まっていました.目の前にメスが来て産卵しても動きません.変なやつでした.ちなみにそのメスは,私が近づくと,すぐ上の木の葉に止まりました.かなりバチャバチャやったのですが,やはりこのオスは動きません.


▲すぐそばにずっと止まっていたミヤマカワトンボのメス.▲


▲私が30cmほどの距離でバチャバチャやっても全く動かなかったヒメサナエのオス.▲


▲このメスは上のオスの目の前で産卵した.私が近づくと,樹上へ逃げた.▲

帰り道の林床で,ヒメサナエのオスがメスを追いかけているのを見ました.ヒメサナエは産卵場所でメスを見つけるだけでなく,こういった林床や草原でもメスを探しています.出会い場所は産卵場所とねぐら全体といった感じです.


▲林床でメスを追いかけていたオス(上)と追いかけられていたメス(下).▲

また別の場所では,オスが川石の上に止まっていました.


▲川石の上に止まってメスを待っているヒメサナエのオス.▲

少し下ったところで,コオニヤンマも姿を見せていました.


▲コオニヤンマのオス.▲

まあ,今日は十分な出会いはありませんでしたが,全般的にオジロサナエの個体数が少ないためである,という結論に落ち着きました.かつての場所では,オジロサナエはもっとあちこちで姿を見ましたから.

最後にゲストです.カラスアゲハとミヤマカラスアゲハが,川の対岸で吸水していました.どちらも死んだようにじっとして,長時間,黙々と吸水をしていました.


▲カラスアゲハのオスの吸水.▲


▲ミヤマカラスアゲハのオスの吸水.▲

車のそばの道路上には,暑いのにキリギリスが出てきて,私を迎えてくれました.


▲あちこちでキリギリスが鳴いていた.このオス白線の上で暑くないのだろうか?▲

ということで,今日は終わりです.

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No. 858. チョウトンボの産卵.2022.7.10.

どうも最近の天気予報は当たらない感じです.晴れの予報で兵庫県北部へ行ったときはずっと曇りでのち雨.雨のち曇りの昨日は晴れ間が出て暑い.今日は天気予報を当てにせず,午後から太陽が顔を出し始めてきたので,近くの池にチョウトンボを見に行くことにしました.この池はタイワンドジョウがいて,トンボがたくさんいます.池の岸に生えている樹木の樹幹部では,たくさんのチョウトンボが摂食飛翔をしていました.


▲池岸の樹木の樹幹部で摂食飛翔するチョウトンボの群れ.▲

池はハスが密生していて,アオミドロが浮かび,スズメノヒエが岸に繁茂している,植生豊かな池です.チョウトンボ好みですね.ちょうど岸辺に開水面があるところがあって,植生に邪魔されずにチョウトンボが観察・記録できます.


▲最近はこういった普通の植生豊かなため池も少なくなった.▲

岸辺や水面の植物にチョウトンボたちが止まっていますが,多くのチョウトンボはほとんど休むことなく飛び回っていました.暑い日差しのもと,黒い体で暑くないのかといつも心配していまいますが,彼らは本当に暑さに強いトンボたちです.


▲かなり日齢が進んだチョウトンボのオス.緑味が少なくなってくる.▲


▲チョウトンボのメス.金色にやや緑味がさしているタイプのメス.▲


▲オスたちは飛び回っていることがほとんどであった.▲

ものすごい数のチョウトンボが飛んでいますので,メスもしょっちゅう産卵に入ってきます.メスが入ると数頭のオスが追いかけ回します.メスは1回打水してすぐ飛んで逃げ,うまくオスをかわすと,オスを刺激しないようにふわっと飛んで水面に降り,またすばやく打水します.しかし,2,3回打水すると,オスも気づき,また追いかけあいを始めます.こんなことの繰り返しです.うまくタイミングが決まると連結,交尾と至ります.交尾時間は30秒程度で,交尾後特に警護するという感じではないようです.他のオスの干渉が激しいから警護どころではないのかもしれません.


▲交尾が終わるとメスを放し,メスはまた産卵を再開する.▲


▲上の交尾メスが,続けて産卵を行った.オス型のメスである.▲

このメスは,後翅の先端まで青色が広がるタイプで,ほぼ完全なオス型のメスです.青いオス色をした多くのメスは,後翅の先端には透明な部分があることが多いのです.次はメスらしい金色に輝く羽を持つメスの産卵です.


▲メス独特の,金色に輝く羽を持つ個体.オスにこの型は現れない.▲

少し離れたハスの林の縁で,またオス色のメスが産卵をしています.このメスは,後翅の先端に透明部分がある個体です.


▲青色に輝く羽を持つタイプのメスの産卵.チョウトンボはハスが好きだ.▲

本当にひっきりなしに産卵にやってきます.そのたびにオスが乱痴気騒ぎになって,狂ったようにメスを追いかけます.メスも手慣れたもので,さっとかわし,オスが少し離れた頃を見計らって,また産卵を開始します.


▲金色を基調に緑色の輝きが混じるメス.▲

この緑色が混じる金色タイプのメスが,私は一番好みです.見る角度によって緑色が大きく目立ったり,金色が目立ったりします.別に狙ったわけではありませんが,今日は一通りのタイプのメスが,1時間ほどの間に次々と産卵にやってきてくれました.

あと,チョウトンボに負けず活動していたが,ショウジョウトンボでした.それ以外には,アオモンイトトンボ,シオカラトンボ,コフキトンボ,クロイトトンボ,ギンヤンマ,そして多分セスジイトトンボも飛んでいました.


▲ショウジョウトンボのオスと,メスの産卵.▲

個体数が多いと,いわゆる普通のトンボは,ストレスなく観察を楽しませてくれます.チョウトンボやショウジョウトンボなど珍しくもないかもしれませんが,あのアキアカネでさえ激減したのですから,群れ飛ぶチョウトンボの姿をしっかりと目に焼き付けておきたいと思います.当たり前のトンボが当たり前にたくさん飛ぶ,そういった風景がこれからも残っていってほしいと思います.

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No. 857. ヒヌマイトトンボ調査.2022.7.8.

今日は天気予報では一応兵庫県は晴れマーク(実際は一日中曇り)だったので,この時期に確認しておくべきトンボとして,ミヤマサナエとヒヌマイトトンボ,そしてヤンマの生息地状況を見に行くことにしました.ミヤマサナエは過去の記録地を回りましたが,やはり姿がありませんでした.このトンボ兵庫県では非常に手強い相手で,なかなか姿を見ることができません.ヤンマの生息地は,今年の小雨の影響でしょうか,湿地の水たまりが完全に干上がっており,このままではヤブヤンマは来ないだろうと思われました.今後の雨を期待したいところです.

ということで,結局ヒヌマイトトンボだけを確認に行った感じになりました.ただ,ヒヌマイトトンボは見かけたオスが4,5頭,メスは1頭だけと,個体数が非常に少なかったのが気になります.曇りという天気のせいなのか,年々の個体数変動なのかは分かりません.


▲姿を見せていたヒヌマイトトンボたち.▲

写真に撮った以外の個体としては,ヨシの奥の方を飛んでいたオス1頭だけです.今日見た個体はこれですべてです.

この後,ヒヌマイトトンボの生息地の上流側に当たる水田地帯を歩いてみました.しかし全くトンボの姿がありませんでした.シオカラトンボ1頭,ハグロトンボ1頭すら見つかりません.確かにトンボの端境期ではありますが,その環境から見て,ちょっと首をかしげる状況です.すべて今日の曇りでムシ暑い天気のせいであればいいのですけれど....今日はこれで引き上げることにしましたが,少し後に一帯に夕立のような雨が降ったようです.

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No. 856. オジロサナエのロケハン.2022.7.7.

先日ヒメサナエの産卵場所を探り当てたので,今日はオジロサナエの産卵場所探しに行きました.ただし,まだ時期的にオジロサナエはちょっと早いので,産卵には出会えないかもしれませんが,オスたちがたくさん集まっておれば,そこが繁殖場所になる可能性が高いので,そういった場所のロケーション・ハンティングに行くことにしました.

少し歩き回りました.そして最終的にいい感じのところを見いだしました.そこにはヒメサナエのオスが,2,3頭止まっていました.あとオジロサナエが来てくれればいいので,しばらくその場所で待機することにしました.


▲まだ川面に出ていないヒメサナエのオス.▲

現地に腰を落ち着けたのが,9:00少し過ぎていました.9:48,ヒメサナエのメスが産卵に入りました.ここにもヒメサナエが産卵に来ることを知り,これで2カ所目だと思わずラッキーと(心の中で)叫びました.


▲9:48,ヒメサナエの産卵.いつものことだが,この態勢で停止飛翔するばかり.▲

その後も続けてヒメサナエが産卵にやってきて,目的が違うのですが,退屈せずにオジロサナエを待つことができました.そういえば,今はヒメサナエの盛りの時期,7月上旬ですからさもありなんです.


▲10:05,2頭目のメスが産卵に入ってきた.ほぼ同じ場所である.▲

今日はヒメサナエがねらいではないし,前回写真も撮りましたので,落ち着いて狙うことができました.特に突然行う打水の瞬間を狙うことにしました.


▲10:10,ホバリングしながら卵塊を形成するヒメサナエのメス.▲

カメラを低く構えてホバリングと打水のフォーカス面がずれないように工夫しましたが,打水時にどうしてもフォーカスアウトしてしまい,うまくいきません.なかなか難しいものです.が,低いアングルで撮ったので,ホバリング中に形成されているオレンジ色の卵塊が見えています.

これらのメスの産卵場所は,いずれもほぼ同じポイントなのです.前回もそうでしたが,特定のポイントへやってくる傾向が強いです.それは,石で体が隠れるような場所です.次の写真など,我々から見れば普通の川石なのですが,ヒメサナエの目線で見れば,断崖絶壁という感じで,川石に止まっているオスの視線を遮っているのがよく分かります.


▲10:20,大げさな言い方をすれば,グランドキャニオンを飛ぶ飛行機みたいだ.▲


▲10:20,打水の瞬間と言いたいところだが,このメス目測を誤ったのだろうか?▲

今回はうまく打水の瞬間を捉えることができました,といいたいところですが,腹端が水に浸かっていません.ちょっと珍しいシーンです.きっと打水ミスですね.

さて,この後はヒメサナエの産卵が途切れました.代わりにといっては何ですが,オジロサナエのオスたちの活動が活発になってきました.やはりこの場所,オジロサナエも気に入っているようです.私がここぞと目をつけている産卵ポイントにも,オスたちが入り込んで止まるようになりました.以前オジロサナエを観察していた場所と,よく似た行動をとっています.オジロサナエの産卵にも期待が膨らみます.


▲オジロサナエのオスたちが集まってきた.この場所を繁殖場所と認識している.▲

しかし,オジロサナエのメスの姿は全く見られませんでした.唯一見たオジロサナエのメスは,羽化して処女飛行に飛び立った個体でした.前回ヒメサナエの観察の時もメスの処女飛行を見ました.雄性先熟の傾向が著しいのかもしれません.


▲処女飛行に飛び立っていったん止まったオジロサナエのメス.▲

やはりオジロサナエは7月の後半が繁殖時期のようです.また,半月ほどして来ることにしましょう.そんなことを考えていると,ヒメサナエのメスが降りてきて石の上や枯れ木の上に止まりました.


▲時々降りて北はすぐに樹上へ帰って行くヒメサナエのメス.▲

このメス産卵する気がないのかと思ったら,このメスかどうかは分かりませんが,この後にヒメサナエのメスが産卵に入りました.場所は,先のメスが降りて止まったあたりです.


▲11:13,これは今までの全く違うポイントで産卵した.▲

このオジロサナエの集まる場所は,どちらかと言えば日陰になっていて,少し離れた日が当たっている場所にヒメサナエのオスたちが止まっています.彼らは日が当たるところが好きなのでしょうか.もちろん薄暗い日陰でも止まってはいるのですが.


▲もうお昼が近いせいか,オスたちは腹部挙上姿勢をとっていた.▲

ヒメサナエのオスたちを見ていると,いつの間にか,オジロサナエの姿が少なくなっています.10:00から11:00ぐらいが個体数が多くなるようです.私の方も,12:00を待って,ここを引き上げることにしました.観察中,コオニヤンマが顔を見せたのと,帰る途中,オジロサナエが樹上に止まるのを見ました.この習性があるので,流れの上空に広葉樹が枝を伸ばしているところがベストなのでしょう.


▲コオニヤンマの若いオス.可憐なサナエのいるところに獰猛なサナエが来る!.▲


▲オジロサナエは,驚くとすぐに樹上へと避難する.▲

今日はここまでです.

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No. 855. オオヤマトンボの産卵を狙ったが.2022.7.1.

今日もまたまた晴れ.週末は孫守があり,来週は台風の影響で曇りや雨.ならば今日連続で出て行くしかありません.今日のねらいはオオヤマトンボの産卵.これはなかなかそれだけを目的に行きずらい相手です.まあ,結局は,産卵に来ませんでしたけど.

まず出会ったのはコフキトンボ.交尾態が飛びましたので産卵を期待しましたが,だめでした.交尾から直後の産卵というのはパターンなのですが.メスは交尾が外れた途端どこかへ行ってしまいました.別のところでは成熟したオス同士が追飛行動を繰り広げています.暑さにも負けず強いトンボです.


▲今年はコフキトンボが少ないが,オスたちは頑張っている.▲

次いでコシアキトンボ.コフキトンボと同じくらいの数がいます.コシアキトンボたちの活動も暑さのもと,へたれずに元気です.


▲オスの追飛とメスの産卵.▲

本命のオオヤマトンボは,オスが1頭だけ池の周囲を飛び回っていました.メスと思われる個体は1回だけ通過しました.今日の池のトンボで,オオヤマトンボが一番暑さに弱いようで,10:00前にはこのオスも姿を消しました.


▲オオヤマトンボのオスがいつも通り池のまわりを飛び回っている.▲

結局今日一番活動的だったのは,ウチワヤンマでした.6ペアぐらいが交尾態で飛び回り,そのうち3ペアが私の目の届く範囲で産卵をしました.ウチワヤンマを狙って来たのならこれは大成功の部類ですが,不思議なものです.ただその日一番多く活動しているトンボを観察対象とするという鉄則で,また再び,ということにはなりますが,ウチワヤンマの観察に注力しました.


▲ウチワヤンマの交尾態での産卵場所探索行動.オオヤマトンボが干渉している.▲

まず上の交尾態で飛び回っていた1ペア目.これは特にどういうことなく,通常の産卵行動を見せてくれました.オスはつかず離れずでメスの産卵を見守っています.


▲メスを警護するオス.どうしてもいい位置に来てくれないのでオスだけ撮った.▲


▲警護されながら産卵を続けるメス.▲


▲9:26,最後までオスの警護で邪魔されることもなく,産卵を終えた1ペア目.▲

次のペアは9:56です.この前,9:30に1ペアが飛び回りましたが,どこかへ行ってしまいました.今日はこうやって結構続けて交尾態飛翔が入ってきました.このペアは,交尾を解いたところから観察できましたが,途中でアクシデントがありました.


▲オスが交尾を解いたら,メスは止まってしまった.▲


▲そのすきに横の位置に移動して産卵開始を待った.そして産卵を始めたメス.▲

なんか産卵する場所の背景になる枯れ枝が,ちょうどステージの大道具のように見えて,ちょっと面白い感じの舞台装置になりました.産卵は続きます.


▲順調に産卵を続けるメス.▲

ところが,撮影していると,妙なことが起きました.打水した状態でメスが飛び上がれなくなったのです.写真でははっきりしませんが,どうも卵に付いている糸が腹端に絡みついたのではないかと思えました.同じ場所でたくさんのメスが産卵しているようで,枯れ枝に糸が絡みついたようになっているせいでしょう.次の7枚は連写したものそして8枚目は少し間を置いたものです.普通なら一瞬で終わる打水の瞬間が,打水した姿勢のままの状態で止まっているのが分かると思います.右上に撮影時の時刻を入れています.


▲だ水して飛び上がろうとするが,…..▲


▲腹端に何かが引っかかっているようで,飛び上がることができない.▲


▲再び腹端が水面に着いてしまった.▲


▲もう一度飛び上がろうとするが,…..▲


▲腹端は水面に着いたまま.▲


▲腹端がちょっと上がった.たまらなくなって,たたんでいた脚を開きだした.▲


▲腹端に水の膜ができている.糸のようなものが着いているように見える.▲


▲思い切って向きを変えて飛び立った.糸を引いているのが分かる.▲

写真記録から,約8秒あまりこの姿勢で止まっていたのが分かります.このあと,このメスは慌てて飛んで逃げました.そのとき何かがパラパラと水面に落ちたように見えたかと思うと,魚の稚魚たちが我先にそれに食らいつく姿が観察されました.もっともこれは私の見間違いで,何の関係もないかもしれません.


▲白い点が二つ見える物体に食らいつく稚魚たち.▲

さて10:13,3ペア目はというと,これもまたちょっと変な感じの産卵でした.止まっているオスの下でメスが産卵を開始したらしいのです.らしいというのは,私も交尾態が解かれ産卵を始めた瞬間を見ていないからです.オスは警護をしていましたが,その警護オスは,静止していたなわばりオスに追いやられ,どこかへ行ってしまいました.しかしメスはお構いなしに産卵を続けました.


▲交尾相手ではないオスのなわばりの中で産卵を続けるメス.▲


▲シオカラトンボが産卵メスの様子を見に来たがかまわず産卵.▲

このなわばりオスはしばらく止まっていましたが,やがて直下でメスが産卵しているのに気づいたようで,交尾しようと近づいてきました.


▲メスは産卵をやめて静止した.▲

メスはこのオスが交尾相手ではないことが分かるのでしょうか.産卵をやめて止まってしまいました.そしてしばらくすると,数回産卵行動を行った後,逃げるように飛び去ってしまいました.上の写真でも分かるようにオスの近づき方が,1ペア目のオスのように一定の距離を置いて飛ぶのではなく,近づこうとしているような飛び方です.


▲メスは産卵を再開したが,オスはメスに近づこうとしているように見える.▲

ウチワヤンマの産卵もたくさん見ているといろいろなアクシデントが見られて楽しい限りです.トンボたちはこんなアクシデントに臨機応変に対応しながら,毎日を生活しているのですね.ウチワヤンマのオスは,今日は10mおきぐらいに止まっていたので,こんなことが起きたのでしょうね.

今日はブログ的には,ウチワヤンマの産卵という今年二度目の観察になりましたが,私的には楽しい観察でした.

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