No. 884. トンボがほとんどいない.2022.10.14.

今日は,かつてルリボシヤンマが生息していた某有名高原に行ってみました.ここへはかつては9月下旬くらいに出かけることが多かったのですが,以前その時期に出かけてルリボシヤンマが見られなかったので,もう少し寒くなってからということでこの時期に出かけることにしたのでした.しかし結果は惨憺たるもので,ルリボシヤンマなどは全く影も形もなく,普通のアカトンボもアキアカネ1頭,ヒメアカネらしいのが1頭,あとは高原の池でキトンボが数頭飛んでいただけでした.ここのルリボシヤンマが消えたのはほぼ間違いないでしょう.


▲No.1. 高原の池で過ごすキトンボ.▲


▲No.2. 高原の木道に止まっていた,ただ1頭だけ出会ったアキアカネ.▲

ススキの穂が揺れて,温かい日差しを受けながら(少し曇っていましたけど),散歩なら実に気持ちいいのですが,「沈黙の秋」という形容がぴったりなくらい,風の音だけでした.トンボが遠くを飛んで陽を受けた翅が光っているなんて風景もありません.気温は17℃でちょっと低いとはいえ,木道の上はそれなりに温かく,トンボがべたっと止まるにはちょうどいい感じです.これほど自然が残されているのに,この状態は何なのでしょう?

次に,先日も出かけた,去年オオキトンボがたくさんいた池へもう一度出かけてみました.時刻はもう午後で繁殖活動は期待できませんが,草むらに止まるオスなら見られるはずです.しかしここも,マユタテアカネ1頭,タイリクアカネ2頭,そして池の外にオオキトンボ1頭がいただけで,それ以外トンボの姿がなく,やはり「沈黙の秋」状態でした.


▲No.3. マユタテアカネ.今年は本当に出会う機会が少ない.▲


▲No.4. 今年はタイリクアカネもあまり見ない.▲


▲No.5. オオキトンボは,池外の水田の柵に止まっていた.▲

ついでに近くのマイコアカネの池にも行ってみました.マイコアカネ1頭と,オオキトンボ1頭がいました.それだけです.


▲No.6. 午後を過ごすマイコアカネ.▲

この時期,午後に産卵するトンボといえば,カトリヤンマです.希望は薄いですが,かつて見られた水田地帯に行ってみました.でもカトリヤンマは全く姿を見せず,ヒメアカネが1頭,リスアカネとナツアカネが少々いただけでした.


▲No.7. 池の畔で活動するリスアカネ.だいぶん老熟してきた.▲


▲No.8. 湿地状のところに止まっていたヒメアカネ.▲


▲No.9. 水田の電柵に止まるナツアカネ.ナツアカネだけは10頭程度いた.▲

秋のこの時期に気温が高く風も普通で,自然の残された高原,トンボが毎年たくさん集まるため池,田園地帯と,歩いてみたのですが,出会ったアカトンボは以上で全部で30頭ほどです.アカトンボは本当に少ないです,いったいどうなったのでしょう? まあ,種類だけは9種と結構出会えたわけですけど...

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No. 883. アカトンボとオオアオイトトンボ。2022.10.13.

今年はアカトンボ類が少ないように感じています.9:30,まず最初に近くのオオキトンボがよくやってくる池をのぞいてみました.少し風は強いですが,暖かい日差しが指し,池の畔に水草も生えていて,環境としてはよい感じでした.池の縁を半周しましたが,トンボが全くいませんでした.ちょっと信じられません.全くいないなんて.どういうこと?

そこで,確実にトンボに出会えるところへ行くことにしました.そこには,ネキトンボ,キトンボ,コノシメトンボがいます.まずはネキトンボ.10:30頃に着いたときトンボの姿が少なかったのですが,日が射したとたん,ネキトンボがぷわーっと現れ,産卵を始めました.秋のトンボは日差しに誘われますね.


▲日が差し始めるとあっという間にあちこちでネキトンボの産卵が始まった.▲

多くのネキトンボがペアで産卵していますが,あぶれているオスも結構いて,時々水面を飛んでメスを探しているようです.メスを見つけると,タンデムになって,池を少し離れます.


▲あぶれたオスが単独で水面を飛んでいる.▲


▲メスを捕まえると,ペアはいったん池を離れる.▲

ネキトンボの産卵を横目で見ながら,キトンボを探しに行ってみました.キトンボは1ペアだけ,岸近くで産卵していました.しかし日陰で暗く,ピントが甘い写真ばかりになりました.


▲産卵するキトンボ.▲

ネキトンボが産卵し始めてから30分ほどしたとき,コノシメトンボがちらほら産卵に入ってきました.今年はコノシメトンボの数が少ないようです.去年などはネキトンボを凌駕するほどたくさんいたのですが...


▲産卵するコノシメトンボ.下2枚のメスは腹部背面が赤いタイプである.▲


▲コノシメトンボの打水は結構深く水をかいている.▲

やはりいるところにはいることが分かり安心しました.

今日の午後は,ルリボシヤンマを見に行くことにしていました.高速に乗って移動し,ルリボシヤンマが飛来する池に行きました.池に着いてほどなく,1頭のルリボシヤンマのメスが入りました.産卵場所を探すような仕草をしましたが,池の周囲を数回飛んで,飛び去っていきました.去年も同じような動きを見たのですが,この池は産卵に適していないのかもしれません.

ルリボシヤンマはそれだけでしたが,オオアオイトトンボがたくさん木の枝の間を飛び交い,繁殖活動を始めていました.


▲木の枝の間を動き回るオオアオイトトンボのオス.▲


▲かなり高い木の上でもたくさん活動していた.▲


▲木の枝先に止まって交尾をするペア.▲

オオアオイトトンボは,タンデムで長時間過ごします.午後になると繁殖場所ではタンデムのペアがたくさん見られますが,それらはだらんとぶら下がったり,あちこち飛んで,いろいろなところに止まったりして,時間を潰しているように見えます.


▲タンデムペアは,木の中だけでなく,あちこち飛んで移動し時間を潰している.▲

飛び回っている間に交尾をします.交尾は複数回行われることもあります.産卵管を突き立てる行動をとることもあります.ただし実際はまだ卵を産下していないようです.


▲飛び回っている間の産卵管を突き立てる行動.実際には産卵をしていないようだ.▲

産卵管を突き立てる行動をしたあとにもう一度交尾をする場合もあります.下の写真は木の枝の形から同じペアがということが分かります.この産卵の動きをとったあと,再び交尾をしました.ただ,最初の内は何度も失敗しましたが...


▲産卵行動を行ってから再び交尾するペア.▲

久しぶりにオオアオイトトンボがたくさん活動する姿を見ました.やはりオオアオイトトンボは秋本番になって気温が下がらないと本格的な繁殖活動に入らないようです.今日は午後はどんより曇って,気温も18℃ほどでしたが,平気で飛び回っていました.低い気温に強いトンボです.

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No. 882. タイリクアカネとベニトンボ.2022.10.11.

天気の悪い日が少し続きました.晴れた日は仕事があったりして,今日は久しぶりにトンボ観察です.大分気温も下がってきて,すっかり秋になった感じがします.今日は都市公園にタイリクアカネと飛来種を見に行ってきました.飛来種はスナアカネがねらいですが,今日は姿が見えず,代わりにベニトンボがいました.神戸市内では今年2回目の遭遇ということになります.


▲都市公園の池の畔に止まるベニトンボのオス.▲


▲長靴を履いてなかったので,裸足になって池に入って近寄った.▲

こうやって南方の種がどんどん北上してくるのを目の当たりにしていると,本当に気温が上昇していて,神戸市の気候がもう30年ぐらい前の南西諸島並みという感じがします.やがて,ベニトンボもタイワンウチワヤンマのように,兵庫県であたり前の夏のトンボになるような気がします.

さて,もう一つのねらいはタイリクアカネです.あまり公言していませんでしたが,今年は兵庫県版レッドデータブックの改訂作業の年になっていて,そのため,兵庫県に生き残っているトンボの姿を全部見ることを目標に調査・観察活動を行ってきました.すでに見逃している種があって,それはキイロヤマトンボとミヤマサナエです.何回か挑戦しましたが,確認できませんでした.ただ情報としては,キイロヤマトンボの方は県内で見つかっているようです.あと県内絶滅した可能性のあるベッコウトンボは県外へ見に行きました.もう一つのマダラナニワトンボは今が季節ですが2016年以来見つかっていません.

県内に土着していたトンボ種は全部で92種類です.ベッコウトンボ,キイロヤマトンボ,ミヤマサナエ,マダラナニワトンボの4種を除いて,88種類県内で今年確認できました.その最後がタイリクアカネです.あとチャンスがあればキイロヤマトンボとミヤマサナエは幼虫採集に挑むかもしれません.


▲公園の石に止まるタイリクアカネのオスたち.▲


▲メスは木の枝の先に止まっているのを2頭見つけた.▲

タイリクアカネの数は多くありませんでした.今年はアカトンボが少ないように感じます.6月の梅雨明けが異常に早く,すぐに高温の日々が続いたので,その時期浅い水域で幼虫として生活していたアカトンボたちは,水域の干上がりや高温でかなりやられたのかもしれませんね.

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No. 881. 北部の山地の池巡り.2022.10.2.

今日も快晴の秋空.今日はルリボシヤンマを探しに,北部の標高のある山地の池をめぐることにしました.最初の池では特に変わったトンボもいず,アキアカネ,オオルリボシヤンマ,キトンボなどが見られました.二つ目の池では,アキアカネ,アオイトトンボ,キトンボなどが見られました.


▲かなり向こうに止まっているキトンボ.2番目の池.▲

3番目の池は満水状態で,全く池に近寄ることすらできませんでしたが,池の横の道ばたにマユタテアカネが止まっていました.マユタテアカネに至近距離で出会うのは今年初めてで,マユタテアカネに喜ぶという未体験の出来事でした.


▲マユタテアカネのオス.マユタテアカネがいたのが嬉しかった!?.▲

このあと,休耕田の湿地と4番目の池をのぞきましたが,アキアカネらしいトンボが飛ぶだけでした.少し移動をして,5番目の池に行きました.ここでは,オオルリボシヤンマがコンクリート壁に着いたコケに産卵していました.


▲オオルリボシヤンマの産卵.▲

オスも飛んでいて,時々飛び上がったメスを追いかけたりしていましたが,あまりしつこく追尾せず,このオスは何のために池の上を飛んでいるのだろうと感じました.ここにもアキアカネがいました.この池に行く道沿いに細流があって,そこにはヒメアカネのメスがいました.


▲湿地状の細流のところにいたヒメアカネのメス.▲

5番目の池を除いて,いずれも植生豊かな池を見てきましたが,ルリボシヤンマは影も形もありません.やはり湿地でないとだめなようです.次に湿地のあるところへ行ってみました.すると,ルリボシヤンマのオスが水たまりの上を巡回飛行していました.あまりホバリングせず,写真には撮りにくい相手でした.しかもすぐにいなくなりました.


▲ルリボシヤンマのパトロール飛翔.▲

過去のルリボシヤンマの記録地でその姿が見られなくなったり,数が減少したりしているように思えます.以前は,ルリボシヤンマは9月下旬から高い山の上の池などで活動していましたが,今日10月2日でも太陽の日差しはまだ夏のように暑く,涼しい風の中を飛ぶルリボシヤンマの季節感に合わない感じでした.この写真のオスはもう十分に成熟していて,やや翅が傷んでいるようにも見えます.ですから出現季節が遅れているのでもないようです.気温上昇によって,寒地系のルリボシヤンマが減っているということはないでしょうか.心配です.

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No. 880. 北部の本格的な秋はまだか....2022.10.1.

今日は北部へアカトンボの状況を見に行ってきました.昨日は南部でアカトンボにどれだけ出会えるか挑戦をしましたので,それの北部版です.

アキアカネとナツアカネはそれなりにいましたが,まだ本格的に集合しているという感じではありませんでした.わんさか飛び始めるのにあと1週間はかかりそうです.草の先や木の枝先に止まって過ごしているという感じで,10:00頃というもっともいい時間帯でも,タンデムで飛んでいたのは1,2ペアという感じです.まだ本格的な秋は来ていませんね.


▲枯れ草の先に止まるアキアカネ.▲


▲木の枝先に止まるナツアカネ.▲

私がいつも行くところの池はネキトンボが非常に多い池なのですが,今年は,池の水が濁っており,ネキトンボはほとんど飛んでいませんでした.1,2頭は姿を見ましたが,消えたという感じです.


▲数が異常に減ったネキトンボ.飛ばずにコナギに止まっている.▲

昨日南部でやったアカトンボ出会い作戦で見られなかった3種が見られ,これで12種.マユタテアカネに出会いませんね.もっとも北部の私が行くところには数が少ないのですけれども.あと,秋になってからまだ出会えていないアカトンボは,ノシメトンボ,ヒメアカネ,マダラナニワトンボの3種だけです.

あと夏の名残のトンボでは,シオカラトンボ,ギンヤンマが飛んでいました.それからオニヤンマとウチワヤンマもいました.オニヤンマには今年県内で接近遭遇がなかなかできなかったのですが,やっと写真が撮れました.ウチワヤンマの10月の記録は,兵庫県では非常に少ないです.


▲やっと接近遭遇できた県内産オニヤンマ.▲


▲ノゲシ類?の綿毛に止まるウチワヤンマ.季節感が合わない.▲

9月に入ってからずっと感じていますが,夏のトンボの個体数が減ってきているのに,なかなか秋が完全に始まらない.端境期がやたらと長く感じます.また去年までたくさんいたネキトンボが減っていて,ナニワトンボ,マイコアカネなどと同じような状況です.これ,先日の日本縦断台風14号の影響なのでしょうか.それなら今年だけのことですむのですが,なんか,いやな感じです.

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