No. 877. アオイトトンボ属3種.2022.9.24.

しばらく台風などの影響もあって,トンボ観察を休止していました.というか,端境期をやり過ごして,秋になるのを待っていたという方が正確かもしれません.今日は私を誘ってくださった方の案内を受け,アオイトトンボ属の観察を行いました.

まずはアオイトトンボから.今日はたくさんのアオイトトンボと出会いました.午後からの観察でしたが,気温は25℃ほどあり,秋のトンボには絶好の気温という感じです.池ではたくさんのアオイトトンボが産卵をしていました.


▲マコモに産卵をするアオイトトンボたち.たくさんの産卵ペアが見られた.▲


▲カンガレイに産卵するアオイトトンボたち.▲

今日の観察で一番の収穫だったのは,アオイトトンボの潜水産卵です.アオイトトンボが潜水産卵することはいくつかの文献に出ており,すでによく知られたことなのですが,実際に目にすることはほとんどありませんでした.ところが,今日訪れた池では,たくさんのペアが潜水産卵をしていたのです.ここの個体群は潜水産卵が当たり前に行われているという風に感じさせるほどでした.


▲メスはすでに水面下で,オスの上半身はまだ水面上にある.▲


▲メスがオスを水中に引きずり込んだ.連結潜水産卵である.▲


▲別のペアの潜水.上2つは同じペア.かなり深く潜っているのが分かる.▲


▲また別のペアの潜水産卵.▲

潜水しているペアは結構敏感にまわりの状況に反応するようです.写真を撮っている私が少し大きな動きをすると,あわてて水中から離脱し,水面より高い位置に止まります.また,足を滑らせて石ころをポチャンと落としたときも,慌てて水面から離脱しました.この反応は水面より高い位置で産卵している時と同じくらい敏感です.


▲産卵を終えたのか,メスは腹部を伸ばしている.このあと水から離脱した.▲

潜水産卵が終わると歩いて浮上してきますが,メスは腹部を伸ばしてだるい感じで葉をよじ登ってきます.オスが引っ張り上げてやっているという感じでした.

さて,次はオオアオイトトンボです.時刻は14:40頃です.今までの経験では,間もなく産卵を始めるという時間帯です.オオアオイトトンボは連結した状態でかなり長い間過ごします.メスが産卵を始めるまで辛抱強く待っている感じです.ある時刻になると嘘のようにメスが産卵を始めるのですが,今日はそこまで待ちませんでした.


▲池のそばの草原を飛んでいたオオアオイトトンボのペア.▲


▲池では産卵しそうな枯れ枝にぶら下がってただただ時間を待っているという感じ.▲


▲連結状態でメスが産卵を始めるのを待っているようだ.▲

さて,最後がコバネアオイトトンボです.コバネアオイトトンボは2018年以来の再会です.まだ兵庫県内に生き残っていました.非常に嬉しいことです.


▲コバネアオイトトンボのオス.緑色型の個体がやはりきれいに感じる.▲

▲上は金色タイプのメス,下は緑色タイプのメス.▲

コバネアオイトトンボは産卵ペアがいませんでした.かなり念入りに探したのですがすべてアオイトトンボでした.またアオイトトンボに比べコバネアオイトトンボの個体数は極端に少なく,私が見たのは全部で6個体でした.しかも,オスの中には羽化不全なのか翅がしわになっていたり,腹部が少し屈曲している個体がいました.かなり個体数が減った時期があったのでしょうか,ボトルネック効果で遺伝的多様性が著しく減少しているのかもしれません.今後がちょっと心配な状態ではあります.


▲右後翅がしわになっている,羽化不全と思われるコバネアオイトトンボのオス.▲


▲腹部がわずかに屈曲しているコバネアオイトトンボのオス.▲

さて,家にこもっている間に,しっかりと秋の扉が開いていたみたいです.今日はほとんどカメラを向けませんでしたが,ナツアカネ,マユタテアカネ,ヒメアカネ,ノシメトンボ,リスアカネなどのアカネ類もしっかりと活動を始めていました.またギンヤンマ,シオカラトンボ,タカネトンボなどの夏のトンボも生き残っていました.また忙しくなりそうです.

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