トンボノート
No.955. 成虫出現状況調査.2024.5.2.

4月が終わり,5月に入りました.過去の状況を考えても,5月に入るといろいろなトンボが活動を開始するはずです.今後のよい観察材料を決める上でも,今日は春のトンボの出現状況と活動状況を確かめに行くことにしました.まずはイトトンボから.アオモンイトトンボとアジアイトトンボはもう出ているはずですので,それから確認することにしました.

池に着いたとき最初に出会ったのはなんとセスジイトトンボでした.この池に昔はたくさんいたのですが最近は見かけたり見かけなかったりします.次に見たのがクロイトトンボ,なんか,アオモンイトトンボやアジアイトトンボがいません.少し探索範囲を広げると,アオモンイトトンボはたくさんいました.もうスズメノヒエが伸びつつある池の上を飛んで,しっかりと活動を始めていました.ただ,どういうわけか,アジアイトトンボの姿はありませんでした.


▲セスジイトトンボのオスとメス.結構早く出ています.


▲クロイトトンボのオスとメス.メスはクモを食べている.


▲アオモンイトトンボのオスとメス.アオモンイトトンボもクモを食べている.

アオモンイトトンボは,よく草の葉や茎をつつくような動作をします.あれはクモを捕っているんですね.普通クモが昆虫を捕って食べるのが食物連鎖ですが,トンボはときどきこのようにクモを捕って食べています.草に付く小さなクモですけど.

今日は気温が低いという予報で,風も吹いてちょっと肌寒かったのですが,アオモンイトトンボたちは気にせず飛び回っていました.いやはや元気です.アオモンイトトンボを探して歩いているとき,足下から黄色いトンボが飛び立ちました.ショウジョウトンボです.ショウジョウトンボは,昔は夏のトンボというイメージがありましたが,最近は4月から姿を現しています.


▲羽化直後と思われるショウジョウトンボのメス.

イトトンボの確認はできましたので,次はトラフトンボやヨツボシトンボといった春季種を確認しに行くことにしました.最近この2種が見られるところが少なくなったような気がします.それも間近に見ることができる場所が特になくなって来つつあるように思えます.果たして今日は飛んでいるでしょうか.

場所を変えると,まず目に付いたのがトラフトンボでした.最終的に6頭を確認できました.これは時間をかけて観察すれば,卵塊形成の場面に遭遇できるかもしれません.


▲池の上を飛び回るトラフトンボのオス.


▲ヒメガマの枯れ葉に止まって休むトラフトンボのオス.

下の写真はオスと判断していますが,翅の前縁に濃褐色のラインが存在するように見えるのでメスかもしれません.ただメスはもっと腹部が太いし,大きな産卵弁も見えませんので一応オスにしています.ヨツボシトンボの方は,トラフトンボの飛ぶ池で,ヒメガマの植生内で活動をしていました.


▲ヨツボシトンボのオスたち.

この2種,繁殖活動期に入っているようですね.ねばれば産卵にやってくるメスも狙えそうです.まだ晴れが続きそうですし,メスの成熟はこれからでしょうから,チャンスはありそうです.ということで次はコサナエ属の活動状況です.そろそろタベサナエやオグマサナエは産卵活動を始めているのではないでしょうか.

そこで,この4月オグマサナエやタベサナエの羽化を観察した池に,行ってみました.


▲フタスジサナエは,トラフトンボの飛ぶ池でオスがたくさん水辺に出ていた.


▲オグマサナエのオスは池に出ていて,メスを待っているようだった.

コサナエ属のトンボたちは,もう未熟期を終えて,繁殖活動期に入っているようでした.オスたちはみんな池に出ており,草むらなど,未熟期を過ごす場所ではほとんど見つかりません.これは産卵活動の観察も期待できそうです.時間的にここへ来たのが12時をまわっていたので,ちょっと厳しいかもしれないと思い,春にタベサナエの羽化をたくさん見た池で入ってしばらく待つことにしました.オスはすでに水辺で活動を始めています.


▲タベサナエも水辺でメスを待っているようだ.

しばらく水辺で立っていたとき,すぐ向こうで産卵しているメスを見つけました.久しぶりの産卵撮影で,ピントを合わせられません.結局草に止まった1枚だけで,全部だめでした.昨年秋以降トンボ観察をやっていなかったせいですね.


▲産卵メスがハリイ?に止まった状態.腹端に卵塊が出ているのが分かる.

コサナエ属の産卵は,経験上集中することが多いので,待ってみることにしました.時刻は12:50を少し過ぎた頃です.春のトンボは,気温が最も高いこの時間帯に産卵に来ることも多いのです.特に今日は気温が低めで,ここは日陰ですから余計にそうでしょう.

ほどなく,次の産卵個体がやって来ました.やはり集中しますね.時刻は13:02.今度の個体は枯れ枝のあるところで産卵しています.やはり他から見えにくいところが好まれるようです.


▲13:02,2回目の産卵観察.今度は少しピントが来た.

2回目の飛翔産卵の撮影,今度は少しうまくいきましたが,それでも微妙にピントがずれています.考えてみると,このカメラ修理に出したので,いろいろな状態が初期化されているかもしれません.視度調整を厳密にやって見ました.やはり少しずれていたようです.さて,もう来ないかもしれませんが,もう少し待ってみることにしました.なんせ昨日まで悪天候で今日は晴れていますから,経験上産卵密度は高いはず.腰を下ろして待っていると,13:23,やって来ました産卵メス.


▲3回目は比較的ピントが来た.産卵するタベサナエのメス.

トンボ撮影もはやり慣れて感覚を忘れないようにすることが大切です.このあと,オグマサナエの産卵もねらってみましたが,不発でした.帰り際,ムカデさんの遊泳を見ました.ゲストで紹介しておきます.


▲水に落ちたのだろうか,ムカデさんが遊泳していた.

いよいよ春のトンボたちの繁殖活動も本格化してきたようです.しばらくは忙しくなりそうです.今日は,上記で紹介した以外にはクロスジギンヤンマとヤマサナエを見ました.

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No.12. セスジイトトンボ.オス・メス
No.13. アオモンイトトンボ.オス・メス
No.14. ショウジョウトンボ.メス
No.15. トラフトンボ.オス
No.16. ヨツボシトンボ.オス