昨夜から今日の午前中にかけて雨.雨後の晴れということで,天気が回復した午後から,ヤマサナエの観察に出かけました.この春に羽化を見た公園です.ここは人工的な流れが100mほど造られており,そこ以外に流れがありません.これまでの観察で,オスは2,3頭がいつも流れに降りてきていることを確かめているので,メスも必ずやってくると思っていました.しかも,経験的に考えて,この流れのうち産卵に降りてくるとすればここしかないというところが,20mほどだけです.そこは背後の林と流畔の木立によって,三方が囲まれている場所です.そして羽化を観察したところから10mほど上流です.
現地に入ったのは12:00過ぎです.まだ空には雲がかかっており日差しを遮っています.しかし天気は回復の方向に向かっているので,待つことにしました.ヤマサナエのオスはもう降りてきていました.ただ,日差しが遮られて時間が経つと,水を飲んで樹上に帰って行きました.13:00前に雲が切れ,日が射し始めてきました.西の方は青空が広がっており,いよいよ本気モード炸裂です.まずオスの姿を撮っておきました.
オスは降りてくるのですが,メスがなかなか来ません.例によってオスがいるとメスを持って行かれますので,適当に蹴散らせて追い払っておきました.オスとのなわばり争いです.先住効果はバッチリ,必ず私が勝ちます(笑).
段々と時間が過ぎ,14:00をまわりました.来てから2時間ほど経っています.場所が違うのかなとか,今日も失敗かなという考えがふと頭をよぎり始めました.しかし自分の経験と勘を信じて待つ以外にありません.だいたいヤマサナエという相手は,時々産卵を見るのですが,ここぞという場所でねらって成功したためしがありません.いわゆる普通種は産卵ポイントを特定しにくいのです.
そんなこんなで14:30をまわりました.ぼんやりと流れを眺めていましたら,サーッとトンボが1頭入り,石の上に止まりました.ヤマサナエのメスです.ねらったポイントに入ってきました.勘が当たったときはとても気持ちいいものです.疲れは一瞬で吹っ飛びました.あとは驚かせて逃がさないように撮影をするだけです.
止まった最初が肝心です.ここで驚かせては逃げられてしまいます.あまり近づきすぎないようにします.オスを追い払っていたおかげで,オスにも邪魔されません.やがてヤマサナエは飛び立ち,産卵を始めました.私が近づいていることは感知しているようで,まずは草の下に隠れるようにして産卵を始めました.
できるだけ私から姿が見えないような位置で産卵をしています.しかし,だんだんと私が何もしないと分かると,行動が大胆になってきて,隠れずに産卵をするようになりました.
撮影を続けていると,石の上を低く飛ぶような行動を示し,やがてその石に止まりました.中休みのようです.写真のように,もうすっかりオープンな場所で行動をとるようになっています.
再び飛び立つと,今度はちょっと高く飛びました.私の動きが少し気になるのでしょうか,逃げるかどうか考えているみたいです.こういうときは,私は硬直状態になることにしています.もっとも写真は撮り続けました.
しかし,やがて意を決したように水面近くに降り,産卵を再開しました.流れの底に敷き詰めている黒い敷石の隙間の砂地をねらっているようです.そこに何回か打水しました.ただ打水の瞬間にピントが来たものはありませんでした.
流れのすぐ上の空中でホバリングしながら卵塊形成をする様子が,きれいに写っていました.このあと,これを打水して放卵し,その後卵塊形成と打水を1,2回繰り返して飛び去っていきました.産卵エピソード継続時間は,3分25秒でした.
今日は日向で産卵してくれたおかげでピントも合いやすく,さらにオートフォーカスもよく効いてくれたので,撮影成功率は70%ぐらいありました.やっとねらった場所で待つという方法でヤマサナエの産卵を記録にとることができました.
公園では,フタスジサナエ,トラフトンボ,ヨツボシトンボという春のトンボがほとんど姿を消していました.一方で次のトンボになるはずの,コシアキトンボ,ショウジョウトンボなどはほとんど姿を見ませんでした.具体的にいうと,ヨツボシトンボ1頭,ショウジョウトンボ1頭,シオカラトンボがぱらぱら,クロイトトンボはそれなりにいましたが,ピークよりは減っている感じでした.
散歩がてらのワンポイント観察,今日はうまく成功しました.実はヤマサナエの産卵をねらった観察は4回目なのでした.以上.