トンボノート
No.896. ヤマサナエ一斉羽化.2023.4.16.

今日は天気予報では曇り,あまり天気はよくないようですが外は晴れ(これを書いている今でもまだ晴れ)ているので,近くの公園に散歩がてらトンボを見に行くことにしました.あまり期待しないで出かけたのですが,なんと,子供の遊び場として整備された小さな流れからヤマサナエが飛び出しました.


▲流れから飛び出したヤマサナエが,近くの桜の葉に止まった.

そこで,このヤマサナエが飛び出したあたりを調べてみました.すると,羽化殻が2つほどついていて,さらに,羽化途中の個体がいました.


▲処女飛行に飛び出したあたりで羽化しているヤマサナエ.

これはまだいるかもしれないと思い捜索範囲を少し広げてみました.すると,まだまだいました.翅を広げて飛び立とうとしている個体,流れの中央で藻の上に止まって羽化している個体,そして,今まさに背中が割れて体が出てきつつある個体が見つかりました.


▲水際で翅を広げていたヤマサナエのメス.


▲流れの中央で藻に乗っかる形で羽化しているヤマサナエのオス.


▲9:58’34″.今まさに背中が割れて体が出てきつつあるヤマサナエのメス.

今日は本当に特に期待することもなく来たのですが,大当たりでした.この公園には夏から秋にかけてはよく来るのですが,この季節にはほとんど来たことがなかったのです.まさかこんなところでヤマサナエに出会えるとは思いもしませんでした.しかもこんなにたくさん一斉に(実はまだまだ見つかるのですが後で紹介)羽化しているなんて....

せっかくのチャンスですから,殻が割れ始めた個体を最後まで観察することにしました.


▲10:01’57″.頭部が出た.


▲10:03’33″.体はやや前方に向かって出てくる.翅は抜け出て脚が抜けつつある.


▲10:04’56″.脚が抜け,脚を少し動かして,状況を確認する.


▲10:09’44″.休止期に入った.脚は側部にピタッとくっつける.

休止期に入ったので,ちょっとほかのヤマサナエにも目をやってみました.藻の上で羽化していた個体は翅を開きました.


▲藻の上で羽化していた個体は翅を開いた.


▲始めに羽化を見つけた個体も,だいぶん羽化が進んでいる.


▲水際で羽化していたメスも飛び立ち,タンポポの花柄に止まった.

さて,他のトンボに気をとられているときに,観察中の羽化個体は腹部を抜いてしまいました.腹部を抜く瞬間を撮ることに失敗しました.


▲10:18’54″.腹部を抜いた.


▲10:19’50″.翅を伸ばすステージに入ったようだ.


▲10:24’19″.翅が伸び始めた.


▲10:28’51″.翅はどんどんと伸びていく.

翅の伸長が始まり,観察も落ち着く段階にきたので,もう少し丹念に周りを見渡してみました.すると,まだいました.羽化不全の個体が2頭いました.


▲羽化不全のメス.左前翅が欠けている.


▲こちらも羽化不全のメス.前翅が両方とも半分ずつ欠けている.

羽化個体の継続観察に戻ることにしました.翅がさらに伸びて,腹部先端と同じくらいになりました.公園を散歩している人が,「何がいるんですか」と尋ねてきたので,「トンボですよ」と答えましたが,あまり興味なさそうに去って行きました.ヤマサナエの羽化もそう簡単には見られないのに...といっても一般の人には関係ないのかもしれません.


▲10:32’06″.翅はさらに伸長する.


▲10:34’42″.翅はさらに伸びて,腹部先端に到達した.


▲10:39’34″.翅はほぼ伸びきった.これから腹部の伸長が始まる.

観察していると,またヤマサナエが飛び立ち,林の方に飛び去りました.この個体は全く存在に気づかなかった場所から飛び立ちました.そこで,もう一度丹念に周辺を探索しました.すると,草に止まっている羽化個体を見つけました.


▲どこから飛び立ったか分からなかったが,草の中に止まっていた.

これ以外に,さらに離れたところで羽化殻を見つけました.思ったより広い範囲で羽化をしているようです.さて,継続観察に戻りましょう.


▲10:57’16″.かなり腹部が伸びた.


▲11:14’47″.かなり腹部も細くなり,上方へのそりも小さくなった.


▲11:15’21″.翅が開いた.

さて,いよいよ開翅しました.後は飛び立つのを待つばかりです.


▲11:17’02″.いよいよ飛び立つ直前.


▲11:18’06″.あまりよく写らなかったが,飛び立ったヤマサナエ.

ということで,今日の観察を終えました.観察前・中に飛び立ったヤマサナエの数は9頭でした.他に羽化殻が4個.10頭以上がここで羽化したことになります.昨日は雨風が強かったので,おそらくこれらの羽化殻も今日羽化した個体のものだと思われます.それにしても,今までの経験では,ヤマサナエの羽化は4月下旬ぐらいに始まっていたと思いますので,今年はやはり少し早い感じがします.

この個体群が,一昨年(幼虫成長には通常2年かかるので)たまたまやって来たメスの子孫なのか,ここで毎年羽化している,つまり生息しているのか,今日の観察では分かりません.ただこんな近くでヤマサナエの羽化が観察できたことが嬉しいです.今年はここでヤマサナエの産卵を「濃密に」記録できるかもしれません.

あと公園を一周しましたが,クロイトトンボが2頭ほど飛び立っただけでした.ここへはヨツボシトンボの羽化を期待してきたのですが,こちらはもう少し後のようです.