トンボノート
No.864. オナガサナエの確認と藪.2022.7.30.

今日はオナガサナエの生息場所の状況を確認に行ってきました.昨年秋に植生のあるところが浚渫されてしまった川です.ただし流れの部分には重機が入っていないようで,春の調査でも,底生のサナエトンボ類は特に減ったという感じではありませんでした.しかし,羽化はしても,川の環境が変わってしまうと産卵にやってこなくなる場合があります.浚渫以前の状態と比較してみようというのが今日のねらいです.

朝8:00過ぎに到着.本当は6:00頃に来るのが一番いいのですが,最近は夜が寝苦しいせいか朝寝坊になってしまい,こんな時刻になりました.川にはすでにオナガサナエのオスがたくさん集まっていて,ものすごいスピードで飛んだり止まったりしています.


▲川の入りの上に止まっているオナガサナエのオスたち.

オスの動きは活発で,水面ぎりぎりをジグザグに飛んでメスを探しているかと思うと,ホバリングして少しずつスライドするように移動したり,朝のオナガサナエオスの行動は,日が高くなったときとは違っています.きっと,メスがたくさん来ることを知っているのでしょう.


▲水面をホバリングしながら移動するオナガサナエのオス.

メスの産卵ポイントは,少し表面が波立っているくらい浅くて,底の礫がはっきり見えるような場所です.ここというポイントを決めて待ちました.すると,上空をメスを捕らえたオスが飛び去っていくのが見えました.メスはやってきているようです.ほどなく,私が待っているぴったりのポイントにメスが産卵に入ってきました.


▲産卵に入ってきたオナガサナエのメス.

メスが産卵を始めますと,シオカラトンボのオスが干渉してきます.それをかわしながら産卵しています.産卵が終わると水浴して飛び去ります.その後も産卵に入ってきました.しかしシオカラトンボがこれを追い回して,なかなか落ち着いて産卵させてくれません.


▲次々に産卵に入ってくるメスたち.

少し離れたところにも産卵に入り,近づくとオスが水面にたたき落として連れ去りました.これだからメスはオスから逃げ回るのでしょうね.


▲少し離れたところでも産卵が見られた.

大きな卵塊をつくる個体もいて,いつもながらオナガサナエの産卵を観察するのは楽しいものです.


▲大きな卵塊をつくっているメスと,それがちぎれて落ちた瞬間.

1時間30分ほどの間に,のべ10頭ぐらいが産卵にやってきました.以前と変わらず,ここはオナガサナエの産卵場であり続けているようです.最近は,川の浚渫や道路工事でも,生き物に配慮した工法が採られているのでしょうか.壊れたと思った繁殖場所が以前と変わらず残っているのは,嬉しい限りです.

さて,まだ時刻は10:00前です.十分状況は確認できましたので,この後の時間,そう,「ヤブヤンマを藪の中で探す 第3回」を行うことにしました.一昨日産卵に来そうな藪の中の小池を確認しておきましたので,ここへ行ってみることにしました.

熱中症予防のため昼食をしっかりととり,到着したのは12:00前.池に着くと,なんとヤブヤンマのメスが産卵に入っていました.予想的中です.


▲着く早々産卵するヤブヤンマのメスを発見.

ただこのメス,なかなか近寄らせてくれません.おまけに産卵の着地点を探して飛び回るメスを見つけたオスがこれを追いかけ回し,とうとうメスは池を出て行ったかのように見えました.その後もオスは池に入って飛び回り,メスの産卵しそうな池岸をのぞき込んでいます.そしてしばらく飛ぶと,ここに止まるのではないかと期待していたヒノキの枝が垂れ下がったところに一時的に静止しました.ヤブヤンマのオスは,メスが産卵に来そうな場所付近の木の枝などに静止する習性があります.ねらいが当たると嬉しいものです.ゆっくりと近づきながら写真を撮り続けました.


▲ヤブヤンマのオス.

今年はヤブヤンマに手こずりそうだと思っていましたが,やっと接近遭遇を果たしました.本当にオスの複眼の水色は光り輝いていますね.

一方メスの方ですが,実はこれは大失敗でした.池から出て行ったとばかり思っていたメスが,池の反対側の岸でどうやら産卵を続けていたみたいです.岸からメスが飛び出したかと思うと,水浴をして飛び去っていきました.池を周回して探しておれば見つけていたでしょうね.どうも最近思い込みで探索をおろそかにして腰を落ち着けてしまうことが多い,いやはや年齢を感じます.

池ではコシアキトンボやオオシオカラトンボが産卵をしていました.13:30,今日の観察を終えることにしました.