トンボノート
No.812. コノシメトンボの集団産卵.2021.10.10.

来週から天気の悪い日が続きそうなので,今日も続けてトンボを見に行ってきました.今日のねらいはコノシメトンボ.最近はコノシメトンボが集まっている池も少なくなりました.朝起きると快晴状態.これはいけそうだということで車を走らせました.現地到着は9時過ぎ.深い谷間にある池には,まだ陽が届いていませんでした.それより気になったのが,空に雲が厚く広がっていることです.晴れていたのは,南部の方だけだったのかも知れません.

池に着くと,すでにトンボが産卵しているのが見えました.キトンボです.まだ日陰で涼しい感じなのに,複数が産卵しています.むしろ寒いのが好きなキトンボにとっては,これくらいの涼しさの方がいいのかも知れません.





▲日陰で産卵をするキトンボたち.一時的にダブル産卵になった.

オスがメスを放し,やがて単独産卵になりました.単独産卵になると上下動が少なくなります.打水の後,ほとんど同じ位置に空中停止し,続いて打泥産卵をします.



▲単独で産卵するキトンボ.

キトンボの産卵を観察している間に,だんだんと水面で打水産卵するペアが増えてきました.コノシメトンボとネキトンボです.コノシメトンボやネキトンボが打水産卵を始めますと,キトンボもそれにつられるように,岸辺で産卵することなく池の中央で一緒になって打水産卵を始めるようになりました.

▲打水産卵するキトンボ.

だんだんとネキトンボの数が増えてきています.しかしネキトンボはあまり岸に近づいて産卵してくれません.池は深いので,入ることもできず,近くに来るのを待つだけです.それにしても空には雲がますます広がり,本格的な曇り模様となってきました.





▲ネキトンボの数は多いが,いかんせん遠いところでばかり産卵する.

ネキトンボが岸辺に近づくのを待っていると,足下でマユタテアカネが産卵を始めました.マユタテアカネはいわゆる「ついで種 collateral species」です.わざわざ見に行くことはしなくても,他のトンボの観察のついでに見ることができるトンボです.アキアカネやナツアカネもそうでしたが,最近はわざわざ見に行くことになりつつあります.マユタテアカネもそうなりそうな気配があります.どこでも結構数が少ないのです.



▲足下で産卵するマユタテアカネのペア.

▲池の対岸に移動したとき,コンクリート張りの岸壁で産卵するマユタテアカネ.

10時頃になると,俄然コノシメトンボが増えてきました.池ではおそらく50ペア以上は産卵していると思います.ざっと数えても30ほどいましたから.

▲コノシメトンボがたくさん産卵し始めた.ネキトンボが1ペア混じっている.

コノシメトンボも池の中程で産卵する個体が多いのですが,ネキトンボに比べると,岸近くに寄ってくるペアの数が多いです.上の写真でも水際で産卵しているペアが一ついます.







▲池の中程で産卵を続けるコノシメトンボのペアたち.

岸近くで産卵するときは,水中に水生植物が見えるところで産卵するのを好んでいるように見えます.











▲岸に近いところで産卵するコノシメトンボのペア.

結局最後まで日が射すことはありませんでした.アカトンボは太陽の下で撮影した方が輝いてきれいなのです.ちょっとそういう意味では残念でした.しかし,場所を選べば,まだこんなにトンボがいる池があるのですね.ただ,池から100mも離れると,トンボの姿はまったく見られなくなります.この池に隔離されている個体群という感じで,この池が何らかの形で崩壊すると,ここもトンボの姿がない池になるでしょう.