今日も梅雨の合間の晴れ.今日は,今まで行ったことのない,そして普段あまり行かない水辺環境の調査に行ってきました.テーマは大河川の下流域です.兵庫県にはいくつかの大きな河川があります.ただ,多くの河川の下流域は,市街地や工場地帯になっていますので,場所は選ぶ必要があります.ねらいの一つはミヤマサナエの羽化殻探しです.ミヤマサナエというのは兵庫県では非常に見つけにくいトンボです.
まあ結果からいうと,ミヤマサナエの羽化殻は見つからず.オナガサナエの羽化殻があちこちに100個体以上はついていました.ミヤマサナエはもう遅いのかも知れません.河川敷に広がる草地やワンドを見て回りました.ハグロトンボたちが木陰に入りこんでたむろしていました.
大河川の下流域というと,セスジイトトンボの生息域です.探してみますと,たくさんいました.不思議なもので,いないいないといいながら,一度見つかるとあっちでもこっちでも出会えるのですから不思議です.かなりの数が河川敷の草むらの中で暮らしていました.やはり本来の生息環境で調査しないといけませんね.
河岸を見ても,産卵できるような植物が生えているところは見当たりません.どこでどうやって生活しているのでしょう.たくさんいたので最初のうち見つけるたびに写真を撮っていました.すると,その中に未熟と思われるメスがいて,眼後紋が水色をしていました.ふつうは上の写真のように.黄橙色をしています.
通常のメスと比べると,水色眼後紋の個体は,やや黒化が進んでいるように見えます.水色はやがて黄橙色に変わっていくのか,それともこのまま成熟していくのか? ちょっと興味があります.セスジイトトンボのメスは,完全成熟すると,翅胸前面が焦げついたような黄橙色になります.この水色メスは薄緑色で,下の写真の方は少し黄色味がかってきて,眼後紋の外側の縁部分が,ほんの少し水色が混じったような色になっています.
このことがちょっと気になり,過去のセスジイトトンボの写真を調べてみました.すると,セスジイトトンボのメスの眼後紋に,ちょうど水色に黄橙色が混じり始めたように見えるもの,さらに進んで黄緑色に見えるものがありました(ご存じの通り青に黄色が混じると緑色です).
おそらく,セスジイトトンボのメスは,若くて翅胸部分が黄緑色をしている頃には眼後紋が水色で,だんだんと日齢が進んでくると,翅胸部分,特に翅胸前面が黄橙色へと変色していき,それにともなって,眼後紋にも黄橙色が混じってきて,やがて,完全な黄橙色になるのではないかと思われます.
さて,それ以外には,コフキトンボ,シオカラトンボ,コシアキトンボ,コオニヤンマ,ギンヤンマなどが飛んでいました.また,セスジイトトンボやハグロトンボに混じって,河畔林の林床にマユタテアカネがいました.まだ黄色い状態のものです.これら止水性のトンボは,ワンド状のところでかえっているのでしょうか.単発の調査では分かりません.
まあ,特別なトンボはいませんでしたが,この川は生きていることがよく分かりました.
次はもう少し上流に移動して,河川の中流域を訪れてみることにしました.もちろん私にとっては,まったく初めての場所です.ただ記録にはアオハダトンボがいることになっています.川に下りることができそうな所を見つけ,水辺でトンボを探してみました.アオハダトンボがいました.またハグロトンボも羽化していました.入れ替わりの季節が来ています.
そしてコヤマトンボが川岸に沿って往ったり来たりしていました.最近はコヤマトンボが飛ぶ川も減ったように思います.幼虫は結構よく採れるのですが,成虫があまり頻繁には飛びません.
トンボが旋回するときは頭は定位置のまま体だけねじるように回転させます.一番下の写真はちょうどその瞬間です.30分ほど待ってみましたが,メスは来ませんでした.やがてオスも飛ばなくなり,空模様も曇ってきました.
最後にヒメサナエが羽化する川へ出かけてみました.しかし川は浚渫工事と護岸工事がなされていて,見る影もなく幾何学的な川に変貌していました.少し下流側の工事がなされていない所で,オジロサナエが羽化して飛び出すのを見ただけでした.
夕方まで晴れる予報でしたが,雨もポツポツしてきて,今日はここまでとしました.土地勘がないところへ出かけると,何か新鮮な気持ちになりました.