トンボノート
No.786. アオヤンマがいない.2021.6.1.

昨日・今日と好天が続いていますが,所用があってトンボ探しに行けません.ただ,今日は空いている時間帯があったので,アオヤンマの生息状況だけを見に行きました.10:00頃,風は爽やか,青空,いうことなしの条件です.しかし,アオヤンマは飛びませんでした.この生息地から消失したのでしょうか…?

一回の,一時間程度の調査で断言するのは危険ですが,アオヤンマは生息地に貼り付いた生活をしているトンボですから,この条件で姿が見えないということは,消えた可能性はかなり高いです.9年ほど前に別の生息場所でも同じことを経験しました.

毎年のようにアオヤンマが見られていたその生息地で,春に終齢幼虫を採取し,羽化させようと持ち帰って飼育しました.しかし,羽化時期になっても,翅芽がふくらむことなく,そのまま夏を越し,秋口に死んでしまいました.そして同じその年にアオヤンマの姿が見られなくなりました.生息地の中でも同じことが起きていたのでしょうか?

▲アオヤンマの生息地で採取(2012.5.18.)し,このままの状態で秋に死亡した.

おそらくなんらかの環境の合図で,神経系または内分泌系が発動し,メタモーフォシスが始まるのでしょう.そして成虫の形態形成が完了し,アポライシスが終わったときに,羽化が行われるのだと思います.でもこの終齢幼虫は,まったくその気配を示しませんでした.神経系か内分泌系に,何か重大な障害が起きていたように思います.ネットで調べると,最近よく使われているネオニコチノイド系の農薬は,昆虫の中枢神経系のアセチルコリン受容体と結合して作用し,神経系を攪乱するとあります.幼虫が脱皮しなかったこと,同じその年からアオヤンマが消えてしまったこと,この符合は何を意味するのでしょうか.

そういえば今日行った生息地は,ヨシやマコモが青々と茂っていて,ほとんど虫に食われていませんでした.ここに農薬がまかれたのでしょうか? これで,私の知る兵庫県下のアオヤンマの生息地はなくなりました.まだいるという情報はないではないのですが….

他のトンボの姿もとても少なく,いたのはコシアキトンボだけでした.





▲コシアキトンボが池面に出てパトロールをしている.

この5,6年の間に,マダラナニワトンボ,コバネアオイトトンボ,アオヤンマと,次々と既知の生息地から姿が消えていきます.懐の広い兵庫県ですから,まだどこかにいるとは信じていますが,見つけるのは相当に骨が折れそうです.