トンボノート
No.699. ミヤマアカネの幼虫.2019.6.21.

今日はホームページの充実のために,ミヤマアカネの幼虫を採りに行きました.「兵庫県とその近隣のトンボたち」のページでは幼虫の生体写真を掲載しています.そこではまだ何種類かの幼虫が未掲載です.そのうちの一つ,ミヤマアカネの幼虫を,今日は採って撮影することにしました.

▲ミヤマアカネの幼虫.

ミヤマアカネの幼虫採集で難しいのは,マユタテアカネとの区別です.だいたい,ミヤマアカネの生息するところには,マユタテアカネも生息しています.ミヤマアカネは川の生息者でマユタテアカネは池の生息者ですが,マユタテアカネが川に入り込んでいるのです.今日採れた中にもマユタテアカネが混じっていました.

▲マユタテアカネの幼虫.

写真で見ると色が若干違いますが,これは個体差があるので,判別の手がかりにはなりません.また赤とんぼ(アカネ属)の幼虫の区別点としてよく使われる,腹部第8,9節の側棘の長さや形態も,ほとんど判別不可能なくらい似ています.

▲腹部第8,9節の側棘の長さと形態.左:ミヤマアカネ,右:マユタテアカネ.

唯一確実なのは,前下唇の下唇前基節の縦横比です.前下唇の形態自体も,マユタテアカネの方がミヤマアカネよりやや細長い感じがします.「感じ」ではいけないので,実際の下唇前基節の縦横比を取ってみますと,ずいぶん違うことが分かります.

▲前下唇を腹面から比較したもの.左:ミヤマアカネ,右:マユタテアカネ.
▲下唇前基節の縦横比を画像から計算したもの.左:ミヤマアカネ,右:マユタテアカネ.

ミヤマアカネの方が,前下唇がずんぐりしている感じがしませんか? またマユタテアカネには,小さな褐色斑があります.この違いは,どちらか一方だけ見ているとまったく自信がなくなるほど,微妙です.家には確実な標本があるので,まずそれを使って比較しましたら,採集したうちの1頭だけがマユタテアカネで,他はミヤマアカネと判別できました.やはり,トンボの研究をするには,最小限の標本が必要です.1頭だけ翅芽が膨らんでいて羽化しそうな幼虫がいるので,羽化させて最終確認をしますが,おそらく判定の間違いはないと思います.

もう一度,マユタテアカネとよく似た色彩の黒っぽいミヤマアカネとの比較をしてみましょう.よく見ると,ミヤマアカネの方がなんとなく丸っこい感じに見えます.頭部も丸みがあるし,腹部のラインも丸まっています.一方マユタテアカネは頭も三角だし,腹部のラインも直線的で,角ばった感じですね.写真に撮ってじっと見ていると,やはり違うなという認識になります.人間の眼はすごいもんですね.

▲ミヤマアカネの幼虫.黒っぽい色彩をした個体.全体が丸みを帯びている感じ.
▲マユタテアカネの幼虫.頭部の細まり方や腹部のラインがやや直線的に見える.

あと「近畿とその近隣のトンボたち」では,カトリヤンマ,ナツアカネ,ホソミオツネントンボなど,これから夏に向けて終齢になる幼虫が残っていますので,それらのページも今年中に完成させたいと考えています.