今日は久しぶりの晴れの予報.ただ,午後からは曇ってくるとのこと.まあアカトンボは午前中が勝負ですからこれでも十分成果は得られそう.ということで,兵庫県の北部へ出かけてきました.ねらいはネキトンボ.そしてうまくいけばナツアカネも見られるかもしれません.
▲今日の空もよう,青空と秋の雲.見た目は良いが,日が隠れるので困る.
現地には9:20に着きました.快晴とまではいかず,太陽は雲に隠れたり出てきたりということを繰り返すような状態です.雲は秋の雲になっています.池を覗きますと,もうネキトンボが産卵をやっていました.日が差さないと樹林に囲まれた池は暗く感じられます.
▲あっちへ行ったりこっちへ行ったり,オスに追われたりと,産卵場所があちこち移動してねらいにくい.
そしてしばらくすると日が差し始め,こうなると一気に数ペアのネキトンボが産卵に入ってきました.そしてこの後,ここを去る10:20まで,産卵が途切れることはありませんでした.一つのペアが産卵しているのはせいぜい数分ですから,30ペア以上は産卵に来ていたと思われます.一度に5,6頭が産卵していることもあったりしました.
▲岸近くにはコナギが生えていて,その中に入り込んで産卵する.
たくさんが産卵に来ると,どれをねらおうか迷ってしまいます.群れになっていると捕食者をうまくかわすことができるらしいのですが,まさにネキトンボにかわされている感じがしました.ですから一つのペアに集中するということはできず,近くに来たものを片っ端から撮影するといった感じです.産卵が終わると,メスは上空へ飛んで逃げます.オスはそれを追いかけますが,たいがいは逃げられてしまいます.
▲岸から離れたところはコカナダモやヒシが生えていて,ネキトンボの大好きな産卵ポイントとなっている.
▲産卵が終わるとメスは上空へ舞い上がる.別のオスがそれを追いかける.
上空へ舞い上がるのは産卵が終わったメスだけではありません.連結したままのペアが上空へ舞い上がることもありました.これはどう解釈すればよいのでしょう.観察した感じでは,メスはもう産卵を止めて飛び上がりたいのだが,オスがそれを放さないというふうに見えました.このペアは再び水面に降りてきて,連結打水産卵を行いました.考えてみれば,オスは連結しているメスの産卵が終わったことをどうやって知るのでしょうね.昨日のマイコアカネでは,産卵する気のないメスを振り回すように打水を試みて失敗するオスを複数見ました.連結産卵はオスメスの同調した動きが要求されるわけですが,考えれば,その同調性,そして終わりの合図など,オスメスのコミュニケーションに関して興味深い疑問が残っています.
▲連結のペアが上空へ舞い上がった.オスは無理矢理引き戻そうとしているのだろうか?.
30分もするとちょっと休憩をとりたくなりました.最近トンボが減ったと嘆いていますが,これだけ産卵密度が高いと,なんか,昔のトンボの濃かったころを思い出しました.休憩中もまだまだ産卵は続きます.
▲とにかく次々と産卵に来るので,何ペアを記録したかまったく分からない.
1時間ほどで,ちょっと産卵のピークが過ぎた感じがしました.十分記録が撮れましたので,「うまくいけばナツアカネ」というプランを実行することにしました.移動する途中に別の池を覗いてみましたら,もうキトンボが止まっていました.まだ腹部が赤くなく黄褐色の状態の若いオスです.同時に,夏の名残のチョウトンボ,二化目が頑張っているショウジョウトンボなどがいました.車を止めていた近くの水田では,アキアカネがいました.そろそろ降りてきて集まりつつあるのですね.あと2週間もすれば,アキアカネでいっぱいになるでしょう.
▲キトンボのオス.池に現れていた.この時期の方がキトンボという名にふさわしい感じである..
▲チョウトンボの生き残り.9月下旬まで生き残っている個体が見られるが,数は激減している.
▲ショウジョウトンボのオス.割合若い個体に見える.おそらく二化目の個体であろう.
▲アキアカネが降りてきていた.まだ数は少なく3,4頭だった.
キトンボとチョウトンボが同時に池にいるという図は,あまり経験がありません.黄色と青紫色の近鉄カラーです.さてここを後にして,例年ナツアカネが来ている湿地へ出かけていきました.11:06に到着.湿地のまわりの草原を歩きますと.オスのナツアカネが単独で飛び上がりました.ホバリングしてこちらの様子をうかがっているようです.
▲草原を歩くと,パッと飛び立ってホバリングする.
ナツアカネはもうここへ来ていました.でももう産卵は終わったのでしょうか.このオスはまだ完全に体が赤くなっていなくて,とても若い個体のように見えます.時期的にまだ早いかとも思いました.諦めずにしばらく待っていると,産卵しているナツアカネを見つけました.予定通りに事が運ぶと気持ちがいいものです.
▲連結打空産卵するナツアカネのペア.2粒の卵が同時に落ちている写真がある.これは珍しい.
空からは強い太陽が照りつけ,こうなるとピントも合わせやすいです.先のネキトンボの大量のピンボケ生産とは違って,ほとんどピントが来ていました.産卵が終わってもう少しうろうろしていると,ノシメトンボのメスが単独で産卵していました.止まったので近寄ると逃げ,もう産卵せず上空へと飛び去りました.ノシメトンボの季節ももうすぐのようです.
▲ノシメトンボのメス.単独打空産卵を行った後止まったもの.
ネキトンボ1時間,ナツアカネ30分と,予定通りに事が運び,昼食をとって,ナゴヤサナエを見に行くことにしました.ただ,昼食をとっているとにわかに空が曇り始め,日が差さなくなりました.まあ様子だけでもということで出かけましたがダメでしたね.河原にナツアカネがぽつんと止まっていました.
▲河原の草地にぽつんと止まっていたナツアカネのオス.
ナゴヤサナエに出会ったのは2013年が最後ですから,もう5年間出会っていないことになります.生息地周辺に大きな工事が入りましたので,生き残っているかどうかが心配です.昨年か一昨年に工事が終わったので,今年行ってみたのですが.シオカラトンボとハグロトンボが飛んでいただけでした.もう季節的にも終わっている可能性はありますので,来年はきちんと調べてみたいと思います.なかなか兵庫県の全種を見守るというのは大変です.
アカトンボの最盛期まで,あと2週間という感じでした.ネキトンボは夏から繁殖活動をやっていますから....