続 トンボ歳時記
No.615. コシアキトンボの観察.2018.7.23.

毎日35℃を超えるような暑い日が続いています.今日はコシアキトンボの観察に出かけてきました.コシアキトンボは身近に見られるトンボですので,近くの公園の池に見に行くことにしました.過去の記録を見ると,コシアキトンボは午後4時前後に産卵に来ています.そこで,午後3時前に公園に入って,日陰で産卵に来るのを待つことにしました.コシアキトンボ自体が日陰でメスを待っていますので,ちょうどよい感じです.

▲今日の観察対象のコシアキトンボ.別名デンキトンボ.

観察場所に着きますと,コシアキトンボが一定の範囲を往ったり来たりしながら,縄張りをパトロールしています.ものすごく敏捷に飛び回っています.太陽のまぶしい光が目に入ると日陰が特に暗く感じられ,コシアキトンボの腹部の白い部分が光って見え,別名デンキトンボといわれるゆえんです.

▲日陰で,縄張りをパトロールするコシアキトンボのオス.

縄張りが接するところではときどきオス同士が出会い,闘争が始まります.追飛して相手の下にもぐり込み,一気に追い上げます.

▲オス同士の闘争,追飛して後ろ側のオスが相手の下側にもぐり込む.

そうこうしている間に,オスが交尾をして飛び回るのを見ました.メスがやって来たのです.15:29でした.コシアキトンボの交尾は10秒少々ですので,メスが入った合図みたいで,待つ方は楽です.交尾が終わったらすぐに産卵を始めます.このメスはあちこち移動して産卵するので追いかけるのが大変です.産卵するコシアキトンボは,目が暗さに慣れないところで,黒い色をしていて,しかも動きがとても速い,これはもうはっきり言ってピントは合わせられません.いつもそうなのですが,コシアキトンボは撮りにくい相手です.やっと落ち着いて一カ所で産卵をしてくれましたのに,ピンボケの山ができてしまいました.

▲15:29;浮遊物の水面上の位置に卵を貼り付ける産卵様式.植物上産卵するコシアキトンボのメス.

撮った写真を確認しているときに,オスの交尾飛翔が始まり,次のメスが入ってきたのが分かりました.15:43です.あちこち移動して,ちょっと産卵しては移動,またちょっと産卵しては移動を繰り返し,結局先のメスと同じ場所で産卵し始めました.

▲15:43;コシアキトンボのメスが卵を貼り付けた時の震動が波紋になって水面を揺らしている.

このメスはすぐに姿が見られなくなりました.私が見失ったのかもしれません.しかし1分後産卵しているメスを見つけました.これはオスの交尾飛翔が見られず,オスに気づかれず産卵を始めたのではないかと思います.ひょっとしたら,先に見失ったメスかもしれません.だからオスも無視したのかも.

▲15:44;水面から出ている石を狙って卵を貼り付けるコシアキトンボのメス.

またメスが入ってきました.15:57です.これはすぐに産卵する場所を決めたので,ゆっくりと記録できました.明るい石の手前に卵を打ちつけていましたので,オートフォーカスにしてみました.でも完全にピントは来ないものですね.

▲15:57;石に対して斜め上方から卵を貼り付けているコシアキトンボのメス.

▲上のメスと同じ個体.最後に少し離れて苔むした土嚢に卵を貼り付けている.この後すぐに飛び去った.

産卵に来はじめると,次々メスが入ってくるから不思議です.忙しいひとときを終えると,ピタッと産卵に入るメスが来なくなりました.しばらく待っても来ないので,少し場所を移動しました.日はだいぶん西に傾いて,夕方が近い雰囲気になりました.池横の林の影が池面にかかるようになり,コシアキトンボがその日陰を飛ぶようになりました.でも相変わらず縄張りの境界部でオス同士が出会ったら,追いかけ合いをしています.西日を浴びて止まっている個体もいました.

▲だいぶん日が傾いてきた.水面に反射する西日を浴びてオスが闘争をしている.

▲傾いた西日を浴びて止まっているコシアキトンボのオス.

そんなコシアキトンボを見ながら池岸に座っていましたら,すぐ横でコシアキトンボが産卵していました.16:28です.産卵に入ったのを見落としていたようです.すぐに産卵を終えて飛び去ってしまいました.このメスはおそらくオスに気づかれずに産卵を終えたのだと思います.

▲16:28;浮かんでいる木切れに卵を貼り付けようとしているコシアキトンボのメス.

▲16:28;ひっそりとオスに干渉されずに産卵していたコシアキトンボのメス.

17:00が近くなりました.公園の林の中ではヒグラシが大きな声で鳴いています.夏本番ですね.今日の観察は1時間半ほどでした.昼下がりは外出が危険だと報道されるような状態です.この程度の観察が手頃でしょう.それでもメスは4,5頭産卵に来ましたので上々です.ギンヤンマとチョウトンボはこの暑さに負けず日向でたくさん飛び回って活動していました.本当に元気者です.最後にゲストでヒグラシのオスとメスです.

▲ヒグラシのオス(右)とメス(左).オスはカナカナと鳴いているのですが,分かりませんね.