続 トンボ歳時記
No.596. アオヤンマの観察.2018.6.1.

アオヤンマは,かつての生息地からどんどん姿が見られなくなっています.大型で特異な色彩のヤンマで,他に類似種はいません.だいたいどこでも,見た目の環境はまったく変わっていないのに,ある年から突然姿が消えるというパターンです.アオヤンマの数が減っているのは非常に残念な気がします.

現地に入ったのは10:00前.雲が太陽を隠しており,草の葉には露が付いていて,まだなんとなく朝が終わっていないような雰囲気でした.時刻的には,アオヤンマが探雌飛翔をしていてもおかしくない時間帯です.ひょっとしてここもアオヤンマが消えたのか? などと不安に思いながらしばらく待ってみました.程なく太陽が顔を出し,あっという間にアオヤンマのオスたちが飛び始めました.そのとき,メスを捕まえた1頭のオスが飛び立ち,少し向こうの方に止まったように見えました.メスも来ているようです.

▲ヨシやマコモの間を飛び回るアオヤンマのオス.

アオヤンマは,ヨシやマコモの間をついつい飛ぶ,独特の雰囲気があります.入れるところまで池に入って,できるだけ接近して観察をしました.以前の神戸市内の産地の観察では,朝8時ころに,ヨシ原の上で集団で摂食飛翔をするのを見ています.この生息地でも,数は少ないですが,晴れたあとにヨシ原の上で摂食する個体がいました.

▲ヨシ原の上で摂食飛翔するアオヤンマのオス.

私が入った所には,メスの羽化直後の個体が止まっていました.また,飛んでいるオスも止まったりしました.結構ラッキーな場所でしたね.

▲羽化直後と思われるアオヤンマのメス.

▲探雌飛翔で飛んでいるときにふと止まったアオヤンマのオス.

そんなとき,探雌飛翔しているオスが,マコモの茎に付いた何かにつかみかかるような動作をしました.思わずシャッターを切りましたらうまく写っていました.なんと,アオヤンマの交尾ペアに飛びかかったのです.

▲探雌飛翔していたアオヤンマのオスが「何か」につかみかかろうとしていた.

▲つかみかかったのは交尾中のペアであった.おかげで交尾個体を発見できた.

この交尾ペア,今まで目と鼻の先にいたのに,私はまったく気づきませんでした.この場所,先ほど飛び立ったペアが止まったあたりだったので,あのペアに違いありません.

▲私の目の前でかなり長時間交尾していたはず.まったく気づかなかったとは情けないデス.

▲最接近して撮影した交尾ペア.このあと嫌気が差したのか,交尾態のまま樹上へ移動した.

産卵を見たくて,結局15:00まで粘りました.14:00ころ,私の立っている場所の先3mほどの所から,オスがメスを連れ去りました.産卵に来ていたんですね.ヨシやマコモが密生しているので,産卵に入ったことや,産卵そのものを見逃すこともしかたありません.目の前に入ってくれないとだめなんですね.アオヤンマはそういう意味で産卵の記録を撮るのが難しい種の一つです.その後メスは入った気配はありませんでした.今日は結局,2頭のメスが産卵に入っていたことになります.最後に顔シリーズで.

▲アオヤンマのオスの顔.

帰り道,コシアキトンボの未熟個体が,路上で摂食飛翔をしていました.空をバックにすると結構オートフォーカスが効くので,彼らの姿も記録しておきました.今年は,普通種もていねいに記録していこうと思っています.

▲あちこち舞ながら摂食するオスのコシアキトンボ.

▲接食中はオスとメスは入り交じっている.メスのコシアキトンボ.

さて,この1週間ほどの間に,トンボの世界が一気に初夏モードになったような気がします.ついこの間まで,小さな春のサナエトンボを追いかけていたような気がするのですが,ショウジョウトンボ,コシアキトンボ,チョウトンボ,コフキトンボと,どんどん夏のトンボが増えてきています.私的な暦の上でも,6月からを夏と定義していますので,その通りになっています.これからは初夏から夏のトンボを追いかけていくことになります.この2日ほど雨の日が続きましたが,きょうから3日間回復するとのことですので,また忙しくなりそうです.