トンボ観察記
No.536. 真夏のトンボたち その九 ハネビロエゾトンボ.2016.8.6, 9; 9.3

夏のトンボといえば,毎年観察に出かけているハネビロエゾトンボを忘れるわけにはいきません.今年も観察に出かけました.トンボの数はそれなりにいたのですが,産卵に入ってくるメスに出会ったのはたったの3回でした.そのうち1回はビデオカメラで記録しまし,もう1回はオスにつかまって交尾態となりました.

0809-201▲木の枝でなく岩に静止するオス.8月9日.

繰り返し出かけて,合計3回の観察になりました.観察の中心は9月3日,産卵の記録は8月6日になっています.そう,このトンボ,1カ月以上も繁殖活動をしているのですね.あまり今まで気にしたことはありませんでしたが,夏のトンボとしては,ヤンマの仲間に比べて繁殖活動をやっている期間が遅くまで続いているようです.ヤンマはだいたい8月中には繁殖活動を終えているようですが,ハネビロエゾトンボ,タカネトンボ,エゾトンボなどは,8月から9月にかけて繁殖活動が続いています.ヤブヤンマやネアカヨシヤンマは,7月から繁殖活動が始まっているので,継続期間としては同じくらいになりますか…

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0903-203▲水溜りが小さく,ほとんど移動しないで停止飛翔するオス.

オスたちは,毎回の観察で出会うことができました.オスの数は今年はやや多い感じで,しょっちゅう出会っては,追いかけ合いをやっていました.水が豊富で小川全体を流れているときは,オスはあちこちに分散して飛んでいます.しかし,水が減って,あちこちで伏流するようになると,水が表面に出ている場所だけにオスが集まるので,どうしてもぶつかり合いが多くなります.でも,こういうときが写真を撮るチャンスです.オスは狭い範囲でかなり長時間停止飛翔を続け,停止飛翔間の移動もわずかです.

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0903-202▲ときどき静止しながら,長時間停止飛翔を続ける.

そんなとき,メスが入ってきました.と思ったらすぐにオスにつかまり交尾態に,そしてそれにさらにオスがつかみかかり,一時的に三連結状態となって飛び回っていました.最終的に,多分後からつかみかかった方のオスだと思いますが,あきらめてメスを放し,残ったペアは近くに木の枝に止まって,交尾を始めました.

0903-206▲交尾.途中で驚かせてしまい,飛び去ったので,最後まで観察はできなかった.

この日,9月3日は,産卵を1回観察しました.下の記録は8月6日のものです.メスの警戒心が強く近寄ることができませんでした.

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0806-201▲産卵にやってきたメス.短時間で飛び去ってしまった.

ということで,今年もハネビロエゾトンボは健在です.幼虫は水が枯れても,石の下で生き延びていると聞きます.なかなか強いトンボですね.