前回,真夏のトンボとして,アオモンイトトンボの観察を行いました.今日は,それ以外の真夏のトンボを観察しました.池に出かけると,チョウトンボ,ショウジョウトンボ,シオカラトンボ,オオシオカラトンボなどが炎天下を飛び回り闘争活動を展開しています.今日は,そんな中で少し目立たないイトトンボを2種,そしてヤンマの仲間を観察しました.
▲オオシオカラトンボのオス.林内の木漏れ日のところで止まってメスを待つ.
▲産卵しているオオシオカラトンボのメス.薄暗い林内で産卵している.
▲ショウジョウトンボの産卵.オスに追い掛け回されながらの産卵である.
まずオオイトトンボ.これは年間少なくとも2世代は出現すると考えられます.今盛りなのは夏世代.春に現れるよりは少し小型です.気温はとうに30℃を超えた12時を過ぎたころ,池ではペアが産卵活動を繰り広げ,あぶれたオスたちはペアにちょっかいをかけています.太陽はほとんど真上から照りつけコントラストの強い色彩になります.たくさんの個体が産卵をしていました.
▲タンデム状態で,私が危険でないことを確かめるまで止まっている(上2枚).
▲オオイトトンボの産卵.様々な姿勢で産卵をする.直射日光がきつい.
▲オオイトトンボの産卵の向こうでホソミイトトンボが産卵をしている.
次はホソミイトトンボの夏世代.オオイトトンボに混じって,こちらも炎天下の産卵活動です.やはり,越冬世代に比べて小型で,色もややグリーン味が強くなります.この両者とも,オスがメスの前胸をつかんで立ち上がるので,オスメスともににピントの合う産卵写真の焦点面を探すのが難しい.ほとんどの場合オスがピンボケになってしまいます.
▲ホソミイトトンボの夏世代の産卵.メスが特に緑がかっている.
イトトンボ2種を紹介しましたのでつぎはヤンマの仲間.ヤンマは,ギンヤンマを除くと,この時期薄暗くて涼しいところが好きなものが多いです.まずはネアカヨシヤンマ.一昨日見つけたのですが,今日も産卵にやってきていました.波打つようなリズムで独特の飛び方をする産卵メス.産卵基質の朽木の上でホバリングしたかと思うと,さっと着地して基質を探ります.基質の固さや湿り具合などを見ているのでしょうか? なかなか気に入る基質が見つからないようで,神経質に着地しては飛び立ち,着地しては飛び立ちを繰り返します.気に入った基質が見つかると,長時間そこで産卵を続けるようです.
▲ネアカヨシヤンマの産卵.産卵基質が気に入らなかったらすぐに飛び立つ.
▲飛び立とうとする瞬間.肢が離れかけているのが分かる.
続いてヤブヤンマ.今日はヤブヤンマの活動も活発でした.オスが何度か産卵場所に入ってきて,丹念にメスが止まっていそうな木の枝をチェックしています.そして,ほかのトンボでも時々感じることですが,メスがやってくる前後にオスがうろうろするのです.今日も,私が産卵に入ったメスに気が付かず飛ばせてしまった後,オスが入ってきて丹念にメスを探す動作を見せまあした.オスは,メスがいないとわかると,木の枝にぶら下がってしばらく休みます.
▲メスを探し回って一休みするヤブヤンマのオス.
メスは様子を伺うように産卵場所に入ってきます.基質である湿土やコケの上でしばらくホバリングして着地します.こちらはネアカヨシヤンマと違ってあまりはずれがないようで,たいがい最初に着地したところで産卵を始めます.時々はすぐに場所替えをしますけれども...... 気に入った場所では,足元を中心に円を描くようにして産卵します.植物の茎に産卵するトンボでは,後ろや前に直線状に産卵位置を変えていきますが,ヤブヤンマは円形に産卵管を突き立てる場所を探します.
▲足元を中心に円を描きながら産卵を続けているヤブヤンマのメス.
最後は秋の気配といいますか,リスアカネの産卵です.リスアカネとネキトンボはアカトンボであるにもかかわらず,7月から産卵をしています.まだ若いが成熟したオスが林内の暗い所にひっそりと止まっています.時々飛び立ってはホバリングしてようすを伺っています.
▲林内に止まるリスアカネのオス.本当に暗いところに止まっている.
ヤンマを待つ私の横で突然リスアカネの産卵が始まりました.7月の産卵は目撃したことはありましたが,私にとって写真記録は初めてではないかな.リスアカネは11月下旬でも産卵していますから,実に4か月間も産卵を見ることができる,ある意味すごいトンボです.4か月間あるいはそれ以上の期間産卵がみられるトンボというのは,1年に複数世代出現するトンボではありますが,おそらくリスアカネは年1世代です.
▲リスアカネの連結打空産卵.7月に産卵をしているのだ.
▲メスを放し,上空から警護飛翔するリスアカネのオス.
▲放されたメスは単独で打空産卵する.
連結していたオスはメスを放した後,そばを飛翔しながらの警護産卵に切り替えました.写真に撮るこちらの方が暑さにやられそうで,この続きはまた次回に.