この時期のトンボ観察といえば,だいたい林の中に潜り込んで,涼しい場所にやってくるヤンマやサナエトンボ,エゾトンボなどが例年の観察対象になっていました.最近ホームページの大改訂を始めていて,そんな中で,極普通種のアオモンイトトンボの観察記録が少ないのに気づきました.「ネコまたぎ」ならぬ「トンボ屋またぎ」の種といえるアオモンイトトンボ.今から10年以上も前に集中的に観察したきりです.
▲オス.午前中交尾になれなかったオスである.夏世代のようで少し小さい.
さて,アオモンイトトンボといえば,夏の代表的なトンボです.もともと南方に分布中心がある種で,亜熱帯の島々にも広く分布しています.暑さに強いトンボなのです.午前中,観察場所を決めることを兼ねて,家の近所の池を2か所回りました.2か所ともアオモンイトトンボの交尾交尾交尾状態でした.8時過ぎでしたが,草むらをかき分けて進むと,たかっていたハエが飛び立つがごとく,アオモンイトトンボの交尾態が次から次へと飛び出してきます.
▲異色型との交尾.
▲雄色型メスとの交尾.
▲まだ若干未熟色が残っているメスとの交尾.
▲雄色型(黒化して前肩の淡色部が見えない)メスとの交尾.
▲交尾のツーショット写真.
単独で止まっているメスが全然見つからないほど,ほとんどのメスが交尾されているような感じでした.オスは時々単独のが飛んでいて交尾のペアにちょっかいをかけたりしています.「ああ,こいつはメスを見つけることができなかったんだな」と同情したくなるような状況でした.アオモンイトトンボの交尾は非常に長時間です.したがいまして,午前中は午後の産卵観察池を決めていったん帰宅しました.
午後2時,現地に入りました.池の岸に立つと,産卵をしているメスがあちらこちらに見られました.午前中あれだけの数交尾していたら,見つけるのはたやすいと思っていましたが,着いて即ミッション完了という感じでした.
▲雄色型♀の単独植物内産卵.前肩の淡色部が細くなって黒化しているタイプ.
▲異色型のメスの単独植物内産卵.
▲雄色型の単独植物内産卵.
▲浮草の葉裏に産卵する異色型のメス.
午後の日が射し,気温は33℃(車の外気温計).真夏の日を受けて,日陰に入ることもなく,炎天下での産卵活動.いやはや,本当に彼らは夏に強い.夏のトンボの面目躍如という感じでした.
最後にちょっぴり面白い2題.まずは肛門からハリガネムシを出しながら活動していたオス.はじめこれは雄色型のメスかと思っていました.というのは腹部先端を植物にこすり続けるような動きを続けていましたから.きっとくすぐったいというかかゆいというか,変な違和感があったのでしょうね.このハリガネムシぐにょぐにょ動いていて,だんだんと腹の中に戻っていきました.ちょっと気持ち悪くてごめんなさい.
▲ハリガネムシが出ているオス.
もう一つは蜘蛛を食べるメス.トンボって蜘蛛に食べられる昆虫ですが,小さな蜘蛛は逆にトンボの餌となります.アオモンイトトンボは結構獰猛なんですね.他のトンボを食べているのもときどき見かけます.
▲蜘蛛を食べるメス.産卵途中でもやはり食欲優先か….
とても暑い午後の観察でした.やっぱり涼しい林の中がいいですね.明日はヤンマの観察に行こう…