トンボ観察記
No.521. ヒメクロサナエの観察.2016.5.21-22.

5月も中旬を過ぎました.この時期になってくると,ムカシトンボに後れを取っていた源流域のサナエトンボの活動も本格化してきます.ということでこの週末は,ヒメクロサナエの観察を行いました.ヒメクロサナエは例年ですともう一週間ほど遅い方がいいのですが,今年はややトンボの推移が早いと感じていて,やや早めたのが的中しました.以前はヒメクロサナエにはかなり手こずっていたのに,産卵ポイントを見つけてからは年中行事化しつつあります.

0521-01▲ヒメクロサナエのオス.流れに降りてきてもすぐにまた飛び去ってしまう.

21日は9:30ころに現地に入りました.まだトンボの姿はありませんでしたが,10時30分を過ぎたころ,ヒメクロサナエが産卵に来ました.

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0521-05▲産卵に入ってきたヒメクロサナエのメス.場所を探して移動しているところ.

腹部先端で産卵しようとする基質を探り,場所を決めているようです.気に入らなければ少し飛んで移動します.上の3枚は,飛来して目で場所を探し,2か所ほど腹部先端で探っているところです.これは短時間で場所替えをして,下の写真の位置で本格的に産卵を始めました.一度場所を決めたらそこを動かず,最後まで卵を出し切るようです.

0521-06▲ヒメクロサナエの静止接水産卵.石の間に腹部を差し込んで産卵することが多い.

ヒメクロサナエの静止接水産卵は石の間に腹部を入れて産卵することが多く,なかなか腹部先端が接水しているところが記録できません.

0521-07▲産卵基質をまさぐるメス.このメスはすぐに飛び去ってしまった.

この後しばらくは産卵に来る個体がありませんでした.12時過ぎに次のメスが入りました(上の写真).しかしこれは,すぐに逃げて行ってしまいました.何か気配を感じられたのかもしれません.今日はビデオ撮影もしたかったので,いいチャンスを待ち続けました.13時過ぎに,そのチャンスが来ました.

そのあと14時過ぎにもやってきました.これはビデオとスチルの両方で撮りました.

0521-08▲腹部をまっすぐに伸ばして,ぎりぎり基質に届く状態での産卵.

腹部先端が水面というか水底に届かないので,腹部をまっすぐ下に伸ばしての産卵でした.結構苦労して産卵していたようです.産卵が終わると流れの上の樹木の葉上に上がって休息をとります.産卵は相当に疲れるのでしょうね.

0521-11▲産卵後,流れの上の葉に止まって休息するメス.

オスは時々流れに降りてきますが,なかなかメスを見つけられないようですね.

0521-02▲メスの産卵していた場所のすぐ近くに降りてきたオス.

この日はこれで終わり,翌日22日も続けて観察に入りました.22日は風が強く,空気も冷たくて午前中はほとんどトンボの動きがありませんでした.メスが10時過ぎに入ってきましたが,カメラのライトに驚いて逃げてしまいました.午後になって暖かい風が吹き始め,やっと落ち着いて産卵したのが13時30分頃に入ってきたメスでした.この後にもすぐにもう一頭入ってきて,産卵というのは一時に重なる感じがします.

0522-01▲ヒメクロサナエの産卵.腹部先端が基質と接しているのが分かる.

まとめをすると,現地でのヒメクロサナエの繁殖活動は,朝は10時ころから始まり,午後2時半頃まで続くようです.これ以降の観察をしていないので,もっと遅くにやっている可能性はあります.産卵は10時半前後と13時半前後に集中していました.