フタスジサナエ,オグマサナエ,タベサナエと一通り出現状況を観察しました.コサナエ属残りの一種,コサナエが先週1頭だけ池に顔を現していたので,今日は兵庫県北部へそれを見に行くことにしました.先週水が少なかったので,うまくいけば産卵を撮影できるかもしれません.
高原の水田の土手には,黄色の花がびっしりと咲いていました.名前がわかりません.現地の池の周りを歩いてみるとあちこちからコサナエが飛び立ちます.まだ朝の9時半ころで気温も22℃程度というところなのですが,これくらいの気温が彼らには合っているのか,とても元気に飛び回っていました.また現地に着いた時,1頭のメスが,水面からかなり高い位置で産卵をしているのを見ました.今日は満水状態で,先日の水位の低さは,水の濁りをとるのを目的に,コイを退治するために人為的に落とした結果だそうです.
オスは,結構広い範囲を縄張りにしているようで,一か所に止まるというより,ある範囲内であればどこでも止まるという感じで,パトロールのため時々飛び立っていました.池の岸には桜の木が植えられています.そのあたりを歩いた時に,メスをつかんだオスが止まるのを目撃しました.ラッキーでした.コサナエの交尾を観察することができました.かなり風が吹いているのに,コサナエのオスは葉にしがみついて交尾を継続していました.最後にメスを離して,メスは飛び去っていきました.
ところで,この池で,とても興味深いものを見ました.これが今日の一番のニュースかもしれません.次の写真を見てください.
これはもう間違いなく白濁型の翅をもつカワトンボです.縁紋の形状からニホンカワトンボだと思われます.翅の一部しか白濁していませんが,紛れもなく白濁しているのが分かります.時々こういった表現型が出ることがあるということをどこかで聞いたような気がします.網がなく,またこの個体は結構敏捷だったので,採集できなかったことが悔やまれますが,記録としてはかなり珍しいものになるのではないでしょうか.今シーズン,もう一度来てみたいものです.そうそう,池に来たのが不思議かもしれませんね.この池にはけっこう流量のある流れ込口があって,ニホンカワトンボのオスが縄張りを持っています.
さて,コサナエの産卵は,岸から急に深くなっているこの池では撮影が難しいこともあり,そこそこで引き上げることにしました.今年は源流域の観察を濃くやっています.そこで先週に引き続き,ムカシトンボを見に行くことにしました.その前にちょっとヒラサナエの様子をのぞきました.オスメスは成熟個体が増えていましたが,まだ羽化直後という個体もいました.今年は結構長い期間羽化しているようです.湿地が乾燥化している傾向があるせいかもしれません.
ムカシトンボはまだ飛んでいませんでしたが,ヒメクロサナエが1頭だけ降りて来ていました.ただ,例によってストロボ一発で逃げていきました.この後を含めて,あとオスが1頭と,メスが産卵に降りてきました.ただ,産卵はこちらが驚かせたため,葉の上に止まったのを撮影しただけにとどまりました.
今日もポイントを決めてムカシトンボの産卵を待つ作戦にしました.先週来た時にちょうど適した産卵植物を見つけていましたが,残念ながらすでに産卵されており,茎もだらしなく曲がってしまっていました.そうこうしているうちに,オスが飛び始めました.流れの上を行ったり来たりして,すばしこく飛んでいます.
午後になると,執拗にメスを探すしぐさが顕著になりました.産卵植物一本一本を丹念に調査し,メスが止まっていないか探しています.私がこれと思って目をつけている産卵植物の周りには,特に何度もオスが入ってきてつつくように飛んでメスを探します.
私の産卵植物を見る目もムカシトンボに負けないくらいのものだ,などと自画自賛していると,メスが入りました.このメスはジャゴケのようなものに止まったように見えましたので,近づいていきますと,またやってしまいました,石につまづいてバシャ!.メスが逃げてしまったのは言うまでもありません.その後3度ほどメスが来ました.でも今日はオスの数が結構多くて,すぐにオスに見つけられて連れ去られてしまいます.そんな瞬間だけを一例撮影できました.
これが今日の唯一の成果というところです.まあ,産卵より写真に撮るのは難しいかもしれませんね.午後3時過ぎまで観察を続け,オスはまだ飛び回っていましたが,今日はこれで終わりにしました.今日は飛ぶオスを撮影したのでずいぶん疲れました.これ,知らぬ間に息を止めて,ものすごい集中力でファインダーを覗き,マニュアルでフォーカスを合わせ,反射的にシャッターを切るので,10分もするとくたくたになります.特にムカシトンボはほとんどじっとせずすばしこく飛び回ってばかりですから.これを今日は3時間くらい続けていました.まあしかし,成果は出たので,報われた気はしました...