新 トンボ歳時記
No.384. コオニヤンマの産卵 2012.8.4.

今日は,先週数が少なかった,オナガサナエの産卵をもう一度見に行ってきました.結果は,3時間で2頭だけ,どうやら今年は個体数が少ないようです.オスの姿も全くありませんでした.トンボのような昆虫は,さまざまな要因で個体数の年変動があるのは普通のことです.産卵に来ている個体があるので,また来年数が増えるかもしれません.

さて,オナガサナエを待つ間,ひそかに期待していたのは,コオニヤンマの産卵でした.コオニヤンマというのは,かなりの上流から水量が非常に豊かな下流にまで,およそ川と名が付けばどこでも見られると言ってよいほど,あちこちで姿を見ることができます.それだけに,産卵ポイントがつかみにくく,偶然の出会いを期待するしかないような所があります.ただここは,去年も2回コオニヤンマが産卵に来ていますので,期待はできます.

オスは,流れの石の上に止まって,メスを待っています.このオスは,最終的には,産卵メスをつかまえて飛んでいき,交尾に至ったと思われます.

オナガサナエが1頭産卵に入ったすぐ後,9:46に,私の座っているすぐ横にコオニヤンマのメスが産卵に入りました.ツルヨシが少し大きな岩のまわりを取り囲むようにしてできた空間に入って,産卵をしていました.ここは前回来たときにはオナガサナエが産卵に入ったところです.メスの考えることは似ているのですね.

産卵行動をよく見ていると,腹端の先から,朱色の卵があふれるように出てきて,ぱらぱらと落ちているのが見えました.何とかこれを記録しようと頑張ってみましたが,落ちる瞬間は撮ることができませんでした.コオニヤンマは卵塊をつくった後打水して放卵をすると図鑑には書かれていますが,この個体はまったく打水することなく,最後まで空中から放卵する産卵方式でした.私は打水産卵をするコオニヤンマを見たこともありますし,広瀬ら(2007)には,打水した瞬間の写真が掲載されていますので,打水産卵があることは間違いありません.しかし,どの図鑑にも空中から放卵するという記述がありません.それゆえ,卵が落ちる瞬間が撮れなかったのは残念です.ただ,打水していないことは,下のどの写真においても,卵塊に水滴がついていない乾いた状態であることでお分かりいただけるでしょう.

コオニヤンマの産卵はこれ1回だけでした.オナガサナエも写真に撮れたのは1頭だけ.あとの1頭は,写真にはなりませんでした.12時ころまで待ちましたが,もうやってきそうにないので,ヤンマを見に,移動することにしました.


さて,先日ネアカヨシヤンマに接近遭遇した森にやってきましたが,時間が中途半端で,ヤブヤンマが産卵したそうに入ってきた他は,全く何の変化もない状態でした.この池では,ウシガエルの大きいのがいて,ヤンマが産卵に降りてきそうな所でじっと待っていました.

この外来種はトンボを減らしていますね.このウシガエルのなかまは,池の中央で,産卵するキイトトンボを食べようと次々にジャンプしていました.さて,あまり大したことがないので,山道を歩いてみましたら,カトリヤンマのメスに出会いました.先日はオスで今日はメス,なかなかついているようです.このメスはまだ尾毛が切れていませんね.秋に産卵する個体では,この尾毛が切れて短くなっているものが多いのです.

夕方になって少し山道が暗くなってきますと,オニヤンマが活発に活動を始めました.メスを探してパトロール飛翔を始めました.

メスも産卵したげによく飛び回りますが,産卵はしません.オスもこの時間帯にメスが活動をするのを知っているようですね.いやはやたいしたもんだ.

最後暗くなるまで頑張ってみましたが,黄昏飛翔はあまり大したことがなく,帰ることにしました.ところが,車を止めているすぐそばの水田の上を,ヤブヤンマとギンヤンマが,蚊柱のように飛び交っています.こんな所に集まっていたのですね.

黄昏飛翔は摂食飛翔ですから,結局は餌昆虫が集まるところに,最終的には集結するようです.ところで,このヤブヤンマの写真に写っているメスですが,複眼や腰の部分が水色に見えます.これはオスの特徴です.しかし腹部横の黄色のスポットの並びはメスの特徴です.オス型のメスとでもいえそうな感じですね.

今日は長い一日でしたが,堪能できました.


<参考文献>
広瀬良宏・伊藤智・横山透,2007.北海道のトンボ図鑑.いかだ社.東京.