新 トンボ歳時記
No.339. キトンボの生き残り調査 2012.1.14.

今日は朝から曇り空が続き,気温も上昇せず,行くのがためらわれる状況でした.お昼頃にほんのちょっと青空が出てきたので,ダメモトで出かけてきました.

サイトBと空模様

現地もやはり曇り空.今日は温度計を持っていったのですが,気温は7℃でした.こんな寒いときでもユスリカは元気で,蚊柱をつくって舞っています.彼らには冬というものがないのでしょうかね? ユスリカは池岸にもたくさんいて,キトンボは時々飛び上がって降りてくるような動作をしますから,これはきっとエサになっているのでしょう.このサイトBは,キトンボが冬を生きのびるための大切な条件の一つがクリアされているような気がします.

7℃でも平気なユスリカの蚊柱

まあこんな状態ですから,たとえ生き残っていても,出ては来ませんね.キトンボは見つかりませんでした.池岸をキトンボの遺体がないか探して歩きました.遺体は見つかりませんでしたが,オオヤマトンボの羽化殻の残骸を見つけました.

オオヤマトンボの羽化殻の残骸

きっと7月ころのものだと思いますので,結構長い間残るものですね.そのうちちょっと雲が切れて日が射すようになってきました.温度計を持って行っていたので簡単な実験をしました.日が陰っているときと日が当たっているときではどれくらい地面付近の温度が違うか,キトンボがよく止まるような垂直に近い石の面に温度計を置いてみました.

日当たりの温度上昇実験

結果は驚きです.日が射す前は10℃でしたが,日が当たると1分もしないうちに14℃まで上がってしまいました.日はすぐに陰ってしまうので,どれくらいまで温度が上がるかは分かりませんでした.これだと,キトンボも,体温がすぐに上昇して飛べるようになりますね.この年末から年始にかけての観察で,キトンボは夜の低温にはかなり耐えているように感じます.ですから昼間日が射して飛べるようになり,エサを採って栄養さえ補給できれば,結構生きのびると考えられます.冬型でもいいので安定して晴れるということが生きのびるのに大切な気がします.曇りで温度が上がらない日が続き,エサの補給ができないと弱っていくのかもしれません.「没姿のしくみ」なんていうと変ですが,寿命以外で消えていく原因については,今回の一連の観察でなんとなくイメージができてきたように感じます.