写真を集中的に撮り始めてから約3年,今まで探しにいってもすべて空振りだったハネビロエゾトンボにやっと出会えました.ここは以前から記録のあるところであり新産地ではありませんが,この2年間はまったく姿を見ることがありませんでした.今年やっと出会うことができました.
▲ハネビロエゾトンボが飛ぶ場所の風景.
ハネビロエゾトンボは,湿地の周辺や林内の細流の上を,ホバリングしながらなわばりを持ちます.手が届きそうなくらい目の前を,恐れもせずに飛びますので,捕獲はいとも簡単です.それゆえ採集圧は厳しいものがあるでしょう.そういうわけで市町村名も伏せておきます.
▲オスのなわばり飛翔.
私が到着したのは10時過ぎでした.すでに2頭のオスがなわばりを形成していました.じっと観察していると,メスが産卵しそうな水際を,丹念に探しながら,水面上10〜30cmくらいの所を,長い停止飛翔をしながら,少しずつ移動していきます.そこにもう1頭入ってきましたが,この場所は2頭が精一杯のようです.3頭がなわばりを形成することはありませんでした.
メスが入ってきたのは,最初は10:30ころです.私の足元に入ったので,近すぎてカメラが向けられないほどの所でした.しかしこれは,あっという間にオスに追われて逃げてしまいました.でも産卵意欲のあるメスがいたことがはっきりしたので,これは必ず戻ってくると信じて待つことにしました.しかし1時間以上待っても,メスは入ってきまん.
▲懸垂静止するオス.左後翅の破れ方から,違う個体であることが分かる.
オスの方も疲れてくるのか,11:30ころには静止するようになりました.オスも持久戦に持ち込んだようです.私の方も少し諦め感が漂い始めました.12時近くなり,どうしようかと思っていたときに,突然メスが入りました.オスは気づきません.これ幸いと,私がこのメスを独占しました.
▲2回目に入ってきたメスの産卵.
私の方は気合いは十分で,かなりピントがあった写真も撮れました.このメスは約5〜6分間産卵を続けてくれました.撮っている私の方はそんなに長いとは思いませんでしたが,メスがいなくなったとき,どっと疲れが来ました.ピントを合わせるときおそらく息を止めているので,かなりハードな「運動」になっているようです.
撮れた写真を確認していると,目の前で交尾態になったカップルが飛び立ち,メスが入ったのを見逃しました.ちょっと集中力を欠いているようです.そして続いて4回目のメスがすぐに入ってきたのですが,こちらはほとんどピンぼけでした.もっともこちらは途中でオスに見つかり,またもや連れ去られてしまいました.このメスをつかむときのオスは面白い行動をしました.メスが産卵しているのを,目の前でじっと前後に揺れながらホバリングして見ているのです.「来た来た」と言っているような,滑稽なしぐさでした.このオスはメスをつかんだあと,飛びながらすぐに移精行動を行い,高いところへメスを連れ去りました.
空腹になってきたのと集中力が切れたので,昼食に行くことにしました.車で移動し,少し離れた,クーラーの効いたうどん屋できつねうどんを食べ,リフレッシュしたところでもう一度現地へ戻りました.小一時間くらい経ったはずですが,現地へ戻るやいなや,メスが続けて2回産卵に入ってきました.
▲5,6回目に産卵に入ったメスの産卵.
気合いは十分ですので,また何とか写真が撮れました.でもこれを撮りおわると,もうくたくたになってしまいました.時刻も2時を過ぎ,これで終わりにしました.