トンボ歳時記
No.287. オオイトトンボの観察の付録(2). 2011.7.17.

トンボ科のトンボは,いわゆる夏の普通種,シオカラトンボ,オオシオカラトンボ,ショウジョウトンボ,コフキトンボなどがいました.コフキトンボは,池の杭に抜け殻がたくさんついていて,昔の風景を彷彿とさせます.今でもこんなふうにたくさんのトンボが,何の変哲もない休耕田のような池(オオイトトンボの二つ目の観察池の写真参照)で繁殖できるわけですから,農薬の影響は非常に大きいと言わざるを得ません.

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▲コフキトンボ.
 上:日向の個体は腹部をだらんとさせていた.
 中:多くの個体は,池から離れた林縁の日陰に避難をしていた.
 下:こんな杭が無数にある.オオイトトンボの二つ目の池の杭に沢山ついている.

コフキトンボはこの季節は夕方に繁殖行動を行うようです.今は休憩時間なのでしょう.次に多かったのはショウジョウトンボ.しょっちゅうメスが入ってくるのですが,オスが追いかけ回して,とても写真になりません.多すぎるのも困るんですね.ショウジョウトンボの打水の瞬間ですが,これだけ深く水をかいていると,相当な重労働であることが分かりますね.オスに追われながらこれだけのことをするメスは大変です.

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▲ショウジョウトンボ.
 上:杭に止まって腹部挙上姿勢.
 中・下:単独打水産卵をしているメス.

イトトンボ科では,キイトトンボがいました.ちょうどオスがメスを見つけた瞬間に出くわし,移精行動が写真に撮れました.これだけは偶然のチャンスに出会うしかないのですね.交尾も観察できましたが,その後どこかへ行ってしまい,産卵を見ることができませんでした.ここのキイトトンボの産卵個体は敏感で,近づくことができず,今日は写真になりませんでした.

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▲キイトトンボ.
 上のオスがこの直後,メスを見つけて以下の移精行動,交尾と至った.

あと,アジアイトトンボが見られました.オオイトトンボもアジアイトトンボも少し小型で,2化目の個体のような感じでした.アジアイトトンボは,交尾と単独産卵を観察できました.他のイトトンボはだいたい連結で産卵するのに,モートンイトトンボ属とアオモンイトトンボ属だけは,なぜメスが午後に単独で産卵するという戦略を採っているのでしょうね?

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▲アジアイトトンボ.上:交尾,下:単独産卵.

さて,不思議とチョウトンボがいなかったのです.今年は夏の普通種をきちんと撮る(といいながらシオカラトンボをはずしている)ということを目標にしています.


ということで,ずいぶんと楽しませてもらいました.帰りにヒヌマイトトンボの産卵を見に行きましたが,30分も探すともう暑さでふらふら.今日はそれで切り上げました.

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▲帰りに観察に立ち寄ったヒヌマイトトンボ.緑型のメスもいた.