さて,今日はオオアオイトトンボの羽化に出会いました.たくさん羽化していて,池のまわりには,未熟な成虫がひらひら飛んでいました.
▲羽化しているメスのオオアオイトトンボ.
さて,羽化の観察紹介とともに,羽化に関する議論が必要だと感じました.カワトンボ科のトンボは直立型で,後半倒垂型のようにふるまうということを,アオハダトンボの羽化の観察で確かめました.後半倒垂型のようにふるまうというのは,懸垂姿勢をとり,翅全体が一様に伸びることからそう述べています.
しかし,先日「原色日本トンボ幼虫成虫大図鑑」のシコクトゲオトンボの羽化の写真(杉村氏撮影)を見たとき,一つのことに思い至りました.シコクトゲオトンボは明らかに直立型の羽化をしていますが,翅の伸び方はカワトンボ科と同じく,全体が一様に伸びているものだったからです.均翅亜目の羽化については,再検討して整理することが必要ではないかと考えています.
▲オオアオイトトンボの羽化は間違いなく直立型である.
左:静止期,右:腹部を抜き去る直前.
さて,今日現地に着いた時には,オオアオイトトンボはほとんどがもう懸垂姿勢で翅が伸びきっていました.しかしラッキーなことに,1頭だけ,直立姿勢で静止期の状態にある個体がいました.上のことがあったため,これを継続観察することにしました.直立型か倒垂型かは,この静止期の状態で定義されますから,オオアオイトトンボは疑いもなく直立型の羽化をしているといえます.
▲オオアオイトトンボの翅の伸張過程.
ほどなく腹部を抜き去り,翅の伸張過程に入りました.写真の通り,全体が一様に伸びています.カワトンボ科と同じで,後半はほとんど懸垂姿勢といってよく,翅も真下に伸びています.イトトンボ科やモノサシトンボ科についてはどうなのでしょう.こちらは,少しちがうかもしれません.クロイトトンボなどは,浮葉植物上に水平に羽化殻が付いていますから...
▲ヒメコウホネの葉上に着いているクロイトトンボの羽化殻.2007.5.3.撮影
このような位置で羽化すると,懸垂姿勢は取ることができません.一度しっかりと観察をしてみる必要がありそうです.