トンボ歳時記
No.260. 神戸のヒメクロサナエ & ムカシトンボ. 2010.6.4.

今日は朝から曇りがちだったのですが,天気予報は晴れ.それを信じて,2週間前に羽化殻を見つけたヒメクロサナエを探しに出かけました.

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▲現地の流れのようす.

先週の台風の影響でしょうか.木の枝が緑の葉をつけたまま,たくさんあちこちに散乱していました.水も増えていて,ふだん伏流しているところも,ゴーゴー音を立てて流れていました.こういうときはポイントが絞りにくいので困ります.そこで,2週間前ムカシトンボを撮影したポイントで粘ることにしました.うまくいけばムカシトンボもまだ生き残っているかもしれません.

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▲たった一頭だけ現れたヒメクロサナエ.
 上:ストロボを焚いたら樹上へ逃げてしまった.この状態で1.5時間も...
 中:たった一枚の接近写真.
 下:樹上をひらひら飛び,近くへ止まる.その瞬間.

現地について1時間以上,通り過ぎた1頭のアサヒナカワトンボを除いて,まったくトンボの姿がありませんでした.約1時間30分くらい経ったとき,ひらひらとヒメクロサナエが舞い降りてきました.でもストロボを一発焚いただけで,樹上へ逃げてしまいました.こうなったら根比べですが,このヒメクロサナエ,未熟なのでしょう.その後1時間以上経っても,じっと同じ所に止まっていました.結局降りてくることはなく,樹上に止まっている写真を撮っただけでした.

ヒメクロサナエが降りてくるのを待っているときに,ムカシトンボが産卵に入りました.

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▲ムカシトンボの産卵.今回は流畔のフキの茎に産卵している.
 上:流畔のフキに取り付いて産卵をするメス.
 中:こちらをにらみながら産卵を続ける.
 下:産卵痕が見える.産卵しながらだんだんと上に上がっていく.

このムカシトンボは老熟していると見えて,複眼が青灰色に透き通っています.前回の若い個体は白く光っていました.そしてなにより今回はフキの茎に産卵してくれました.ウワバミソウ,ジャゴケ,そしてフキ,まあ,今年は色々な産卵植物に産卵するムカシトンボが撮影できました.この点はとてもついているといえますね.

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▲老熟ムカシトンボの産卵.
 上・中:葉脈にまで産卵する.茎の産卵痕が上端まで付いているのが分かる.
 下:端まで来ると,産卵をやめて動かなくなった.

ムカシトンボは,一度産卵が行われた茎には産卵をしないようです.実はこのフキの別の茎には産卵痕がびっしりとありました.だからかどうかは分かりませんが,茎の上端まで行った後,飛んで移動せずに葉脈にまで産卵をしていました.そして葉の端まで行くと,産卵をやめてじっとしました.しばらくしても動こうとしません.そこで,捕まえてみようと網をかぶせると,ぽたりと落ちました.最後の力をふりしぼって産卵をしていたようです.神戸ブランドのこのムカシトンボ,記録にとるために,標本にすることにしました.


さて,13時前まで待ちましたが,今日のねらいのヒメクロサナエはその後気配すらありません.そこで,今日はここまでとし,ムカシヤンマを見に行くことにしました.

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▲上:ムカシヤンマ,中:ヤマサナエ,下:シオヤトンボ
 一番下は溝川にできた水たまり.

ムカシヤンマはオスはいましたが,産卵などの行動はまったく見られませんでした.その他に,ヤマサナエの未熟な個体が2,3頭,そしてシオヤトンボは繁殖活動をしていました.他にタベサナエが2頭いました.

湿地から出ている溝川の一部が水たまりになっていましたので,幼虫を探索しました.タベサナエとシオカラトンボがいただけでした.