トンボ歳時記
No.191. 続・オオシオカラトンボの観察. 2010.8.11.

ベニイトトンボの発見に気をよくして,ハネビロエゾトンボを求めて,次に神戸市内のとある湿地へ出かけました.ハネビロエゾトンボはおろか,エゾトンボもいず,オニヤンマすら飛んでいませんでした.神戸市内では,湿地やその細流に住むトンボが姿を消しています.いるところにはいるようですが,昔いたところに全く姿を見せません.本当にどうなっているんだろうと感じてしまいます.

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▲今日2番目の観察地.

湿地にいたのはオオシオカラトンボとシオカラトンボでした.このうちオオシオカラトンボが交尾した瞬間に出くわしました.一昨日に続いてのオオシオカラトンボの産卵の撮影ができそうです.こういうのはできるときに貪欲にやっておくこと,これが鉄則です.

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▲交尾から産卵開始までのオスメスのやりとり.
 上:交尾するカップル.
 2・3段目:交尾後オスはメスが逃げないように寄り添う.メスはいったん静止.
 4・5段目:産卵を始めたカップル.

交尾は5分ほど続くはずなので,しばらく待つことにしました.台風の影響で雲がめまぐるしく動き,陽が差したり陰ったり,撮影の時に陽が差すように,と祈りながら待ちました.

やがて交尾が終わりました.メスはすぐには産卵を始めません.隙あらば逃げ出そうというような動きをします.オスは上から体当たりをしてメスを逃がさないように囲い込みます.メスはとりあえずいったん静止しました.静止したメスのまわりをオスはせわしなく飛び回り,メスに近づいて産卵を促します.このあたり,一昨日の観察と全く同じ動きでした.

やがて,メスは産卵に飛び立ちました.オスはメスに寄り添って,産卵を始めるまで気を緩めません.

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▲産卵のための飛翔.

メスは少しずつ移動しながら産卵を始めました.メスが産卵を続けると見るや,オスはメスから少し距離を置くようになりました.一昨日は打水−飛水の瞬間がうまく撮れなかったので,今日は,打水するあたりを予想して,そこにピントを合わせてシャッターを切り続けました.これをやると失敗が多くなりますが,決定的瞬間をねらうにはいたし方ありません.

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▲打水−飛水の瞬間.
 上・2段目:打水の瞬間.水が前に飛び始めている.
 3段目以下:前方に飛ぶ水の飛跡.

よく写っていたのは数枚でしたが,水の飛ぶ様子がはっきりととらえられました.まず,腹部第6節くらいまで水に沈むように深く打水します(2段目左).そして前方に向かって少し上昇するとき,水が前方に飛び始めます(上・2段目右).腹端が水から離れるころには,膜状につながっていた水が水滴に分離し,放物線の軌跡を描くように並びます.後方から見ると,メスは飛ぶ水の軌跡を見て確認しているように感じてしまいます(下).

後記:産卵を始めたら日が陰って,ISO感度を極端に高く(ISO3200)しました.このカメラそれでもノイズがあまり目立ちません.最近のデジカメはすごいですね.