■見分けのチェックポイント
羽化殻全長18mm前後.高崎(1959)によると,背棘には変異があって,小さな隆起はあるものの背棘が全くない個体から明瞭な背棘が第4−8腹節にあるものまで,さまざまであるという.第9腹節にはない.下にいくつかの例を示した.a.は明瞭なものは第4腹節だけに,b.は第4−7腹節に,c.は第4−8腹節に背棘がある.側棘は第8,9腹節にある.第8腹節の側棘は第9腹節の末端にちょうど届く程度かやや短い(図のa≦b).第9腹節の側棘は第9腹節の長さとほぼ同じまたはより長い(図のb≦c).側刺毛は12本のものが多く,13本の場合は基部の1本が小さい(右図).腮刺毛は15−17本で16本のものが多い.下唇側片上の褐色斑は,はっきりと存在するものもあるが,わずかの小点しかないものもある(右図).
■分布と類似種
福島・新潟県以南の本州・四国・九州,および周辺の離島に分布する.
ネキトンボは背棘数の安定性がないことと,第8腹節の側棘の長さにも変異があるため,他のアカネ属との判別に迷うことが多い.以下に注意して同定すること.キトンボとオオキトンボとは,ネキトンボには第9腹節に背棘がないので区別できる.第4−8腹節に背棘のある場合,アキアカネとの区別が難しくなるが,第5−7腹節側縁に白っぽい斑紋がはっきりと見られるのがネキトンボである可能性が高い(図の矢印).第8腹節の側棘が短い個体は,タイリクアカネやコノシメトンボと区別が非常に難しくなり,決め手に欠けることがある.おまけにコノシメトンボにも背棘数に変異が見られる.この場合も,腹部各縁の白っぽい斑紋が有力なヒントになることが多い.それ以外のアカネ属とは,ネキトンボのサイズがひとまわり大きくなるので,並べて比較すると判断できるであろう.
■生態
樹林がそばにある山地・丘陵地の,水がきれいな池に多く見られる.沈水植生があると,成虫は非常に多く集まってくる.沈水植生の上で打水産卵することが多く観察される.アカネ属では珍しく幼虫で越冬する.成虫は6月には繁殖活動をしている.その後,10月まで繁殖活動が見られる.