■見分けのチェックポイント
羽化殻全長27mm前後.腹部全体がだ円形をしており正中線に沿って腹背部が大きく盛り上がる.腹部腹面は平らである.背棘は腹部第2節から第9節に存在し,第6節以降のものは稜状を呈している.側棘は腹部第7,8,9節に小さなものが存在する.下唇前基節は短い.下唇側片の内葉片は先端部が尖っているものの鋭くはない.触角第3節は棒状をしている.若齢幼虫は腹部後縁部がやや角ばっている.
■分布と類似種
分布域の北上がよく話題にされる.現在山陰地方では島根県,関東地方では千葉県にまで太平洋沿いに分布が拡大している.鳥取県及び兵庫県北部にはまだ進出していない.南西諸島には広く分布している.記録がある島については地図に記載したが,これ以外の島々にも生息している可能性は十分にある.特徴的な形態をしており,類似種はいないので,同定上問題はない.
■生態
さまざまな水域に幼虫は見いだされる.沖縄では2mX3mほどの防火用水槽にも幼虫が見いだされた.一方でウチワヤンマが生息するような大きなため池にも羽化殻がつく.どちらかといえば植生が豊かな池に多いようである.兵庫県南部では主に6月下旬から羽化が始まり7月中には終わる.沖縄では4月下旬に羽化が始まって,7月頃いったん終わり,しばらく間をおいて8月にも羽化する個体が見られる.幼虫は岸近くの沈積物の中に潜って生活しているが,冬になると同じ場所では採集できなくなる.翌年暖かくなるとまた同じ場所で採れるようになるので,おそらく冬季には深みへ移動しているものと思われる.