ダビドサナエ属の各種は,見分けるのが非常に難しい.分布域も重なりが大きく,同定の参考にならない場合が多い.たちまち形態的特徴をもとに同定作業を進める必要が出てくる.
01.後頭角にある突起が,同属の他種より大きく突出している.・・・ヒラサナエ
− 後頭角に突起は存在するものの,ややふくらむ程度で大きく突出することはない.・・・02
var. ヒラサナエについては,筆者の手元にある兵庫県,滋賀県,富山県の各産地の標本すべてに顕著な突起がある.ヒラサナエ以外のダビドサナエ属各種・亜種にも突起があるので注意する.
a.ヒラサナエの頭部,b.ダビドサナエの頭部.
a.ヒラサナエの頭部,b.ダビドサナエの頭部.
02.触角が幅広く,円みが強い.・・・03
− 触角はやや細長く,円みは少ない.・・・04
var. 触角は見る角度によって人に感じられる形状の印象が異なってくるので,形態比較には注意する.相違は微妙なので,採集地の情報も参考にするとよい.触角の幅が広いa,bはそれぞれモイワサナエとヒロシマサナエである.ヒロシマサナエは分布が非常に局限されており,モイワサナエは東北日本を中心に分布しているので,これらが分布しない地域においては,04へ進めばよい.分布域の詳細については,それぞれのページを参照してほしい.
a.モイワサナエの触角,b.ヒロシマサナエの触角,c.クロサナエの触角,d.ダビドサナエの触角.
a.モイワサナエの触角,b.ヒロシマサナエの触角,c.クロサナエの触角,d.ダビドサナエの触角.
03.新潟県,長野県,群馬県,栃木県,茨城県より北の各道県に分布する.・・・モイワサナエ
− 広島県,岡山県,鳥取県,島根県に分布する.・・・ヒロシマサナエ
var. この2亜種については,形態的に区別できそうな相違点が見いだせなかったので,分布域によって判断するしかないであろう.それぞれの分布域はかなりの距離離れているので,同定上問題はない.
04.オスの場合は,肛上片上の突起物が小さい(a:青矢印).メスについては,腹部第9節の側棘長が短く第10腹節の半分以下である(槐ら,1994;a:赤矢印).・・・ダビドサナエ
− オスの場合は,肛上片上の突起物が大きく後方に突出している(b:青矢印).メスについては,腹部第9節の側棘長がするどく尖っていて長く第10腹節の半分以上である(槐ら,1994).・・・クロサナエ
var. 槐ら(1994)には,クロサナエとダビドサナエの♀の比較について詳細に検討がなされている.腹部第9節の側棘の形状や長さ以外にいくつかの形質を組み合わせて判断する方法が提案されている.
a.ダビドサナエの腹部先端背面,b.クロサナエの腹部先端背面.
a.ダビドサナエの腹部先端背面,b.クロサナエの腹部先端背面.