トップ写真の解説
産卵中のメスです.キトンボのメスとよく似た感じで,腹端を大きく開いています.そしてこれもまたキトンボと同じように,いったん水面をたたいて腹端に水を含ませ,岸辺の土壁に向かって,卵を含んだ水を飛ばして産卵します.もっともキトンボは水を飛ばすのではなく,岸辺の泥面を打つのですが....暗いところで産卵を見ることが多く,ピントを合わせにくい相手です.写真は打水の後,岸辺に向かって卵を飛ばそうとしているところです.
産卵中のメス.2016.9.4.
成虫
初夏に羽化をし,夏に成虫が出現します.秋には意外と速く姿を消します.未熟なときは,午前中,林縁や道路上を旋回して飛んで,摂食活動をしています.産卵の行動がユニークで,池岸にやってきて,まず岸に背を向けて一度打水し,次いで岸の方に向かってコケや土の上などに卵を飛ばします.オスはホバリングを交えて池の周囲を往ったり来たりしてメスを探しています.
オスのパトロール飛翔.2012.9.15.
幼虫
タカネトンボの幼虫は,山間の樹林に囲まれた池の,やや暗い場所で見つかることが多いです.時には湿地状の小さな水たまりでも採れることがあります.水底の落ち葉の中に潜り込んで生活しているようです.形態はエゾトンボやハネビロエゾトンボととてもよく似ています.タカネトンボは,羽化が近くなると,写真のように体が緑味を強く帯びるようになってきます.これはハネビロエゾトンボやエゾトンボには見られません.多くは亜終齢程度の齢期の幼虫で越冬しています.春に終齢へと脱皮します.成虫の出現期にも幼虫が採れるので,幼虫期は2年以上だと考えられます.
スタジオ写真.2011.6.12.