No. 917. 神戸のトンボ調査(9)2023.6.9.

今日も隙間時間を利用して,市内トンボワンポイント調査に出かけてきました.昼頃から薄曇りになり気温も上がってきましたので,トンボが飛ぶと思いました.市内であれば移動時間もかからないし,こういった突然の天気回復に対応できます.今日の狙いは普通種です.

最初は,アオモンイトトンボを見に行きました.以前は沈水・浮葉植生が非常に豊富であった市内の池です.今は抽水植生を除いて全く消えています.最初に出会ったトンボはコフキトンボでした.まだ羽化直後という感じです.


▲No.18:コフキトンボのオスとメス.まだ粉も十分吹いていない未熟個体だ.▲

一昨日コフキトンボを見に行きましたが,そこもまだ未熟な個体ばかりでした.今年は,早春のトンボは出現が早かったのですが,いわゆる春から初夏にかけて出現するトンボはいつもと同じか,やや遅れて出現しているように思えます.

狙いのアオモンイトトンボを探すべく,池堰堤の草地を歩いて行きましたら,嬉しいことにセスジイトトンボがいました.メスばかり4頭見つけました.オスは池面に出ているのかもしれません.この池は水際に下りるのが難しいので,メスだけの確認で我慢しました.


▲No.19:セスジイトトンボのメス.一番下の個体は成熟している.▲

セスジイトトンボは最近見かけにくくなっていますので,市内の池に残っていたことを嬉しく思います.もっともこの池はかつて沈水植生が豊かだった頃には,軽く3桁の個体数がいましたから,激減はしていますけどね.そしてさらにしばらく歩くと,アオモンイトトンボがいました.


▲No.20:アオモンイトトンボのオスとメス.▲

写真がピンボケしていましたが,成熟した個体も見られました.この池ではそれ以外のトンボの姿がありませんでした.やはりトンボ目の個体数は非常に少ないと言えるでしょう.

この池はこれくらいにして,別の観察場所に移動しました.市内にある森林公園です.


▲No.21:コシアキトンボのオス.▲

コシアキトンボはもう水面で活動を始めていました.本当にこのトンボはどこにでもいるトンボですね.池の中程に突き出ている枯れ枝の先には,ウチワヤンマのメスが止まっていました.


▲No.22:ウチワヤンマのメス.▲

家に帰ってこの写真をよく見ると,ウチワヤンマの下にイトトンボが2頭止まっているのに気づきました.少し拡大してみました.


▲ウチワヤンマの下に止まるイトトンボ.クロイトトンボ(左)と???.▲

左側のトンボはクロイトトンボですが,右側のトンボは明らかにクロイトトンボではありません.クロイトトンボ属ではあるようで,オオイトトンボ,セスジイトトンボ,ムスジイトトンボのどれかです.無理を承知でさらに拡大してみました.すると,眼後紋が目立たないこと,複眼の下部が青色をしていること,前肩条の中に淡色部が見られないことなどから,ムスジイトトンボであると判定しました.


▲No.23:ムスジイトトンボのオス.▲

さらに,ムスジイトトンボ,セスジイトトンボ,オオイトトンボの写真をいったんぼかしてからシャープネスをかけて,上の写真と同じような状態にして比較してみました.


▲わざとぼやけさせた処理をして比較対照を作製したもの.▲

このような処理をしても,セスジイトトンボとオオイトトンボは,眼後紋が見えます.しかしムスジイトトンボの眼後紋は不明瞭になりました.また背隆線上の黒条と前肩条の間の淡色部分の幅が,セスジイトトンボでは狭く上の写真はムスジイトトンボに近いです.オオイトトンボは腹部代8,9節の水色部分の背面に黒斑がありまが,上の写真ではそれがないように見えます.やはりムスジイトトンボが妥当だと考えます.まあ,機会があればこの池にまた調査に入って確認してみたいと思います.

ということで,普通種発見調査はまあまあというところでした.あとキイトトンボも目撃しています.神戸市内で23種撮影・確認完了.30~40種くらいまでは簡単にいくのですが,50種を超えるあたりからが大変です.オツネントンボ,オグマサナエ,ムカシヤンマは今年は逃してしまったことはほぼ確実です.サラサヤンマとヤマサナエもそろそろ危ないかな.やはり1年では無理で,来年も市内調査を続ける必要があるかもしれません.

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