No. 953. フタスジサナエの羽化.2024.4.25.

しばらく遠征旅行をしていたため,2週間ほど間が開いてしまいました.この3日間曇や雨だったのですが,今日は移動性高気圧がやって来て晴れ.コサナエ属の状況と,ホソミイトトンボがいないかを探しに行きました.

コサナエ属3種は,いずれも未熟な状態で,草原などを飛んでいました.その中でフタスジサナエの数が少ないと感じていましたが,池をのぞいてみると,今が羽化の真っ盛りという感じでした.多くがメスです.フタスジサナエは以前からオスの方が若干早く羽化すると感じていましたが,その通りで,見た感じ,未熟で飛んでいるのはオスばかりでした.


▲フタスジサナエのオス.この個体は池のそばに止まっていた.▲


▲オグマサナエのオス.まだ未熟である.▲


▲タベサナエのメス.個体数はタベサナエが一番多かった.▲

下の写真には羽化しているフタスジサナエが6頭写っていますが,写真を撮る前に2頭飛び立ってしまったので(羽化殻が2つ見えます),合計8頭がほとんど同じ場所で一斉に羽化していました.


▲フタスジサナエは羽化の真っ盛り.それも多くがメス.▲


▲羽化するフタスジサナエたち.▲

フタスジサナエの羽化は,10年くらい前まではだいたい4月の下旬から末くらいの間でした.今年はその当時と同じくらいの時期に羽化していますね.今年は全般的にこの2,3年に比べると出現が遅いのですが,昔の感覚ならちょうどぴったりというところです.今年は,オグマサナエ,タベサナエに始まって,フタスジサナエと南部のコサナエ属3種の羽化を全部記録できました.

フタスジサナエが羽化しているすぐ横で,シオヤトンボが産卵をしていました.シオヤトンボの出現も以前並みに遅れています.


▲産卵にやってきたシオヤトンボのメス.▲

遠征旅行ではサブカメラを使っていましたが,やはりメインカメラの方がきれいに写るような気がします.画像処理のチップが違うようです.

さて,コサナエ属の状況が確認できましたので,次は成虫越冬性トンボで残されている,ホソミイトトンボを探しに行くことにしました.4月上旬にオツネントンボを見に行った2つ目の池へ出かけました.オツネントンボが1頭ホソミオツネントンボが4頭ほど飛んでいて,それに混じってホソミイトトンボが,3ペアと単独オスが5頭ほど見られました.


▲タンデムのホソミイトトンボ.▲


▲産卵行動をとってもすぐ止めてしまい,近づくこともできない.▲

ペアは飛んでいるのですが,なかなか産卵をせずあちこちを飛び回っているだけです.ちょっと止まって産卵行動をとるのですがすぐ止めてしまいます.産卵はもう少し後の時間帯なのかもしれません.対して,交尾は2例見られました.


▲移精行動をとっている.メスは交尾の態勢.▲


▲移精行動のあと,交尾になった.▲


▲オスは止まってメスは飛んでいる!?.▲


▲やがて上のペアも交尾態勢に入った.▲

今年は,2018年に続いて,できるだけたくさんの兵庫県のトンボに出会うのが目標ですので,1種類ずつきちんと押さえていきたいです.

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No.06. ホソミイトトンボ.交尾・産卵
No.07. シオヤトンボ.産卵.

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No. 952. 沖縄県のトンボたち 均翅亜目.2024.4.24.

沖縄県のトンボたちの第3回目は均翅亜目の紹介です.均翅亜目の中でもイトトンボ上科に属する,いわゆるイトトンボ類は,私が密かに好意を抱いているトンボたちです.そのせいか,文章や写真が多くなってしまいました.均翅亜目のうち,イトトンボ類は標本にしても色や形がほとんど生時の状態で残らないので,写真がその美しさを保存できる唯一の手段のように思えます.標本の場合,私は無水エタノールに浸ける液浸標本にしていますが,これは結構いい成績です.

春のこの時期には,ちょっと早いものの,均翅類の成虫はだいたい出現していると思われます.最盛期にはなっていないにしても,未熟なものを含めてどれだけ出会えるかというところでしょう.

まずはカワトンボ科からです.沖縄県に分布するカワトンボ科はクロイワカワトンボとリュウキュウハグロトンボです.いずれも過去に見たことがあるのですが,リュウキュウハグロトンボは非常に未熟な個体しか見ていません.翅の内側の青く輝く色を見てみたいものです.

■カワトンボ科
沖縄県の2種のカワトンボは,いずれも日本特産種です.

◆クロイワカワトンボ Psolodesmus kuroiwae Oguma, 1913
山間の薄暗い渓流に生息するカワトンボです.以前台湾に遠征したときに見たシロオビカワトンボ Psolodesmus mandarinusと近縁です.昔はこの亜種 Psolodesmus mandarinus kuroiwae とされていたぐらいです.


▲クロイワカワトンボのオス.4/15.▲


▲クロイワカワトンボの近縁種,台湾のシロオビカワトンボ.▲

もう少し簡単に見つかるだろうと思っていましたが,今回の源流域はトンボの姿が非常に少ない状況で,このオス1頭だけでした.結構長期間成虫が飛ぶトンボですので,また機会があればチャレンジしたいです.

◆リュウキュウハグロトンボ Matrona japonica (Förster, 1897)
兵庫県ではアオハダトンボの翅が美しく輝きますが,リュウキュウハグロトンボの水色の輝きはそれ以上かもしれません.これは翅脈の輝きです.奄美大島にも分布しています.


▲リュウキュウハグロトンボのオス.基部が水色に輝き美しい.4/19.▲

林道を歩くと,まだ未熟な個体が木漏れ日に身を置いていました.近づくとひらひらと飛んで逃げ,また別の木漏れ日の射すところに止まります.それなりの数がいましたし,翅の輝きもはっきりと現れていましたので,羽化が始まってしばらく経っているように見受けられました.中にはまだ羽化してから間が経っていない個体も混じっていました.このようなオスは,翅に青みが全くなく,茶色に透き通って見えます.


▲羽化して間がないリュウキュウハグロトンボのオス.4/19.▲

オスには縁紋がありませんが,メスには白い偽縁紋が見られます.また翅の裏側(たたんだ翅の外側)の翅脈が黄褐色をしていて,全体として金色に見えます.メスの翅の内側は水色の部分がはっきりしていません,光線の加減でわずかに青みを帯びて見えることがあります.


▲リュウキュウハグロトンボのメス.内側はわずかに青みを帯びる.4/19.▲

繁殖活動を始めているペアもいました.オスはメスの後ろをホバリングするように左右に振れて飛び,メスを誘引しようとしています.こういった行動をじっくりと観察したいものですが,今回はとにかくできるだけたくさんのトンボに出会うのが目的ですので腰を落ち着けられません.30年ぶりの現地の状況を見た上で,また行動観察の作戦を立てようと考えています.


▲水色の輝きは翅室ではなく翅脈の色であることが分かる.4/19.▲

■トゲオトンボ科
1985年の日本産トンボ大図鑑(講談社)を見ると,日本に分布するトゲオトンボ科は3種1亜種で記載されています.それが最新の2022年の図鑑(日本のトンボ改訂版,文一総合出版)では7種1亜種に増えています.そのうち沖縄県には3種が分布しています.再検討によって種が細分化されたからです.トゲオトンボ類にはあまり移動性がなく地理的隔離が生じやすく種分化が進みやすいのかもしれません.それが証拠に,沖縄本島には,名護市あたりを境界にヤンバルトゲオトンボとオキナワトゲオトンボの2種が隣接して分布しています.

◆ヤエヤマトゲオトンボ Rhipidolestes aculeatus Ris, 1912
1985年の図鑑では,ヤエヤマトゲオトンボは西表島,石垣島,九州本土に分布すると記載されていますが,現在では九州本土の個体群はヤクシマトゲオトンボとして別種となっています.ヤエヤマトゲオトンボは台湾にも分布していますので,日本特産種というわけではありません.32年前に訪れたときにはどうしてもメスを見つけられなかったので,今回はメスを見つけたいと張り切って探索しました.


▲ヤエヤマトゲオトンボのオス.上:4/15,下:4/16.▲

メスを探すために,同じ場所を2回訪れました.しかし個体数は非常に少なくオスばかりでした.やっと見つけたメスは,流れを歩いているときに処女飛行に飛び立った個体でした.雄性先熟しているのでしょうか,今がちょうど羽化期のように見えました.


▲目の前に飛び上がってきたヤエヤマトゲオトンボの処女飛行メス.4/16.▲

どうも私はヤエヤマトゲオトンボのメスには縁がないようです.あといくら探しても見つかりませんでした.

◆オキナワトゲオトンボ Rhipidolestes okinawanus Asahina, 1951
沖縄本島に分布するトゲオトンボは,以前はリュウキュウトゲオトンボ1種とされていました.2005年に沖縄本島に分布するトゲオトンボがオキナワトゲオトンボとヤンバルトゲオトンボに分けられました.これを分けた文献には,オキナワトゲオトンボは「多野岳の南西部に分布する」と書かれていましたが,最新の「日本のトンボ改訂版」には,「平南川,源河大川,大浦川以西に分布する」と書かれています.地図で見ると,平南川,源河大川,大浦川はだいたい南北直線上に位置しています(地図参照).


▲各地の位置関係.「国土地理院タイルに文字や線を記入して掲載」.▲

今回私が観察した2ヶ所は,上の図でいうと,その境界線の少し西および境界線上あたりに位置します.ぎりぎりオキナワトゲオトンボの分布範囲です.最近は便利になって,スマホのGPS情報で自分の位置を示し,スクリーンショット保存すれば地図上に観察位置が記録されますので,間違いありません.

では,まず上の境界線より明らかに西に位置する場所での記録です.


▲オキナワトゲオトンボのオス.境界線より明らかに西の地点A.4/19.▲

このオスは明らかにオキナワトゲオトンボです.翅端に明瞭な褐色斑があります.いわゆるノシメ斑的な斑紋です.30年前に来たときには,こういう模様の「リュウキュウトゲオトンボ」を見たいと思ったものですが,今考えると別種なんですね.オキナワトゲオトンボのもう一つのはっきりとした特長は,顔面が赤いということです.下の写真を見ればはっきりします.


▲オキナワトゲオトンボの特徴である赤い顔面.4/19.▲

ここでもメスを探しましたが見つからないな,などと思っていると,またもや処女飛行メスの登場です.やはり羽化期なんですね.それもメスの羽化.ヤエヤマトゲオトンボの場合と偶然が重なりました.


▲オキナワトゲオトンボの処女飛行メス.4/19.▲

もう一ヶ所探してみようということで,少し移動して水の少ない沢に入ってみました.シコクトゲオトンボの探索経験でだいたいの生息環境はつかめていますので,なんか自信を持って探索できます.オスがいました.しかし今度のオスは翅端の褐色斑がうすいのです.ヤンバルトゲオトンボでもうっすら翅端に褐色斑が見えることがあるのでちょっと迷います.


▲オキナワトゲオトンボ?のオス.境界線に非常に近い地点B.4/19.▲

しかもこの個体,顔面の赤を確認しませんでした.うっかりしていますねぇ,そのときは翅端の褐色斑を見てオキナワトゲオトンボだと信じ切っていましたから.あとで写真を見て疑いが生じました.困ったものです.地点A,地点Bは同じ水系ですので多分オキナワトゲオトンボでいいと思いますが,観察に慎重にしなければなりません.またもや教訓を残しました.採集の重要性はこういうところにあるんでしょうね.もう行く機会はないかもしれませんが,チャンスがあればこの沢でもう一度確認したいものです.同じ水系に近縁の別種がいるというのは面白いことですからね.

ところで,ここでもまた,またまた,処女飛行個体です.ただしこれはオスでした.


▲オキナワトゲオトンボ?の処女飛行オス.境界線に非常に近い地点B.4/19.▲

◆ヤンバルトゲオトンボ Rhipidolestes shozoi Ishida, 2005
次はヤンバルトゲオトンボです.観察場所は境界線から明らかに北なので,間違いないでしょう.ここは,沢というより,いわゆる斜面から水が湧き出している典型的な生息環境です.ここではオスたちが4,5頭お互い干渉し合いながら飛んでいました.もう繁殖活動期に入っているようです.一応確認しておきましょう.


▲ヤンバルトゲオトンボのオス.顔面は黒いが翅端には淡い褐色斑がある.4/19.▲

写真でっはちょっとわかりにくいですが,顔面は黒いです.しかし翅端にはうっすらと褐色斑が認められます.上の「オキナワトゲオトンボ?」の写真と比べてどうでしょうか.迷いだしたらきりがありません.


▲ヤンバルトゲオトンボのオスたち.ここは陽が当たり写真には好都合.4/19.▲

ところで,またまたまたの話になるのですが,ここでもメスが羽化したり処女飛行に飛び立ったりしていたのです.オスたちはもう繁殖活動に入っているような動きをしているのに,メスが羽化していました.ただ羽化途中のメスとは時間の関係で最後まで観察することはできませんでした.


▲羽化途中のヤンバルトゲオトンボのメス.4/19.▲


▲処女飛行に飛び立ったヤンバルトゲオトンボのメス.▲

三度目の正直といいますか,これだけ同じことが起きますと,雄性先熟が起きているといいたくなります.オスはかなり成熟しているのに1頭を除いてメスばかりが羽化をしている,トゲオトンボは雄性先熟する傾向があるトンボであるという仮説を立てることに無理はないように思います.

こんな感じで,3種のトゲオトンボの観察は今回とても自分的には盛り上がりました.

■ミナミカワトンボ科
沖縄県には,コナカハグロトンボとチビカワトンボの2種が分布します.チビカワトンボの方が少ないようで,30年前に見たことはありましたが,今回も出会ってみたいトンボでした.が不発でした.コナカハグロトンボは30年前には大群が飛び交っていました.でも今回は時期がまだ早いのか,数は少なかったです.

◆コナカハグロトンボ Euphaea yayeyamana Oguma, 1913
コナカハグロトンボには山地から平地までの川の流域で出会いました.比較的広い範囲の流程に分布しているように感じました.ただ出会った数はどこでも2,3頭というところでした.季節が早いのか減っているのかは,私には分かりません.


▲山間の渓流で見たコナカハグロトンボのオスとメス.4/16.▲


▲平地の深い川で活動するコナカハグロトンボ.4/20.▲


▲平地では樹陰に止まっていることも多い.▲

このトンボは群れている姿が一番似合っていますので,季節が進んでそうなっていることを祈っています.

■モノサシトンボ科
沖縄県のモノサシトンボ科といえばルリモントンボのなかまです.沖縄県には2種のルリモントンボが分布しており,いずれも固有種です.マサキルリモントンボには,今回出会うことができませんでした.

◆リュウキュウルリモントンボ Coeliccia ryukyuensis ryukyuensis Asahina, 1951
このトンボはもう少し簡単に出会えるかと思っていましたが,他のトンボ同様,出が遅いのか私の探し方が悪いのか,出会ったのはたったの1頭でした.兵庫県に分布するモノサシトンボ科は,グンバイトンボとモノサシトンボですが,いずれも地味なトンボです.しかしリュウキュウルリモントンボに出会ったときは,その鮮やかさに見とれてしまいました.南国のルリモントンボは本当にきれいです.


▲たった1頭だけ出会ったリュウキュウルリモントンボのオス.4/20.▲

沖縄県のトンボといえば,どうしてもミナミヤンマなどの大型のトンボに注目が行きます.しかし可憐なイトトンボ類の美しさはまた別格のもので,海水性熱帯魚を彷彿とさせてくれます.そしてこの輝きを残せるのは写真しかないと思います.

■イトトンボ科
沖縄県のイトトンボ科には,地域特産種というのがありません.すべてが広域分布種です.一方モノサシトンボ科ルリモントンボ属の各種はすべて地域特産種です.近い親戚の分類群でありながら,この違いにはとても興味深いものがあります.もっとも日本産イトトンボ科のほとんどは海外にも分布域を持つ広域分布種です.日本特産種というのはオゼイトトンボぐらいでしょうか.移動性がないトンボのように見えますが,結構移動して分布を拡大させているのかもしれません.

◆リュウキュウベニイトトンボ Ceriagrion auranticum ryukyuanum Asahina, 1967
小さな湿地状の池で繁殖活動をしている姿を見ました.またおよそ近くに生息場所がないと思われるような林縁に止まっている個体もありました.さらに街中の公園の池にもたくさん集まっていました.本土のベニイトトンボは絶滅危惧種に指定されていますが,こちらはキイトトンボより普通に見られる感じがします.


▲水たまり状の湿地に集まって産卵するリュウキュウベニイトトンボ.4/16.▲


▲どこから来たのか林縁に止まっていたリュウキュウベニイトトンボのオス.4/17.▲

繁殖活動は,午前から昼過ぎにかけて行われていました.午後に訪れた街中の公園の池ではもう繁殖活動は終わっていて,オスもメスも周辺の草地でのんびり過ごしていました.ただ面白いことに,オスばかりが集まっているところにはメスの姿がなく,メスは,オスほどの密度ではありませんが,オスを避けて別の場所に集まっているように見えました.


▲街中の公園の池にいたリュウキュウベニイトトンボ.4/19.▲


▲同じく街中の池周辺の草地で休むオス(上)とメス(下).▲

メスには腹部先端の背面に黒斑部分があるので,比較的容易に見分けられます.パッと見ると腹部先端が黒く汚れているように見えます.

◆アカナガイトトンボ Pseudagrion pilidorsum pilidorsum (Brauer, 1868)
流水性のイトトンボです.32年前に来たときには流れにたくさん集まっている姿を見ました.今回は数が少なく,出会ったのはオス2頭だけでした.1頭は小さな沢が川に流れ込んでいるような場所でした.オスが単独で止まっていました.


▲アカナガイトトンボのオス.エキゾチックな色彩である.▲

もう1頭は川の上流で,リュウキュウハグロトンボに混じって飛んでいました.水面上で結構長い時間停止飛翔をしていました.通常ならこれは写真になるところですが,サブカメラではダメでした.暗くて距離が離れていたこともあり,マニュアル撮影でピントが来たのがありませんでした.このトンボは台湾ではイヤというほど見ました.

◆ヒメイトトンボ Agriocnemis pygmaea pygmaea (Rambur, 1842)
近縁のコフキヒメイトトンボはお隣の徳島県にも分布していますが,ヒメイトトンボは南西諸島まで出かけないとその姿を見ることができません.今回幸いにも水田の端に生えている植物の間に,ヒメイトトンボたちが飛び交っているのに出会うことができました.


▲水田横の草が生えているところに集まっていたヒメイトトンボ.4/20.▲


▲朝早かったので,朝露に濡れたヒメイトトンボのオス.4/19.▲


▲ヒメイトトンボの成熟メス.4/19.▲

とにかく小さなトンボです.ヒヌマイトトンボやモートンイトトンボよりも小さいのではないかと思います.探そうという気にならないと見過ごしてしまいそうです.実際,この場所には2回来たのですが,1回目は目に入りませんでした.

ヒメイトトンボはコフキヒメイトトンボのようにオスが白い粉を吹くことはありませんが,胸部に少しだけ粉を吹くような個体が存在します.


▲普通のヒメイトトンボ成熟オス.4/19.▲


▲ほんの少しだけ胸部や脚の腿節に白粉が見られる成熟オス.▲

メスは,アジアイトトンボのように,成熟にともなって体色や眼後紋が変化していきます.未熟な頃は赤い色をしていますが,腹部から緑色へと変化していくようです.


▲未熟なメス.赤い地色で腹部背面の黒条が不十分で,眼後紋は赤く広い.▲


▲少し成熟が進んだメス.腹部は緑味を帯び背面の黒条がはっきりとしてきた.▲


▲胸部にも緑色が出てきて,眼後紋の水色の点がはっきりし始めた.▲


▲赤色部分がほとんど消え,眼後紋の水色の斑点がよく目立つ.▲

メスの眼後紋の変化については,図鑑などではあまり詳しく記載されていないので,注意をしておく必要があると思います.アジアイトトンボやアオモンイトトンボでも類似の変化が見られます.

◆ムスジイトトンボ Paracercion melanotum (Selys, 1876)
ムスジイトトンボは,南方に分布中心を持ち,国内外に広く分布する広域分布種です.最近はそうでもなくなりましたが,兵庫県では海岸近くの池に多く見られたトンボです.沖縄でも,海岸近くの市街地の池で観察しました.兵庫県の観察では,潜水産卵をするのが普通のようです.しかしここでは,潜水できるような植物に産卵するときでも,潜水は行いませんでした.


▲ムスジイトトンボの産卵.潜水は行わず水面上で産卵を続ける.▲

以前兵庫県でムスジイトトンボの産卵を写真に収めようとして探し回っていましたが,なかなか見つからないとずっと思っていました.そしてそれは,潜水産卵を主にやっているからだと気づきました.同じトンボでもところ変われば品変わるという感じで,行動の違いを観察するとまた遠くへ来た感じがします.いとも簡単に産卵の写真が撮れました.


▲移動しながら産卵を続けるムスジイトトンボのペア.▲

◆アオモンイトトンボ Ischnura senegalensis (Rambur, 1842)
アオモンイトトンボも本州・四国・九州から南西諸島に広く分布しています.兵庫県でも極めて普通種です.沖縄にもちゃんといました.こちらも同じように,午後の公園の池でメスが単独で産卵していました.丘陵地の水田にもいました.


▲公園の池でたむろするアオモンイトトンボのオス.▲


▲午後に単独産卵する性質は,沖縄でも変わらない.▲


▲丘陵地の水田では,ヒメイトトンボに混じって,飛んでいた.▲

さて,以上で今回の遠征旅行で見たトンボの紹介を終わります.写真としては27種類,あと写真にならなかったのが,オオキイロトンボ,オオヤマトンボ,タイワンウチワヤンマ,ギンヤンマです.まあ30種類見られたらよしとするべきでしょうか.

なお人づてに入った地元の情報では,今年はまだオキナワサラサヤンマを見ていないということだそうです.同時期に沖縄のトンボを見に行った人も,例年と少し違うと感想をもらしていました.私も,個体数・種類とも思ったよりトンボが少ないと感じました.まあ私の感想は32年ぶりの訪問なので当てになりませんが,やはりちょっとトンボの数が少なく,違和感を感じました.あと,オキナワコヤマトンボ,リュウキュウトンボなどもすでに飛んでいたとのことです.

それでは沖縄の報告はこの辺で.

カテゴリー: エッセイ, 県外のトンボ | No. 952. 沖縄県のトンボたち 均翅亜目.2024.4.24. はコメントを受け付けていません

No. 951. 沖縄県のトンボたち 不均翅亜目-2.2024.4.23.

第2回目はトンボ科です.トンボ科の多くは夏が活動中心のトンボで,この時期にしか特に見られないトンボというのはありません.いわゆる普通に見られる種がほとんどですが,兵庫県にはいないトンボたちが多くいて,派手な色彩のトンボたちが南の国に来たことを感じさせてくれます.

その中で特に姿を見たかったのが,アカスジベッコウトンボ,ヤエヤマオオシオカラトンボ,オキナワオオシオカラトンボです.アカスジベッコウトンボは私が沖縄へ行った30年前にはまだ日本に定着していなかったトンボです.2006年に与那国島で発見されたのが国内初記録でした.またオオシオカラトンボは,以前から本土のものとは別種ではないかといわれていましたが,2013年に本土のオオシオカラトンボ Orthetrum melania melania の別亜種として,オキナワオオシオカラトンボ O. m. ryukyuense およびヤエヤマオオシオカラトンボ O. m. yaeyamense とされました.特にオキナワオオシオカラトンボのメスは,腹部先端の黒い部分が小さいのが特徴です.

では結果を紹介していきましょう.

◆アカスジベッコウトンボ Neurothemis ramburii ramburii (Brauer, 1866)
アカスジベッコウトンボは,昨年の台湾遠征で見かけましたので初めて見る感動はありません.コーヒー色の翅が何ともいえず南国的かつエキゾチックで気に入っています.先島諸島にはもう普通に定着しているとのことですので,出会いを楽しみにしていました.


▲アカスジベッコウトンボのまだ若いオス.4/16.▲

このトンボは,浅い湿地状の水たまりを好むようで,大きな池にはあまり出ず,その横に点在する小さな水たまりのような所にオスがよく止まっていました.一度目の前で短時間交尾・産卵してくれたのですが,サブカメラはオートフォーカスに迷うことが多いので,録り逃しました.こういうのは本当に悔やまれます.


▲アカスジベッコウトンボの成熟したオス.腹部も赤くなっている.4/16.▲

まだ時期が早いせいでしょうか,腹部が赤化せず,翅脈にも黄色が混じっているような,若いオスが多かったです.メスは産卵に来た1個体を見ただけでした.


▲とても若いオス.4/16.▲


▲湿地状の水たまりで産卵を終えた後止まったメス.▲

◆オキナワオオシオカラトンボ Orthetrum melania ryukyuense Sasamoto et Futahashi, 2013
オオシオカラトンボは夏のトンボで,この時期に羽化しているのかどうか分かりませんでしたが,4頭ほどオスを見かけました.メスは樹上を飛ぶのを見ただけです.オスは青色の粉を吹きますのでオオシオカラトンボと同じに見えますが,本種では腹部先端の黒い部分が腹部第9,10節だけで翅の付け根の黒い部分が狭いのに対し,オオシオカラトンボでは通常腹部第8,9,10節が黒く翅の付け根の黒い部分は広いという点が異なっています.同じ種ですが,亜種として微妙な違いにこだわるのもまた楽しいものです.


▲オキナワオオシオカラトンボのオス.通常腹部第9-10節が黒い.4/19.▲


▲本土産のオオシオカラトンボ.通常腹部第8-10節が黒い.2010/8/11.▲

◆オキナワチョウトンボ Rhyothemis variegata imperatrix Selys, 1887
南国的な色彩をしているトンボの一つに,オキナワチョウトンボがいます.褐色と黄色からなる迷彩色的な翅の模様は,日本産トンボの中では他に例を見ません.ただ今回は数が少なくて,羽化している個体がまだ少ないような感じでした.


▲オキナワチョウトンボのオス.4/16.▲


▲オキナワチョウトンボのメス.摂食していた.4/17.▲

オキナワチョウトンボは,翅を透過するような光線位置で写真を撮った方が,翅の輝きが映えます.ちょうど道路の交差点で上空を飛ぶ摂食していたメスがその光線具合になりましたので,空をバックに写真が撮りました.こういう写真は撮りやすいはずですが,サブカメラの合焦が鈍いせいでピントが来た枚数が極端に少なかったのが残念でした.

◆コフキショウジョウトンボ Orthetrum pruinosum neglectum (Rambur, 1842)
コフキショウジョウトンボは,各地にたくさんいました.いつも言っていますが,どこにでもいるトンボは,わざわざ追いかけていって撮ることをしないことが多く,結局撮り損ねてしまうのことがあるのです.今回のコフキショウジョウトンボがそれでした.また目の前で交尾・産卵をやってくれましたが,これもサブカメラの合焦が悪く,シャッターチャンスを逃しました.このカメラどうしても背景にフォーカスが引っ張られてしまうのです.いつものカメラだと,マニュアルで合わせたピント近くにある物体にまずピントを合わせようとするので,数枚はピントが来るのです.


▲コフキショウジョウトンボのオス.一番初めに出会った個体である.4/15.▲


▲産卵後のメスを追いかけるオス.4/17.▲

コフキショウジョウトンボは台湾にも多くいて,そこでは産卵も記録できましたので,気持ちの上で余計に手をかけなかった感じがします.やはりどんなトンボにも全力で向かいたいものです.

◆ハラボソトンボ Orthetrum sabina sabina (Drury, 1770)
こちらでいえばシオカラトンボと同じくらい,どこにでもいて数の多いトンボです.およそ観察に訪れた場所のほとんどで出会うことができました.しかしこっちはコフキショウジョウトンボより多くカメラを向けた気がします.


▲ハラボソトンボのオス.朝日を浴びて目覚めたのだろうか.4/20.▲


▲ハラボソトンボの交尾.この交尾はいつもまともな位置で写真に撮れない.4/16.▲


▲ハラボソトンボのメス.4/20.▲

ハラボソトンボは地面によく止まるトンボで,上の写真のように農道の砂利道のようなところに止まられると,とてもわかりにくいです.オスとメスの色彩も似ていてぱっと見では分かりません.メスの方が少しくすんだ色をしています.

◆ベニトンボ Trithemis aurora (Burmeister, 1839)

▲ベニトンボのオス.川の畔に止まっていた個体.4/19.▲

ベニトンボもハラボソトンボに負けずどこでも姿を見せていたトンボです.このトンボは流水でも止水でも生活するので,山地の渓流などに入っても姿を見せるときがあります.でもやはり平地の池が生活の中心でしょう.

ベニトンボは,現在は兵庫県でもその姿を見ることができるほど,北上傾向が強い種です.しかし本場はやはり南国.彼らの活動を存分に観察させてもらいました.激しい闘争本能を持った,活発なトンボです.こういう状況はは,1頭だけぽつんといるような兵庫県では,なかなか見ることができないでしょう.


▲ベニトンボの産卵と警護.4/16.▲

オスは活発に水面を飛び回り,メスが入ってくると飛びながら交尾します.そして連結を解いてオスは警護活動に入ります.がそのとき他のオスが近くにいると,--たいがい近くにいるので-- 複数のオスが激しくメスを追いかけ,警護のオスはそれと戦います.見ているとあちこちで,時には5,6頭が入り乱れて,闘争が繰り広げられています.やはり個体密度が高いところならではの行動でしょう.楽しませてもらいました.メスは産卵を終えると,周辺の草地で休みます.


▲草地で休むベニトンボのメス.4/16.▲

個体数の多いトンボは,周辺でさまざまの成熟段階のものが見られます.まだ複眼が赤い色をしていない未熟な個体がたくさん休んでいました.これらは別種のようにも見えます.未熟なオスは橙色をしていて,成熟が進むと紅色が出てくるようです.


▲翅脈もまだ黄褐色を残している未熟なベニトンボのオス.4/17▲

◆ヒメトンボ Diplacodes trivialis (Rambur, 1842)
農道などを歩いていると,ハンミョウのように足下を飛び回る素早いトンボに出会います.うっかりすると見落としてしまいそうな小さなトンボです.とにかく敏感で素早いので近づくことは容易ではありません.小さいのでカメラをうんと近づけたいのですが,まず無理です.正体はヒメトンボ.オスはナニワトンボのように灰色の粉を吹くトンボです.


▲ヒメトンボのオスとメス.地面にばかり止まる.4/15.▲

このトンボがハンミョウのように見えるのは,地面の上ばかり止まるからです.不思議なくらい草の枝や葉に止まりません.いるところにはたくさんいて,ハンミョウのように飛び,歩く人の先の方に止まるのです.トンボにもいろいろな性格や好みがあるのですね.

◆コシブトトンボ Acisoma panorpoides panorpoides Rambur, 1842
トンボの中でも,他とは少し異なった形態をしているのが,コシブトトンボです.名の通り腰の部分が太くなっています.私はこれを見るとエビの腹部を連想します.小さなトンボで,普通サイズのトンボばかり気にしていると見落としそうなサイズです.色彩は派手で,やはり南国のトンボといった感じです.今回はあまり数多くを見ることがありませんでした.本格的なシーズンはこれからでしょう.


▲コシブトトンボのオス.草の間を素早く飛び回る.4/16.▲


▲コシブトトンボのメス.メスは目立たない色彩をしている.4/16.▲

このトンボの繁殖活動を見てみたいのですが,よく見つかるトンボにもかかわらず,まだそのチャンスに恵まれていません.

◆タイリクショウジョウトンボ Crocothemis servilia servilia (Drury, 1770)
兵庫県で普通に見られるショウジョウトンボ Crocothemis servilia mariannae の原名亜種です.昔は本土産のものも同種とされていましたが,オランダのトンボ研究者 Kiauta 博士が染色体の核型(本数や形)の相違から,本土産を亜種に分けました.


▲タイリクショウジョウトンボのオス.腹部正中線に黒条が見える.4/16.▲


▲タイリクショウジョウトンボのメス.4/15.▲

▲タイリクショウジョウトンボの未熟なオス.メスとよく似た色彩である.4/16.▲

パッと見た感じではタイリクショウジョウトンボはショウジョウトンボと同じに見えますが,タイリクショウジョウトンボの方が若干朱色っぽく感じるのは私だけでしょうか.本土のショウジョウトンボは濃い赤に見えます.またオスの腹部背面正中線に黒い筋が明瞭に存在する個体が多いのも特徴です.本土のショウジョウトンボにもこの黒条が腹部先端の方に見られるものがありますが,タイリクショウジョウトンボの方がはっきりしているように思います.なおメスには本土のショウジョウトンボにも明瞭な黒条が存在します.


▲上がタイリクショウジョウトンボ 4/15,下が兵庫県のショウジョウトンボ.▲

このトンボもどこにでもいる普通のトンボです.ただベニトンボに比べて,流水域にはあまり見られないようです.

◆ヒメハネビロトンボ Tramea transmarina yayeyamana Asahina, 1964
私の好きなトンボの一つに,ハネビロトンボのなかまがあります.飛んでいるときには,翅の付け根あたりが鮮血色に染まったように見える大型のトンボで,とても力強く見えます.沖縄県ではハネビロトンボよりヒメハネビロトンボの方によく出会うような気がします.池ではほとんど飛び回っているので,写真に撮りにくい相手でもあります.

産卵行動が特異で,打水の瞬間だけオスがメスを放し再び連結するという行動をとります.一度写真--というよりビデオ--に収めてみたいとずっと思っています.今回の観察でも2回タンデムで池に訪れ,産卵行動を見せてくれました.ただ飛ぶスピードが速く,産卵行動に入るタイミングが分かりにくく,今回は全くの失敗に終わりました.また機会があれば挑戦したいと思っています.

今回は,農道を歩いているときにたまたま止まっている個体に出会い,記録できました.


▲ヒメハネビロトンボのオス.一度このトンボを一日中追ってみたい.4/16.▲

◆オオハラビロトンボ Lyriothemis elegantissima Selys, 1883
このトンボには,今回は出会いをあまり期待していませんでした.ぎりぎり羽化期かな,という感じです.川に沿った林道を歩いているときに,ふと黄色いトンボを見つけました.キイロハラビロトンボを見たことがなかったので,まさかと思いましたが,胸側部部に2本の黒条が見え,オオハラビロトンボだと分かりました.メスかなとも思いましたがよく見ると,オスの未熟個体です.腹部の赤い成熟個体は南大東島で見たことがあったのですが,こういう状態のは短期間に限られますので,むしろ嬉しいくらいでした.


▲オオハラビロトンボの未熟オス.4/20.▲

林道を歩いていると,もう1頭飛ぶのを見かけました.川で生育しているのでしょうか?

以上の他に見たトンボ科のトンボとしては,オオキイロトンボ,ウスバキトンボがいました.オオキイロトンボは連結で産卵にもやってきていました.ただ広い範囲を縦横に飛び回り,一体どこに産卵するのか見当も付きません.午後には摂食飛翔をする個体もいました.これはシャッターチャンスなのですが,何度も言っていますがサブカメラではピントを追い切れませんでした.

ウスバキトンボは,その行動が面白く感じられました.兵庫県などでは集団で摂食している姿を見たりするのが普通で,時折池の上をパトロールするような飛び方をしたり,交尾・産卵を見ることがあります.ですから集団群飛するのが見慣れた光景なのですが,南の島のウスバキトンボは,多くの個体が繁殖活動にいそしんでいました.道路にたまった水たまりに集まって交尾・産卵をしているのも見ました.これなどは一時的水たまりの生活者であることを如実に示していると思ったりして,興味深かったです.


▲道路にできた轍の水たまりで産卵するウスバキトンボ.4/15.▲

兵庫県などで見るウスバキトンボの多くは,これから長距離移住する準備段階の個体なのでしょう.対して沖縄県では,そこで生活しているトンボという感じの行動でした.

さて,以上が今回の旅行で観察できたトンボ科のトンボたちです.全部で13種類.ヤエヤマオオシオカラトンボが見られなかったのが残念でしたが,これは夏のトンボですので,また次の機会に頑張ることにしましょう.まとめておきます.

・オキナワチョウトンボ Rhyothemis variegata imperatrix Selys, 1887
・オオキイロトンボ Hydrobasileus croceus (Brauer, 1867)(目撃)
・ヒメハネビロトンボ Tramea transmarina yayeyamana Asahina, 1964
・コシブトトンボ Acisoma panorpoides panorpoides Rambur, 1842
・タイリクショウジョウトンボ Crocothemis servilia servilia (Drury, 1770)
・ヒメトンボ Diplacodes trivialis (Rambur, 1842)
・アカスジベッコウトンボ Neurothemis ramburii ramburii (Brauer, 1866)
・ウスバキトンボ Pantala flavescens (Fabricius, 1798)
・ベニトンボ Trithemis aurora (Burmeister, 1839)
・オオハラビロトンボ Lyriothemis elegantissima Selys, 1883
・ハラボソトンボ Orthetrum sabina sabina (Drury, 1770)
・コフキショウジョウトンボ O. pruinosum neglectum (Rambur, 1842)
・オキナワオオシオカラトンボ O. melania ryukyuense Sasamoto et Futahashi, 2013

次回は均翅亜目のトンボを紹介します.

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No. 950. 沖縄県のトンボたち 不均翅亜目-1.2024.4.22.

この4月15日から21日にかけて沖縄県のトンボを見に出かけました.昨年オオモノサシトンボやアマゴイルリトンボを見に行って,兵庫県には分布しない日本のトンボたちの姿を見ておきたくなった,というのがそもそもの動機です.沖縄県に行ったのは実に32年前,1992年の5月中旬でした.さらにその2年後の1994年3月にも北大図鑑の資料収集のため,幼虫の採集に出かけたことがありました.それ以後は2006年1月に仕事で沖縄に行ったとき,休日を利用して1日だけ幼虫採集したことがあります.いずれにしても成虫の飛ぶ時期に出かけたのは1992年以来ということになります.

今回の日程は時期的には少し早いのですが,最近の気温上昇の影響が地元兵庫県にもかなりはっきりと出てきていますので,沖縄も早くなっているのではないかとあえてこの時期を選びました.5月には別の予定が入る可能性があったことも一因です.ところが今年は3月に寒の戻りがかなりの期間続き,兵庫県でもトンボの出現が少し遅いように感じていましたが,同じような状況が沖縄でもあったのかもしれません.結論から言うと,特に流水性の種において,まだトンボたちの出現が十分ではなかったように思います.それでもなお,沖縄の最近の状況について色々と教えていただいたトンボなかまのおかげで,比較的多くの種に出会えたことに感謝せずにはいられません.

さて,遠征するには目的が必要です.それを決めておかないと,漫然としたトンボの観察になってしまいます.もう若くない私の一番の遠征目的は,生きているうちに飛ぶ姿を見たことのない日本産トンボ成虫に出会うことです.幼虫に関しては,幼虫採集に何度か出かけたこともあり,当時沖縄県に分布した種のほとんどに出会っています.ところが成虫に関しては,多くの種の飛ぶ姿を見ていないというのが実情です.

さて,前置きが長くなってしまいました.まずは今回の旅行のターゲット種についてお話をしておきたいと思います.春のこの時期を選んだ理由にもなっていますが,アジアサナエ属のオキナワサナエ,ヤエヤマサナエに出会うことです.もう一つは分類が細分化され,リュウキュウトゲオトンボから分かれたオキナワトゲオトンボの姿を見ることです.その他の春独特のトンボ,オキナワサラサヤンマ,サキシマヤマトンボ,チビカワトンボはいずれも過去の沖縄行で出会っています.これらの方が出会うのが難しいはずですが…

それでは前回の台湾遠征と同じように,分類群ごとに整理して,何回かに分けて紹介していきます.今日はターゲット種であるサナエトンボ科をはじめとした.トンボ科以外の不均翅亜目です.

◆ヤエヤマサナエ Asiagomphus yayeyamensis (Oguma, 1926)

▲現地到着とほぼ同時に見つけたヤエヤマサナエのオス.4/15.▲

ヤエヤマサナエに出会えるかどうかはこのトンボの発育状況にかかっています.まさかまだ羽化していないということはないと思いますが,未熟期である可能性が高いでしょう.繁殖活動が始まると川に降りなければなりませんが,八重山の川はアクセスが難しいのです.川があると木がその周囲に茂りまくり,道から川への落差が結構ありますので,兵庫県のように見通しを持って川に降りることができません.一番いいのは登山道などが川を横切るところですが,これらアジアサナエ属はあまり上流には姿を見せません.そういう意味でかなり観察できる場所は限られます.そして成熟期に難しくなるのが,メスの姿を見ることです.産卵時以外はどこにいるのかなかなか分かりません.


▲道ばたの大きな芋の葉にべたっと止まるヤエヤマサナエのメス.4/17.▲

その点未熟期ならば,オスもメスも川から離れた摂食活動が行われる空間に一緒にたむろしています.そのポイントを探せせるかどうか運命を分けます.今回は事前の情報もあって,未熟期を過ごす空間に偶然行き当たりました.3日間その場所を訪れて,のべ10頭程度のヤエヤマサナエを見ることができました.メスの産卵を観察するようなダイナミックな興奮はありませんが,それでも初めての出会いは心がウキウキするものです.

初日はオスだけでしたが,2日目にメスが1頭混じり,3日目はメスばかりとなりました.複眼の色を見るとオスは濃緑色をしたものが多く羽化してからの日齢がそれなりに進んでいることが分かります.対してメスの方はまだ複眼が灰色をしている個体も混じっていて,オスよりは成熟が遅れているように見えます.いずれも体はまだ柔らかく,飛び方もふわふわといった感じで,未熟な状態に変わりありません.


▲オスはいずれも複眼が濃緑色になりつつあり日齢が進んでいる.4/16.▲


▲上のメスは複眼が濃緑色,下のメスは灰色である.4/17.▲

ヤエヤマサナエは,他の日本産アジアサナエ属に比べて,斑紋の黄色の部分が広く,とても美しく感じます.特にメス腹部の環状斑は太くてはっきりとしています.キイロサナエ好きの私は,これをずっと見たかったので,新鮮な個体の色鮮やかな状態を見ることができて,到着早々一つの目的を達成できたのが嬉しかったです.ただトンボの行動に関しては,止まっているだけということで面白みはありませんが,オスメスが同じ所に集まっているという状況が見られたことが一つの成果といえるかもしれません.

◆オキナワサナエ Asiagomphus amamiensis okinawanus (Asahina, 1964)
事前情報では,オキナワサナエは最近減少傾向が顕著で,沖縄県のサナエトンボの中では一番見るのが難しいと聞いていました.オキナワサナエもヤエヤマサナエと同じく今は未熟期だと思われます.探索初日はとにかく過去の記録地で数が多くいそうな所を歩き回りました.歩数は12,000歩以上を記録していました.若ければなんてこともない歩数ですが,急勾配の道を上ったり下りたりしながらの道中は結構堪えました.1日目は3時間ほど歩き回り不発,その後別の川沿いに車を走らせてみましたが,全く姿なし.

探索2日目,この日はトンボ観察の最終日になりますが,朝9:00ごろからさらに別の川に沿った道を車でゆっくりと移動しながら探してみました.ヤマサナエなどの経験からは,未熟期であれば道に止まっている個体がさっと逃げて樹上に上がる,なんていう姿に出会うものなのですが,それも全くありません.本当に少なくなっているのでしょうか.幼虫はたくさん採れた記憶があるのですが,30年前に…

どうしようもないので,最初の川に戻ってまた徒歩で探しました.これで最後になるので,隅々まで歩いて探してみました.時刻は12:00を過ぎました.この道中いろいろなトンボに出会いましたが,目的のオキナワサナエだけには出会えずでした.結局だめかと思ったとき,目の前にオキナワサナエのメスが止まりました.まさに目の前にどこからともなく飛んできて止まったのです.2日間トータル8時間ほど探し回っていて,もう諦めようかという気持ちが芽生えていました.最後にここだけはと思って入った山道で,ここにいなかったらもう探すところがないというところまできていました.


▲歩いていると目の前にオキナワサナエのメスが止まった! 4/20.▲

最後まで諦めてはいけませんね.このトンボ,「もうしょうがないなぁ」と私の労に報いてくれるかのように,現れたのでした.そしていくら私が動き回って,しかも至近距離で撮影してもまったく逃げませんでした.「どうぞ心ゆくまで」といった気遣いさえ感じられました.こういった感情が湧くのは嬉しさの裏返しですね.


▲複眼の色がまだ灰色をしている.羽化して日数がたっていないのだろう.4/20.▲

その後この近辺を探し回ったことはいうまでもありません.結局オスには出会えませんでしたが,オスの方は成熟すれば川に出てくるトンボですので見つけやすいはずです.次に期待しましょう.もちろん次があればの話ですが.このメス,複眼がねずみ色です.まだあまり成熟が進んでいないのでしょうね.出会えて良かったです.

◆ヒメホソサナエ Leptogomphus yayeyamensis Oguma, 1926
ヒメホソサナエも沖縄県独特のトンボです.今回の来訪時期ではおそらく羽化期の真っ最中というところでしょうか.あまり出会いに期待はしていなかったのですが,ヤエヤマサナエのたまり場に1頭だけメスがやって来ていました.


▲ヒメホソサナエのメス.複眼がまだ色づいていない未熟個体.4/17.▲

ヒメホソサナエも,ヤエヤマサナエと同じような河川環境で羽化するのだと思います.同じ場所にやって来るということは,飛行の目印になるようなランドマークがあって,それに惹かれて同じルートを飛んでくるのでしょうか.有名な某ヤンマでも,いつも同じところで休息をしているので,そこにトンボ屋が集まるという状況があります.「トンボ道」なるものがあると考えてもいいかもしれませんね.

さて,その他のサナエトンボ科としては,タイワンウチワヤンマを見ています.ただこちらのタイワンウチワヤンマは,同じ所を飛んでいるオオヤマトンボに負けず,飛び回っていてなかなか止まりません.今回いつも使っているカメラを壊してサブカメラを持って行ったのですが,これがなかなかオートフォーカスが決まらないので,写真にはなりませんでした.

ところで今回は,もう一つどうしても見たいトンボがありました.それはトビイロヤンマです.通年見られるという,このエキゾチックな色彩のトンボ,しかも薄明薄暮にしか現れない難物です.今回は,明け方2回,夕方1回観察に挑戦しました.明け方は沖縄といえどもまだ長袖でちょうどよいくらいの気温で,全く飛びませんでした.夕方の1回は4,5頭が飛びました.摂食飛翔で,ものすごいスピードで,UFOのごとくジグザグに方向転換するので,全く写真になりませんでした.1枚だけ証拠写真のようなものが採れていましたので,それを掲げておきましょう.


▲18:45,かなり暗くなったが,湿田の上を飛び回るトビイロヤンマ.4/19.▲

このヤンマを写真にしようと思うなら,もっと季節が進んで暑くなった時期に,一日がかりでじっと待つ以外にないと思います.いつかやってみたいです.

今日のまとめです.トンボ科以外の不均翅亜目としては,

ヤンマ科
・ギンヤンマ Anax parthenope julius Brauer, 1865(目撃)
・トビイロヤンマ  Anaciaeschna jaspidea (Burmeister, 1839)
サナエトンボ科
・ヤエヤマサナエ Asiagomphus yayeyamensis (Oguma, 1926)
・オキナワサナエ Asiagomphus amamiensis okinawanus (Asahina, 1964)
・ヒメホソサナエ Leptogomphus yayeyamensis Oguma, 1926
・タイワンウチワヤンマ Ictinogomphus pertinax (Hagen in Selys, 1854)(目撃)
ヤマトンボ科
・オオヤマトンボ Epophthalmia elegans elegans (Brauer, 1865)(目撃)

というところです.大型のトンボは,やはり真夏に来なければだめですね.

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No. 949. コサナエ属羽化本格化.2024.4.13.

昨日はよく晴れましたが所用があって観察休止.今日は薄曇り的でした.昨日羽化した名残と今日の羽化個体を探しに出かけました.いつもの池の水辺をのぞいてみましたら,いくつかの羽化殻が付いていました.持ち帰って確認しました.


▲今日持ち帰った羽化殻は3種類.兵庫県南部のコサナエ属全部いました.▲

タベサナエは腹部第10節が短く,おまけに背棘がありますので間違えることはありません.しかしフタスジサナエとオグマサナエは,現場で見ただけではどうしても迷いが生じます.でも上のように複数採集して並べてみると,違いが見えてきます.オグマサナエは一回り大きいです.そして腹部第10節の幅に対する長さの比が違っていて,オグマサナエの方が大きく(細長く)なっています.

それでもなお,※印の個体はオグマサナエとフタスジサナエの中間的なサイズであり,腹部第10節の幅に対する長さの比がそれほど大きくない(細長くない)ように見えます.こういうのが判別困難な個体です.上の写真で右上の羽化殻は,以下で紹介する羽化観察したオグマサナエの羽化殻で,間違いなくオグマサナエです.そこで,羽化殻を裏向けてこの確実な羽化確認個体と※個体,およびフタスジサナエを比較してみました.裏向けて比較するときは,腹部第10節だけでなく腹部第9節も見た方がいいのです.

すると,※個体とオグマサナエの羽化確認個体にはほとんど違いがありませんが,フタスジサナエの方は,腹部第10節の長さも明らかに短いし,腹部第9節の最大幅に対する長さの比が明らかに小さく,長さが短く見えます.これで※個体がオグマサナエであることが確認できました.

いずれにしても,図鑑や当サイトなどで記述している区別点には,結構変異があることがこの例で分かります.確実な羽化殻の標本を手元においておくことが大切ですね.さて話を戻しましょう.


▲オグマサナエの羽化殻(上)とタベサナエの羽化殻(下)

水辺に結構羽化殻が付いており,オグマサナエが6個程度,フタスジサナエが1,2個,タベサナエは,別の池ですが,10個以上見られました.これらは昨日と今日で羽化したものと思われます.こんな感じで羽化殻を探しているとき,1頭のオグマサナエのオスが羽化途中なのを見つけました.


▲オグマサナエオスの羽化.▲

すでに何度か述べたように,羽化途中のオグマサナエとフタスジサナエの区別が難しいので,慎重に写真を検討しました.複眼背面が灰色をしていること,そしてなにより尾部上付属器の突起がはっきりと写っており,この写真の個体はオグマサナエで間違いありません.


▲上の羽化写真個体の尾部上付属器上の突起.オグマサナエであることが分かる.▲

さらに処女飛行に飛び立った個体を4頭見ました.タベサナエとオグマサナエ,あと2頭は不明です.


▲処女飛行に飛び立ち草地に止まったタベサナエのオス.▲

あと草地をうろついて,昨日以前に羽化した未熟個体を探してみました.1頭陽だまりに止まっていた未熟個体を見つけました.オグマサナエでした.


▲草地を飛び回る未熟なオグマサナエ.▲

いよいよコサナエ属も動き始めました.本格的な春のトンボシーズンの始まりです.あと数日もすれば,たくさんのコサナエ属トンボがひらひらと飛ぶようになるでしょう.それにしてもオスばかりが見つかります.やはり雄性先熟なのでしょうね.一度どこかで羽化の時期と性比を調べて確認する必要があるようです.

あとホソミイトトンボ,シオヤトンボを見つけないといけません.

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No.05. フタスジサナエ,羽化殻

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No. 948. オグマサナエ・タベサナエ羽化.2024.4.10.

今日の朝は寒かったですが,次第に気温が上がり,快晴.11:00頃到着をめどに,コサナエ属などの羽化を見に行きました.着くやいなや,池の縁からコサナエ属が飛び上がり樹林の中の方に飛び去っていきました.羽化しているようです.羽化している個体を刺激しないように水際に目を凝らすと,1頭のコサナエ属トンボが羽化をしていました.どうやらオグマサナエのようです.


▲羽化するオグマサナエのオス.▲

羽化しているオグマサナエとフタスジサナエは,いずれも胸側条が1本しか見えず紛らわしいのですが,昨年検討したように複眼背面が灰色っぽい色ということと,この写真では尾部付属器上の突起が確認できるので,そのように判断できました.羽化したあとの羽化殻も予想どおり,オグマサナエでした.羽化殻は2個見つけましたので,2頭羽化していたことになります.この池にオグマサナエがいることは間違いないのですが,個体数は少ないです.

さらに探しますと,もう1頭羽化している個体がいました.よく見るとこれはタベサナエです.


▲隣で羽化していたタベサナエのオス.▲

タベサナエも,この羽化個体以外に1の羽化殻を採っていますので,合計2頭は羽化していたと言えるでしょう.さらに中身の入った幼虫が顔を出して定位していました.タベサナエのここの個体群は羽化が始まったと言えるでしょう.


▲水面から上半身を出し,羽化を待つタベサナエ.▲

さらに小径を歩きますと,合計5頭ほどの処女飛行を観察しました.処女飛行していた個体はすべてタベサナエのようです.


▲処女飛行に飛び立って止まったタベサナエたち.▲

いつものようにこの後に二つの池を回りましたが,そこではコサナエ属やシオヤトンボの姿は見られませんでした.オツネントンボのいた池ではオスが3,4頭飛ぶだけでした.

最後にゲストを紹介しておきます.春のこの時期にだけ姿を見せるギフチョウです.天然物のギフチョウにはなかなか出会えないので,紹介しておきます.コバノミツバツツジに吸蜜しに来ていました.


▲ギフチョウに出会えた.▲

今サクラが満開で,少し散り始めました.ちょうどこの時期に羽化するのが,オグマサナエとタベサナエです.本当に生物季節はしっかりと同調していますね.


▲満開のサクラ.少し前は4月1日にこの状態だった.▲

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No.03. オグマサナエ,オス羽化
No.04. タベサナエ,オス羽化・未熟個体.

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No. 947. 日本海側のホソミオツネントンボ.2024.4.7.

今日はお花見をかねて兵庫県の北部へ出かけました.北部の方はすでに満開状態で,一部散り始めています.何故か兵庫県北部の方が南部より春が早いような気がしています.いつも4月中旬以降にホソミオツネントンボを見に行くのですが,少し早いこの時期はどうだろうということで初めて出かけました.

12:00過ぎ,外気温25℃.なんと夏日です.フェーン現象なのでしょうか,南部より気温が高い気がします.ホソミオツネントンボはたくさん池に集まり,繁殖活動を行っていました.南部では昨日初めて見たのですが,この感じでは昨日もたくさん集まっていたように思えますし,出現はもっと早かったかもしれません.北部にはオツネントンボが分布しないので,ホソミオツネントンボが春一番です.ホソミイトトンボはまだ姿を現していませんでした.もちろんシオヤトンボやコサナエの姿もありません.


▲兵庫北部の春一番はホソミオツネントンボだ.▲


▲たくさんのホソミオツネントンボが繁殖活動をしていた.7頭写っている.▲

今年は3月11日を皮切りに,すでに9回観察に来ています(1回は何もいなかったので報告せず).成虫越冬種以外にはなかなか出会えていませんが,今が桜の満開なので,そんなものでしょう.あと1週間もすれば桜が散り始め,花びらが浮かんだ水面でタベサナエなどの羽化が見られるでしょう.昨年は3月が暖かかったので,異常に早く出ていたようですね.


▲産卵するホソミオツネントンボ.▲

メスで褐色のものがいますが,これはこのまま青くならずに生涯を終える個体のようですね.あと,ホソミイトトンボを探しに行かなくては...

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No. 946. ホソミオツネントンボ始動.2024.4.6.

今日も先日と同じ場所へ早春のトンボを探しに行きました.だいたい桜が散り始めるころにコサナエ属が羽化を始めますので,やっと満開近くになった今日この頃では,まだコサナエ属の羽化は始まっていないでしょう.案の定その通りでした.コサナエ属もシオヤトンボも羽化していませんでした.

ということで成虫越冬種ねらいということになりますが,ホソミオツネントンボが2♂1♀いました.そのうち1♂1♀はタンデムになって産卵していました.


▲ホソミオツネントンボの♂と産卵ペア.▲

産卵ペアは敏感で,近づくことができませんでした.ここは先日オツネントンボを見つけたところで,オツネントンボは今日もそこそこいて,産卵も3組ほどが行っていました.


▲曇ってきて少し気温は上がりきっていなかったが,元気に産卵をしていた.▲

まだまだ池は賑やかではなく,やっと成虫越冬種が活動を始めたというところです.今年は3月の冷え込みが効いているのでしょうね.

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No.02 ホソミオツネントンボ,♂♀

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No. 945. 他のトンボを見に行った.2024.4.2.

オツネントンボの観察はひとまずおいて,今日は他のトンボ,特にホソミオツネントンボやホソミイトトンボを探しに行きました.コサナエ属の仲間はまだちょっと早いと思いますが,シオヤトンボなら見られるかもしれません.全部で3つの池を回ってきました.まだ他のトンボたちは姿を見せていませんでした.かわりに,最後の池で,オツネントンボを見ました.何年か前,オツネントンボに出会えなくて探し回ったことがありましたが,今年は出歩くたびに遭遇しています.

3つ目の池は,スゲが伸び始めていて,水面から10cmほど突き出ている状態でした.オツネントンボはそこに止まって産卵をしていました.やはり基本的には,オツネントンボは水面より高い位置に産卵するのが好きなようです.


▲水面より高い位置に産卵するのが好きなようだ.▲

▲ちぎれたスゲの葉が産卵基質のときは水面の位置でも産卵する.▲

この場所には,単独のオスが3頭ほど見られました.タンデムペアは最大2ペアです.昨日まで行っていた池と比べると数は少ないですね.

▲単独オスは3頭程度いたように思う.▲

シーズン終わりにキトンボの報告ばかりになるみたいに,今年のシーズン初めはオツネントンボの報告一色になってしまっています.同じ成虫越冬種のホソミイトトンボやホソミオツネントンボは,後者はごく一部に分布するも,北海道にはほとんど分布していません.対してオツネントンボは北海道全域に分布しており,逆に九州北部より南方には分布していません.つまり,より北方に分布が広がって寒冷地に適応しているのがオツネントンボということになります.

昨年もオツネントンボは4月1日には元気に繁殖活動していました.少し前は4月上旬ごろに繁殖活動を始めていたように思いますし,もっと前の1990年代では,4月中旬くらいに盛んに繁殖活動をしていたように思います.だんだんと繁殖開始時期が早くなっています.対して,ホソミオツネントンボやホソミイトトンボは,少し遅れて4月中下旬に繁殖活動を始めます.1990年代あたりでは,成虫越冬3種が混じって活動をしていました.しかし去年や今年は,オツネントンボがいち早く繁殖活動を開始しているのに,他の2種は姿を見せていません.最近の気温上昇に,より寒冷地に適応したオツネントンボが,より敏感に反応しているように見えます.

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No. 944. オツネントンボのビデオ記録.2024.4.1.

今日はオツネントンボのビデオ記録を録りに出かけてきました.今まで何度となくチャンスはあったのですが,意外と記録が録れていなかったためです.「兵庫県とその近隣のトンボたち」のページの欠落部分を埋めることができました.動画はYouTubeにアップしました.今年はWebサイト「神戸のトンボ」を充実させていければと思っています.

▲春一番! オツネントンボの活動▲

そのあと,谷筋を散歩しながらトンボを探しましたが,太陽が雲に隠れ,全くトンボの姿はありませんでした.今のところ元気なのはオツネントンボだけです.

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