No.705. 北海道のトンボたち(2).2019.7.19.

 朝目が覚めましたら,空はどんよりした曇り空.データ放送で天気予報を確認したら,私の居るあたりは終日曇り.少し北の方へ行けば晴れ間も出るらしい.しかし北海道の少し北というのは,片道100kmを超える距離.まあ,だめもとで,予定通りの行動をとることにしました.ホテルから少しで行ける公園の池にまず行ってみました.この曇り空で,トンボの活動状態を見ようというわけです.

 公園の池では,アオイトトンボがたくさん羽化して飛んでいました.北海道ではエゾアオイトトンボが混じるので,慎重に見極めなければなりません.が,見た限りすべてアオイトトンボでした.そのほかに,池面にルリイトトンボがいて,草むらをたたき出すと,多分キタイトトンボと思われるメスが飛び出しました.いずれも写真には撮れませんでしたので,採集確認をしました.キタイトトンボらしいメスは,種名が確定できなかったので,持ち帰りました.

▲アオイトトンボのオスとメス.

 こんな曇天でもトンボは動いていることが分かったので,もう一つ近くの公園の池をのぞいてみました.たくさんのイトトンボが活動していました.北海道では,気温が20度もあれば,こんな曇天・強風でも,トンボが活動しているのですね.ただしトンボは,すべてクロイトトンボ,産卵もしていました.北海道まで来てクロイトトンボはないだろうとも思いましたが,気をよくして,今日の目的の池沼に行ってみることにしました.

▲曇天・強風・寒さの中,クロイトトンボはたくさん活動していた.

 しかしながら,この沼ではトンボの姿がほとんどありませんでした.大きな沼ですので強い風がもろに水面に吹きさらしています.それでもアカネ属のトンボが飛び立って風に飛ばされるように飛んだので捕まえてみると,マユタテアカネでした.たくさんのマユタテアカネのテネラルな個体が見られました.その他はシオカラトンボが1,2頭.神戸と変わりませんね.待っていても天候は回復しそうにありませんので,曇天の探索モードに切り替えました.風が当たりにくい木の陰などの草むらに集まっているはずです.

▲マユタテアカネのメス.

 しばらく探すと,まず見つけたのがキタイトトンボ.北海道では普通種ですが,神戸から来た私にとっては,目的の一種です.そのあとすぐメスも見つけました.はじめこのメスはアジアイトトンボに見えたのですが,よく見ると全然違います.いちおう,北海道特産のトンボを見られたのでほっとしました.これ以外には,ルリイトトンボ,エゾイトトンボが見られました.

▲草むらにたむろしていたキタイトトンボたち.
▲ルリイトトンボのオス.
▲エゾイトトンボのオス.

 これ以上はいくら探しても見つかりませんので,明日に期待して,今日はこれで終えることにしました.車で道を移動しているとき,エゾシカに会いました.

▲今日のゲスト,メスのエゾシカ.
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No.704. 北海道のトンボたち(1) 2019.7.14., 17

北海道へトンボを見に行ってきました.家族旅行のついでにトンボも見てみようというわけです.もっとも家族旅行といっても夫婦二人だけですが.いきなりですが,結論的にいうと,ひどいトンボ観察行でした.7月19日から7月25日までの6泊7日の調査のうち,晴れたのは24時間だけ.あとは,曇りで寒く強風が吹く日がほとんどでした.地元にいればまずトンボを見に行かないような日ばかりでした.そういうことでほとんど成果なしでしたが,これはブログですから,そういうことの報告でもいいでしょう.

今日は,家族旅行の中で見たトンボたちを紹介しておきましょう.7月14日に富良野でジンギスカンを食べたのですが,開店を待つ間の散策でノシメトンボを見ました.このうちオスの方は,右前翅にノシメ斑がないちょっぴり異常な個体でした.北海道で見るノシメトンボも神戸で見るのと変わりありません.

▲ノシメトンボのメス.近くに水のあるところがないので,移動してきたのだろう.
▲ノシメトンボのオス.右前に先端に褐色部分がない.

次は,7月17日に知床五湖のガイドツアーに行ったときのトンボたちです.場所を明らかにしていますが,国立公園で世界遺産,ヒグマがうろうろ,しかもガイド付きでないと入ることが出来ない場所ですから,問題ないでしょう.それに普通種ばかりです.この日は朝から晴れていたこともあって,トンボたちの元気な姿を見ることができました.ガイドツアーは五湖から逆順番で回ることになっています.まずは五湖.

▲知床五湖の五湖.
▲これは何が羽化しているのだろう? 多分ルリイトトンボだと思うのだが...
▲これは正真正銘のルリイトトンボ.
▲ヨツボシトンボのオス.

五湖を訪れたときは日が十分に差しており,トンボたちが飛び交っていました.カラカネトンボが池の周囲を飛び,カオジロトンボも飛んでいました.カオジロトンボの写真は失敗しました.ヨツボシトンボが今頃いるというのはさすが北海道ですね.ルリイトトンボも4,5頭見られました.次は四湖.

▲四湖.

四湖も五湖と同じようにたくさんのトンボがいました.ルリイトトンボ,カラカネトンボ,クロイトトンボ(北海道にもたくさんいました)などです.ガイドさんの指示で動いているので,勝手なことが出来ず,思うようには写真は撮れません.皆さんは記念写真を撮っているのですが,私はトンボばかり見ています.

▲ルリイトトンボのオスたち.
▲北海道のクロイトトンボのペア.
▲ホバリングを交えて池の周囲を飛び回るカラカネトンボのオス.

晴れていた空模様が,次の三湖に行くに従って,曇り始めました.三湖は結構大きく,曇り始めたせいかトンボも少なかったように思います.いたのは,なんとシオカラトンボ,そしてエゾイトトンボでした.

▲三湖.
▲シオカラトンボのオス.
▲日陰の部分に止まっていたエゾイトトンボのオス.

二湖についたときにはすっかりと曇ってしまい,トンボは本当に見られなくなりました.北海道のトンボは,神戸でいえば秋のトンボたちに似て,日が陰るとすぐに姿を隠してしまうようです.それでも高いところをオオルリボシヤンマらしいトンボが飛んでいました.

▲二湖.
▲オオルリボシヤンマらしいヤンマが上空を飛んでいた.

この二湖から一湖へ行く途中,ヒグマに出くわしました.30mの至近距離で,ガイドさんもクマスプレィに手をやるほど緊張感が走りました.そのときは私はあまり何も感じませんでしたが,今思うと,かなり危ない状況だったのかなぁと思います.ということで今日はここまで,次回からはトンボ観察行の記録を紹介します.ほとんど期待しないでください.

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No.703. カトリヤンマの羽化.2019.7.4.

先日採集してきたカトリヤンマが羽化し,カトリヤンマであることが確定されました.カトリヤンマの幼虫は特徴的な形態をしているため,まず間違うことはありませんが,それでも念のためというところでした.

▲カトリヤンマの幼虫が,上半身を素面から出して止まっている.7月3日.

上の写真は,採集後すぐに,特に翅芽が膨らんで羽化間近な個体を,飼育ケースに入れたところの写真です.3頭写っていて,一つは支持棒の裏側に止まっています.ヤンマの幼虫は結構人などの動きに反応し,このように支持物の陰に隠れようとします.右側の翅芽が白っぽくなっている個体は,もう胸部の気門で空気呼吸を開始しているのでしょう.上半身(胸部)が水面上に出ています.左側の個体は腹部先端を空中に出しています.まだ直腸呼吸をしていて,羽化が近く代謝が盛んなため空気から酸素を取り入れているのかも知れません.

▲水面から完全に出た状態.7月4日.
▲羽化したカトリヤンマ.7月4日.

羽化したカトリヤンマは放してやりました.すると,裏の木に止まったので,一枚写真を撮りました.

▲羽化直後のカトリヤンマのメス.

幼虫採集をすると,こうやって羽化が観察できるのですが,羽化しはじめを見つけてしまうと,結局羽化が終わるまで見ていたりして,数時間の観察ということもあります.

追加になります.7月6日,オスが羽化しました.

▲カトリヤンマのオス.7月6日.
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No.702. ナツアカネとカトリヤンマの幼虫.2019.7.2.

今日は,ホームページの充実のために,カトリヤンマとナツアカネの幼虫を採集に行きました.なんと,友人の案内で奈良県にまで出張しました.これらの幼虫は,水田で発生することが多く,かつては,どちらかというと非常に採集しやすい幼虫でした.しかし,今の兵庫県の水田の多くは,ほとんどトンボが発生しない状態になっています.おそらく使用薬剤の関係だと思います.

今日行ったのは,以前から継続的に薬剤を使っていないという水田で,ほんの十数分も採集したら,多数のカトリヤンマ,ナツアカネ,アキアカネの幼虫が入りました.これがかつての普通の水田の姿です.さらに,ホソミオツネントンボもたくさん網に入りました.先日あれほど苦労したのに,ここでは,到着後1分しないうちに数頭の幼虫が採れました.他には,アオイトトンボ幼虫や,キイトトンボやマユタテアカネの羽化が見られ,その他のタイコウチやコオイムシなどの水生昆虫もたくさんいました.まさに生きている水田でした.

▲ナツアカネの幼虫. 腹部第8節の側棘が長く,第9節後縁を越える.
▲ナツアカネの幼虫.
▲ホソミオツネントンボの幼虫.尾鰓の上縁・下縁に3つずつ褐色の小班が見える.
▲ホソミオツネントンボの幼虫.
▲カトリヤンマの幼虫.腹部背面の正中線に黒いスジが見られる.
▲カトリヤンマの幼虫.

以前は幼虫をよく採りに行きましたが,最近は本当に行く機会が少なくなりました.どこをすくっても,幼虫が入らないからです.久しぶりに昔を思い出したひとときでした.

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No.701. 幼虫の羽化確認.2019.6.29.

今日,先日採集してきた,ミヤマアカネの幼虫とホソミイトトンボの幼虫が自宅羽化し,それぞれ,ミヤマアカネ,ホソミイトトンボであることが確認できました.

▲家の柱で羽化したミヤマアカネの羽化殻.
▲羽化した個体.ミヤマアカネのメスである.

ミヤマアカネは夜中に羽化したみたいで,早朝にはすでに飛び立っていて,電気をつけたらそこに飛んできました.一方,ホソミイトトンボの方は,私が起床してから羽化したみたいで,まだ,支持棒に止まっていました.

▲羽化したホソミイトトンボのメス.
▲羽化して飛んだホソミイトトンボのもう一つの個体.
▲ホソミイトトンボの羽化殻.

ホソミイトトンボは2頭羽化していました.いずれにしても,これで,採集個体が間違いなくミヤマアカネとホソミイトトンボであることが確認できました.

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No.700. ハッチョウトンボの観察.2019.6.25.

今はトンボの端境期で,春のトンボが姿を消し,夏のトンボの出始めの時期です.この時期が最盛期のトンボの一つにキイロサナエがあります.今日はそれを見に行く予定でした.しかし現地に着くと,今年は発生数が少ないのか,パラパラとまばらにしかオスが止まっていません.トンボは,ある年突然数が少なくなることがあるので,あまり気にしないようにしたいですが,ちょっと心配ではあります.

▲今日の観察予定だったキイロサナエのオスたち.

キイロサナエがいたすぐ横の流れの畔で,未熟なアキアカネが草陰に止まっていました.数は結構いて,今が羽化期のようです.近くの休耕湿地で幼虫をすくってみると,たくさんはいりましたので,ここから羽化したのでしょう.

▲草陰に入り込んで休息するテネラルなアキアカネのオス(上)とメス(下).

今日のもう一つの目的に,ホソミオツネントンボの幼虫採集があります.この春に紹介したように,たくさん産卵していたところがあるので,ここで幼虫を採集しようというわけです.ホソミオツネントンボの幼虫はどういうわけかいつもあまり網に入らないのですが,今日もまたその通りになりました.小一時間すくって,やっと1頭という感じでした.ネキトンボやショウジョウトンボやギンヤンマの幼虫がたくさん網に入ったので,これらに捕食されてしまったのかも知れません.

▲ホソミオツネントンボの幼虫.

この幼虫,尾鰓がふぞろいです.おそらく失われて再生してきたものでしょう.他の捕食者に食いつかれたのかも知れません.アオイトトンボに似ていますが,尾鰓が違います.また大きさは,アオイトトンボの約半分しかありません.成虫の大きさに比べて幼虫がかなり小さいような気がします.

ということで,いちおう採れはしたものの,なんとなく消化不良の感じです.池ではショウジョウトンボが元気に飛び回っており,コフキトンボも少しだけいました.

▲ショウジョウトンボのオス.
▲コフキトンボのメス.

ということで,まだ時間がありますし,端境期に最盛期が重なる数少ないトンボ,ハッチョウトンボを見に行くことにしました.このハッチョウトンボ,時間的にもお昼前で,ちょうど産卵時間帯になっていました.ほとんど待つことなく4,5回の産卵を観察することができました.写真とビデオに記録しました.

▲ハッチョウトンボのオスとメス.

ハッチョウトンボは1m間隔くらいで止まっていて,それが縄張りの大きさのようです.他のオスが入ってくると,目にもとまらぬ速さでぐるぐると飛び回って追い払います.そんなとき,メスが入ってくると,それを捕まえて交尾します.交尾は十数秒と非常に短時間です.

▲ハッチョウトンボの交尾.
▲交尾が終わって,放されたメス.しばらく静止するのが普通である.左後翅がちょっと変?
▲少し産卵行動を取ると,パッと止まって,しばらく静止する.
▲また産卵を開始する.
▲また止まる.
▲また産卵再開.
▲オスは飛んだり止まったりして警護する.

もう一つ別のカップルでは,オスがやたらにメスに接近して警護しました.このカップルは交尾の写真が撮れませんでした.交尾が終わってオスがメスを放した後,このオスはメスの後方でホバリングし,その後飛んでいるときも止まっているときも,接近して警護活動を続けました.今度はそういったところを記録してみました.

▲交尾が終わってオスがメスを放したところ.オスはメスが気になって仕方ないのか,離れない.
▲産卵を始めたが,上空でオスが見まもっている.
▲産卵を始めても,近距離を飛び回るオス.

メスが産卵を続けていると,やがて他のオスに見つかってしまいます.オスはメスのそばに付き添いながらも,まわりのオスを追い払いにかかります.メスは素知らん顔で産卵を続けます.まるで,「私の産卵の邪魔をしないように,交尾オスさんしっかりと他のオスを近づけないようにしてね.」と言っているようです.

▲交尾オスが頑張ってたのオスを追い払っている間に,悠々と産卵を続けるメス.

しかし,オスがたくさんいる状況では,1頭のオスの力だけでは,次々にやって来る他のオスたちを追い払うことはできません.このメスもとうとう他のオスに捕まり交尾を強要されてしまいました.最初の交尾オスくんの努力は最後までは報われませんでした.

▲上と同じメスが,産卵中に他のオスにつかまり交尾をした.
▲その後も産卵を続けたメス.

交尾直後のオスの静止がもっとも受精率が高いので,後半の卵は,2頭目のオスの子孫が大部分でしょう.しかし,この産卵は短時間で終了し,メスは湿地横の草むらに止まりました.ただ,やたらと腹部を曲げて,なにやら違和感を感じているような動作を続けました.

▲腹部を曲げて何をしているのだろうか,産卵が終わった上のメスである.

こんな感じで,中身は濃かったですが,時間的には40分ほどの観察でした.ホソミオツネントンボの幼虫をすくっている時間の方が長かったような気がします.ところで,まだ正午過ぎです.とにかく腹ごしらえをして,午後は,これもこの端境期に繁殖最盛期があって,ちょうど午後に産卵するモートンイトトンボを見に行くことにしました.

▲モートンイトトンボのオス.
▲モートンイトトンボの成熟メス.

慎重に湿地の草の間を探しましたが,産卵しているらしいメスの姿はありませんでした.ただ何かのイトトンボが次々に羽化しているのが目に付きました.アジアイトトンボのように見えましたが,写真を撮ってみると,ホソミイトトンボでした.

▲ホソミイトトンボの羽化直後のオス.

そこにたくさん居たものを観察すると言う鉄則に従って,ホソミイトトンボの幼虫をさがしてみることにしました.ホソミイトトンボの幼虫は,出現期間が短いために,うまく採集することが難しいイトトンボです.網を入れてみると,案の定,ホソミイトトンボが入りました.この幼虫も非常に小さく,モートンイトトンボと変わりないほどです.十数ミリの体長しかありません.

▲ホソミイトトンボの幼虫.アジアイトトンボによく似ている.

ということで,700回目のブログは,目的外の成果があった一日の報告でした.

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No.699. ミヤマアカネの幼虫.2019.6.21.

今日はホームページの充実のために,ミヤマアカネの幼虫を採りに行きました.「兵庫県とその近隣のトンボたち」のページでは幼虫の生体写真を掲載しています.そこではまだ何種類かの幼虫が未掲載です.そのうちの一つ,ミヤマアカネの幼虫を,今日は採って撮影することにしました.

▲ミヤマアカネの幼虫.

ミヤマアカネの幼虫採集で難しいのは,マユタテアカネとの区別です.だいたい,ミヤマアカネの生息するところには,マユタテアカネも生息しています.ミヤマアカネは川の生息者でマユタテアカネは池の生息者ですが,マユタテアカネが川に入り込んでいるのです.今日採れた中にもマユタテアカネが混じっていました.

▲マユタテアカネの幼虫.

写真で見ると色が若干違いますが,これは個体差があるので,判別の手がかりにはなりません.また赤とんぼ(アカネ属)の幼虫の区別点としてよく使われる,腹部第8,9節の側棘の長さや形態も,ほとんど判別不可能なくらい似ています.

▲腹部第8,9節の側棘の長さと形態.左:ミヤマアカネ,右:マユタテアカネ.

唯一確実なのは,前下唇の下唇前基節の縦横比です.前下唇の形態自体も,マユタテアカネの方がミヤマアカネよりやや細長い感じがします.「感じ」ではいけないので,実際の下唇前基節の縦横比を取ってみますと,ずいぶん違うことが分かります.

▲前下唇を腹面から比較したもの.左:ミヤマアカネ,右:マユタテアカネ.
▲下唇前基節の縦横比を画像から計算したもの.左:ミヤマアカネ,右:マユタテアカネ.

ミヤマアカネの方が,前下唇がずんぐりしている感じがしませんか? またマユタテアカネには,小さな褐色斑があります.この違いは,どちらか一方だけ見ているとまったく自信がなくなるほど,微妙です.家には確実な標本があるので,まずそれを使って比較しましたら,採集したうちの1頭だけがマユタテアカネで,他はミヤマアカネと判別できました.やはり,トンボの研究をするには,最小限の標本が必要です.1頭だけ翅芽が膨らんでいて羽化しそうな幼虫がいるので,羽化させて最終確認をしますが,おそらく判定の間違いはないと思います.

もう一度,マユタテアカネとよく似た色彩の黒っぽいミヤマアカネとの比較をしてみましょう.よく見ると,ミヤマアカネの方がなんとなく丸っこい感じに見えます.頭部も丸みがあるし,腹部のラインも丸まっています.一方マユタテアカネは頭も三角だし,腹部のラインも直線的で,角ばった感じですね.写真に撮ってじっと見ていると,やはり違うなという認識になります.人間の眼はすごいもんですね.

▲ミヤマアカネの幼虫.黒っぽい色彩をした個体.全体が丸みを帯びている感じ.
▲マユタテアカネの幼虫.頭部の細まり方や腹部のラインがやや直線的に見える.

あと「近畿とその近隣のトンボたち」では,カトリヤンマ,ナツアカネ,ホソミオツネントンボなど,これから夏に向けて終齢になる幼虫が残っていますので,それらのページも今年中に完成させたいと考えています.

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No.698. ミヤマカワトンボ.2019.6.20.

早いもので,気がついたら明日は夏至.間もなく日長が短くなり始める時期になりました.トンボも折り返し点にやって来た感じです.今日はミヤマカワトンボを見に行ってきました.あちこちでパラパラ見かける普通種ですが,まとまっているところへは,ちょっと足を伸ばさなければなりません.産卵はお昼以降が普通ですので,ゆっくりと出かけました.

▲ミヤマカワトンボのオス.
▲ミヤマカワトンボのメス.

ミヤマカワトンボはあちこちで見かける割には,産卵している姿を見ることが少ないように思います.一方ニホンカワトンボ,アオハダトンボ,ハグロトンボなどは,たくさん産卵している姿を,割合に簡単に目にすることができます.普段はあまり考えないのですが,よくよく考えると,同じカワトンボなのにちょっと不思議な感じがします.これはおそらく,潜水産卵を通常の産卵モードにしているためだと思われます.今までの数少ない観察で,ミヤマカワトンボはすべて潜水しましたし,潜水した後,水面から見えないような位置に入り込み,隠れてしまうのです.ですから,潜水するところを見ない限り,見つけることが非常に困難になってしまいます.

▲交尾後,産卵行動に入るやいなや,頭から潜ってしまったミヤマカワトンボのメス.
▲潜ってしまうと,水面の波もあって,非常に見にくくなる(これは見やすいのを選んだ).

今日は現地には11:00少し前に入りました.ミヤマカワトンボは,オスもメスも流れに止まって,時々飛んでは小昆虫をつかまえて摂食活動をしています.よく観察してみると,オスとメスはランダムに止まっているのではないようです.オスはきちんと縄張りを持っているようで,他のオスに対する排他行動が見られます.そしてその縄張りの中や周囲にメスが止まっています.オスがホバリングしながら近づいても交尾拒否姿勢をとって,交尾は許しません.でも,メスは,オスから逃げることなく,時々オスの周囲を飛んだりして,むしろ気を引くようなそぶりを見せます.オスは反応してホバリングして近づきますが,やはり交尾はできません.

▲写真のようにオスのそばにメスが止まっていることが多い.
▲縄張りオス.時々翅を開く.
▲オスの縄張りの中の小石に止まっているメス.

アオハダトンボの観察でも感じたことですが,ある時間が来ると突然メスに産卵衝動が起きるように見えます.じっさい,近くに止まって,オスがしきりに気にしているメスの1頭が,突然交尾を許しました.それまで,オスのモーションには肩すかしを続けていたメスがです.

▲ミヤマカワトンボの移精行動.タンデムになったらまずは移精行動を行う.
▲交尾.
▲オスが離れたた後のメス.腹部先端をこすりつける動作をよく見かける.
▲そして潜水産卵を行う.

このメスはこのあと,すぐに潜水産卵に入りました.きょうはこの1組だけが交尾・産卵に至りました.他のカップル?は,結局メスが交尾を許すことなく,終わってしまいました.今度は水中カメラを持っていきたいと思います.

さて,この川には,まだニホンカワトンボが生き残っていました.もう老熟してボロボロな感じです.このあたりはかつて,ニホンカワトンボ(オオカワトンボ)の5つの型がすべて見られることで有名でした.今日の観察でもその片鱗,無色翅型オスがいました.

▲ニホンカワトンボ,橙色翅型オス.f.nawai
▲ニホンカワトンボ,淡橙色型メス.f.nawai
▲ニホンカワトンボ,無色翅型オス.

あと,アオハダトンボが1頭だけ止まっていました.近くに生息場所があるのでしょうか.

▲アオハダトンボのオス.これ1頭だけが見られた.

普通種でもなかなか手強いミヤマカワトンボでした.もう一度チャレンジしたい感じです.アップロードしたミヤマカワトンボのビデオにリンクしておきます.

▲兵庫とその近隣のトンボたち:ミヤマカワトンボのビデオ(MP4)
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No.697. アオサナエを見に行ったが.2019.6.18.

梅雨入り前の最後の晴れ,とかいう天気予報で,とにかく出かけてきました.この時期端境期で意外と観るものがないので,アオサナエをもう一度見に行くことにしました.でも,今年はは個体群密度が低いのか,オスがちらほらいただけでした.

▲アオサナエのオス.のべ3頭を見かけただけであった.

アオサナエを待っているときに,アオハダトンボが集まっているところを見つけたので,しばらく観察をしてみました.ここのアオハダトンボは今が旬のようで,若々しく輝いたオスメスが,繁殖活動を展開していました.

▲アオハダトンボの交尾.
▲アオハダトンボのオス.
▲アオハダトンボのメス.

上のオスはいい縄張りを持っているようで,オスの見まもるなか,2頭のメスが産卵をしていました.ここはコカナダモなどはなく,清流のイメージが残る川でした.太陽光が射すと,水がもっと輝くのですけど...

▲縄張りオスと,産卵するメスたち.

晴れの予報にしては雲が切れず,ずっと薄曇り状態です.アオサナエはお昼前には諦めて,ムカシヤンマが生き残っているかどうか見に行くことにしました.しかしまったくその気配がありませんでした.農道を歩いていると,車にひかれたメスや,原因不明の死亡メスが,道路上に落ちていました.こうやってメスも減っていくんですね.ムカシヤンマも終わりだよって言われているようでした.

▲車にひかれてぺちゃんこになっているムカシヤンマのメス.
▲ムカシヤンマのメスの原因不明の死亡個体.地面に転がっていました.

ムカシヤンマがよく止まっていたこの農道も,コオニヤンマが飛び交う季節になっていました.こいつは獰猛なヤツですから,他の弱った老熟個体は,どんどん減っていくように思います.天気のせいかトンボたちの動きももう一つでしたので,今日はこれで終わりにしました.

▲コオニヤンマの未熟なオス.
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No.696. ハラビロトンボの観察と… 2019.6.13.

今日は全国的にどこの天気予報も晴れ一色.そこで,この時期が旬のハラビロトンボの観察に行くことにしました.極めて普通種で,あちこちで見かけるトンボですが,群れるほどたくさんいるところは限られています.そしてその後は,今見られるトンボたちの状況を記録しておきます.

▲成熟段階の違うオスどうしが闘争を繰り広げている.

現地には9:30ころに入りました.もう気温も十分高く,ハラビロトンボたちは元気に飛び回っていました.メスもすぐに入ってきて.次々と産卵をしていました.湿地というか休耕田でオスメスが共同生活しているようなものですから,産卵を観察するのに不自由はありません.産卵に入ってきたメスは,もう,すぐにオスに見つかってしまいます.そして交尾しながら飛び回り,他のオスがそれを追いかけ回しと,1頭のメスに5,6頭のオスが群がります.もう乱痴気騒ぎのようです.

▲しばらく交尾飛翔した後,落ち着いたら止まって交尾を継続する.
▲交尾が終わるとオスはメスを放す.そしてメスはしばらく止まってじっとしている時間がある.
▲そしておもむろに産卵を始めるが,他のオスがそれをめざとく見つけ,交尾することも多い.
▲同じオス,別のオス,メスは産卵中に何度も交尾を強要される.

何度かこういうことをしているうちに,ちょっとした隙ができるのでしょう,メスはしばらく産卵を続けます.もちろん,交尾オスは上空で警護しています.しかし,しょっちゅう他のオスが干渉してくるので,それを追いかけ回している間に,メスを取られてしまうこともしばしばです.

▲再び産卵を開始するメス.
▲オスは上空でホバリングしながら警護する.
▲湿地のわずかに開けた水面で打水産卵を行う.
▲時には,茂みの中にもぐり込むようにして産卵することもある.
▲産卵時間は意外と短い.2,3分で飛び去ってしまう.

さて,この休耕湿地には,モートンイトトンボもいます.今日は産卵を見るのは止めて,記録だけ撮りました.メスは未熟な橙色の個体より,成熟した薄緑色の個体の方が目立ちました.もう十分な繁殖活動期に入っていました.

▲モートンイトトンボのオス.
▲モートンイトトンボの未熟なメス.
▲モートンイトトンボの成熟メスの飛翔.

さて,午後からは,別の池に普通種のトンボを見に行くことにしました.この時期は,毎年そうですが,春のトンボの生き残りと,夏のトンボが一緒に見られる時期です.まずは,コフキトンボ.このトンボ私はこの時期の若く美しい個体が好きです.しばらくすると,オスは特に粉が濃くなり,シミが出てきます.

▲風が強いせいでしょうか,みんな同じ向きを向いて止まっていました.

次は春の生き残りのトンボたち.シオヤトンボにヨツボシトンボ,そして写真には撮れませんでしたが,トラフトンボらしいのも飛んでいました.まだ頑張っているんですね.クロスジギンヤンマはまだしばらくは頑張り続ける感じです.

▲シオヤトンボのオス.
▲ヨツボシトンボのメス.まだお腹には卵がいっぱい詰まっているようだ.
▲クロスジギンヤンマのオス.

もう夏のトンボたちもほぼ完全に勢揃いしていました.オオイトトンボ,クロイトトンボ,キイトトンボ,オオヤマトンボ,ハッチョウトンボ,ショウジョウトンボ,コシアキトンボ,シオカラトンボ,…

▲オオヤマトンボのオス.池の周囲をパトロール中.
▲オオイトトンボの産卵.オスは翅をブンブンいわせている.
▲クロイトトンボのオスがメスを捕まえたとき,水に落ちて翅が水に捕らえられてしまった.
▲夏の代表的イトトンボ,キイトトンボの産卵.メスは黄色型.
▲こちらも夏の代表的な派手トンボ,ショウジョウトンボのオス.
▲ハッチョウトンボのオス.まだ数が少ない感じ.もう少しすればいっぱい飛ぶようになるであろう.
▲コシアキトンボの縄張りパトロール.一度交尾が成立したが,メスは産卵せず飛び去った.
▲シオカラトンボの若いメス.眼のエメラルドグリーンは独特.

見に行った一つの池で10種類以上のトンボがいたことになります.この時期は,一年中でトンボが一番多く出現する時期です.さて,最後はキイロサナエ.オスはすでに水辺に出ていましたが,数はまだ少なく,産卵シーズンは少し先になるような気配です.あと10日くらい後に来ると,激しい繁殖活動が見られるような気がします.

▲キイロサナエのオス.

今日一日で15種のトンボを記録できました.ヤマサナエに出会えなかったのが不思議です.全部の観察が終わってから,去年オナガアカネが産卵していたところへ行ってみました.幼虫をさがそうという魂胆でしたが,産卵していた湿地は,完全に水がなく乾燥した状態になっていました.ということで,今日はここまでにします.

カテゴリー: 兵庫県のトンボ, 観察記 | No.696. ハラビロトンボの観察と… 2019.6.13. はコメントを受け付けていません。