Mo. 932. ヤンマ探し.2023.8.3.

いやはや,最近の暑さには降参というところです.しかし8月に入り,夏のトンボの最盛期になりました.暑さに負けず出かけるときが来たようです.夏のトンボといえばヤンマ類,そしてオナガサナエやナゴヤサナエ.ちょっと頑張って,このあたりを攻めることにしました.ただ最近のガソリン代の高騰,おいそれと遠方へ何回も出かけることが難しくなってきました.ということで,今日は兵庫北部へ,ナゴヤサナエ,ヤブヤンマ,ネアカヨシヤンマ,マルタンヤンマ,そしてついでにヒヌマイトトンボの様子を見に,一気に出かけることにしました.

まずはナゴヤサナエが健在かどうか,...ちょっと到着が遅かったせいか,トンボは何も飛んでいませんでした.気温はすでに35℃,シオカラトンボでさえ日陰を飛んでいました.負けずに次のヤブヤンマへ.しかしヤブヤンマの産卵場所は水が干上がっており,これではやって来ません.連日のこの暑さですから仕方ありません.連続アウトを食らいました.仕方なく次はヒヌマイトトンボを様子を見に行きました.しかしヒヌマイトトンボの姿は全く見えずでした.もう時期が遅いのでしょうかね.消えてなければいいのですが.アジアイトトンボが2頭飛んでいただけでした.これで3タテを食らいました.


▲あまりに暑いせいか,アジアイトトンボも葉の裏の日陰に止まる.▲

次はネアカヨシヤンマです.こいつは枯れた湿地に産卵に来るので,多分大丈夫でしょう.いつもの場所へ行って,午後2時を待ちました.にわかに雲が出てきて日差しが遮られ,少し暗くなりました.やって来ました.今日は2時6分前でした.空が暗くなったからかな? 今日は2頭産卵に入って来ました.最初に入ってきた個体にはなかなか近づかせてもらえず,撮れた写真は1枚だけでした.


▲この個体は若いメスだ.乾いた土の上で,イノシシの足跡に産卵する.▲

この個体は,あまりに追いかけ回したせいか,すぐに出て行ってしまいました.ただその後も時々戻ってきては遠いところで産卵していました.

比較的近寄らせてくれたのがもう1頭のメスです.


▲ウォーリーを探せでなく,ネアカを探せだ.どこにいるか分かりますか?▲

初めのうちはこの個体も,近づくとすぐに飛び立ってしまう感じでした.しかしだんだんとこちらが何もしないことに安心したのか,近づいてストロボを焚いても逃げなくなりました.かなり老熟しているようで,複眼も少し透き通った感じがなくなりつつあります.


▲最初はこんな感じで,近寄りにくい状態であった.▲


▲イノシシの足跡に産卵するのが好きだ.▲


▲やっと近づいても逃げなくなった.▲

さて,あまり長時間いて,彼女たちの邪魔をしてもいけないので,30分ほどでここを離れることにしました.次はマルタンヤンマを黄昏時に観察することです.早い目の夕食をとって,目的の新規開拓している場所に行きました.まあ,バッキー(ウスバキトンボ)とシオカラがうじゃうじゃ飛んでいました.ギンヤンマがその間をすいすい飛びます.

でも19:00まで頑張りましたが,全くマルタンヤンマは飛ばず,それどころか,ヤンマは,ギンヤンマ1頭,オニヤンマが1頭通り過ぎるように飛んだだけでした.暗くなるにつれバッキーとシオカラは1頭,また1頭と上空に舞い上がり,山の方に飛んでいきました.今日の眠りにつくのでしょうね.普通種といえども,これだけたくさんいて,いろいろとパフォーマンスを楽しませてくれると,退屈はしませんでした.

最近は黄昏飛翔も数が減っているように思えます.新規開拓をしても,全然飛ばないか,数頭通り過ぎるだけという感じです.やはりよく飛ぶと分かっている場所へ行くしかないのでしょうか.

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No. 931. 薮の中にヤンマを探す。2023.7.30.

あまりに暑い日が続くので,しばらく自宅にこもっていました。ただ,いよいよ夏のトンボの本番が到来しましたので,まずは薮の中のヤンマを探しに行きました。


▲カトリヤンマのオス.▲

まず見つけたのはカトリヤンマでした.きれいなオスで,もう複眼が透き通っていました.もう1頭見かけましたが,こちらは素早く飛び去ってしまいました.

幸先はよかったのですが,後が続きません.ヤブヤンマもマルタンヤンマも姿がありませんでした.一瞬の通り過ぎもなしでした.時刻がちょっと遅すぎたか,13:30ごろでしたから.

暑い中,林の中には,ヒメアカネの未熟な個体があちこちで飛んでいました.

▲ヒメアカネのオスとメス.秋を待っている.▲

あと,数が多かったのはオオシオカラトンボとコシアキトンボでした.オオシオカラトンボを紹介しておきましょう.


▲オオシオカラトンボのオスとメス.▲

下の写真は,ヤブヤンマが産卵する場所で,しばらく待っていたときのものです.

もっとも暑い昼下がり,早々に引き上げることにしました.おしまい.

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No. 930. ヤブヤンマの産卵.2023.7.22.

今日は,一番暑い14:00過ぎ,トンボたちはどうしてるかなと,日当たりのよい池に見に行くことにしました.いやはや夏のトンボたちは元気です.ギンヤンマ,コシアキトンボ,チョウトンボ,ショウジョウトンボ,シオカラトンボ,オオシオカラトンボ,クロイトトンボなど,日向でビュンビュン飛んで活動をしていました.普通種ばかりですが,たくさんいると,何か嬉しいです.ギンヤンマだけ紹介しておきます.


▲数が多くて池には入れないのだろうか,道の上を飛ぶギンヤンマのオス.▲

さて,一通り夏のトンボたちを見た後,今日の目的であるヤブヤンマを探しに行きました.ここは前から目をつけていたところで,昨年は姿を見ることができませんでしたが,今年はどうでしょうか?

林の中の薄暗い池に着くと,オオシオカラトンボに混じって,ヤブヤンマのメスが産卵にやってきていました.時刻は15:53です.兵庫北部ではだいたい正午前後に産卵に来るのですが,ここはかなり遅い午後に産卵活動をしていますね.


▲割合敏感で,ストロボを炊くと,すぐに場所を移動するヤブヤンマのメス.▲

追いかけながら撮影を続けていますと,もう1頭いました.2頭がもつれ合うように飛んだあと,もう一頭の個体が入れ替わるように私のそばで産卵を始めました.


▲やはりこちらも結構敏感に飛び立っては移動する.▲

草の陰などに入り込んで産卵することが多く,なかなか写真に撮りにくい感じでしたが,しばらく撮影を止めて観察を続けていると,このメスは私の方に飛んできて,私を隠れ蓑にするように私の足下に入り込んで,真下で産卵を始めました.私を危険な生物とは認めていないみたいです.


▲私の近くで産卵を続けるヤブヤンマのメス.▲

ここが近場でヤブヤンマの産卵が確実に撮れる場所であれば,兵庫北部まで行かなくてすみます.ただ,去年は不発に終わっていますので,数が少ないのかも知れません.今日はついていただけかもしれないので,黄昏飛翔を見に来てそれを確かめることにしました.

18:30に同じ場所に出かけました.約1時間黄昏飛翔を観察しましたが,ヤブヤンマがのべ5回ほど,マルタンヤンマが1頭通過していっただけでした.


▲通過していったマルタンヤンマのメス.▲


▲ヤブヤンマの飛翔.▲

まあ,この飛び方からいえることは,飛ぶ場所が違うのか,あるいは個体数が少ないのかのどちらかです.近いので,またぶらっと見に来ることにします.

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No. 929. ヒメサナエの観察。2023.1.17.

満を持してといいますか,今日は日付的にヒメサナエの観察にもっとも適した時期ですので,ヒメサナエの観察に出かけました。熱中症危険情報が出ていますが,だいたい本種は山中の日陰の川でじっと座って観察するので,ほとんど問題はありません。


▲ヒメサナエのオス.▲

「満を持して」などという書き出しをすると,たいがいあまりよくない結果が出ているのですが,全くその通りで,今日見かけたヒメサナエは,写真のオス1頭,そして飛び去る小型のサナエ1頭だけでした。昨年と同じ場所へ行ったのですが,昨年の賑わいはまったくありませんでした。さらに流程に沿って少し範囲を広げて探しても見つかりません。明らかに激減しています。上の写真の成熟状態から見て時期を間違っているとも考えられません。

ヒメサナエの幼虫期間は2年と考えられています。昨年はたくさんいたので来年また同程度出てくれば,この奇数年(今年が2023年なので)の繁殖個体群が著しい減少をしていると考えることができるかもしれません。生活史に興味がある私にとっては非常に興味深い現象に出会ったといえます。

この繁殖場所付近は大規模工事が行われたので,その工事が奇数年繁殖個体群の繁殖活動の時期または若齢幼虫の時期に大きな影響を与えたということが考えられます。というのは,この幼虫は川を流下することが知られており,実際この川で羽化殻が採れるのはずっと下流です。したがってまだ流下を始めていない小さな幼虫は繁殖場所にとどまっていて工事の影響を受けることが考えられます。

どのような形で影響したかは分かりませんが,とにかく来年の状況を見て,さらに再来年の状況を見て,判断するのがいいようです。もし増減が年毎に繰り返されるような状況が見られたならば,これは非常に面白い事例になります。トンボの生活史には年齢群分割という現象があるので,1ないし3年で羽化する個体もあると仮定すると,この状況は次第に平坦化されてくる可能性もあります。

ヒメサナエがいなかったことは残念でしたが,面白い研究テーマが見つかるかもしれません。

さて,まだ時間があったので,ヤンマの状況を見に行きました。そろそろ薮の中でトンボを探す季節になり始めているからです。結果はカトリヤンマのメス1頭を見つけただけでした。


▲薮の中に止まっていたカトリヤンマの未熟なメス。▲

ストロボを炊くと飛び立ちましたが,この場所が気に入っているのか,周辺をぐるっと回って戻ってきました。今日は暑いので,温度が適している微小環境の場所を感じ取っているのかもしれません。


▲舞い戻ってきたカトリヤンマ(上).その後1時間以上止まり続けていた(下).▲

いよいよ夏本番,夏のトンボたちを探しに行く季節が到来しました。熱中症と闘いながら観察を続けることになりそうです。今日も実はヤンマを探しているとき,妙に呼吸数が上がり,身の危険を感じました。皆さんもお気をつけください。

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No. 928. 神戸のトンボたちは… 2023.7.7.

梅雨の中休みとでもいうべき晴れが続いた,7月4日,6日,7日とフィールドに出てトンボを見に行きました.4日は,昨年6月末に早くもヒメサナエがたくさん集まって産卵をしていましたので,それを確認に出かけました.6日は神戸のトンボ調査で,かつてトンボがそれなりに見られた川へ出かけました.

ところが,4日はまだヒメサナエは1頭のみで,他にはコオニヤンマが1,2頭,ミヤマカワトンボが数頭見られました.まだヒメサナエは早かったようで,昨年に比べると出現が遅くなっているようです.というより,昨年が例外的に早かったのかもしれません.いつも7月の中旬ごろにヒメサナエを観察に行ってましたから.


▲7月4日のヒメサナエ観察はまだ早かったか.唯一のヒメサナエ.▲

これはこれで致し方ないと諦めて帰りました.そして6日に神戸のトンボ調査を行いました.オナガサナエやオジロサナエがよく羽化していた川で,ハグロトンボやニホンカワトンボもたくさんいました.その他,コオニヤンマ,キイロサナエ,ヤマサナエなども見られた川です.神戸市内でグンバイトンボが唯一たくさんいた川でもあります.


▲調査した神戸市内の川で,6月下旬には,かつてよく見られたオジロサナエ.▲


▲グンバイトンボの市内屈指の産地で,もたくさん見られた.▲


▲キイロサナエも羽化していた.▲

まあ,4日のことがあったので,端境期でトンボはあまり見られないかもしれない,と思いながら,流れをのぞいたり,流れの横にある薄暗い道を歩いて,トンボたちとの出会いを期待しました.たとえ端境期でも,ハグロトンボの未熟な個体は,流れのそばの薄暗い道にはよく潜り込んでいます.少なくともそれを期待したのでした.


▲この川にもきちんとハグロトンボはいたのだ.▲

しかしです.1時間以上川に沿って歩いたり川をのぞいたりしたものの,出会ったトンボは,コオニヤンマ1頭,ハラビロトンボ1頭だけでした.


▲7月4日,止まっていた,No.28:コオニヤンマのオス.▲


▲この場所にはあまりに合わないハラビロトンボのメス.▲

ハグロトンボも薄暗い道には全く姿がありません.本当に恐ろしいほどトンボがいません.シオカラトンボもいないのです.


▲調査した川の景観とハグロトンボを期待して歩いた流れに沿った道.▲

写真で分かるように,環境は,昔,神戸のトンボを調べていたときとほとんど変わっていません.かつてトンボがたくさんいたこの川はどうなってしまったのでしょう.調査しているときにちょうど草刈りをしている地元の方に話を伺うことが出来ました.「翅の黒いトンボは見たことがないが茶色のトンボは見た」とか「ここはまだホタルがいる,先日も見に来ている人がいた」とかいうお話でした.茶色い翅というとニホンカワトンボかミヤマカワトンボでしょう.

この川の上流には川を挟むようにゴルフ場があります.また水田地帯もあります.薬品によるトンボの減少の可能性が考えられる地勢になっています.でもゲンジボタルが生き残っているという点にちょっと合点のいかないものを感じました.ただ田植えの6月ごろは,ゲンジボタルは水から出ており,蛹または成虫のステージです.

ただ一つ,今がちょうど川のトンボの端境期になっており,トンボが見られない原因と考えられます.決着は幼虫調査しかありません.ただ今は幼虫が小さい時期なので,これは後日の話になります.そこで,今日7日,確実にトンボがいる川へ,端境期である今の状況を見に行くことにしました.


▲今日7日に出かけた川の景観.ツルヨシが茂っていて上の神戸の川と似ている.▲


▲ハグロトンボを期待して歩いた川に沿った薄暗い道.▲

できるだけ同じような環境ということで,川にはツルヨシが繁茂し,川に沿った薄暗い道のある場所を選びました.ここは毎年アオハダトンボを見に来る場所で,今年は来ることが出来なかったところでちょうどよい機会でもありました.

結果は歴然としていました.こちらの川に沿った薄暗い道には,ハグロトンボがたくさんいて,私が歩くとあちこちから飛びたちました.端境期だからこそ,未熟なハグロトンボはこういった薄暗い道の中に潜り込んでいるのです.なんかほっとしました.


▲薄暗い道や川沿いの竹林に潜り込んでいたハグロトンボたち.▲

川面に出てみると,数はもう減っていましたが,アオハダトンボがまだ活動をしていました.さらに次の川の主役たちであるコオニヤンマやオナガサナエも姿を見せていました.ただ昨年も感じましたが,かつてたくさんいたグンバイトンボは姿が見られませんでした.


▲まだ生き残って活動していたアオハダトンボたち.▲


▲次の川の主役,オナガサナエも出てきていた.▲


▲コオニヤンマも川に姿を見せ始めている.▲

確かに川で見られるトンボは数がとても少なく,今は初夏のトンボと盛夏のトンボの端境期であることが感じ取れます.しかし,初夏の生き残りがいたり,気の早い夏のトンボが出てきていたりして,それなりに川が生きている感じがします.

また川とは関係ありませんが,川沿いの道ではオオヤマトンボのメスが摂食飛翔をしていました.また時々止まったりもしました.


▲川沿いの道で出会ったオオヤマトンボのメス.▲

6日に行った神戸の川には,このような川のトンボの移り変わりの風景も,コオニヤンマが1頭ぽつりと止まっていたこと以外,まったくの沈黙状態でした.

前にも書きましたが,このサイトは「神戸のトンボ」と題して公開しています.神戸には94種類のトンボの記録があります.国家戦略としての生物多様性のモデル地域でもあります(した,と過去形の方がいいのかな?).なのにこれほどまでに昔の姿がなくなってしまったのはなぜなのでしょう?

風景は昔と大きく変わっていないところが多いのです.ここで紹介した川の写真でも,どこにでもある自然豊かな川の風景です.30年前にはそれなりにトンボがそこで見つかりました.でも今はそこにトンボ一匹飛んでいない.30年の間に開発が進んで環境が変わったのではないのです.私が歩いた道は「太陽と緑の道」というハイキングコースです.自然を味わうことの出来る市民の憩いの場所なのです.非常に複雑な気分です.

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No. 927. ウチワヤンマの観察と.2023.7.3.

今年はいつものところへ通うというより,あちこちへ出かけることが多くなっていて,アオハダトンボなど,いくつかのメンバーに出会うことなくシーズンが過ぎていこうとしています.そんな感じが強かったので,今日はいつもの場所へウチワヤンマとコフキトンボの観察に出かけました.


▲ウチワヤンマのオス.今年はたくさんいるように見えた.▲

いつものこの池は今年はきれいに掃除されている感じがします.池にキショウブの葉の切れ端などがほとんど浮かんでいないのです.ですから,浮遊物に卵を貼り付ける,ウチワヤンマ,コフキトンボ,コシアキトンボのオスたちの活動が,ちょっといつもと違うように見えました.コシアキトンボは結構広い範囲を飛んでいるし,コフキトンボはキショウブが生えているところ(そこはさすがに切れた葉が浮かんでいる)にかたまっています.そしてウチワヤンマは,枯れ枝が水に落ち込んでいるところになわばりを形成していました.


▲ウチワヤンマが止まっているところの典型.羽化殻も付いている.▲

池に着いたのが9:00過ぎでしたが,すでに2組のウチワヤンマの交尾態カップルを目にしました.一組はすでに池を飛び回っている産卵場所探索状態で,もう一組は草原で交尾本番の真っ最中でした.


▲すべて同じカップルを追いかけた.一番下は至近距離で撮影した.▲

交尾本番のカップルには,最後はレンズの最短距離まで近づくことが出来ました.ウチワヤンマの交尾態は結構人が近づくのを嫌がるものですが,このカップルはちょっと違っていました.

そうこうしているうちに,もう一組の産卵場所探索カップルの方でしょうか,産卵場所を決めたような動きを示しました.枯れ木が水に落ち,そこにヒシの実が絡まっているような場所です.ヒシの実は,すでに他のウチワヤンマが産卵したせいか,繊維状のもので絡みとられているような感じに見えました.


▲産卵場所を決めた探索カップル.▲

やがて,ヒシの実に止まり,オスが離れて,メスが産卵を始めました.ここは手前の枯れ枝にピントを取られてうまく記録できませんでした.オートフォーカスの弱点ですね.産卵はいつもの通り,間欠的に腹端を浮遊物に打ち付ける様式です.


▲産卵を行うウチワヤンマのメス.▲

産卵が終わって,池の周囲を歩いてみると,さらに二組のカップルが産卵場所を探索して飛んでいました.これらは目の届くところでは産卵を始めなかったようです.キショウブの生えているところには羽化殻がいっぱい付いていました.今年はウチワヤンマの羽化数が多いように思えます.


▲団子状態のウチワヤンマの羽化殻.▲

コシアキトンボやコフキトンボは元気にあちこちで追飛行動を行っていました.これらの産卵は見ることが出来ませんでした.


▲コフキトンボの追飛.▲


▲コシアキトンボの追飛.▲

帰りに森林公園によって見ました.ヤンマが羽化していないかというねらいでしたが,まだ姿を見ることが出来ませんでした.チョウトンボが池の上をたくさん飛んでいて,ショウジョウトンボ,コシアキトンボ,シオカラトンボ,ギンヤンマ,クロイトトンボなどが元気に活動しています.いまだにクロスジギンヤンマのオスも見かけました.


▲ショウジョウトンボのオス.▲

特にこれといったトンボもいないので,池の縁にしゃがみ込んで飛び回るチョウトンボをじっと眺めていました.チョウトンボはいつも多数の個体が乱れ飛ぶ姿を見ているので,今までなわばりを形成するとはあまり考えたことがなかったのですが,あるオスの行動を追いかけてみると,一定範囲を飛んでそこに進入してくる他のオスを追い払う行動を続けていることに気がつきました.個体群密度がそれを許すような状況だったのかもしれません.


▲私がじっと観察を続けたオス.▲


▲池のだいたい白い丸で囲まれた部分がなわばりと考えられる区域.▲

だいたい上の写真のような範囲を飛んでいます.白い丸の左下縁に写っているのは,その上のチョウトンボのオスの影です.時々メスが周囲を飛ぶとなわばり外まで追いかけていきます.

なわばりを形成しているチョウトンボは常に羽ばたき飛行しているので,かなりエネルギーを使うはずです.見ていると,時々岸に戻って草に止まって休憩するようです.しかし,その間他のオスがそのなわばりを奪うことはありませんでした.しばらく休憩すると,またなわばりに戻って飛翔を続けました.


▲上のチョウトンボと同じ個体.草に止まって休憩中.▲

合計20分ほど観察を続けましたが,その間なわばり内には基本的にこのオス1頭だけが飛んでいました.なわばり内にはタヌキモの浮かんでいる部分があって,これがチョウトンボの産卵場所になっているようです.

今日はこの公園でキイトトンボを見ました.


▲個体数は少なかったがキイトトンボがいた.▲

ということで,日差しが雲に遮られてきたので,今日の観察はここまでとしました.まだ遠征の疲れがとれていないようで,歩くと息切れがします.

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No. 926. 高原のイトトンボたち.2023.6.26.

トンボ観察旅行もいよいよ最終日になりました.今日はもう一度アマゴイルリトンボを見に行きます.結果的には,第一日目,第二日目もなんとか観察は出来たのですが,空はやはりどんより曇り空で,トンボたちの動きはもう一つ活発ではありませんでした.もともとの天気予報ではこの最初の二日間は雨模様でしたので,予報で晴れになるこの日にも観察を入れていたのでした.結果は大正解で,太陽がさんさんと降り注ぐ晴れの半日で,たくさんのトンボたちが活動していました.

そんな中,少数見かけたエゾイトトンボやルリイトトンボの状況が気になります.これらの観察も楽しみです.そしてさらにこの日私的には嬉しいことがあったのですが,これは最後に紹介しましょう.

まずはアマゴイルリトンボです.朝8:50ごろに現地に着きました.池をのぞいてみますと,もうアマゴイルリトンボがたくさん産卵を始めていました.晴れていると早いですね.


▲アマゴイルリトンボは複数産卵しているが,やはり見にくい場所で産卵している.▲

ただ今日は,前回ほど神経質ではなくて,私が動いても飛び立たずに産卵を続けるペアが見られました.


▲だいたいだが,横の位置から撮れた.▲


▲交尾も同じ場所で行われていた.▲

ここは写真になりにくい場所なので,場所を移動することにしました.そこは開けていてフトヒルムシロが繁茂しています.アマゴイルリトンボはあちこちで産卵しています.やはり晴れて日が差していないとだめですね.


▲開けているので,やっとのことで希望したようなアングルで撮れた.▲


▲数が多いと人を気にしなくなる傾向はアマゴイルリトンボも同じようである.▲

周辺にもそこそこ潜り込んでいました.


▲周辺にいたアマゴイルリトンボのオス(上)と未熟メス(下).▲

アマゴイルリトンボはこのようにたくさん池に出てきて繁殖活動をやっていました.これに負けないぐらい活動をしていたのが,エゾイトトンボでした.二日目に1頭だけ見たのですが,今日はたくさん飛んでいました.やはり晴れが重要だ.


▲エゾイトトンボのオス.▲


▲オオヒルムシロの群落の中で産卵するエゾイトトンボ.▲


▲足下で産卵するエゾイトトンボ.ちょっと手前の草が邪魔している.▲

晴れていると,トンボたちも元気なのですね,いろいろなトンボの活動が観察できます.エゾイトトンボのオスがアマゴイルリトンボのメスにアタックをしました.これにはどういう意味があるのか分かりません.エゾイトトンボのメスと勘違いしているのかとも思いましたが,交尾しようとするような動きではありません.餌と思って食らいついているのか? とも思ったりもしました.


▲アマゴイルリトンボのメスに挑みかかるエゾイトトンボのオス.▲


▲攻撃した後も遠巻きに様子を見ている.アマゴイルリは右前翅がゆがんでいる.▲

さて,今日一番の成果は,オゼイトトンボがいたことです.オゼイトトンボは全く期待していなかったために,はじめはエゾイトトンボばかりいるように見えていました.ここに来たとき最初にエゾイトトンボの交尾と思って写真を撮りましたが,出来を確認するためにカメラで拡大して見ていたときでした.なんと腹部第2節背側の黒斑がワイングラス形をしていたのです.これはオゼイトトンボの印です.


▲オゼイトトンボの交尾.▲


▲この交尾オスの腹部第2節を拡大したもの.▲


▲エゾイトトンボとオゼイトトンボの比較.特に腹部第2節背面の黒斑の違い.▲

2枚の写真を並べてみると,この黒斑以外にも違いが見えてきます.エゾイトトンボの方が一回り大きく腹部も太いです.また水色の部分もかなり広いです.オゼイトトンボは遠くから見るとオオイトトンボみたいに見えることがあります.眼後紋や後頭条の形も違います.オゼイトトンボの存在に気づいてからは,両者は区別して見ることができるようになりました.


▲オゼイトトンボのオスと未熟なメス.下はワイングラス形がよく分かる.▲

オゼイトトンボもタンデムになっている個体がそこそこ見られたのですが,オオヒルムシロの生えているところでは産卵せず,水生植物の根などの柔らかい基質で産卵しているようです.今日はこのオゼイトトンボの産卵記録に手こずりました.かなり離れたところに好みの産卵基質があるようで,写真に撮れるようなところではありませんでした.池に入ることも考えましたが,脚が沈んで抜けなくなったら命に関わるかもしれないので,初めての場所では危険は冒せません.


▲産卵好適場所には他のイトトンボが産卵に来て,オゼイトトンボを追い払う.▲

それでも時々は岸近くの産卵に適した場所にやって来るペアも見られました.しかし,そんな場所へはアマゴイルリトンボやエゾイトトンボもやって来て,上の写真のように,一番小柄なオゼイトトンボを追い散らします.もともとここへはアマゴイルリトンボを見にやって来たのですが,このときばかりは,アマゴイルリトンボが憎たらしい存在に思えました(笑).


▲タンデムのオゼイトトンボは結構いるのに産卵が近くで見られない.▲

結局産卵を記録することはできませんでした.そうこうしているうちに時間が経ち,今日は家まで帰らねばならないので,残念ですが,お昼前には現地を後にしました.なお,これ以外にルリイトトンボを見ていますが,1頭だけでした.写真にも撮っていませんでしたので,今日いたメンバー紹介と言うことで,前回の写真を掲げておきます.


▲ルリイトトンボもここにいた仲間だが,今日は1頭見ただけだった.2023.6.23. ▲

さて,これらご当地のイトトンボ類の中には,兵庫県でも見られる仲間が混じっています.クロイトトンボ,モノサシトンボです.


▲産卵するクロイトトンボ.どこででも仲間になっている.▲


▲羽化直後のクロイトトンボのオス.翅胸側面の斑紋が兵庫のものとは少し違う?▲


▲モノサシトンボの未熟メス.成熟した水色のオスもいた.▲

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最後に,イトトンボ類ではなく,不均翅類について,見た種を紹介しておきましょう.まずは,シオヤトンボ,コサナエです.春の生き残りという感じですね.ただコサナエは今が盛りのようで,今日も産卵に来ていました.シオヤトンボはオスの姿を見かけません.


▲シオヤトンボ.オスの姿はなかったものの,メスはまだまだ頑張っている.▲


▲コサナエのオス.前肩部に細い淡色の線が消失しているタイプである.▲

またアキアカネが羽化を始めていました.2頭見かけました.池から羽化をしているようです.


▲高原の池で羽化をしているアキアカネ.▲

さて,最後に正体不明のトンボについて紹介しておきましょう.今日は天気がよいせいか,池の岸から10m~20m離れた位置を,数頭のトンボが飛び交っていました.兵庫県なら,トラフトンボという判断を下しそうな飛び方です.しかしここは兵庫県を遠く離れた,エゾイトトンボがいるような高原の池です.写真を撮ってみましたが,あまりに遠く,拡大してもほとんど何か分かりません.その中でも比較的正体が明らかになりそうな2コマをお見せします.

まず一つ目,腹部の曲がり方や先端に行くほど太くなっているような形状,そして尾部付属器ががっちりしているように見えること,さらに複眼の緑色,胸部が金緑色に光っていること,などから,カラカネトンボと判定しました.額に一対の白い斑点のようなものが見えます.カラカネトンボにはこういう斑点はないはずですが,これは金属光沢の表面が光を反射してできたものと考えています.画像処理でコントラストを上げていますので.


▲正体不明のトンボその1.カラカネトンボと判定したがどうだろう?.▲

二つ目は上のトンボとは明らかに違うトンボに見えます.後ろから撮ったものです.腹部の中程が膨らみ先に行くほど細くなるような形状,尾部付属器がウサギの耳のように大きく開いていること,胸部がやたらに黄褐色に光っていること,などから,オオトラフトンボと判定しました.


▲正体不明のトンボその2.オオトラフトンボと判定したがどうだろう?.▲

これら二つの同定にはほとんど自信がありません.なお,観察地はこの2種が分布する地域です.自信のある方がおられましたら,また掲示板にでも投稿してください.

ということで,最終日は収穫があり,旅行の締めくくりとして,終わりよければすべてよしという感じで,元気に長時間車を運転して帰宅しました.でもやはり,疲れた...

カテゴリー: 県外のトンボ, 観察記 | No. 926. 高原のイトトンボたち.2023.6.26. はコメントを受け付けていません

No. 925. コフキトンボの帯型を求めて.2023.6.25.

今日は移動日なのですが,半日ほどトンボ観察に出ました.まずは昨日見つけたコフキトンボの帯型の探索です.今日は朝から曇り空で,気温が上がりきらず,トンボの動きが鈍い感じでした.元気なのはコシアキトンボです.コフキトンボは何頭か止まっているだけで,ほとんど動きません.池を歩き回ってやっと1頭だけ帯型を見つけました.ただ,低い位置に止まっていたのを発見が遅れ,木の上に上がらせてしまいました.しばらく待ちましたが,降りてきませんでした.


▲帯型のコフキトンボはいるものの,接近遭遇がかなわなかった.▲

2時間近くの探索を行いましたが結局これで終わりでした.帰り際にコシアキトンボが産卵していましたので,パチリ.


▲コシアキトンボの産卵.▲

その後近くの川に出かけました.ニホンカワトンボがまだ生き残っていました.それにアオハダトンボ,ミヤマカワトンボ,ハグロトンボもいました.つまりこの地域のカワトンボが一堂にそろっていました.さすが6月です.


▲ニホンカワトンボの透明翅型オス(上)と橙色翅型オス(下)▲


▲アオハダトンボのメス.▲


▲ハグロトンボ,シャッターを切った瞬間に飛び立った.▲


▲ミヤマカワトンボのメス.▲

あとマユタテアカネがもう腹部が赤くなっていました.特に下の写真などは秋に見られるような色彩に変化した個体です.兵庫県では今はまだきっと体が黄色いままの状態で,こんなのが見つかるとニュースにしても良いぐらいです.やはり所変われば品変わるですね.ミヤマアカネの方はまだ未熟な感じで,2頭見られました.


▲マユタテアカネのオス.もう腹部が赤い!.▲


▲ミヤマアカネのメス.ミヤマアカネはこれから増えてくるという.▲

と,半日ほどトンボ観察をし終了しました.

カテゴリー: 県外のトンボ, 観察記 | No. 925. コフキトンボの帯型を求めて.2023.6.25. はコメントを受け付けていません

No. 924. オオモノサシトンボの観察.2023.6.24.

今日は昨日よりさらに東へ移動し,関東地方へオオモノサシトンボを見に行きました.ネットで情報交換をしている方の案内で,生息地へ連れて行ってもらいました.オオモノサシトンボの生きている個体を見るのは,昨日までのアマゴイルリトンボと同じく,初めてです.はからずも2種ともモノサシトンボ科の種でした.

前泊し,朝恐る恐る空を見上げましたら,青空が!.予報では一日中曇りだったのですが,私は晴れ男なのでしょうか?.さて観察地に入ったのは9:30ぐらいでした.ヨシを中心とした水生植生と陸生植生が混じり合った岸に沿って,オオモノサシトンボを探して歩きました.水面にはびっしりとガガブタ・スイレンなどの浮葉植物が繁茂しています.産卵基質になるのでしょうか.ほどなく草の間をふわっと飛ぶオオモノサシトンボが見つかりました.一見してモノサシトンボとは違うということが分かりました.黒っぽく見えるのですね.


▲オオモノサシトンボの成熟オス.黒が締まった色をしていて美しい.▲


▲オオモノサシトンボの成熟メス.淡色部が淡い黄緑色をしている.▲

初めのうちはこちらが殺気立っているのか,アマゴイルリトンボと同じようにすぐに逃げていきます(笑).よく観察を続けていると,オスは成熟個体が多いのですが,メスは未熟個体の方が多いように見えました.ただ成熟メスはうまく隠れているのかもしれません.


▲草の間に潜んでいるオオモノサシトンボの成熟オスたち.▲

成熟オスの中には,水面上の葉に止まっている個体があって,そういう個体はあまりその場所を動こうとしません.メスを待っているのかもしれません.


▲水面に出ているオオモノサシトンボの成熟オス.ときどき飛び立つが元に戻る.▲

写真を見て分かりますが,成熟オスは中肢・後肢の脛節の白色部がよく目立ちます.実際飛ぶときにはそれを目だ立たせるようにして,まるでグンバイトンボのように飛んでいます.その記録を撮ろうと頑張りましたがかないませんでした.また腹部先端を大きく反らせる行動をとることも観察しました.アオハダトンボ属のトンボが行うような感じです.ただ,メスへのアピールではなくオス同士の時にその行動を行っていました.


▲オスの腹部先端を大きく反らす行動.▲


▲オス同士が絡み合ったときに見られた.両方ともやっている.▲

この腹部先端を反らす行動は,実はメスにも見られます.これはアオハダトンボ属では見られない行動です.下の写真は,はじめはオスだとばかり思っていたのですが,それは全くの先入観,形態的特徴からメスだと判定しました.下の写真と比べると分かりますが,オスの場合は,ほぼ同じ後ろからの角度で見ても脛節の白い部分がはっきりと確認できます.一方腹部を上に反らせている方の個体は脛節の外側(後ろ側)が白くありません.


▲腹部先端を反らしながら飛ぶメス.脛節が白くないのでメスと分かる.▲


▲ほぼ同じ角度から見たオスの写真.脛節の白色がはっきりと確認できる.▲

もちろん腹部先端を反らせずに飛ぶことも普通ですので,この行動には何らかの意味があるはずです.あまりモノサシトンボでは見たことがないと感じている行動ですが,今度念入りに観察してみたいと思います.


▲腹部先端を反らせずに飛ぶオオモノサシトンボのメス(上)とオス(下).▲

さて,オオモノサシトンボの飛翔行動も面白いのですが,まだまだ未熟な個体も目立ちました.特にメスに多い印象でした.


▲複眼の背面がまだ白く,羽化してまだあまり日齢がすすんでいないメス.▲


▲脚が赤く,未熟色満開のメス.▲


▲未熟なメス同士がにらめっこ状態で静止.▲

オスの未熟個体はそれほど多くないようでした.雄性先熟がみられるといっていいかもしれません.オスの未熟個体は目立たない褐色で,メスのように脚全体が派手に赤くなることはありません.

▲未熟なときから脛節の白が目立っているオオモノサシトンボの未熟オス.▲


▲複眼背面の色が淡く,脚も赤と白のグラデーションを見せる未熟なオス.▲

さて,こんなことをして観察を進めているうちに,12時前になりました.しかしながら全くと言ってよいほど交尾や産卵を行う気配がありません.オスとメスが草の中で出会っても,オスは全く関心なしといった行動を見せています.

ミヤマカワトンボなどのように普段オスとメスが同所的に生活しているトンボでは,ある時刻になるとオスがその気になり,メスはそれに対して交尾拒否姿勢か受け入れるかの態度をはっきりさせるような行動が見られますが,オオモノサシトンボでは全くそういった気配すらありません.ただメスの未熟個体が多かったことから,ここの個体群はまだメスが十分に成熟していない可能性が考えられました.13:00過ぎには,今日は繁殖活動はなしと判断して,オオモノサシトンボの観察を終えました.

オオモノサシトンボの観察中に,コフキトンボの帯型メスを見たので,この後これを探すことにしました.


▲コフキトンボ帯型メス.見た場所に再確認に来てみると木の上に上がっていた.▲

オオモノサシトンボの観察地の池を周回して探してみましたが,この個体以外は見つからず,通常色の個体ばかりでした.


▲コフキトンボの若い成熟メス(上)と老熟メス(下).▲

その後,何カ所か回って,最後の池でやっと帯型メスを見つけました.ただ止まっている位置が遠いので,写真はかなり難しかったです.木の枝を放って飛ばせてみましたが,より遠いところへ行ってしまいました.


▲コフキトンボの帯型メス.▲


▲上と同じ個体だが,より遠いところに止まった.▲

帯型はこの個体以外にもう1頭いました.こちらはすぐに姿を消しました.コフキトンボは明日の移動までにもう一度チャレンジすることにして,今日の観察を終えました.最後にこれらの観察の道中に出会ったトンボたちを紹介しておきます.


▲オオモノサシトンボを観察中に目の前で産卵したショウジョウトンボ.▲


▲コシアキトンボは訪れた各地に普通に見られた.最後の池での産卵.▲


▲珍しくコガネグモの巣にかかったウチワヤンマ.ウチワヤンマもたくさんいた.▲


▲どこにでもいたシオカラトンボ.▲

これら以外にチョウトンボ,クロイトトンボ,セスジイトトンボ,オオヤマトンボ,ギンヤンマなどが見られました.

天気は,午後雲が多くなりましたが,人間様にはこのほうが動きやすくて良かったように思います.明日もトンボ観察旅行は続きます.

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No. 923. アマゴイルリトンボの観察.2023.6.23.

昨日は,天気予報がいい方に外れ,わずかな明るい曇り空の中,アマゴイルリトンボの姿を見ることができました.天気予報によると,今日はひょっとしたら雨と雨の間に挟まれた曇り空が広がる可能性がありました.せっかくここまで来ているのでダメ元でもう一度アマゴイルリトンボの観察に行くことに決めていました.夜中にはそこそこの雨が降ったようで,朝起きると地面や草木がびっしょり,でも空は雲の切れ間から青空が見られ,日も差しています.またいい方に予報が外れるかもしれません.現地に着くと青空がありました.


▲雨上がりの青空です.今日はうまくいくかな...▲

池面ではもうクロイトトンボが飛び回り,産卵もしていました.ただ空には雲が広がり始めました.ねずみ色のやや厚い雲です.


▲クロイトトンボの産卵.▲

アマゴイルリトンボはまだ池面には出ていないようです.ただ,岸近くのヨシの植生の中から,羽化直後のアマゴイルリトンボが次々と飛び立つのを観察しました.


▲池の方から羽化して次々と飛び立ってくるアマゴイルリトンボ.▲

こうなっては,羽化しているところを見たくなるのは当然です.しかしこれがなかなか見つかりません.そっと岸辺の草むらをのぞき込んで約10分,やっと羽化殻のそばに止まるアマゴイルリトンボの羽化個体を見いだしました.ただ,草の中なので写真には障害となる草があります.でもそれが実際の姿なので,草越しに記録をとりました.


▲羽化しているアマゴイルリトンボ.▲

だんだんと時間が過ぎていきますがアマゴイルリトンボは水面には出てきません.空はだんだんどんよりとした感じになってきつつあります.そこで,昨日のように草の中にいるアマゴイルリトンボを見に行ってみました.昨日より少ない感じはしましたが,それでもそこそこ飛んでいました.


▲アマゴイルリトンボのオスたち.下はまだ未熟なのだろう,淡色部が白い.▲


▲アマゴイルリトンボのメス.▲

10:00過ぎ,繁殖活動は,やはり曇り空では無理なのかと思い,今度は少し池から離れた草地をのぞいてみました.すると,交尾態のカップルが止まっていました.繁殖活動をやっているようです.


▲アマゴイルリトンボの交尾.10:08.▲

やがて交尾は解かれ,ペアはタンデム状態で池の方に向かって飛びました.これは途中で見失ってしまいましたが,飛んだ方向と池に浮かぶ産卵基質(枯れた水生植物の葉や茎)の存在する場所に目星をつけ,行ってみました.すると,そこには産卵に来ているアマゴイルリトンボのペアが複数飛んでいました.


▲池に現れたアマゴイルリトンボのペアたち.▲

こうなれば,産卵の観察も時間の問題だと思いました.ところがです.なかなか産卵を始めません.待つしかないので待っていると,葉に止まっているペアがだんだんと水面の方に降りていきます.そしてやっと産卵を始めました,が,私がほんの少し動くと,それも1~2mも離れた位置でです,さっと産卵をやめ飛び上がって,また葉に止まるのです.何度やっても同じです.近づけないどころか動けないのです.非常に敏感なトンボです.モートンイトトンボも産卵メスは非常に神経質ですが,それよりもっと神経質にこちらの動きに反応します.ねらいをつけるペアを変えても同じです.


▲かなり離れたところで,こんな向きのままシャッターを切るしかなかった.▲

12:00まで約2時間,とにかく息詰まる攻防戦という感じで,相手を替え場所を変えて産卵の写真撮影に挑みました.警戒してか植生の中で産卵するし,きれいに横からなんていうのは無理でした.それでも何回かはシャッターを切るチャンスがありました.


▲ほとんど,待っている立ち位置から撮影したものである.▲

この歩哨姿勢は水面ギリギリにカメラを置いて撮影するのが一番です.ただ一回だけそのチャンスに恵まれました.


▲やっとねらったような写真が撮れた.▲

今までの撮影でこんな難敵は初めてでした.ここはカエルが多いので,それを警戒して,ちょっとした異変でも飛び立つように学習しているのか,あるいは選択が働いているのかもしれませんね.

さて,今日は晴れていた時間帯があったので,曇った後も,メスたちが産卵に出てきているようでした.コサナエがいました.オスが数頭,メスは2回産卵に来ました.


▲コサナエのオスとメス.メスは産卵に来たもの.▲

それから,エゾイトトンボを見つけました.ルリイトトンボとエゾイトトンボがいましたので,そのほかにもいるかもしれません.アマゴイルリトンボは一応来た目的を達しましたが,その他のトンボが気になります.帰りにもう一度寄るつもりです.


▲エゾイトトンボがいた.▲

なお空気が湿ってきて気温が下がったので急いで車に戻りましたが,途中で本降りの雨に遭い,びしょ濡れになりました.北のトンボたちは,このような隙間的好天に反応して,繁殖活動をしているのですね.朝晴れたのが良かったです.繁殖活動を始めてしまってから曇ってきたので,中断はせず,厚い雲の下で産卵活動を継続していました.

カテゴリー: 県外のトンボ, 観察記 | No. 923. アマゴイルリトンボの観察.2023.6.23. はコメントを受け付けていません