No.626. ショウジョウトンボとアオモンイトトンボ.2018.8.22.

今日は同じ場所に午前と午後の二回,出かけました.まずは午前の部です.

夏の終わりには,いくつかのトンボに面白い状況が見られます.それは,二化目のトンボたちです.そういったトンボたちは,今頃未熟な個体が結構多く見られるのです.そんな中にショウジョウトンボがあります.飼育による卵期間,幼虫期間は,それぞれ6日,69日というデータがあります(関西トンボ談話会,1984:近畿のトンボ)から,温度にもよりますが,この時期に二化目が羽化してくる根拠には十分なり得ると思います.

▲ショウジョウトンボのオスは,このようにアオミドロが浮かぶような環境でメスを待っている.

ショウジョウトンボはアオミドロなどの浮かんだ水面によく産卵します.そしてその中で幼虫が生活しています.以前幼虫調査をしているとき,コンクリート貼りの深い池に浮かぶヒシの根,もちろんこれは水中に浮かんで漂っている根ですが,その根にショウジョウトンボの幼虫がしがみついていたのを観察したことがあります.また,ビオトープ用トンボ池の調査でも,アオミドロの中にたくさんのショウジョウトンボが潜っていました.ショウジョウトンボは,元来は底生生活者であると思いますが,このように水面に漂う基質内にも生活しているのです.そして夏の強い太陽光を受け,高水温のもとで速く成長し,この時期にたくさん羽化してくるものと思われます.平地の日当たりのよい池でこの状態はよく観察できます(上の写真).

▲体の赤色が斑になっているオスのショウジョウトンボ.翅のつけ根の橙色から見ておそらく未熟な個体.

▲普通の色彩をした,未熟なショウジョウトンボのオス個体.

▲翅の黄色が濃い,ショウジョウトンボの未熟なメス.

▲ショウジョウトンボの未熟なメス.翅の黄色はこれくらいが普通である.

ショウジョウトンボほどに多くは見られませんが,オオシオカラトンボ,コフキトンボなども二化目と思われる個体がこの時期出てきます.イトトンボ類の二化目はもう少し早く,7月下旬から見られます.オオイトトンボ,クロイトトンボなどがその代表例でしょう.

今日は,そんなトンボの中で,アオモンイトトンボを観察することにしました.観察適期は7月下旬ですので少し遅い気がします.まずは午前中,交尾を見に行きました.群れるほどは見られませんでしたが,いくつかの個体が交尾をしていました.

▲同色型のメスとの交尾.アオモンイトトンボ.

▲まだ腹部が緑褐色をしているメスとの交尾.アオモンイトトンボ.

▲腹部の緑色がほとんど消え,褐色になったメスとの交尾.

▲体全体がやや紫を帯びた褐色になったメスとの交尾.かなり老熟しているようだ.

これらの個体が二化目かどうかは分かりません.アジアイトトンボは,夏の時期に一時的に個体数が減少するのを経験しますが,アオモンイトトンボの方はそれほど感じません.だらだらと羽化が続いているのかもしれませんね.写真は補助光としてストロボを使っているので,分かりづらいですが,アオモンイトトンボは太陽の光を避けて草の陰側に止まっています.そうやって少しでも暑さをしのいでいるようです.ストロボを使わない写真を紹介しておきましょう.

▲驚かせて飛んだ後静止したところ.陽の当たらない側に止まろうとする.

さて,ここからは午後の部です.ねらいはアオモンイトトンボの産卵です.14:00ころに現地に入りました.以前の観察でこの頃に多数産卵していたからです.しかし,産卵個体はまったく見られませんでした.メスは産卵基質のある場所に出てきてはいますが,植物の茎や葉をつつくような動作,つまり摂食しているような行動を取っています.もう産卵時間は終わってしまったのでしょうか.以前来たときは7月の末でした.時期が異なると産卵時刻も違ってくるのでしょうか.トンボの観察もなかなか一筋縄ではいきません.気温は37度を超えています.池の岸辺にじっとして産卵が始まらないか見守っていましたけれども,黒い長靴の上に照りつける日差しの熱が長靴の中まで伝わり,足が火傷するのではないかと思うくらい熱く感じました.観察は1時間が限界でした.

▲午後,池面に出ている成熟メス.産卵する気配は全くない.

▲アオモンイトトンボの未熟な色彩のメス.今でも羽化している証拠である.

▲アオモンイトトンボの老熟メス.やはり産卵する気配はない.

オスも同じ場所で摂食的な行動を取っていました.オスのサイズが早い時期に出てくるものに比べてやや小さい感じがしましたが,写真で比べてみてもあまりはっきりしませんでした.

▲オスも産卵場で摂食を繰り返していた.

イトトンボ類は,アオモンイトトンボ以外に,セスジイトトンボ,アジアイトトンボがごく少数見られました.

▲セスジイトトンボのメス.今年はあまり出会えていないので,もっと個体数が増えれば良いのにと思う.

▲アジアイトトンボのメス.オスも少数飛んでいた.

ショウジョウトンボも暑さのせいで,池周囲の通路のワイヤーに止まっている個体は,一斉に腹部挙上姿勢を取っていました.一方で,池に出ている成熟個体は,腹部を下げて日差しの当たる面積を小さくしていました.

▲池の周囲の観察路に張られているワイヤに止まるショウジョウトンボの未熟なオスとメス.

▲斑模様のオスの腹部挙上姿勢.この色きちんと赤くなるのだろうか.

▲ショウジョウトンボの未熟なメスの腹部挙上姿勢.

▲池に出ている成熟したショウジョウトンボのオス.腹部を下げて暑さをしのいでいる.

これ以上頑張って熱中症になってもつまらないので,今日はこれで終えることにしました.いやはや,暑い,トンボの観察も命がけという感じです(笑).

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No.625. ハグロトンボとオニヤンマ.2018.8.21.

夏のトンボの最後を飾るのにふさわしいトンボを二題,今日はハグロトンボとオニヤンマの観察に出かけてきました.いずれも8月の後半に繁殖の最盛期を迎えるトンボたちです.今日は台風の接近で天気が危ぶまれましたが,データ放送で晴れが続きそうなので,思い切って出かけました.これらのトンボはいずれもお昼ころから産卵を始めますので,11:30ころに現地に入りました.

ハグロトンボは非常にたくさんいて,オスがあちこちで追いかけ合いをしていました.オスはメスが産卵しそうな場所に陣取って縄張りを形成します.メスの産卵基質は,流れに洗われている草の根や葉や茎です.

▲産卵基質である流れに洗われる植物の根が縄張りの中心.そこに止まっている縄張りオス.

▲メスの産卵環境.メスはこのような場所で産卵する.オスはこれを多分知っている.

▲倒れて流れに洗われている陸生植物の葉や茎も産卵基質になる.

▲オスは頻繁に飛び立って縄張りをパトロールする.

オスはかなり頻繁に飛び立って,縄張りを巡回します.だいたい流れに沿って10-15mくらいの範囲を往ったり来たりします.しかし今日はオスの個体数が多くよく飛びますので,すぐに隣のオスと出会うことになり,追飛行動が始まります.

▲オスはよく飛び回るので,縄張りの境界部ではすぐに干渉が起こり,追飛行動が始まる.

追飛して飛んでいる2頭がさらに隣の縄張りに侵入すると,3頭のオスが絡み合った闘争が始まります.ハグロトンボの闘争はおとなしいもので,ときどき止まった個体に体当たりのような行動を示すものの,ほとんどつかみ合うこともなく,追いかけ合いをして決着がつくようです.

▲追飛をしている2頭が第3のオスの縄張りに侵入するとそのオスも混じって,三つ巴の闘争が始まる.

メスは,到着時から,産卵しているのを目撃しています.ここの産卵個体は非常に敏感で,2mくらい近づくと,産卵を止めてさっと飛び立ってしまいます.何度もアプローチしましたが,最初のうちは全然近づくことができませんでした.しかし低姿勢で近づくと意外と気づかれないことが分かり,座った姿勢ですり歩きしながら近づくことで,60cmくらいまで近づくことができました.

▲流れに洗われる植物の葉に産卵するハグロトンボのメス.

▲やっと接近できた,というか,接近の方法が分かった.

気温は37度ありました.真っ黒な体をしていると熱を吸収し暑いのではないだろうかと心配しますが,彼らは日向で産卵しています.チョウトンボも体が黒いのに夏の真っ昼間の日向を飛んでいますが,何か知られていないしくみがあるのかもしれません.

▲あちこちこまめに移動しながら産卵をするメス.いずれも同一個体.

そんな中,潜水産卵をしている個体を見つけました.ハグロトンボも潜水産卵をするのですね.私はおそらく初めて見たように思います.

▲潜水産卵をするハグロトンボのメス.浅いので体が全部沈水することはない.

▲潜水産卵をする個体の横にやって来て産卵するハグロトンボのメス.

日向が好きなハグロトンボではありますが,日陰で産卵している個体もいます.また,時間が進んで13:00ころになると,流れの日陰側の畔で産卵する個体が増えたような気がしました.

▲日陰で産卵することもあるが,産卵基質が日陰にあったからであろう.

今日の観察地は,水が澄んでいて,底に砂がたまっているきれいな川だったので,日差しがあったのも幸いして,すっきりとした背景の写真になりました.

さて,次はオニヤンマです.オニヤンマはこれから9月中旬まで産卵を観察するチャンスです.産卵は午後,16:00近くまでが観察に適した時間帯でしょう.ハグロトンボと十分楽しんだので,オニヤンマのいる流れの方に移動しました.13:00ころでした.ハグロトンボの写真を確認しながら流れのそばの木陰に座っていました.13:07,すぐ横で産卵しているのを見つけました.流れにに入ってきたのには気づきませんでした.近づきましたら飛び立ちましたが,すぐ近くで産卵を再開しました.

▲オニヤンマの産卵.移動した後,この場所で産卵を続けた.

▲同じ場所で上下動を繰り返しながら長い間産卵を続ける.

産卵は約3分間続きました.トントンという,川底をたたくような音が聞こえます.本当に力強い産卵です.顔をアップにして産卵しているときの表情を見てみました,といっても,外骨格ですから表情は変わりませんが...

▲産卵するオニヤンマメスの表情!?.

メスが産卵に来てくれたのはよかったのですけど,オスがパトロール飛翔をしていなかったのが残念でした.

今日は台風の影響で風がけっこうあって,気温の割には涼しく感じられました.わずか2時間の観察でしたが,目的は果たせました.台風19号,20号と連続で来るそうで,その後トンボが減らなければいいのですけど...

<追記> 今日は,このブログを始めてちょうど満10年目に当たる日でした.2008年8月21日が,最初の日付です.思えば長い間続けてきたものだと思います.10年間の記録をどこかでまとめたいと思っています.

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No.624. 夏を過ごすマユタテ・マイコ・ヒメアカネ.2018.8.20.

今日も昨日に続いて「夏を過ごすアカネ属」のテーマで,マユタテアカネ,マイコアカネ,ヒメアカネの小型アカネ属を探しに行きました.まず最初は,ヒメアカネのいそうな湿地に入りました.といっても,未熟なアカネ属を探すので,その周辺の林の中を探索します.ヒメアカネは見つからず,マユタテアカネがいました.

▲マユタテアカネのオス.腹部はだいぶん赤くなってきているが,まだ鮮やかさに欠けている.

▲マユタテアカネのメス.ノシメ斑があるタイプ.

▲マユタテアカネのメス.写真ではわかりづらいが,ノシメ斑がないタイプ.

そうそう,顔シリーズで,マユタテアカネの顔面アップを撮り忘れていました.この後で会えればと思っていましたが,結局は出会えませんでした.

次はマイコアカネです.マイコアカネは最近減少が著しく,ほとんどその姿を見つけられません.1カ所だけ友人から教わった場所に生息していることを知っています.しかし池に着いたときに愕然としました.池の水がほとんどなく,マイコアカネが繁殖活動を行っている岸近くのヒメガマの群落の部分が,完全に干上がっていました.

▲マイコアカネの生息場所の状況.連日の猛暑で,雨も降らず,池の水位が大幅に下がっていた.

羽化する前にこうなっていたら,マイコアカネは全滅していたでしょう.でも,例の西日本豪雨は,マイコアカネの羽化時期あたりだったと思います.おそらく,羽化してからこうなったのだと考え,周辺を探してみました.いました.よかったです.数も十分で,もう腹部が真っ赤に染まり,顔面も青白くなっている個体がたくさんいました.

こういう状況を見るにつけ,アカネ属のトンボは,雨季・乾季のある熱帯地方がその起源であるという考え方に,思わず納得してしまいます.雨季,すなわち梅雨に短時間で幼虫期間を終えて,乾季,すなわち夏に成虫で過ごす.そして秋雨の秋に産卵を行い,冬を卵で過ごす.上の写真のような状況に見事に適応しているように見えます.秋の産卵時期に水があれば,この個体群はこの渇水に何の影響も受けずに来年に世代をつなげていくことでしょう.

▲マイコアカネのオス.腹部の赤も鮮やかさが出ていて,顔面も青白く,成熟を感じさせる個体である.

▲マイコアカネのオス.腹部はまだ褐色で,未熟さが残るマイコアカネのオス.

▲マイコアカネのメス.腹部はまだ細く,卵はまだ十分につくられていないのだろう.

▲マイコアカネのメス.翅のつけ根がオレンジ色である.

マイコアカネは樹木の中にもぐり込むようにして,下枝に止まっている個体が結構います.また,驚かせると上に上がり,樹木の葉の茂み中へと逃げ込みます.

▲木の葉の茂みの中に潜んでいるマイコアカネのメス.

マイコアカネの名は,オスの顔面(前額)が青白い色をしており,舞妓さんの化粧をイメージさせるからだそうです.もう十分色が出ている個体もあり,顔面アップを一枚載せておきましょう.

▲マイコアカネのオスの顔面.もう十分に青白くなっている.

最後はヒメアカネ.かなり以前に訪れた神戸市内の産地へ行ってみました.湿地への小径を歩くと,ヒメアカネの未熟な個体が止まっていました.あっけなく見つかった感じです.

▲ヒメアカネのオス.腹部はまだ土レンガ色で赤の鮮やかさはない.

▲林縁の日向に止まるヒメアカネのオス.

▲ヒメアカネオスの顔面.額は薄黄色味を帯びているが,成熟すると真っ白になる..

▲同じように林縁の日当たりのよい草の上に静止するヒメアカネのメス.

▲ヒメアカネのメスが腹部挙上姿勢をしている.

メスが腹部挙上姿勢を示していました.気温は31度.暑いんでしょうね.とまあ,今日は目的の3種のアカネ属の夏越しの姿をとらえることができました.最後に,マイコアカネといっしょに夏越しをしていたアオイトトンボ,そして最初に訪れた湿地に咲いていたサギソウを紹介して今日の観察記録を終えることにします.

▲マイコアカネといっしょに夏を過ごしているアオイトトンボ.3頭見つけた.

▲最初に入った湿地に咲いていたサギソウ.

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No.623. 夏を過ごすナツアカネとアキアカネ.2018.8.19.

私のトンボ暦(ごよみ)では,9月からを秋と定義しています.つまり,そろそろ夏の終わりということです.これはとりもなおさず,夏のトンボと秋のトンボの端境期にさしかかったということになります.この時期によく目立つトンボは,ウスバキトンボ,シオカラトンボ,ギンヤンマ,クロイトトンボなどの,ほぼトンボの飛翔シーズン(Flying Season)全期間で見られるトンボです.それと,夏のトンボでも出現が少し遅いタイワンウチワヤンマやオニヤンマ,また個体数のピークがこの時期に一致するハグロトンボなどです.チョウトンボ,ショウジョウトンボ,コシアキトンボなどの夏を彩ったトンボたちは,明らかに個体数を減らしています.そして,これからが本番のアカトンボやアオイトトンボたちが,夏が終わるのをひそかに待っています.今日は,これからが本番のアカトンボ,特にナツアカネとアキアカネを探しに行きました.

アキアカネは高い山の上に上がれば比較的簡単に見つかります.山は,山頂に近くなるほど,同じ標高の面積が小さくなります.これは等高線を見れば明らかでしょう.したがって,アキアカネが高い山を目指せば,だんだんと面積の狭い領域に集まることになり,必然的に個体数の密度は高くなります.でも,ナツアカネはどうも山の麓や中腹あたりに分散しているようで,どこにいるか意外と見つけにくいのです.

▲平地の山の麓で見られたナツアカネの未熟個体.体に赤みが差し始めている.

今日は1頭だけナツアカネを見つけました.まだ体は完全に赤くなっていません.山の麓の木陰に止まっていました.

アキアカネの方は,標高約600mのところにある高原の池へ出かけてみました.池に突き出た木の枝の先にそこそこの数のアキアカネが止まっていました.

▲標高約600mにある池の畔で未熟時代を過ごしているアキアカネたち.

ここのアキアカネは,10月ころの最盛期にもこの池で産卵をしている個体群の個体だと思われます.ですから秋になっても低地へ降りていかない可能性があります.池の近くの草むらにも何頭かのアキアカネが止まっていて,池面に突き出た棒の先に止まっている個体もいました.まだ未熟です.

▲腹部背面はまだ完全に赤くなっていず,まだ未熟な状態のアキアカネのオス.

▲上の個体よりはやや赤みが強くなってきているアキアカネのオス.

▲アキアカネのメス.

アキアカネは高い山ならどこでもいるというわけではなく,彼らも”飲料水”が必要ですから,池などがある近くには特に多いような気がします.

この池では,他に,オオルリボシヤンマ,オオヤマトンボ,ギンヤンマ,オオイトトンボ,シオカラトンボが見られました.

▲オオイトトンボのオス.

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No.622. タイワンウチワヤンマの観察.2018.8.18.

今日も気温は低めで快晴の予報.そこで,ほぼ毎年行っている淡路島へ出かけてきました.いちおうの目的はベニトンボの進入調査ということにしていますが,これは偶然に左右されますので,確実な目的はタイワンウチワヤンマの産卵観察です.タイワンウチワヤンマは,わざわざ淡路まで出かけなくても見ることはできます.ただ,産卵の撮影が目的の場合,場所的な撮影しやすさ,産卵に来る可能性などを考慮すると,淡路島へ行く価値は十分にあります.ただ,明石海峡大橋だけは渡らねばなりませんので,片道940円の有料道路代だけは負担する必要があり,これがちょっと痛い.後は地道を走ります.

朝9:00ころに目的の池に着き,辺りを見回しましたが,ベニトンボはおろか,ウスバキトンボ以外何もいません.今日は涼しく,気温は25度で,十分だろうと思います.本当に今年は,どこへ行ってもトンボがいない変な感じです.その後,ベニトンボが来るかもしれない池をいくつか見てみましたが,不発でした.これは想定内.そして,10時ころにタイワンウチワヤンマが集まる池に行きました.ここにもベニトンボが来る可能性はありますので,いちおう周辺を含めて探索しました.もちろん?いませんでした.

タイワンウチワヤンマのオスは,枝のてっぺんに水平に止まります.そしてときどき飛び立って,縄張り内にメスが来ていないか探索します.産卵基質である水面に浮かぶ植物の茎などのあるところに縄張りを持ち,そこを丹念に見て回っています.

▲枯れ枝の先に止まる典型的な静止姿勢.4本の脚で止まるのが定位置.

▲正午ころの撮影.今日は比較的涼しいせいか,腹部挙上姿勢を取る個体がいなかった.

▲メスがやって来るところへ陣取っている.このすぐそばに産卵メスも止まった(下の写真).

ということで,産卵に来そうな微小環境を見つけ,日陰に腰を下ろして待つことにしました.シオカラトンボがいっぱい飛んでいて,産卵もやっています.これは後で紹介するとして,10:28,最初のメスが入ってきました.落ち着きがありません.ウチワヤンマのようにどっしりと腰を落ち着けて産卵してくれたらいいのですが,オスがたくさんいることもあり,動き回っての産卵です.

▲産卵にやって来たメス.草陰で産卵しようとするが,動き回るオスにすぐ見つかってしまう.

▲産卵に入ってきてすぐの写真.まずはオスのことを気にせず開けたところでホバリング.

オスに追われながら,ときどき隠れるようにして打水し,またオスに見つかって,という感じの繰り返しです.そしてとうとうオスに捕まってしまい,交尾に至りました.タイワンウチワヤンマの交尾は飛びながら行われ,移精行動,交尾,そして解放と,わずか数秒で終わってしまいます.ピントが来てませんが,とりあえずその過程を並べておきましょう.以下の4コマはわずが2秒の出来事です.

▲上左から,移精行動,交尾への移行,交尾,とこの間わずか2秒!.

▲交尾から解放されたメスは,オスから逃げるように移動して,産卵を再開する.

その後もメスは入ってきました.全部で5回くらいだったかと思います.記録できたのは,4回目の個体だけでした.

▲この個体も例に漏れずオスに追われながらの産卵である.

▲ほんの少しの間,オスに見つからない時間が持てた.ホバリングして打水位置を確かめる.

▲打水するとすぐに止まる.オスが多いときによく見られる行動である.数回止まった.

▲再び飛んで,産卵を再開する.

もう少しオスの個体数が少なければいいのですが,オスが少ないとメスも少ないのでしかたありません.ただ,オスがメスを連れ去らず,その場ですぐ解放してメスが産卵を始めるので,これだけは助かります.最後は顔のアップで締めくくっておきましょう.

▲タイワンウチワヤンマのメスの顔.

さて,シオカラトンボが今日はたくさんいました.シオカラトンボは8月下旬から9月中旬くらいまでがもっとも個体数が多くなる時期です.テネラルな個体もあちこちで見られ,これらはおそらく二化目の個体ではないかと思います.飼育によると,シオカラトンボの卵期間は7日,幼虫期間は55日というデータがあり(関西トンボ談話会,1984:近畿のトンボ),十分二化の可能性はあります.今日も目の前で5回くらい産卵していました.そのうちの成熟したメスと,若いメスの産卵を紹介しておきます.

▲成熟したシオカラトンボのメスと交尾する.

▲シオカラトンボのメスは,成熟すると,無彩色的な色になる.

▲少しの間打水をすると,ピタッと止まってしばらくそのままの状態でいる.

▲再び産卵を再開する.

▲また止まる.このメスは数回止まった.

このメスは写真のように産卵途中で何度も止まります.これはオスが多いためにオスに干渉されたくないがための行動だと私は解釈しています.上のタイワンウチワヤンマのメスもよく止まりました.ずっと以前カオジロトンボを観察したときもそうでした.打水してすぐに止まります.オスはメスが止まってしまうと,どうやらメスを見失うようです.飛び方でメスを判別しているのでしょうか.ギンヤンマなどは,止まって産卵しているメスを簡単に見つけてしまいます.飛翔産卵と静止産卵でオスの対処の仕方も違うのかもしれません.

▲産卵を警護するオス.シオカラトンボの産卵.

▲メスの動きをじっと見守って寄り添う.

▲まだ若いので,体色が麦わら色.こちらは多分二化目の個体であろう.

▲打水の瞬間.水をすくい上げるようにして前方に飛ばそうとしている.

▲上の写真の尾部拡大.水が先端から丸くちぎれていこうとしている.水滴中の白いもの(矢印)は卵か?.

さて,今日どこでも個体数の多かったのがウスバキトンボです.精霊トンボという俗称があって,精霊を運ぶトンボなどという話を聞いたことがあります.また盆トンボという俗称もあるくらい,お盆のころに個体数が激増します.まさにその名の通りで,成熟した腹部の赤い個体から,未熟な群飛まで,たくさんのウスバキトンボがいました.連結したり,交尾したり,産卵したりしないかと待ちましたけど,観察はできませんでした.ウスバキトンボの産卵には意外とお目にかかれないものです.

▲腹部の背面が赤くなっているウスバキトンボのオス.

▲未熟なウスバキトンボ.

▲急旋回しようとしているところ.頭に対してからだがねじれている.

さて,今日は淡路まで行って普通種ばかり観察してきたわけですが,海岸沿いを涼しい風に吹かれて車を走らせると,とても心地よい良いドライブができました.タイワンウチワヤンマの産卵観察という成果もありましたし.そういえば,今朝,エンマコオロギの鳴き声を聞きました.フィリリリリリリ・・・,もう秋がすぐそこまで来ているようです.

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No.621. タカネトンボの産卵.2018.8.17.

観察に少し間が空きました.これは酷暑のせいで,身体をいたわっておとなしくしていたためです.今日は大陸から移動性高気圧がやって来て,一時的な西高東低型の気圧配置,北風が吹く日なのですね.実際気温は低く今日行った山頂付近では21度でした.すっかり秋の雰囲気があって,アカトンボが飛んでもおかしくないような感じです.

さて,今日は,本当はエゾトンボを見に行ったのです.しかし,毎年観察している湿地群へ行ってみましたが,エゾトンボはまったくといって良いほど飛んでいませんでした.わずがにオスが1頭湿地の上を飛んでいましたが,これもすぐにどこかへ行ってしまいました.これではメスはとても期待できません.林の中を歩いてみると,カトリヤンマがいました.近くの池では,シオカラトンボがオオシオカラトンボのメスを連結して,一生懸命交尾しようと頑張っていましたが,結局最後はメスを放してしまいました.明るい池ではギンヤンマが産卵をしていました.

▲林の中で休むカトリヤンマのオス.もうかなり成熟した色彩になっているように見える.

▲シオカラトンボのオスとオオシオカラトンボのメスの異種間タンデム.

▲ジュンサイに産卵するギンヤンマのペア.

こんな涼しい夏の日はもったいないので,タカネトンボとオオルリボシヤンマを見に,少し標高の高い池に出かけてみることにしました.オオルリボシヤンマにはまだ少し早い気がしますが,タカネトンボの方は来る可能性が大きいでしょう.現地には12時ころに着きました.池ではタカネトンボもオオルリボシヤンマも飛んでいませんでした.やはり少し時期が早かったかな,などと考えてひとまず昼食を取りました.そして12:30ころに池に帰ってきたとき,オオルリボシヤンマが産卵にやって来ました.これがなかなか神経質な個体で,結局近寄ることができず,飛び去ってしまいました.でも産卵にやって来たので,今日はここで粘ってみることにしました.13:11ころ,タカネトンボのメスが入ってきました.コウホネが一面に茂っているので,産卵できるポイントはここだろうと,少し開けた池岸で待っていると,案の定そこへやって来ました.

▲13:11.タカネトンボのメスが産卵にやって来た.

▲水滴とともに卵を飛ばした瞬間.

▲足下に入ってきて産卵するメス.見ての通り黒い背景に真っ黒な体でピントを合わせるのはほとんど無理.

▲岸から逆を向いて飛ぶメス.往復しながら産卵する.

▲産卵を続けるタカネトンボのメス.

産卵を終えて飛び去ったのが13:17ですので,結構長い間産卵をしていました.次にメスが入ってきたのは14:00を少し過ぎたときでした.これは,コウホネの間に入り込んで産卵をしていたので,まったく手が出ません.それでも無理矢理撮ってみましたら,顔だけが写っていました.

▲コウホネの間で産卵する2頭目のタカネトンボのメス.顔だけが見えている.

▲やっと開けたところへ出てきた.

▲腹端には水滴がついていて,赤っぽいのは卵だろうか.

後半は開けたところへ出てきたので楽勝と思いきや,ほとんどピンボケという有様でした.タカネトンボなどエゾトンボ類は,黒っぽい色をしていて,かつ暗いところで産卵するので,もうピントは勘です.

この池にはモノサシトンボがいましたので,ちょっとだけ記録しておきました.

▲モノサシトンボのタンデム.

▲なかなか産卵せずあちこち止まってばかりであった..

▲産卵を始めたと思ったらすぐに止める.撮影が嫌なようだ.

帰りにコシボソヤンマを見に行きましたが,メスはいなくて,こちらもオスが1頭だけ流れを飛んでいるだけでした.なんか今年はトンボの数が少ないような気がします.

▲木漏れ日の下,流れをパトロールするコシボソヤンマのオス

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No.620. セスジイトトンボを探しに.2018.8.5.

今年は意外なトンボに苦労しています.今まで何かのついでに観察してきたセスジイトトンボの姿になかなか出会いません.西日本集中豪雨のため,川に生えていたコカナダもなどの沈水植物がほとんど流されてしまい,そういうところによく集まるセスジイトトンボが見られないという印象を受けます.豪雨の前までは,1,2頭は見かけることがあって,本格シーズンが来たらまた来ようと算段していました.一つ心配なのは,二化目を目指して成長していたセスジイトトンボの幼虫が,これらの沈水植物とともに流されていってしまったのではないかという可能性です.

ということで,今日は池にセスジイトトンボを探しに行くことにしました.池の場合,彼らは平地の皿池で,沈水植物が繁茂しているところが好みですが,最近そういった池が意外と少なくなっています.外来生物による食害,池の濁りなどの影響が大きいように感じます.

▲ガガブタ,スイレン,ヒシなどが繁茂する今日の観察池.チョウトンボが産卵している.

8:30ころから探索を始めました.ガガブタ,ヒシ,スイレンなどが池いっぱいに広がり,その間をタヌキモが埋めているような池です.やや小型の二化目と思われるクロイトトンボはそれなりに飛んでいました.セスジイトトンボはやっとの事でメスが1頭だけ.なかなか見つかりませんね.ちょっと浮葉植物が茂りすぎているようです.ただ,セスジイトトンボも二化している可能性があるので,この時期一時的に姿が少なくなる時期でもあります.以前の観察から考えると,9月に入るころに数が増えるかもしれません.

▲クロイトトンボに混じってやっとの事で姿を確認したセスジイトトンボのメス.

たくさんいたのはタイワンウチワヤンマでした.このトンボ,意外と私のブログでは取り上げていません.温暖化のせいか,1991年から神戸市内で見られるようになり,北上傾向があるトンボです.たくさんいるトンボを観察対象にするという鉄則で,タイワンウチワヤンマを観察することにしました.今まで午前中に産卵するのを見ていますので,待つことにしました.でも,池には日陰がなく日向の土手に座っているので,10:30ころにこちらがもたなくなりました.気温は35度になっています.この酷暑,トンボ観察も命がけです(笑).

▲暑い日向をものともせず活動している南国のトンボ,タイワンウチワヤンマ.

結局産卵を見ることもなく,今日の観察を終えました.いやはやまいりました.クマゼミが池近くの桜の木で大声で鳴いていました.今日のゲストです.

▲大きな声で合唱していたクマゼミ.

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No.619. オナガサナエとコオニヤンマ.2018.8.1.

8月になりました.今年は梅雨明けが早かったせいか,7月がとても長く感じられました.通常なら8月になってから観察に行くトンボたちも,ほとんど7月中に観察を終えてしまいました.植物もとても季節が早く進んでいると聞きますが,トンボたちも同様な感じです.例年なら8月の7日前後に観察に行くオナガサナエとコオニヤンマを,今年は8月の初日に観察に行くことにしました.

オナガサナエもコオニヤンマも,朝早くから産卵します.また朝早い方がたくさん産卵に来るのです.そこで,現地到着を6:00に設定して出かけました.ほぼ予定通り着いて早速川に入りましたら,5分と経たないうちにオナガサナエが産卵に入ってきました.時刻は5:57’06″(最初の撮影コマ)です.

▲5:57:岸近くの草陰にはいって産卵を始めたオナガサナエのメス.

▲ほとんど同じ位置でホバリングして卵を落とし続けている.

▲背景が近いのでストロボの光がよくまわり,この最初の写真がいちばん色がよく出ている.

草陰に隠れるようにしてほとんど同じ位置で産卵を続けました.このオナガサナエのメス,顔を拡大してみるとまだ水滴がついていました.朝起きて露を乾かしきる前に産卵にやって来たようですね.それとも,飛んでいるときに,濡れた草などにぶつかったのでしょうか.翅の部分にも水滴がついています.産卵を終えたのは5:58’32″でしたので,約1分半産卵していたことになります.

▲オナガサナエメスの顔.よく見ると小さな水滴がいっぱいついている.

▲翅を拡大してみるとやはり水滴がついているのが分かる.

とても幸先のよいスタートを切ることができました.目標の半分が5分で完了です.過去にも朝早く来たことがありましたが,5時台は初めてでした.

ところで,川の様子がやはり先日の長期豪雨でかなり変わっていて,いつも産卵を待つこのポイントはどうかなと思っていましたが,杞憂でした.さて次を待ちました.6:20’58”,今度はコオニヤンマが入ってきました.先のオナガサナエの産卵場所とほとんど同じです.岸近くの草陰で産卵しています.

▲6:20:コオニヤンマが産卵にやって来た.岸近くの草陰で,先のオナガサナエとほとんど同じ場所.

▲ほとんどの時間,岸の方を向いてホバリングをしている.

▲翅が破れ,新鮮とはいえない十分成熟したコオニヤンマのメスである..

コオニヤンマはオナガサナエと違って,空中から卵を落とさず,卵塊をつくって打水するという産卵方法です.いつ打水するか分からないのでなかなかその瞬間を撮るのは難しいです.コオニヤンマも顔のアップをしてみましたが,こちらは水滴はついていませんでした.

▲打水した瞬間.ストロボでは止まらなくて少しぶれている.動きが速いのだ.

▲打水した波紋が広がっている.次の卵塊をつくり始めるのだ.

▲コオニヤンマのメスの顔.意外とすっきりとした感じの顔である..

さて,少し待ちましたが,次がやって来ません.到着したときから気になっていた,少し向こうに見える平瀬の部分が産卵に好適な場所に思えたので,そちらの様子を見に行くことにしました.

平瀬の方にいくと,そこではオスが水面を飛翔しながら活動をしていました.オスもこの場所にメスが入ってくると確信しているようです.時刻は6:35くらいです.オスはこんなに朝早くから活動をしているんですね.今まで止まって縄張りを活動しているオスの姿ばかりを観察してきましたが,飛びながら縄張りを巡回するのを初めて見ました.その飛び方は独特で,腹部を斜め上に上げで,ホバリングしながら斜め横にスライドしていくような飛び方をするのです.ナゴヤサナエ的な飛び方です.

▲6:35:流れに沿ってホバリングしながらスライドするように飛ぶオナガサナエのオス.

▲カウンター・ストローク(前後の翅を交互に)で翅を動かしているのは,ホバリングしている証である.

▲スライドせず,ほぼ一カ所でホバリングを続けることもある.

▲オスのこのような活動が見られるのは,早朝だけであろうか.程なくこの飛翔は見られなくなった.

オスは2頭いて,ときどき出会うと,ものすごい高速で追飛行動が起きます.このホバリングの間はほとんど止まりません.草陰を気にしながら,岸辺に沿って移動していくのです.きっと産卵しているメスを探しているのでしょう.しばらくしてやっと止まったので,一コマ撮っておきました.

▲飛翔を止めて止まったオス.

これだけオスが飛び回っていたら,メスが来てもすぐにオスに追いかけられて逃げていってしまいそうなので,最初の場所に戻りました.メスとオスはだまし合いをしているような感じで,メスはオスのいないところ,目につかないところへ産卵に入るように見えます.だから草陰や石の影に隠れるような位置で産卵することが多いのだと思います.

さて,元の位置に戻って,岸辺の石に腰を下ろして次を待ちました.6:46,本日2頭目のメスが産卵に入ってきました.

▲6:46:2頭目(観察している中での)のメス・落下する赤い卵が見える.

▲背景の反射光がほとんどないので,トンボだけが白く浮き出たようになってしまう.

まだ朝の川面は暗く,どうしてもストロボのお世話にならないといけません.でも背景が遠く暗い川面ですと,どうしても夜みたいな写真になってしまいます.

この少し前の6:45に,コオニヤンマのオスが入ってきて川面を見張るようになりました.

▲6:52:コオニヤンマのオス.朝日がやっと川面を照らし始めた.

コオニヤンマのオスはさらに入ってきて,追飛行動が見られるようになりました.6:57,次のオナガサナエのメスが産卵にやって来ました.今度のメスは石の影に隠れるようにして産卵をしています.

▲石の影に隠れるような位置で産卵するオナガサナエのメス.3頭目,6:57.

▲石のまわりを離れることなく産卵を終えた.

次のメスは7:10に入ってきました.産卵が集中する時刻がやって来たのでしょうか.今度のメスは流れの中のかなり開けた場所で産卵をしています.このメスはほとんど位置を変えることなく同じ場所で産卵を続けました.

▲7:10:4頭目の産卵メス.これは撮影の最初のコマで,7:10’28″のタイムスタンプ.

▲これは最後の撮影コマでこの後打水して飛び去った.タイムスタンプは7:10’50″なので,22秒間産卵した.

1時間15分ほどで,4頭の産卵メスを観察できました.朝早く来た甲斐があったというものです.でも残念なことに,空には一面に雲がかかり,川面に太陽の光が当たりません.まだまだ写真の露出は十分ではありません.

次の飛来を待っていると,コオニヤンマが私のすぐ隣に止まりました.トンボのオスと人間のオスがトンボのメスを待つ構図です.これ写真にできないのが残念です.その後,オナガサナエのオスが,私のテリトリーに入ってきました.私も産卵メスを待っているので,彼らとはライバルです.例によって,写真を撮ってから,小石を投げて追い払いました.小石は,水しぶきがかかるようにそばに落とすのがコツです.彼らはカエルらしきものには神経を使っていますので,カエルが跳ねたような感じを出せばいちばん効果的です.

▲7:13:私のすぐ横に止まったコオニヤンマのオス.

▲7:29:私のテリトリーに入ってきたオナガサナエのオス.早速小石を投げて出て行ってもらった.

さて,次にメスが産卵にやって来たのは,7:43でした.この個体も流れの中程の開けた場所で産卵をしています.

▲7:43:5頭目のオナガサナエの産卵.撮影位置を変えるまもなくコオニヤンマ産卵の方に移動した.

このメスが産卵しているときに,少し向こうにコオニヤンマのメスが産卵に入ってきました.産卵に来る絶対数はコオニヤンマの方が少ないので,このオナガサナエは途中で記録を止め,コオニヤンマの方へ移動しました.このコオニヤンマは石で囲まれた空間を出入りしながら産卵をしています.この少し前に私のテリトリーに入ってきたコオニヤンマのオスに出て行ってもらってよかったと思いました.

▲7:44:オナガサナエの産卵中にコオニヤンマが産卵に来た.まわりが石で囲まれている場所だ.

▲低く飛んで,打水のポイントやタイミングを見計らっているのだろうか.

▲打水の直後.水面に波紋が見られる.

▲ときどき,石で囲まれた部分から外へ出て飛ぶ.

このコオニヤンマのメスのつくっている卵塊は結構大きく,写真にはっきりと写っていました.何度か打水した後のためか,卵塊に水分が含まれていて丸くなっているのが分かります.そして,打水した瞬間の腹端を見ると,うすいピンク色の物体が腹端に接した水に,流れるように出て行っているのが見えます.

▲腹端に朱色の卵塊が見える.低く飛んでいるがまもなく打水するのだろう.

▲この卵塊はとても大きい.また水を含んでいるようで丸い形をしている.

▲打水の瞬間の腹端.表面張力で腹端に付着した水の中からピンク色の卵塊らしきものが広がっている(矢印).

このコオニヤンマの産卵は,ほぼ最初から最後まで記録できました.そこで産卵の継続時間を調べてみますと,7:44’06″に最初のコマが撮影され,7:46’06″に最後のコマの撮影が終わっていますので,最初のロスタイムを入れても,2分あまりということになります.

忙しくなってきました.コオニヤンマの産卵が終わるやいなや,7:46’12”に,次のオナガサナエのメスが産卵に入りました.撮影中はもうこれが何頭目にのメスか分からなくなってきました.そう,6頭目の産卵です.そしてこのメスの産卵が終わると,次は7:52に7頭目が産卵に入ってきました.この産卵が1分ほどで終わりますと,次は7:54に8頭目のメスが産卵に入りました.少し向こうの方だったので立って歩き始めると,向こうからこちらへやって来て,私の股の下で産卵を始めました.ヒトを隠れ蓑にしようという魂胆です.

▲7:46:6頭目のオナガサナエメスの産卵.

▲7:52:7頭目のオナガサナエメスの産卵.

▲7:54:8頭目のオナガサナエのメスの産卵.股の下で産卵したため直上からの撮影となった.

撮った写真を見る暇もないほどです.これで終わったわけではありません.7:58には9頭目のメスが産卵にやって来ました.続いて8:01に10頭目のメスが入ってきました.7:43に入った5頭目のメスから数えると,8:01までの18分間に6頭のメスが次々に産卵に入ってきたことになります.平均3分に1回の割合で産卵に訪れ,1回あたり1分前後産卵していますから,コオニヤンマも入れると,10分近く産卵を見続けていたことになります.これほど濃いと,トンボ観察も楽しくなります.

▲7:58:9頭目のメス.開けた場所で悠々と産卵をしていた..

▲7:58:じっと同じ場所でホバリングをしながら産卵を続けている.

▲8:01:10頭目の産卵.9頭目よりやや岸辺に近いところで産卵を続けた.

▲8:01:ここまで本当に息つく間もないほどの産卵ショウであった.

空は一向に太陽が顔を出さず雲の中,オナガサナエを撮りに来るこの時期は,なぜか夏の朝雲りなのです.朝日に当たったオナガサナエの写真というのは意外と撮れません.

さて,この産卵ラッシュの後,しばらく産卵が途切れました.次に産卵に来たのは8:22でした.このメスは,3頭目のメスと同じ石のそばで産卵しています.たくさんの産卵を見ていると,産卵ポイントはでたらめではなく,どうやら好みがあるようです.多少ずれはしますが,大雑把に言って,似たような場所で産卵する傾向が強いです.

▲8:22:11頭目のオナガサナエメスの産卵.3頭目と同じ石の横で産卵している.

▲卵が腹端に付着している.

この観察の後も8:45くらいまで次を待ちました.でも産卵が途切れたようなので,予定の9:00を少し前にしてこのポイントを離れ,流れの別の場所を探索することにしました.ほかのトンボの様子も見ておこうというわけです.

川にかかっている橋桁のところに水が滞留していて止水状態になってました.そこに,モノサシトンボがタンデム状態で飛んでいました.これを記録し,産卵を待ちましたが,意外と神経質なようで,じれったくなって産卵はまたの機会にしました.

▲上3枚.タンデムで飛び回るモノサシトンボのペア.

▲やがてこうやって止まるものの,オスは直立せず,産卵を始める気配がない.

ということで,わずか3時間ほどの観察でしたが,まだ気温は30度を超えていませんし,涼しいなかで,たくさんのオナガサナエやコオニヤンマを見られて,充実した観察でした.また機会があれば,朝絶対に晴れるときに来てみたいです.

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No.618. ネアカヨシヤンマの観察.2018.7.30.

台風一過.今日は暑くなるとの予報でした.荒天のあとは産卵に来るという経験則を生かして,今日はネアカヨシヤンマの産卵を見に行くことにしました.ネアカヨシヤンマは暑い日中の午後に産卵にやってきますので,自宅をゆっくりと出て,現地に着いたのは12:30でした.

水のない湿地で産卵するネアカヨシヤンマ,湿地は水が涸れていて,ネアカヨシヤンマにはちょうどよい環境になっています.13:16,産卵にメスが降りてきました.吸い付くように地面に降りて,産卵を開始します.台風の後の南風が入るとのことで,フェーン現象で気温は36度になっています.こんな暑い中でも,ネアカヨシヤンマは日向で産卵するのです.

▲最初に入ってきた個体.暑い中日向で産卵する.

▲イノシシの足跡に産卵するネアカヨシヤンマ.

▲イノシシの足跡のくぼみの立体構造をを巧みに利用して産卵している..

▲36度のなか,日差しを浴びてもっと温度は上がっていると思うが,本当に元気に産卵している.

▲複眼の色がまだ淡い褐色で縁の青色もうすく水色,成熟したてといった感じのするメスである.

▲この個体も,もちろん日陰で産卵することもある.

最初入ってきたのは1頭だけで,これまたよく言われることですが,個体数が少ないと,トンボは敏感になります.なかなか近づくことができません.スローロリスよろしく,ゆっくりとした動きでトンボに近づきます.そして接近撮影します.でもこの個体私の動きが気に入らないのか,何度も林の方に飛んで行ってしまいました.そしてしばらくすると戻ってくるといった動きをしています.

▲1頭目のネアカヨシヤンマの顔.

1頭目の撮影をしているときに,足下をもう1頭のメスが飛びました.2頭目の来訪です.13:52のことでした.この個体は,1頭目に比べると,私の接近に対してやや寛容な態度を示してくれました.

▲これは2頭目の個体.左の複眼がへこんでいるので,1頭目とは異なる.複眼の縁も濃い青である.

▲2頭目は,どちらかというと,日陰で産卵するのがが好きなようだ.

▲もちろん2頭目も,日向で産卵することもある.

撮影するために腰をかがめる姿勢を取っているだけで力が入り,汗が噴き出てきます.おまけに地面で産卵しますから,カメラを地面すれすれまで低い位置に置いて,顔を横に曲げてファインダーを覗きながらの撮影になります.上から覗いてローアングルで撮影する機材が必要ですね.一度私の動きが嫌になったのか,産卵を止めて木に止まってしまいました.

▲私が追いかけ回すと,嫌になったのか,すぐ上の木に止まった.

▲2頭目の顔.1頭目に比べるとコントラストもはっきりしていて,成熟した感じがする.

今日のネアカヨシヤンマは土中に産卵する個体ばかりでした.湿地の水が涸れて,朽木が乾燥しすぎているからでしょうか...2時間ほど十分に楽しんで15:46,2頭目の個体が飛び去った後,ピタッと産卵に来なくなりました.本当に時間に正確なネアカヨシヤンマの産卵です.だいたい2時から4時というのが産卵時刻なのですが,2頭目はほぼその通りの時刻に産卵しました.

▲15:46,この2頭目が飛び去って今日の産卵は終わったようだ.

夕方が近いので,今日はこのまま黄昏飛翔を見てみることにしました.産卵に来たのだから飛ぶだろうという予測です.最初に飛んだのはヤブヤンマ,17:25のことでした.まだ高いところを飛ぶと陽が当たるような明るさです.18:23,ネアカヨシヤンマが飛びました.

▲上2枚はヤブヤンマの黄昏飛翔.下の写真はまだヤブヤンマに陽が当たっている.

▲上2枚はネアカヨシヤンマの黄昏飛翔.

▲ギンヤンマの高飛.

一番多いときで3,4頭のヤンマが頭上を旋回していました.でも,少ないです.トンボの姿が見えない時間の方が多い.こんな感じでは,そのうち黄昏飛翔という言葉は死語になってしまうのではないかと思うくらいです.なお,下のギンヤンマは15:32に撮影したものです.これは黄昏飛翔とはいえませんね.

半日でしたが,今日はヤンマを見て楽しみました.最後にゲストです.タヌキの夫婦でしょうか? トンボ観察に来るといろいろな動物に出くわします.以前は2mもあろうかというイノシシを見かけました.これは怖かった...山に入るときはクマに出会わないことをいつも祈っています.

▲少し離れたところをタヌキの夫婦?が歩いていた.

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No.617. 夏を越すミルンヤンマ.2018.7.26.

夏の暑いときは日陰のトンボ探しがいちばんです.夏を越しているミルンヤンマを探しに行きました.いるところにはいるもので,昨日の黄昏飛翔の何も飛ばないのとはまったく違いました.

▲薄暗い林の中で,太い幹に止まっているミルンヤンマのオス.

▲ほとんど木の根元あたりに止まるミルンヤンマ.

▲こちらはすごく細い木の枝に止まるミルンヤンマ.

▲やや高いところに止まっているミルンヤンマ.

小さいころ山登りが好きで,夏休みに裏山の山道を走っていたとき,林の中からミルンヤンマがよく飛び出したものでした.小さな流れのある近くの林に止まっているのです.最近はもうその場所ではほとんどミルンヤンマを見ることはなくなりました.

見つかったのはオスが圧倒的で,メスは1頭しか見つかりませんでした.メスは腹部がまだぺちゃんこでこれから餌をしっかりと食べて卵巣を成熟させていくのでしょう.

▲メスはなかなか神経質で,追いかけ回してやっと落ち着いたところを撮影できた.

▲葉に止まっているが,私が追いかけ回したので,こんなところにも止まったのだ.

ほとんどの個体はまだ複眼が緑色で水色が差しているのがいませんでしたが,1頭だけ水色になり始めている個体がいました.これを顔シリーズにして,今日はおしまい.

▲いつもながら,緑と水色のツートンカラーの複眼がミルンヤンマのトレードマークである.

そうそう,ゲストのクロアゲハを載せておきます.

▲クロアゲハが林の中で休んでいた.チョウも暑いのかな.

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