No. 1023. イトトンボ探索.2025.5.28.

今日は午後から曇ってくるとの予報で,遠くへ行くのはやめて,近隣でイトトンボ類を探しに行くことにしました.目標はアジアイトトンボを見つけることです.先日ダビドサナエに会いづらくなったことを書きましたが,イトトンボ類ではアジアイトトンボに出会いにくくなっている気がします.そこで,過去にアジアイトトンボの記録があったところを中心に回ることにしました.あわせて今日はレンズを変えマクロレンズで小さなイトトンボを大きく撮ることを試してみました.

まずは近所の公園に行ってみました.ここはクロイトトンボが多いところです.案の定クロイトトンボはたくさん飛んでいましたし,まだまだ羽化が続いていました.


▲スイレンの葉の上で羽化するクロイトトンボ.▲

すぐ向こう,タンデムになったペアが,一生懸命移精行動に移ろうとしていました.しかしこのオス,移精行動に移るのが下手なんですね.何度もやり直ししています.


▲すぐ向こうで移精行動に移ろうとしているペア.▲

今日は105mmのマクロレンズなので,上の写真はかなり小さいのをトリミングしました.しかし観察していると近づいてきましたので,思い切り寄って撮ってみました.


▲移精をしようとしているクロイトトンボのペア.▲


▲移精行動に成功したように見えたが,実はすぐに離れてやり直しした.▲

やはり単焦点レンズはシャープに写ります.ただ,上の下の方の写真,オスが少しこちらに動いたため,ピントがわずかにずれました.上の方の写真はオス・メスともピントが来ています.マクロレンズでぐーんと寄って撮影するとき,被写界深度がとてもシビアに影響を与えてくることが分かりました.イトトンボの場合,ほぼ真横から撮影をしないと,全身が被写界深度内に入らない感じです.マクロ撮影のとき三脚を使う理由が分かりますね.ただトンボ撮影には無理ですけど.ちなみにこの写真 f7.1,1/1600,ISO800 でシャッターを切っています.

少し移動すると,フタスジサナエがまだ頑張っていました.これもマクロレンズで撮ってみることにしました.いやはや画面いっぱいに入ります.なんせ等倍撮影ができるので,最短で撮影するとフタスジサナエが画面からはみ出てしまいます.撮ってみて,やはり腹部先端にピントが来ていません.撮影する角度が若干悪いんですね.難しい.


▲活動するフタスジサナエのオス.▲

クロイトトンボに混じって,アオイトトンボが羽化をしていました.角度が難しいことが分かってきたので,今度は注意してライヴビューにして羽化している位置と同じ高さのローアングルで撮ってみました.


▲アオイトトンボのメスの羽化.別アングル写真の産卵管の形状で判断.▲

やはりトンボが被写界深度内に入ると,すみずみまでシャープに写ります.いつもはズームレンズで撮っていて,ロング端で撮ると周辺がどうしてもぼけてしまうのですが,それがあまり目立ちません.これは癖になりそうですね.

ここはこれくらいにして次に行くことにしました.次はアジアイトトンボがいた池ですが,アジアイトトンボには出会えませんでした.いたのはアオモンイトトンボばかり.まだ朝の時間帯なので,あちこちで交尾をしています.


▲あちこちで交尾しているアオモンイトトンボたち.▲

全体を被写界深度内に収めるため,例によってライヴビューでローアングル撮影を行いました.この写真で気づいたのは,寄りすぎるとストロボの光がまわらないということです.上の3枚の内,真ん中の写真は少し離れて撮っていますので,ストロボの光がまわり,影が消えています.あとの2枚はかなり寄ったので,ストロボの光が回っていなくて,太陽の影がトンボにはっきりと出ています.むしろこちらの写真の方が自然でいいという感じもしますが,まあ好みの問題かもしれません.

それにしてもアジアイトトンボがいませんので,次の池に行くことにしました.ここも最近アジアイトトンボが減っているように感じている場所です.


▲いたのはアオモンイトトンボばかりだった.これはメス.▲


▲ここにはセスジイトトンボが1頭だけ見られた.▲

やはりアジアイトトンボには出会えませんでした.本当にアジアイトトンボはどうしていないんでしょう?.次に行くことにしました.ここでは,モノサシトンボやキイトトンボなど,イトトンボ類の数がかなり多いところです.


▲うまく被写界深度内に入ると,こういう角度でも全身にピントが来る.▲


▲モノサシトンボの未熟なオス(上)とメス(下).メスは少し角度が悪い.▲


▲キイトトンボもたくさんいたが,まだ未熟な個体がほとんどだった.▲


▲数は減ったものの,フタスジサナエもまだ元気に活動していた.▲

あと,クロイトトンボがいましたが,アジアイトトンボは姿がありませんでした.まだ空は晴れていますので,もう一つ別の公園へ行ってみることにしました.ただ,ここは惨憺たる状態で,イトトンボ類が全くいませんでした.この公園の一つの池は,以前茂っていた沈水・浮葉植物がほとんど姿を消しました.多分アメリカザリガニです.そしてウシガエルがたくさんいて,トンボを捕食しています.ヤブヤンマにさえ食いついているのを見たことがあります.産卵基質を失い,わずかに残された産卵基質で産卵していた個体はカエルに集中攻撃されたのかもしれません.広い自然公園で池も複数ありますが,この時期にまったく均翅類がいないというのは明らかにおかしいです.フタスジサナエとシオヤトンボなどがいました.


▲すっかり黄色みが取れたフタスジサナエのメス.▲


▲日陰にはシオヤトンボが止まっていた.▲

ということで,空腹でふらふらしてきましたし,それに雲がかかり始めましたのでここまでとしました.今日はマクロレンズを使って,その良さと同時に撮影の難しさを感じることができました.ただ小さなイトトンボ類は,画面いっぱいに撮影できることによってディティールが潰れずに写るので,今後もうまく利用していきたいと思いました.

それにしても,半日歩き回ってアジアイトトンボに出会えない.先日のダビドサナエといい今日のアジアイトトンボといい,普通種のトンボに気を配らないといけないと感じます.

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No. 1022. アオヤンマの確認.2025.5.27.

今日はアオヤンマの確認に出かけてきました.アオヤンマは数頭のオスが飛んでいるのを確認できました.兵庫県下では激減していますので,この産地は貴重です.


▲抽水植物の間をパトロールするアオヤンマ.▲

ここではまだヨツボシトンボが元気に活動していました.


▲ヨツボシトンボは軽く10頭以上いた.▲

林縁ではコシアキトンボたちが摂食飛翔をしていました.春のトンボから夏のトンボへの移り変わりが始まったようです.


▲摂食飛翔するコシアキトンボのオス.▲

散歩がてらよった場所ですが,トンボたちは確実に季節を進めているようでした.

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No. 1021. ダビドサナエを探して.2025.5.23.

ダビドサナエはもっともふつうなサナエトンボの一つだ,という意識がありました.過去形で書いているのは,かつて私は幼虫をすくって調査をしていましたので,どこの川でも網に数多く入るからでした.しかし,私の過去の記録を見てみると,フタスジサナエなどと比べてみると,成虫があまり記録されていません.さらに最近はダビドサナエの姿を見る機会がほとんどないことが,気になっています.

そこでダビドサナエの成虫を探しに出かけることにしました.過去に記録のあるところを4ヶ所まわってきました.まず第一の場所では,ヤマサナエ,アオサナエ,ミヤマカワトンボ,ニホンカワトンボがいました.ダビドサナエは姿が見られませんでした.


▲ヤマサナエのオス.▲


▲アオサナエのオス.▲


▲ミヤマカワトンボのメス.▲

そこそこのトンボがいるのに,かつては複数いたダビドサナエがいないのは変な感じです.第二の場所はこの場所のさらに上流です.しかしシオヤトンボがいただけで,サナエトンボの姿はありませんでした.やはりダビドサナエには会えません.

第三の場所は,かつてダビドサナエの産卵を撮影した川です.しかし川にはラン藻がたくさん生えていて,なんかかつて訪れたときのような清流の感じがしません.いたトンボも,アオサナエが1頭,ミヤマカワトンボが1頭だけでした.ここはダビドサナエ,ヤマサナエ,ミヤマカワトンボ,ニホンカワトンボがたくさんいた場所です.でもダビドサナエはもちろん,今はほとんどが姿を消していました.

最後に,ダビドサナエ成虫をまだ見ていない場所を選びました.ここはヒメサナエをよく見に来る場所です.ここでやっと2頭のオスを見ることができました.


▲2頭のダビドサナエのオス.▲

この状態がふつうなのか,かつてより数が減っているのか,まだはっきりとしません.ただ,以前は見ようと思えば成虫を見つけることはそれほど難しくないトンボでした.最近普通種と思っていたトンボがいつのまにか数が減っているということがあります.ノシメトンボなどはそのよい例です.ダビドサナエ,今後もちょっと注意してみていく必要がありそうです.

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No. 1020. 源流域のトンボ調査.2025.5.20.

例年行っている源流域のトンボ調査です.今年は少し出現が遅れているような気配があったのですけれども,結果的には例年通りといった感じに見えました.ムカシトンボが遅れているのかもしれないと先日判断していました.しかし今日の感じではむしろ早まっていたのかもしれません.ムカシトンボが羽化する時期には気温が高かったですから.今日の現地滞在時間は,9:15から13:30でした.


▲メスを探すように飛ぶムカシトンボのオス.▲

今日はムカシトンボは,オスが4回通っただけでした.メスを探すような飛び方をしていました.ジグザグに飛んで植物の間をのぞき込みます.写真には撮りにくい相手です.

クロサナエは,今日は4回産卵に入って来ました.これは多い方だと思います.流れ中央の同じ石の上で3回と,あとは別の場所でした.


▲1頭目のメスの産卵.10:05.▲


▲流れ中央の石の上で産卵するので背景の石が濡れて光っている.▲


▲これは2回目に産卵に入って来たメス.腹部の黄斑が1頭目とは異なる.12:08.▲

これもいつもの行動ですが,不思議とメスが産卵に下りてくると,少し間を開けてオスが同じ場所に下りてくるのです.もう何年もクロサナエを観察していますが,これはかなり高い確率で起きています.今回は2分後に産卵場所のすぐ横に下りてきました.


▲2頭目の産卵のあと,すぐそばにオスが下りてきた.12:10.▲

次のメスは流れの横の岸辺で産卵していましたが,発見が遅れて近づこうとしたときに産卵を止めたように見えました.近寄ってみると草の葉に止まり,なんと卵をポタポタと落としているように見えます.正確に言うと腹部先端に卵が付いています.これ遊離性静止産卵でしょうか.空中産卵をするナニワトンボやマダラナニワトンボで観察したことがあります.この個体は40秒近くこの状態でした.


▲3頭目の産卵メス.遊離性静止産卵!?.12:55.▲

3回産卵に出会うと,もう成果としては十分です.13:30に切り上げることにしました.するとこれもよくあるパターンですが,帰ろうとするとやってくるというヤツです.


▲帰り間際にやってきた4頭目の産卵メス.13:14.▲

さて源流域のもう一つのサナエトンボ,ヒメクロサナエです.こちらは,オスが時々下りてくるパターンで,いつも通りといったところです.メスもねらっていたポイントにぴったりと入って産卵をしました.さっと入って来て貼り付くように石に止まり,産卵を始めました.途中移動することなく同じ場所で産卵し続けました.近づいても逃げないいい性格のメスでした.ただ,写真の撮りにくい位置で,全部同じアングルの写真になってしまいました.ですので,1枚だけ紹介しておきます.


▲縄張りというより,メスが来そうな所を巡回して止まっているように見える.▲


▲時々は,流れから離れた草に止まって休息しているように見えるオスもいる.▲


▲静止接水産卵.11:57:20″-12:01:19″までの4分間の産卵であった.▲

最近ムカシトンボの産卵に出会っていません.今年は植物の生長が悪い感じがして,この谷に集まっていないのかもしれません.産卵痕も見つけられませんでした.

ということで,源流域のトンボ調査は1回で終了できそうです.つぎは中流域のトンボ,そろそろキイロサナエが羽化を始める時期です.

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No. 1019. 兵庫県北部調査モード(2).2025.5.14.

今日の調査目的は,源流部のトンボの出現状況確認です.ムカシトンボがそろそろ飛ぶころなのでそれを見に行くことにしました.天気は快晴で気温も高く観察には申し分ない状態です.

しかしムカシトンボはオスが3頭飛んだだけで,まだ賑やかさがありませんでした.いつも一緒に見られるヒメクロサナエやクロサナエの姿は一切なし.転進したヒラサナエも未熟なメスが1頭だけ.すべてのトンボについてまだ成熟が進んでいないようです.


▲まだ羽化直後と思われるヒラサナエのメス.▲

兵庫県北部については,今年はトンボ季節が若干遅れているように感じます.さらに標高の高い池に出向きましたが,全くトンボの姿がありませんでした.あまりに手応えがないので,平地に下り,コサナエやオオイトトンボの状況を見に行きました.


▲コサナエは,数が減っていたが元気に活動を行っていた.▲


▲羽化直後のオオイトトンボ.▲

オオイトトンボは羽化直後の個体が見られ,羽化が続いているようでした.春一番のオオイトトンボは一斉に羽化してたくさんの個体が水面を飛び回るものですが,だらだらと羽化が続いている感じに見えました.ホソミオツネントンボはまだ頑張っていました.こちらは例年も遅くまで繁殖活動をしているのでこんなものでしょう.


▲さすがに個体数は減ったが,まだ繁殖活動を続けているホソミオツネントンボ.▲

今日最後は,ホンサナエの夕刻の活動観察にしました.ホンサナエは体躯ががっしりとしたトンボで,見かけ以上に高速に縦横無尽に飛ぶ戦闘機のようなトンボです.暖かい春の夕方を土手に座ってホンサナエたちの活動を眺めて過ごす,こんなことはあと何年ぐらい続けられるのか,そんなな感傷に浸ってしまいました.実は私の寿命よりもここのホンサナエが消える方が早いような気がしています.さて,観察は16:00頃から始めました.


▲まだ明るい夕方の川面を飛ぶホンサナエのオス.▲


▲16:39,石などに止まることが多いホンサナエだが,草に止まった.▲

少し来たのが早かったのですが,気にせずのんびりと観察を続けました.二日間動き回ってやや疲れがたまったようで,こんなときにはのんびり観察がいいです.やがて時刻が進み夕刻の雰囲気が漂ってきました.それでもホンサナエのオスたちは,変わらず飛んだり止まったり,本当によく働く勤勉ものです.


▲17:10,夕方の日差しを背に受け,腹部をやや持ち上げ滑るように飛ぶオス.▲


▲16:57,時々メスのように飛んできて止まるがすぐに飛べるように臨戦態勢.▲


▲17:13,飛び続けるホンサナエ.日陰に入ると背景は真っ暗.▲

いい時刻になりましたが,なかなかメスは入って来ません.オスの個体数が多くはないのでメスも個体数が少なく,あまりやってこないのかもしれません.時々ですが17:30を回ったあたりから,水面を一直線に飛ぶホンサナエを見ました.オスは追いかけますが,捕まえることができません.そしてオスはまた止まります.この間のように私の横に止まるオスがいました.二人で仲良くメスを待ちます.


▲赤い夕日を浴びながら私のすぐ横に止まってメスを待つオス.最短距離撮影.▲

オスたちは,動くものがあれば飛び立って追跡し,オス同士が出会えば追尾しています.18:16に太陽が山陰に沈んでもまだ飛んでいます.しかしやがてオスが飛ぶ姿が見られなくなりました.山へ帰ったかと思っていると,水面を超高速で一直線に飛ぶホンサナエが現れました.するとどこかに止まっていたのですね,2頭のオスがそれを追いかけました.でも相手は逃げ切ったようです.面白いことにこんなことがあったあと,オスたちは水面をきびきびと飛び始めました.一気に活気づいた感じです.「メスが来るかもしれないぞ,そのときが来たぞ」というオスの感情が感じられる行動です.そんなとき,交尾態になったペアが目の前を横切り一気に上空へ飛んでいきました.本当にメスが来たようですね.18:28でした.


▲18:28,メスをゲットし,山の方に飛び去っていくホンサナエのペア.▲

残念ながらこのオスは,私の横に止まっていたオスとは違いました.彼は17:40ごろまで水面を飛んでいましたが,姿が見えなくなりました.本当に帰ったか付近を見回ったときでした.すぐ先でメスが水面を旋回して打水しました.どこかで卵塊をつくっていたようです.でもこれが最後の打水だったようで,姿は消えました.観察は19:00で終え,現場を後にしました.結局メスを身近に見ることはありませんでしたが,久しぶりにのんびりとトンボ観察が出来,気持ちは充実していました.

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