兵庫県の幼虫ガイド
H002. ホソミオツネントンボ Indolestes peregrinus
ホソミオツネントンボ終齢幼虫
写真1.ホソミオツネントンボ終齢幼虫(しゅうれいようちゅう)尾さいをふくめた全長21mm前後.2019.7.2.
<特ちょう>
 ホソミオツネントンボは腹部が細長く,あしが長い,アオイトトンボ型の幼虫ですが,全長が30mm近くあるほかのアオイトトンボのなかまにくらべると,全長で21mm前後で,大きさがかなり小さいです(写真4).体全体がやわらかく,表面はすべすべしています.下唇(かしん)は細長く,後ろあしのつけ根にとどくくらいの長さがあります(写真3).腹部のそれぞれ節の横に,黒っぽい色のはん点が2つずつついています(写真2).また尾さいは,ふつう,だいだい色にすき通っていて,上下のへりには,それぞれ3つのこげ茶色のはん点があります(写真2).

ホソミオツネントンボの腹部と尾さい ホソミオツネントンボのかしん
写真2.腹部のそれぞれの節の横にある2つの黒っぽいはん点.
尾さいはだいだい色にすき通っています.
尾さいの上下のへりには,3つの焦げ茶色のはん点があります.
写真3.ホソミオツネントンボの下唇とその長さ.
下唇の先は,後ろあしのつけ根にとどくくらいの長さ.
 


<よく似た幼虫との区別>
 ホソミオツネントンボとよく似た幼虫に,アオイトトンボオオアオイトトンボコバネアオイトトンボオツネントンボがいます.まず,これらとのいちばんのちがいは,大きさです.写真4のように,ホソミオツネントンボは尾さいをふくめた全長が21mm前後しかなく,30mm近くあるこれらのトンボとくらべて,とても小さいです.
 次に,アオイトトンボオオアオイトトンボについては,下唇の長さを比べてください.ホソミオツネントンボの下唇も長いですが,これら2種ほどではありません(写真5).

ホソミオツネントンボのそっきょくとはいきょく ホソミオツネントンボの触角と背中のはん点
写真4.アオイトトンボとホソミオツネントンボの大きさの比かく. 写真5.アオイトトンボとホソミオツネントンボの下唇の長さのちがい.

 コバネアオイトトンボ下唇はかなり短く,ホソミオツネントンボと同じように.その先が後ろあしのつけ根にとどくくらいで,これでは区別がつきません.そこで次に,写真6にあるように,腹部の横のはん点を見てください.コバネアオイトトンボには,それぞれの節にはん点は1つしかありません.
 いちばん難しいのはオツネントンボとの区別です.オツネントンボとは,体の大きさのちがい,尾さいの色の違い,下唇の形のちがい,で区別してください.体の大きさと尾さいの色のちがいについては,オツネントンボのページの,写真5を見てください.下唇の形のちがいについては,写真7を見てください.

ホソミオツネントンボのそっきょくとはいきょく ホソミオツネントンボの触角と背中のはん点
写真6.ホソミオツネントンボとコバネアオイトトンボ
腹部横のはん点のちがい.
写真7.ホソミオツネントンボとオツネントンボ下唇の形のちがい.
 


<さがす場所のヒント>
 ホソミオツネントンボは池や湿地(しっち)の住人です.成虫のまま冬をこして,春一番に産卵に現れるトンボです.写真8のように,岸辺からのびている草や,水の中に生えている植物の,葉や茎(くき)に卵を産みつけます.しかし,池では,意外に幼虫は採れません.むしろ,ホソミオツネントンボの幼虫は,水田でよく採れます.ナツアカネやカトリヤンマがたくさんいる水田で,それらの幼虫といっしょに網(あみ)に入ることが多いです.春に産みつけられた卵はすぐにかえり,幼虫はものすごく速く成長します.6月から7月にかけて羽化して成虫になります.成虫はそのまま夏・秋・冬をこします.ですから,幼虫の採れる期間は,5月から7月くらいの短い間です.終齢幼虫は,ふつう6月になってから採れます.

ホソミオツネントンボの産卵場所.
写真8.水面にのびるかれ茎に産卵する,ホソミオツネントンボのペア.