H006.ニホンカワトンボ Mnais costalis
生息環境の写真
生息環境
 ニホンカワトンボ(兵庫県ではかつてのオオカワトンボ)は一般に河川中流域に生息するトンボといわれてきた.しかし,兵庫県下のフィールドに出てみると,河川のかなり広い範囲に生息していることが分かる.アサヒナカワトンボやヒメクロサナエがいるような源流や上流から,アオハダトンボやキイロサナエが飛ぶような中流にいたるまで,その姿を見ることができる.
 かつて,本種がオオカワトンボとヒガシカワトンボとの2種に大別されていた頃,解説書のヒガシカワトンボの欄には「ニシカワトンボ(現アサヒナカワトンボとほぼ同じ)同様平地から山地にいたる各種の清流に生息し(石田ら,1988)」と書かれている.つまりもともとニホンカワトンボの関東・東北以北の個体群(つまりヒガシカワトンボ)は,上流域にも住んでいたということである.
 一方,オオカワトンボの解説の欄には「平地や丘陵地の挺水植物や沈水植物が繁茂する清流に生息し(石田ら,1988)」とある.もちろんオオカワトンボは,ニホンカワトンボの中部以西・以南の,アサヒナカワトンボと同所的に生息する個体群である(あえて同所的と書いた).実際,関東から来た知人にオオカワトンボの生息地を案内したら,「こんな上流にいるのですか?」と驚かれていた.関東の人には,オオカワトンボは中流域のトンボという認識があったようだ.
 これらを総合すると,カワトンボ論議の中で,オオカワトンボ(ニホンカワトンボの中部以西・以南個体群)とニシカワトンボ(現アサヒナカワトンボ)が亜種関係にあるとの認識が,生息地を異所的に記述させてきた原因になっているのではないだろうか.現在はニホンカワトンボとアサヒナカワトンボは別種なので,同所的に生息していても何ら問題はない.
 以上からまとめると,兵庫県下では,ニホンカワトンボは,「アサヒナカワトンボが生息する源流域から,アオハダトンボやハグロトンボが生息する河川の中流域まで,広い範囲に生息するトンボである」,といえる.山本ら(2009)はそのように記述している.
ツルヨシの生えた河川.