H006.ニホンカワトンボ Mnais costalis
■生息環境
生息環境の写真
 ニホンカワトンボ(兵庫県ではかつてのオオカワトンボ)は一般に河川中流域に生息するトンボといわれてきた.しかし,兵庫県下のフィールドに出てみると,河川のかなり広い範囲に生息していることが分かる.アサヒナカワトンボやヒメクロサナエがいるような源流や上流から(2010.5.29.のトンボ歳時記参照),アオハダトンボやキイロサナエが飛ぶような中流にいたるまで(2010.5.8.のトンボ歳時記参照),その姿を見ることができる.
 かつて,本種がオオカワトンボとヒガシカワトンボとの2種に大別されていた頃,解説書のヒガシカワトンボの欄には「ニシカワトンボ(現アサヒナカワトンボとほぼ同じ)同様平地から山地にいたる各種の清流に生息し(石田ら,1988)」と書かれている.つまりもともとニホンカワトンボの関東・東北以北の個体群(つまりヒガシカワトンボ)は,上流域にも住んでいたということである.
 一方,オオカワトンボの解説の欄には「平地や丘陵地の挺水植物や沈水植物が繁茂する清流に生息し(石田ら,1988)」とある.もちろんオオカワトンボは,ニホンカワトンボの中部以西・以南の,アサヒナカワトンボと同所的に生息する個体群である(あえて同所的と書いた).
 これらを総合すると,カワトンボ論議の中で,オオカワトンボ(ニホンカワトンボの中部以西・以南個体群)とニシカワトンボ(現アサヒナカワトンボ)が亜種関係にあるとの見方が,生息地を異所的に記述させてきた原因になっているのではないだろうか.現在はニホンカワトンボとアサヒナカワトンボは別種なので,同所的に生息していても何ら問題はない.
 以上からまとめると,兵庫県下では,ニホンカワトンボは,「アサヒナカワトンボが生息する源流域から,アオハダトンボやハグロトンボが生息する河川の中流域まで,広い範囲に生息するトンボである」,といえる.山本ら(2009)はそのように記述している.
ツルヨシの生えた河川.