No. 980. ヤンマとアカネ.2024.7.30.

7月下旬,薮の中にヤンマを探す季節が来ました.あわせてアカネ属たちの夏越しも観察することにしました.というのは,自宅の裏庭にリスアカネが居座るようになったのがきっかけです.200mほど離れたところにリスアカネのいそうな池はありますけど.決して近くではありません.


▲自宅の裏庭に居座り始めたリスアカネ.▲

このリスアカネ,写真の枯れ枝の先端が好きなようですが,止まっているところに陽が当たるようになると移動して,太陽の直射を受けないような行動を示します.見ていて面白いのでしばらく観察を続けようと思っています.

さて,一昨日はヤブヤンマにうまく出会えなかったので,今日はなんとか接近遭遇したいということで2ヶ所へ出かけることにしました.最初の場所で見つけましたが,すぐに飛び去ってしまいました.


▲水たまりに面した木の枝に止まるヤブヤンマのオス.▲

例によって池岸から伸びている細い枝に止まってメスを待っている感じでした.

2つ目の場所ではヤブヤンマは見ず,カトリヤンマがいました.ただこちらも遠くから写真を撮ると飛び立ってしまい,接近はできませんでした.


▲カトリヤンマのメス.まだ尾毛が長い.▲

でもまあ,この時期の薮の中のヤンマに出会うことはできました.アカネ属は,ネキトンボ,コノシメトンボ,ヒメアカネなどが見られました.


▲ネキトンボのオス.▲


▲コノシメトンボのメス.▲


▲ヒメアカネのオス.▲

秋を待つアカネ属も薮の中で夏が過ぎるのを待っていました.外気温は36℃でした.この暑さ本当にどうにかなりませんか.

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今日初登場のトンボたち
No. 55. ヤブヤンマ,オス.
No. 56. カトリヤンマ,メス.
No. 57. ネキトンボ,オス.
No. 58. コノシメトンボ,メス.

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No. 979. ヤブヤンマを見に行ったが...2024.7.28.

今日はヤブヤンマを見に行きましたが,結果はオスが数回飛んだだけで,メスの産卵には出会えませんでした.徐々に徐々にではありますが,10年ぐらい前には普通に見られたトンボが見られにくくなってきている感じがします.消えたわけではないので,個体数が減ってきていることの表れではないかと思います.トンボの減少をある種の農薬の影響と考える議論が盛んですが,私はそういう薬剤の影響が少ないと考えられる場所へ出かけることが多く,最近感じる減少は原因が違うように感じます.

さて,気温は35℃を超えていますが,ヤブヤンマの観察は日陰で待つことですので,風さえ吹いていれば比較的楽なものです.正午前後に2時間半ほど観察をしました.しかし木の枝に止まっているメスを探すようにオスが飛んできただけでした.水たまりでは,シオカラトンボ,オオシオカラトンボ,ウスバキトンボが飛んでいました.また日陰にはリスアカネがもうなわばりを形成しているように見えました.


▲オオシオカラトンボ.▲


▲産卵をするオオシオカラトンボのメス.▲


▲暗い林を背景に,止まったり飛んだりするウスバキトンボ.▲


▲日陰で活動を始めているリスアカネ.▲

シオカラトンボのあるメスはとても面白い産卵行動を見せてくれました.オスの数が非常に多いので,メスは普通に打水産卵すると,次々にオスに邪魔されて産卵ができないのでしょうか.そういうことをメスがまるで認識しているかのように,カオジロトンボで見たようなちょっと打水しては止まる,ということを繰り返していたのです.


▲シオカラトンボは数が多く,一つの枯れ枝に4頭のオスが止まっている状態.▲


▲2頭のオスがひっつくようにオオシオカラトンボと一緒に止まっている.▲


▲シオカラトンボの交尾もあちこちで行われている.▲


▲止まって,ちょっと飛んで打水し,また止まる.▲


▲止まっているメスのシオカラトンボ.▲


▲飛び立ったメス.▲


▲跳び上がったメス.▲


▲打水するメス.▲


▲打水したらすぐに止まる.▲

産卵様式は遺伝子に刻み込まれた戦略かというと,それほど固定的ではなく,状況に応じて可塑的に変更できる戦術も持っているということが分かります.ある種のトンボの産卵様式を網羅的に挙げていくことも大切ですが,普段行われない産卵行動を生み出したとき,そのまわりの状況を考えてそれを解釈するということが重要ではないかと思いますし,さらに最も普通に見られる通常の産卵様式が何故その形なのかということも考えてみると面白い知見が得られるかもしれません.

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今日初めて登場したトンボ
No. 54. ウスバキトンボ,オス.

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No. 978. ヒメサナエとオジロサナエ.2024.7.21.

いつものところへ行って,いつものトンボがいるのを確認して,そして安心して帰る,という観察が年に何回かあります.このヒメサナエとオジロサナエの観察もその一つです.この場所は工事によって一時崩壊するのではないかという恐れがありましたが,工事が終わって3年,どうやら生き延びたようです.工事終了後の原状復帰もすばらしく,ほとんど昔と変わらない状態です.

さてこの時期,産卵活動に的を絞った場合,ヒメサナエには少し遅くオジロサナエには若干早いという微妙な時期です.まずオジロサナエ.川にも出てきており,オスとしては繁殖活動期に入っているといってもよい状態でした.


▲産卵場所の環境でメスを待つオス.▲

オス同士のバトルも繰り広げられ,久しぶりにオジロサナエの活動を楽しみました.しかし草むらにたむろしているオスもいて,これからという感じもしました.


▲草むらにたむろするオジロサナエのオス.▲


▲これはたむろしているのではなく流畔のシダ植物の止まっている.▲

結局オジロサナエについては産卵活動を見ることはできませんでした.オスはそこそこいたので,時機が到来すれば結構産卵活動も盛んになるのではないでしょうか.オジロサナエについてはやはり早朝をねらわないといけないかもしれません.

一方ヒメサナエについては,流れに出ているオスの数が非常に少なかったように感じました.


▲暑い日差しの中で頑張るヒメサナエのオス.外気温37℃!.▲


▲ヒメサナエのオス.ときどき日陰にも降りてくることがあった.▲

ヒメサナエの数が減っているというより,やはり時期がちょっと遅いのだと感じました.というのは,オスの数に比して,今日はメスに結構よく出会いました.まず流れに沿った道を歩いていると,川からヒメサナエのメスが飛び出してきました.


▲流れから飛び出してきて葉に止まったヒメサナエのメス.▲

また観察地に着いたとき,メスが流れに降りてきました.このメスは産卵せずに飛び去りました.私の接近がよくなかったかもしれません.


▲観察ポイントに降りてきたヒメサナエのメス.▲

そして,産卵にはのべ3回現れました.面白いことに私が腰を下ろしている真ん前に産卵に来たのです.それも2回も.私がオスに見つからないような遮蔽物に見えたのかもしれません.長時間腰掛けていると石に見えるのかも.


▲目の前に降りてきて産卵を始めた1回目のメス.座ったままカメラを向けた.▲


▲ヒメサナエの擬瞳孔が面白く,こちらを横目で見ているみたいだ.▲

あと1回の産卵は,水面上を激しく移動して連続打水するような産卵で,ホバリングして間欠打水する,写真のような産卵とは異なるものでした.

オスの方は,何度か川面に降りてきたものの,粘り強くメスを待つ個体はいませんでした.一方,草むらでは何頭か見かけました.


▲流れに出ず草むらで過ごすヒメサナエのオス.▲

という感じで,感触としては,時期と時間を選べば,ここで楽しい観察が出来るかもしれないという感触を得ました.

ここへ行く途中,アカトンボの未熟個体を2頭見ました.一つはミヤマアカネのオス,もう一つはナツアカネです.ナツアカネの未熟な個体は,成熟個体の多さと比べてあまり見かけることがないので,こんなところに一人でぽつんといるんですね.


▲ミヤマアカネの未熟なオス.▲


▲ナツアカネの未熟なオス.▲

ということで,今日は2時間ほどで観察を終えました.なにしろ外気温37℃の危険な暑さでしたから.

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今年初めて出会ったトンボたち.
No. 50. オジロサナエ,オス.
No. 51. ヒメサナエ,オス・メス・産卵
No. 52. ナツアカネ,未熟オス.
No. 53. ミヤマアカネ,未熟オス.

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No. 977. オオシオカラトンボ.2024.7.20.

今日は樹林に潜むカトリヤンマを探しに行きました.しかしカトリヤンマは一度だけ目の前を通り過ぎただけでした.多かったのはオオシオカラトンボ.今年の南西諸島旅行で,やたらとオオシオカラトンボの亜種を探していましたので,本家本元のオオシオカラトンボを記録しておくことにしました.


▲本家本元のオオシオカラトンボ.Orthetrum melania melania.


▲オオシオカラトンボの未熟なオス.▲

初めメスがいると思って近づくと,未熟なまだ粉を吹いていないオスがいました.これなかなか見るチャンスが少ないんです.複眼が明るい赤茶色であることもメスとは違ってきれいです.次の写真が成熟メスです比べてみてください.


▲オオシオカラトンボの成熟メス.▲

小さな湿地で交尾産卵が行われていました.


▲オオシオカラトンボの交尾.▲


▲産卵を始めたオオシオカラトンボ.▲


▲やはりオキナワオオシオカラトンボのメスとは大分違う.▲

さて,アカトンボたちがひっそりと夏を越していました.リスアカネとヒメアカネです.リスアカネというのは意外とこの未熟な個体には出会いませんね.成熟が早いからかもしれません.


▲リスアカネの未熟なオス.翅端の褐色斑も濃い.▲


▲ヒメアカネの未熟なメス.▲

暑さは35℃.日陰にいても息苦しくなります.2時間ほどで退散しました.

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今年初めて出会ったトンボたち
No. 48. リスアカネ,未熟オス.
No. 49. ヒメアカネ,未熟メス.

カテゴリー: 兵庫県のトンボ, 観察記 | No. 977. オオシオカラトンボ.2024.7.20. はコメントを受け付けていません

No. 976. キイトトンボの産卵.2024.7.17.

しばらく梅雨末期の曇天が続きましたが,今日は少し安定した天気になりました.夏の池に夏の普通のトンボたちを見に行きました.夏のイトトンボと言えばキイトトンボ.最近はたくさんいるところが減ってきたように感じます.


▲池の近くの草むらにポツポツとみられたキイトトンボのオス.▲

池の近くの草むらを歩くと,キイトトンボがあちこちから飛び出してきました.たくさんというほどではありませんが,元気にしているなと感じるほどにはいました.池の際に入って眺めてみると,3組が産卵していました.ちょうど真昼頃です.


▲産卵するキイトトンボ.産卵は3ペアいたが,これらはそのうちの2ペア.▲

キイトトンボに混じってベニイトトンボもいましたが,こちらは産卵はしていませんでした.


▲ベニイトトンボのオスたち.▲

そのほかのイトトンボとしては,クロイトトンボが頑張っていました.


▲クロイトトンボの交尾.▲

池は夏のトンボたちで賑やかでした.コシアキトンボ,シオカラトンボ,チョウトンボ,ショウジョウトンボ,ギンヤンマ,どれも活発に活動をしており,自分たちが主役であると主張するように飛び回っていました.


▲ショウジョウトンボのオス.▲


▲チョウトンボのオス.▲


▲シオカラトンボのオス.▲

この後ヤブヤンマの産卵を見に行きましたが,まだ少し早かったようです.池の上を1回だけヤブヤンマが飛びました.その代わりといっては何ですが,タイワンウチワヤンマが姿を現していました.奄美大島でたくさん見てきたトンボですが,こちらではやっと出現期を迎えたようです.


▲タイワンウチワヤンマが姿を見せた.いよいよ夏本番だ.▲

当たり前のトンボが当たり前のように飛んでいる.これが夏の風景なのです.少し安心しました.梅雨が終われば,川へ行ってみたいと思っています.最後に今日のゲスト,キアゲハのメスです.家庭菜園のにんじんの大敵で,見つけると家内はすぐに殺しています.ちょっとかわいそうな気もしますが...


▲大きくてきれいなキアゲハのメス.▲

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今日初めて出会ったトンボたち
No. 47. タイワンウチワヤンマ,オス

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