No. 861. ナゴヤサナエなどの確認.2022.7.24.

今日は,県内のナゴヤサナエ,ネアカヨシヤンマ,ヤブヤンマ,マルタンヤンマの調査に出かけました.まず,午前中によく飛ぶナゴヤサナエからです.昨年県内生存を再確認できた場所へ出かけました.着いたのは9時少し前.川面を見るとナゴヤサナエが飛んでいました.早速川に入って,メスが来ないかと体勢を整えて待ちました.


▲川面を飛ぶナゴヤサナエのオス.▲

ナゴヤサナエのオスは2頭確認できました.通り過ぎてから2,3分して戻ってきますので,かなり広い範囲を飛び回っているようです.メスはやはりそう簡単には姿を現しませんが,1,2度,水面を一直線に飛ぶナゴヤサナエ体格のトンボがいました.ただオナガサナエも同じような飛び方をするので,確認はできませんでした.


▲ナゴヤサナエのオス.▲

ナゴヤサナエ以外には,シオカラトンボが圧倒的に多く,ウチワヤンマの交尾態が2ペア飛んだりオオヤマトンボが周回したり,セスジイトトンボ,コフキトンボなども少数ですが活動していました.


▲コフキトンボのオス.▲

11:00頃まで観察を続けました.だんだんとオスの通過間隔が長くなり,気温の上昇とともにナゴヤサナエの活動が鈍ってきました.その後午後3時頃にも観察に来てみましたが,この時は全く飛びませんでした.


▲11:00頃まで飛び続けていたナゴヤサナエのオス.▲

次に,昼食をとってから,ヤブヤンマとネアカヨシヤンマの見られる湿地に出かけました.この8日に出かけたときは完全に水たまりが干上がっていました.その後雨が続き,多分水たまりは復活していると考えてやってきました.実際その通りでした.シオカラトンボがたくさん活動をしており,乾燥に強いハラビロトンボも活動をしていました.


▲産卵するハラビロトンボ.前方に水を飛ばす飛水産卵である.▲

しかしここで羽化していただろうオオシオカラトンボが少なく,干上がっていた影響を少し感じました.12時前に到着し,環境的にはヤブヤンマにはちょうど良い感じになっていました.しかしヤブヤンマは全く姿を見せませんでした.ヤブヤンマもこの湿地でそこそこの数が育っていて数を減らしたのかもしれません.乾燥化の影響のように感じました.一方ネアカヨシヤンマは1頭だけ姿を見せました.こちらは乾燥に強いヤンマです.


▲朽ち木に産卵するネアカヨシヤンマ.▲

ネアカヨシヤンマは1頭だけで,湿地に入ったり出ていったりしながら,時々産卵行動を見せました.まだ若いのかもしれません.ヤンマの若い個体は結構敏感で,落ち着いて産卵しないので,この個体にも近寄ることができませんでした.

この後午後のナゴヤサナエを見に行って,最後はマルタンヤンマの探索です.兵庫県では,マルタンヤンマが安定的に繁殖を繰り返している場所が十分に知られていないようです(私が知らないだけかもしれませんが).今年調べている休耕湿地はマルタンヤンマの生息地に適しているように思えるのです.

17時前に湿地に入り探索を開始しました.すると間もなく,緑色の草の上を飛ぶ真っ茶色のマルタンヤンマを見ました.色彩のコントラストに「マルタンヤンマはやはり美しい」と思わず心の中で叫んでしまいました.マルタンヤンマというとオスの美しさがよく言われますが,私は,オスの美しさは飽きが来るのに対し,メスのシックな感じは飽きが来ず,こちらの方が好きです.

マルタンヤンマのメスは時々草の中に沈み込むように降りて産卵しています.こういう姿を兵庫県内で見るのは久しぶりです.というか,過去に見たのは植生豊かなため池に産卵に降りてくるマルタンヤンマばかりでしたから,県外の多産地で見たこのような動きは初めてといってもいいと思います.ただ,マルタンヤンマはただの1頭だけでした.その後黄昏時にも1頭が上空を飛んだだけで,ここは多産地とは全くいえない状態です.たまたま来ていただけかもしれません.さらに,ネアカヨシヤンマやヤブヤンマのような黄昏飛翔ヤンマは全く姿がありません.

今後ここでの個体数増加に期待して,今日の観察を終えました.そう,写真の方は,産卵に降りるたびに近づこうと頑張りましたが,全くだめでした.やはり1頭だけだと超敏感です.飛んでいるところを超ピンボケで1枚証拠に残しています.

今年の夏はヤブヤンマに手こずらされるかもしれません.

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No. 860. ベニイトトンボの生息状況確認.2022.7.22.

今日は神戸市内のベニイトトンボの状況を確認に行きました.先日は県外で写真を撮ったのですが,今日は県内のベニイトトンボの生息状態確認です.


▲ベニイトトンボは健在だった.池1.▲

ここは小さな人工池で,昨年も確認した場所です.オスが3頭見られました.繁殖活動は見られませんでした.次に本命の池です.


▲この池には繁殖活動の他,オスが10頭以上見られた.▲

去年来たときにはそれほど数が多いようには見えませんでしたが,今年は池の周辺にもあふれ出ているほど数が多かったように思えました.ただし無数にいるというわけではなく十数頭程度というところです.産卵も2組が行っていました.近づくと飛んで逃げ,写真にすることはできませんでした.

まあ,生息状況の確認に来ただけですので,これで良しとしました.その他のトンボとしては,このブログ今年初登場のオオシオカラトンボとウスバキトンボ,またコシアキトンボは格別数が多かったです.


▲オオシオカラトンボのオス.たくさん見られた.▲


▲広場のような場所で摂食するウスバキトンボ.▲


▲相変わらず多いコシアキトンボ.▲

明日あさってと晴れが続くようですので,また調査に出かけるつもりです.

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No. 859. オジロサナエの産卵観察.2022.7.17.

今日は戻り梅雨の一時晴れ間.かねてより計画していたオジロサナエの産卵を見に行くことにしました.ちょっとまだ時期的に早い感じはしますが,このあとも天候があまり芳しくなく,7月下旬にはヤンマも見に行きたいので,今日はオジロサナエ一本に絞って観察に行くことにしました.果たして先日の場所は当たりかどうか....

オジロサナエは結構朝早く産卵に来ることがあるので,8時前には現地に入りました.川を上っていくと,まず飛び出したのはミルンヤンマの羽化個体でした.


▲川から飛び出てきたミルンヤンマの羽化個体.▲

もう秋のヤンマが出てきています.ヒメサナエもまだ道沿いに止まっていました.


▲川に出る前のヒメサナエ.▲

ということで,8時少し前に,先日見つけておいた場所に到着しました.まだトンボは何もいません.腰をかけて空を見上げると,1頭のヤンマが摂食飛翔をしていました.逆光で種名が分からないのですが,飛び方と,写真を拡大してみると腹部に縞模様が見られるので,ミルンヤンマと判断しました.


▲悠然と摂食飛翔を続けるミルンヤンマ.たくさんの小虫がいることが分かる.▲

肝心のオジロサナエの方ですが,8:20ごろに私の目をつけているポイントにオジロサナエが入りました.近づくと慌てて転がるように飛んで逃げました.オジロサナエには間違いありませんが,オスかメスかは分かりませんでした.

8:59,ヒメサナエが産卵に入りました.ヒメサナエももうピークは過ぎているようで,オスの姿がありません.メスは朝日を浴びながら,落ち着いて産卵をしていました.


▲オジロサナエのポイントのすぐ前に産卵に入ったヒメサナエ.▲

さらに待ちました.しかしなかなかオジロサナエは姿を現しません.9:30ぐらいに,またオジロサナエがポイントに入りましたが,これも近づくとすぐに飛んで逃げてしまいました.これはどうもオスのようでした.待てども待てども,オジロサナエのメスは姿を見せません.時刻は10:00を過ぎました.先日来たときにはオスたちは結構集まってきたのですが,今日はオスすら姿を見せません.やはりこのポイントはだめなのか,とだんだん焦りが出てきます.でも自分の今までの勘を信じて,待つしかありません.付近を回って見た感じでは,ここ以上に産卵に適した条件の場所はありません.

10:04,やっとオジロサナエのメスが姿を見せました.まさに私がここだと目をつけた場所で産卵をしています.


▲産卵にやってきたオジロサナエのメス.静止して卵塊を作り,飛んで打水する.▲

自分の経験と勘が当たった瞬間は,とても嬉しいものです.やはりこの場所に産卵に来ました.ただ毎回そうなのですが,その年の初ものは,緊張感が高いのか,あまりピントが来ないのです.たくさんピンボケを出してしまいました.


▲産卵するオジロサナエのメス.もう一つピントが甘い.▲

やっときたのですが,写真はもう一つぱっとしません.また来ることを期待して待ち続けました.しかし,全く姿を見せません.オスも来ないし,この場所はあまり良くないのかなと思い始めました.そこで,念のためもう一度周辺を探索することにしました.オスが集まっている場所はないかどうか.

しかし,やはりオスの姿はどこにもありません.オジロサナエの個体数自体が少ないのかもしれません.ヒメサナエはたくさんいることを,6月下旬の探索で確かめています.オジロサナエの数はそれに比べるととても少ないように感じます.場所より個体数なのかもしれません.まあしかし,メスが来たことは成果で,また個体数が多い年に来れば,たくさん産卵に来るかもしれません.この場所を大切にしていくことにしました.

帰り際にオスが1頭降りてきました.しかしこのオスもすぐに姿を消しました.


▲オジロサナエのオス.▲

12:00少し前,今日はこれくらいにすることにしました.すぐそばでずっと止まっていたミヤマカワトンボに挨拶をし,この場所を後にしました.そうそう,最後の方に降りてきたヒメサナエのオスにも挨拶を忘れないようにしました.このオス全然私の動きに動じることなく,ずっと同じ場所に止まっていました.目の前にメスが来て産卵しても動きません.変なやつでした.ちなみにそのメスは,私が近づくと,すぐ上の木の葉に止まりました.かなりバチャバチャやったのですが,やはりこのオスは動きません.


▲すぐそばにずっと止まっていたミヤマカワトンボのメス.▲


▲私が30cmほどの距離でバチャバチャやっても全く動かなかったヒメサナエのオス.▲


▲このメスは上のオスの目の前で産卵した.私が近づくと,樹上へ逃げた.▲

帰り道の林床で,ヒメサナエのオスがメスを追いかけているのを見ました.ヒメサナエは産卵場所でメスを見つけるだけでなく,こういった林床や草原でもメスを探しています.出会い場所は産卵場所とねぐら全体といった感じです.


▲林床でメスを追いかけていたオス(上)と追いかけられていたメス(下).▲

また別の場所では,オスが川石の上に止まっていました.


▲川石の上に止まってメスを待っているヒメサナエのオス.▲

少し下ったところで,コオニヤンマも姿を見せていました.


▲コオニヤンマのオス.▲

まあ,今日は十分な出会いはありませんでしたが,全般的にオジロサナエの個体数が少ないためである,という結論に落ち着きました.かつての場所では,オジロサナエはもっとあちこちで姿を見ましたから.

最後にゲストです.カラスアゲハとミヤマカラスアゲハが,川の対岸で吸水していました.どちらも死んだようにじっとして,長時間,黙々と吸水をしていました.


▲カラスアゲハのオスの吸水.▲


▲ミヤマカラスアゲハのオスの吸水.▲

車のそばの道路上には,暑いのにキリギリスが出てきて,私を迎えてくれました.


▲あちこちでキリギリスが鳴いていた.このオス白線の上で暑くないのだろうか?▲

ということで,今日は終わりです.

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No. 858. チョウトンボの産卵.2022.7.10.

どうも最近の天気予報は当たらない感じです.晴れの予報で兵庫県北部へ行ったときはずっと曇りでのち雨.雨のち曇りの昨日は晴れ間が出て暑い.今日は天気予報を当てにせず,午後から太陽が顔を出し始めてきたので,近くの池にチョウトンボを見に行くことにしました.この池はタイワンドジョウがいて,トンボがたくさんいます.池の岸に生えている樹木の樹幹部では,たくさんのチョウトンボが摂食飛翔をしていました.


▲池岸の樹木の樹幹部で摂食飛翔するチョウトンボの群れ.▲

池はハスが密生していて,アオミドロが浮かび,スズメノヒエが岸に繁茂している,植生豊かな池です.チョウトンボ好みですね.ちょうど岸辺に開水面があるところがあって,植生に邪魔されずにチョウトンボが観察・記録できます.


▲最近はこういった普通の植生豊かなため池も少なくなった.▲

岸辺や水面の植物にチョウトンボたちが止まっていますが,多くのチョウトンボはほとんど休むことなく飛び回っていました.暑い日差しのもと,黒い体で暑くないのかといつも心配していまいますが,彼らは本当に暑さに強いトンボたちです.


▲かなり日齢が進んだチョウトンボのオス.緑味が少なくなってくる.▲


▲チョウトンボのメス.金色にやや緑味がさしているタイプのメス.▲


▲オスたちは飛び回っていることがほとんどであった.▲

ものすごい数のチョウトンボが飛んでいますので,メスもしょっちゅう産卵に入ってきます.メスが入ると数頭のオスが追いかけ回します.メスは1回打水してすぐ飛んで逃げ,うまくオスをかわすと,オスを刺激しないようにふわっと飛んで水面に降り,またすばやく打水します.しかし,2,3回打水すると,オスも気づき,また追いかけあいを始めます.こんなことの繰り返しです.うまくタイミングが決まると連結,交尾と至ります.交尾時間は30秒程度で,交尾後特に警護するという感じではないようです.他のオスの干渉が激しいから警護どころではないのかもしれません.


▲交尾が終わるとメスを放し,メスはまた産卵を再開する.▲


▲上の交尾メスが,続けて産卵を行った.オス型のメスである.▲

このメスは,後翅の先端まで青色が広がるタイプで,ほぼ完全なオス型のメスです.青いオス色をした多くのメスは,後翅の先端には透明な部分があることが多いのです.次はメスらしい金色に輝く羽を持つメスの産卵です.


▲メス独特の,金色に輝く羽を持つ個体.オスにこの型は現れない.▲

少し離れたハスの林の縁で,またオス色のメスが産卵をしています.このメスは,後翅の先端に透明部分がある個体です.


▲青色に輝く羽を持つタイプのメスの産卵.チョウトンボはハスが好きだ.▲

本当にひっきりなしに産卵にやってきます.そのたびにオスが乱痴気騒ぎになって,狂ったようにメスを追いかけます.メスも手慣れたもので,さっとかわし,オスが少し離れた頃を見計らって,また産卵を開始します.


▲金色を基調に緑色の輝きが混じるメス.▲

この緑色が混じる金色タイプのメスが,私は一番好みです.見る角度によって緑色が大きく目立ったり,金色が目立ったりします.別に狙ったわけではありませんが,今日は一通りのタイプのメスが,1時間ほどの間に次々と産卵にやってきてくれました.

あと,チョウトンボに負けず活動していたが,ショウジョウトンボでした.それ以外には,アオモンイトトンボ,シオカラトンボ,コフキトンボ,クロイトトンボ,ギンヤンマ,そして多分セスジイトトンボも飛んでいました.


▲ショウジョウトンボのオスと,メスの産卵.▲

個体数が多いと,いわゆる普通のトンボは,ストレスなく観察を楽しませてくれます.チョウトンボやショウジョウトンボなど珍しくもないかもしれませんが,あのアキアカネでさえ激減したのですから,群れ飛ぶチョウトンボの姿をしっかりと目に焼き付けておきたいと思います.当たり前のトンボが当たり前にたくさん飛ぶ,そういった風景がこれからも残っていってほしいと思います.

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No. 857. ヒヌマイトトンボ調査.2022.7.8.

今日は天気予報では一応兵庫県は晴れマーク(実際は一日中曇り)だったので,この時期に確認しておくべきトンボとして,ミヤマサナエとヒヌマイトトンボ,そしてヤンマの生息地状況を見に行くことにしました.ミヤマサナエは過去の記録地を回りましたが,やはり姿がありませんでした.このトンボ兵庫県では非常に手強い相手で,なかなか姿を見ることができません.ヤンマの生息地は,今年の小雨の影響でしょうか,湿地の水たまりが完全に干上がっており,このままではヤブヤンマは来ないだろうと思われました.今後の雨を期待したいところです.

ということで,結局ヒヌマイトトンボだけを確認に行った感じになりました.ただ,ヒヌマイトトンボは見かけたオスが4,5頭,メスは1頭だけと,個体数が非常に少なかったのが気になります.曇りという天気のせいなのか,年々の個体数変動なのかは分かりません.


▲姿を見せていたヒヌマイトトンボたち.▲

写真に撮った以外の個体としては,ヨシの奥の方を飛んでいたオス1頭だけです.今日見た個体はこれですべてです.

この後,ヒヌマイトトンボの生息地の上流側に当たる水田地帯を歩いてみました.しかし全くトンボの姿がありませんでした.シオカラトンボ1頭,ハグロトンボ1頭すら見つかりません.確かにトンボの端境期ではありますが,その環境から見て,ちょっと首をかしげる状況です.すべて今日の曇りでムシ暑い天気のせいであればいいのですけれど....今日はこれで引き上げることにしましたが,少し後に一帯に夕立のような雨が降ったようです.

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