No. 990. アキアカネを探しに.2024.10.11.

10月中旬に入りました.例年なら,アカトンボの活動が最も活発に見られる時期です.ただ,今年はアカトンボやアオイトトンボ属など,秋のトンボの成熟や活動開始が少し遅れているようなフィールド感覚があります.先日のフィールド調査でもアキアカネが平地ではまったく見られませんでした.そこで,今日は兵庫北部へ出かけ,もう一度アキアカネの出現を確認する調査を行いました.結果アキアカネは平地で活動を開始していました.


▲産卵するアキアカネのペア.写真はすべて同じペア.▲

この場所は,数年前は非常にたくさんのアキアカネが飛んでいたところですが,今年はほんの10頭前後を見かけただけでした.ただ,写真のように産卵しているペアも2ペア見られました.そこで少し場所を変えましたところ,そこではもう少し数が多くいました.

今年はネキトンボにあまり出会えていないので,次にそれを探しに行きました.ネキトンボは数頭見られましたが,これも数年前に比べると著しい減少です.


▲連結打水産卵するネキトンボのペア.▲

普通はネキトンボは最後まで連結産卵することが多いようですが,今日は,他のオスがいないせいか,すぐに連結を解除し,メスは単独で産卵するようになりました.ただしオスはかなり執拗に警護し続けていました.

▲単独産卵に移行したメス.▲


▲並行に飛翔して警護するオス.▲


▲メスが止まればオスも止まる.ハッチョウトンボみたい.▲

あと見かけたアカトンボは,コノシメトンボの単独産卵,ナツアカネ,ノシメトンボ,キトンボでした.


▲停止飛翔するキトンボ.▲


▲日向に静止するナツアカネメス.▲

あと季節バズレのチョウトンボが飛んでいました.止まらなかったので写真にはなりませんでしたが,結構新鮮な感じのする個体でした.今年の気温の高い状況が,トンボたちの生活史の枠組みを決めている季節的制御のあり方に影響を与えていないか心配です.変な時期に変なトンボが出てくると,特にそういう心配が頭をもたげます.

そうそう,それから,アオイトトンボの活動が活発でした.アオイトトンボは9月下旬が最盛期のように思っていますが,この私のフィールド感覚も目の前の現実に会わなくて,ずれてきているような気がします.

カテゴリー: 兵庫県のトンボ, 観察記 | No. 990. アキアカネを探しに.2024.10.11. はコメントを受け付けていません

No. 989. 残りのアカトンボを求めて.2024.10.6.

残りのアカトンボというのは,今年,まだ昨日までに見られていない,アカトンボという意味です.具体的には,マイコアカネ,ナニワトンボ,タイリクアカネ,です.あとは,マダラナニワトンボがいますが,これはほとんど諦めています.飛来種はまたの機会です.

まずはマイコアカネから見に行きました.生息地の状況は例年と同じで,歩くとマイコアカネは10頭程度は見られました.


▲スゲの生えた浅い水たまりに群れるマイコアカネたち.▲

時刻がちょうど10時30分でしたので,産卵活動が見られるかと思い,少し歩き回ってみました.すると,まず交尾態で飛ぶペアを2つ見つけました.一つはどこかへ行ってしまいましたが,もう一つは手の届く範囲に止まりました.


▲マイコアカネの交尾.繁殖場所がメスとの出会い場所でもある.▲

このペアはしばらくすると産卵を始めました.マイコアカネの産卵は久しぶりに見ました.草の中に入り込んで,また上下動が大きく,割合に写真に撮るのは難しい相手です.


▲連結打水産卵を行うマイコアカネのペア.▲

そのうち,もうワンペアが近くで産卵を始めました.一種のグループ産卵です.他のペアが産卵をしている場所には天敵のカエルがいないことが間接的に証明されていますので,集まってくるのでしょう.そういう遺伝子を思っていた方が生存に有利なのでしょうね.


▲途中一時的にグループ産卵になった.左下が別ペア.▲

さて,次はナニワトンボです.ナニワトンボがたいてい見られる産地へ行きました.しかし最近は獣よけの金網を設置している場合が多く,ていねいに開けてきちんと閉じておけば問題はないのですが,やはり気持ちの上で抵抗があります.オスの写真を撮って,さっさと引き上げることにしました.


▲ナニワトンボは数頭見られた.まあ例年通りでこの産地での減少はないであろう.▲


▲けがなのか病気なのか,腹部先端が黒く変色しているオス.▲

産卵の時間帯はもう過ぎているのか,池はとても静かな感じでした.

そう,マイコアカネの池でタイリクアカネを少し探しましたが,まだ降りてきていないような感じでした.オオキトンボやコノシメトンボがいました.あと,アオイトトンボがたくさん産卵していました.


▲アオイトトンボのグループ産卵.▲

----------
今日初めて出会ったトンボたち
No. 73. マイコアカネ,オスメス産卵.
No. 74. ナニワオンボ,オス.

カテゴリー: 兵庫県のトンボ, 観察記 | No. 989. 残りのアカトンボを求めて.2024.10.6. はコメントを受け付けていません

No. 988. 午後休みのアカトンボを探しに.2024.10.5.

10月になりました.やっと涼しく感じられる天候になりました.もう10月の上旬になりました.例年ならアカトンボの真っ盛りという時期ですが,ついこの間まで真夏の暑さだったので,アカトンボは無事過ごしているだろうかと,午後休みしているアカトンボのようすを見に行きました.

目的の公園から田園地帯へと入っていくと,数が多かったのはナツアカネでした.まだ稲刈りはなされていませんので,ここなら稲穂の上で産卵するナツアカネが見られるのではないかと思うほどでした.


▲公園で休むナツアカネのオス.▲


▲水田の電気柵に止まるナツアカネのメス.▲

次によく目立ったのはリスアカネです.池に出ていたり,メスは林縁の木の枝に止まってひなたぼっこをしている個体がたくさんいました.


▲林縁に止まるリスアカネオス.▲


▲水田脇の電気柵に止まるリスアカネのメス.▲

コノシメトンボは数頭見られました.池に出てなわばりを持っているようなオスがいました.メスは高い枝の先に止まって休んでいました.


▲池でなわばりを持っているコノシメトンボのメス.▲


▲高いところに止まるコノシメトンボのメス.▲

兵庫県南部では非常に数が減って出会いにくくなったノシメトンボに出会いました.メスで,水田の鉄柵に止まっていました.


▲兵庫県南部では稀種?になってしまったノシメトンボのメス.▲

ヒメアカネは今年はたくさん発生しているように見えました.池岸の湿地状のところでオス同士が追いかけ合いをしたりして,元気に活動をしていました.


▲ヒメアカネのオス.▲


▲池から離れた草地で休むヒメアカネのメス.▲

マユタテアカネはあまり多く見られず,あちこちでぽつりぽつり止まっているのを見かけました.


▲午後の日差しを浴びて,林縁に止まるマユタテアカネのオス.▲


▲成熟して何度か産卵したように見えるマユタテアカネのメス.▲

オオキトンボも姿を現し始めていました.まだ若い色彩のオオキトンボは,池岸に止まってまだメスを待っているようでした.全部で6頭ほど見かけました.


▲池岸でメスを待つオオキトンボのオス.▲


▲水田の鉄柵に止まるオオキトンボのオス.▲

キトンボはまだ薄黄色の色をした若いメスが1頭,公園の草地に止まっていました.近づこうとしたらすぐに飛んで逃げてしまいました.


▲若いキトンボのメス.▲

全部で8種類のアカトンボに出会いました.最近秋の公園や田園地帯を歩いてで会う状況より,今年は種類も個体数も多いように感じました.暑さはアカトンボたちに影響をあまり与えていないようでした.

あと,日陰にオオアオイトトンボがタンデムで止まっていました.


▲タンデムのオオアオイトトンボ.▲

散歩を兼ねたトンボ観察でしたが,今年の秋は結構面白いかもしれないと感じました.あと今年まだ見ていないアカトンボは,ナニワトンボとマイコアカネです.マダラナニワトンボはもういないでしょうから...

----------
今日初めて出会ったトンボたち
No. 69. ノシメトンボ,メス.
No. 70. オオキトンボ,オス.
No. 71. キトンボ,メス.
No. 72. オオアオイトトンボ,タンデム.

カテゴリー: 兵庫県のトンボ, 観察記 | No. 988. 午後休みのアカトンボを探しに.2024.10.5. はコメントを受け付けていません

No. 987. ミヤマアカネを見に行った.2024.9.26.

やっと秋らしくなってきたので,今日はミヤマアカネのようすを確認に行ってきました.今日は生息地の周辺を歩いて,いわばルートセンサス的な調査を行いました.目撃できた個体数は21頭でした.オスが18頭,メスが3頭,このうち交尾態が1ペア,タンデムで飛行が1ペアでした.約40分歩いてこの状態なので,昔に比べれば本当に数が減ってきていると感じます.


▲オスのミヤマアカネたち.▲

まず止まっているオスの写真をいくつか並べてみました.これらの写真を見て気づいたことは,まだ胸部側面や縁紋が赤くなりきっていない個体が多いことです.もうこの時期だと全身真っ赤になっていてもいいはずです.まだ完全成熟していないような色彩です.

アカトンボの赤い色は,アキアカネやナツアカネで調べられたところでは,キサントマチンや脱炭酸型キサントマチンという聞いたことのないような名前の物質が,還元型になって発する色だそうです.この色の変化はどのような環境条件の変化によってなされるのかは分かりませんが,秋になると赤くなるので,ひょっとしたら温度と関係しているかもしれませんね.

もしそうなら,今年は高温が続いたので,十分赤くなっていないという説明が可能でしょう.そういえば,前回の記事のナツアカネのオスも,胸部側面がまだ赤くなっていませんでした.ただこの話はまだ根拠がありませんので,仮定の話としておいてください.


▲メスの姿が少なかった.下は交尾メス.オスはやはり赤くなりきっていない.▲

ミヤマアカネ以外のトンボとしては,マユタテアカネ,ハグロトンボ,ギンヤンマがいました.またウスバキトンボが生息地の上をたくさん飛んでいました.餌を食べ力を付けて海を渡っていくのでしょうか.


▲マユタテアカネ.▲


▲オス同士が闘争しているハグロトンボ.▲

----------
今日初見のトンボたち.
No.64. ミヤマアカネ,オスメス.
No.65. マユタテアカネ,オス.

カテゴリー: 兵庫県のトンボ, 観察記 | No. 987. ミヤマアカネを見に行った.2024.9.26. はコメントを受け付けていません

No. 986. 猛暑が続く中,アカトンボたちを見に.2024.9.18.

いまだに猛暑が続いています.お彼岸が近づくと,ナツアカネやナニワトンボやリスアカネが繁殖活動を始める時期です.彼らはこの猛暑が続く中,暦上のこの時期に繁殖活動を始めているのでしょうか.今日は,特に日向で産卵するナツアカネのようすを見に行ってきました.


▲日陰で過ごすナツアカネのオスとメス.▲

ナツアカネはオスもメスも平地に降りてきていました.ただし,薄暗い日陰で過ごしていました.オスは胸部側面がまだ赤くなっていない個体が多く,完全な成熟個体ではない感じです.車の外気温計では33℃を指していました.時刻は11時少し前です.まだ繁殖活動はしていないかと思いきや,池岸の草地で産卵しているペアがいました.


▲池岸の草地で産卵するナツアカネのペア.▲

真夏の暑さの中日向で産卵するペア.熱中症などはないのかと心配していまいます(笑).しかしオスの方が耐えられなくなったのか,短時間でメスを放し,警護もせずにどこかへ行ってしまいました.やはり暑いのかもしれません.ただメスは最後まで産卵を続けていました.メスは使命感が強いですね.ただこの暑さ,落ちた卵は生き残るのでしょうか.草の間の日陰に落ちるとは思いますが,この気温の高さは,彼らにとって想定外ではないかな.


▲オスが去ったあとでもメスは単独で最後まで産卵を続けた.▲

ここでは,ナツアカネ以外のアカトンボは見られませんでした.例年ならネキトンボが活動しているのですが,やはりこの暑さ例年とは違いますね.ネキトンボは姿がありません.ナツアカネだけは例年通り活動していましたが.またナニワトンボやリスアカネも見に行く必要がありそうです.

ナツアカネが平地に降りてきているのを見て,アキアカネはどうしているか気になりました.山へ上がってみることにしました.その前にちょっと流れをのぞいてみると,ハグロトンボがまだ活動していました.オスは腹部先端を反り上げたり近くをホバリングして産卵メスを誘引していました.


▲産卵メスを誘引するハグロトンボのオス.▲

さて,標高500mあまりの高さにある池へ行ってみました.道を歩くとアキアカネが止まっていました.まだアキアカネは山の上で過ごしているようです.


▲アキアカネはまだ山の上で過ごしている.▲

この池ではオオルリボシヤンマ,オオヤマトンボ,ギンヤンマ,シオカラトンボなどが活動していました.オオルリボシヤンマは池の余水バケに転がる朽ち木で産卵していました.


▲産卵に余水バケに降りてきた来たオオルリボシヤンマのメス.▲


▲オオルリボシヤンマの産卵.▲

この暑さの中,トンボの世界がどのようになっているのか,興味が持たれるところです.

----------
今日初見のトンボたち
No.62. オオルリボシヤンマ.メス.
Mo.63. アキアカネ,オス.

カテゴリー: 兵庫県のトンボ, 観察記 | No. 986. 猛暑が続く中,アカトンボたちを見に.2024.9.18. はコメントを受け付けていません