No. 1022. アオヤンマの確認.2025.5.27.

今日はアオヤンマの確認に出かけてきました.アオヤンマは数頭のオスが飛んでいるのを確認できました.兵庫県下では激減していますので,この産地は貴重です.


▲抽水植物の間をパトロールするアオヤンマ.▲

ここではまだヨツボシトンボが元気に活動していました.


▲ヨツボシトンボは軽く10頭以上いた.▲

林縁ではコシアキトンボたちが摂食飛翔をしていました.春のトンボから夏のトンボへの移り変わりが始まったようです.


▲摂食飛翔するコシアキトンボのオス.▲

散歩がてらよった場所ですが,トンボたちは確実に季節を進めているようでした.

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No. 1021. ダビドサナエを探して.2025.5.23.

ダビドサナエはもっともふつうなサナエトンボの一つだ,という意識がありました.過去形で書いているのは,かつて私は幼虫をすくって調査をしていましたので,どこの川でも網に数多く入るからでした.しかし,私の過去の記録を見てみると,フタスジサナエなどと比べてみると,成虫があまり記録されていません.さらに最近はダビドサナエの姿を見る機会がほとんどないことが,気になっています.

そこでダビドサナエの成虫を探しに出かけることにしました.過去に記録のあるところを4ヶ所まわってきました.まず第一の場所では,ヤマサナエ,アオサナエ,ミヤマカワトンボ,ニホンカワトンボがいました.ダビドサナエは姿が見られませんでした.


▲ヤマサナエのオス.▲


▲アオサナエのオス.▲


▲ミヤマカワトンボのメス.▲

そこそこのトンボがいるのに,かつては複数いたダビドサナエがいないのは変な感じです.第二の場所はこの場所のさらに上流です.しかしシオヤトンボがいただけで,サナエトンボの姿はありませんでした.やはりダビドサナエには会えません.

第三の場所は,かつてダビドサナエの産卵を撮影した川です.しかし川にはラン藻がたくさん生えていて,なんかかつて訪れたときのような清流の感じがしません.いたトンボも,アオサナエが1頭,ミヤマカワトンボが1頭だけでした.ここはダビドサナエ,ヤマサナエ,ミヤマカワトンボ,ニホンカワトンボがたくさんいた場所です.でもダビドサナエはもちろん,今はほとんどが姿を消していました.

最後に,ダビドサナエ成虫をまだ見ていない場所を選びました.ここはヒメサナエをよく見に来る場所です.ここでやっと2頭のオスを見ることができました.


▲2頭のダビドサナエのオス.▲

この状態がふつうなのか,かつてより数が減っているのか,まだはっきりとしません.ただ,以前は見ようと思えば成虫を見つけることはそれほど難しくないトンボでした.最近普通種と思っていたトンボがいつのまにか数が減っているということがあります.ノシメトンボなどはそのよい例です.ダビドサナエ,今後もちょっと注意してみていく必要がありそうです.

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No. 1020. 源流域のトンボ調査.2025.5.20.

例年行っている源流域のトンボ調査です.今年は少し出現が遅れているような気配があったのですけれども,結果的には例年通りといった感じに見えました.ムカシトンボが遅れているのかもしれないと先日判断していました.しかし今日の感じではむしろ早まっていたのかもしれません.ムカシトンボが羽化する時期には気温が高かったですから.今日の現地滞在時間は,9:15から13:30でした.


▲メスを探すように飛ぶムカシトンボのオス.▲

今日はムカシトンボは,オスが4回通っただけでした.メスを探すような飛び方をしていました.ジグザグに飛んで植物の間をのぞき込みます.写真には撮りにくい相手です.

クロサナエは,今日は4回産卵に入って来ました.これは多い方だと思います.流れ中央の同じ石の上で3回と,あとは別の場所でした.


▲1頭目のメスの産卵.10:05.▲


▲流れ中央の石の上で産卵するので背景の石が濡れて光っている.▲


▲これは2回目に産卵に入って来たメス.腹部の黄斑が1頭目とは異なる.12:08.▲

これもいつもの行動ですが,不思議とメスが産卵に下りてくると,少し間を開けてオスが同じ場所に下りてくるのです.もう何年もクロサナエを観察していますが,これはかなり高い確率で起きています.今回は2分後に産卵場所のすぐ横に下りてきました.


▲2頭目の産卵のあと,すぐそばにオスが下りてきた.12:10.▲

次のメスは流れの横の岸辺で産卵していましたが,発見が遅れて近づこうとしたときに産卵を止めたように見えました.近寄ってみると草の葉に止まり,なんと卵をポタポタと落としているように見えます.正確に言うと腹部先端に卵が付いています.これ遊離性静止産卵でしょうか.空中産卵をするナニワトンボやマダラナニワトンボで観察したことがあります.この個体は40秒近くこの状態でした.


▲3頭目の産卵メス.遊離性静止産卵!?.12:55.▲

3回産卵に出会うと,もう成果としては十分です.13:30に切り上げることにしました.するとこれもよくあるパターンですが,帰ろうとするとやってくるというヤツです.


▲帰り間際にやってきた4頭目の産卵メス.13:14.▲

さて源流域のもう一つのサナエトンボ,ヒメクロサナエです.こちらは,オスが時々下りてくるパターンで,いつも通りといったところです.メスもねらっていたポイントにぴったりと入って産卵をしました.さっと入って来て貼り付くように石に止まり,産卵を始めました.途中移動することなく同じ場所で産卵し続けました.近づいても逃げないいい性格のメスでした.ただ,写真の撮りにくい位置で,全部同じアングルの写真になってしまいました.ですので,1枚だけ紹介しておきます.


▲縄張りというより,メスが来そうな所を巡回して止まっているように見える.▲


▲時々は,流れから離れた草に止まって休息しているように見えるオスもいる.▲


▲静止接水産卵.11:57:20″-12:01:19″までの4分間の産卵であった.▲

最近ムカシトンボの産卵に出会っていません.今年は植物の生長が悪い感じがして,この谷に集まっていないのかもしれません.産卵痕も見つけられませんでした.

ということで,源流域のトンボ調査は1回で終了できそうです.つぎは中流域のトンボ,そろそろキイロサナエが羽化を始める時期です.

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No. 1019. 兵庫県北部調査モード(2).2025.5.14.

今日の調査目的は,源流部のトンボの出現状況確認です.ムカシトンボがそろそろ飛ぶころなのでそれを見に行くことにしました.天気は快晴で気温も高く観察には申し分ない状態です.

しかしムカシトンボはオスが3頭飛んだだけで,まだ賑やかさがありませんでした.いつも一緒に見られるヒメクロサナエやクロサナエの姿は一切なし.転進したヒラサナエも未熟なメスが1頭だけ.すべてのトンボについてまだ成熟が進んでいないようです.


▲まだ羽化直後と思われるヒラサナエのメス.▲

兵庫県北部については,今年はトンボ季節が若干遅れているように感じます.さらに標高の高い池に出向きましたが,全くトンボの姿がありませんでした.あまりに手応えがないので,平地に下り,コサナエやオオイトトンボの状況を見に行きました.


▲コサナエは,数が減っていたが元気に活動を行っていた.▲


▲羽化直後のオオイトトンボ.▲

オオイトトンボは羽化直後の個体が見られ,羽化が続いているようでした.春一番のオオイトトンボは一斉に羽化してたくさんの個体が水面を飛び回るものですが,だらだらと羽化が続いている感じに見えました.ホソミオツネントンボはまだ頑張っていました.こちらは例年も遅くまで繁殖活動をしているのでこんなものでしょう.


▲さすがに個体数は減ったが,まだ繁殖活動を続けているホソミオツネントンボ.▲

今日最後は,ホンサナエの夕刻の活動観察にしました.ホンサナエは体躯ががっしりとしたトンボで,見かけ以上に高速に縦横無尽に飛ぶ戦闘機のようなトンボです.暖かい春の夕方を土手に座ってホンサナエたちの活動を眺めて過ごす,こんなことはあと何年ぐらい続けられるのか,そんなな感傷に浸ってしまいました.実は私の寿命よりもここのホンサナエが消える方が早いような気がしています.さて,観察は16:00頃から始めました.


▲まだ明るい夕方の川面を飛ぶホンサナエのオス.▲


▲16:39,石などに止まることが多いホンサナエだが,草に止まった.▲

少し来たのが早かったのですが,気にせずのんびりと観察を続けました.二日間動き回ってやや疲れがたまったようで,こんなときにはのんびり観察がいいです.やがて時刻が進み夕刻の雰囲気が漂ってきました.それでもホンサナエのオスたちは,変わらず飛んだり止まったり,本当によく働く勤勉ものです.


▲17:10,夕方の日差しを背に受け,腹部をやや持ち上げ滑るように飛ぶオス.▲


▲16:57,時々メスのように飛んできて止まるがすぐに飛べるように臨戦態勢.▲


▲17:13,飛び続けるホンサナエ.日陰に入ると背景は真っ暗.▲

いい時刻になりましたが,なかなかメスは入って来ません.オスの個体数が多くはないのでメスも個体数が少なく,あまりやってこないのかもしれません.時々ですが17:30を回ったあたりから,水面を一直線に飛ぶホンサナエを見ました.オスは追いかけますが,捕まえることができません.そしてオスはまた止まります.この間のように私の横に止まるオスがいました.二人で仲良くメスを待ちます.


▲赤い夕日を浴びながら私のすぐ横に止まってメスを待つオス.最短距離撮影.▲

オスたちは,動くものがあれば飛び立って追跡し,オス同士が出会えば追尾しています.18:16に太陽が山陰に沈んでもまだ飛んでいます.しかしやがてオスが飛ぶ姿が見られなくなりました.山へ帰ったかと思っていると,水面を超高速で一直線に飛ぶホンサナエが現れました.するとどこかに止まっていたのですね,2頭のオスがそれを追いかけました.でも相手は逃げ切ったようです.面白いことにこんなことがあったあと,オスたちは水面をきびきびと飛び始めました.一気に活気づいた感じです.「メスが来るかもしれないぞ,そのときが来たぞ」というオスの感情が感じられる行動です.そんなとき,交尾態になったペアが目の前を横切り一気に上空へ飛んでいきました.本当にメスが来たようですね.18:28でした.


▲18:28,メスをゲットし,山の方に飛び去っていくホンサナエのペア.▲

残念ながらこのオスは,私の横に止まっていたオスとは違いました.彼は17:40ごろまで水面を飛んでいましたが,姿が見えなくなりました.本当に帰ったか付近を見回ったときでした.すぐ先でメスが水面を旋回して打水しました.どこかで卵塊をつくっていたようです.でもこれが最後の打水だったようで,姿は消えました.観察は19:00で終え,現場を後にしました.結局メスを身近に見ることはありませんでしたが,久しぶりにのんびりとトンボ観察が出来,気持ちは充実していました.

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No. 1018. 兵庫県北部調査モード(1).2025.5.13.

毎年同じ時期に同じような場所でトンボを観察し続けています.これはこれでトンボの経年的な移り変わりを知ることができ意味のあることだと思っていますが,今年は調査範囲を広げていろいろな状況の確認や新しい分布知見を得ることに少しシフトしています.5月の中旬,晴れの日が二日間続くという予報なので,まず過去の記録をたどってみることにしました.

今日の調査目的は,フタスジサナエやタベサナエといった兵庫県では南部に分布中心のあるトンボたちの県内北限を見に行くことです.これらに関してはすでに50年以上前から調査が入っていてだいたいの北限生息地が分かっていますし,最近も調査が入っていて報告も出ています.コサナエ属という視点で私が兵庫県北部に出かけるのは,ふつうはコサナエを見に行くためです.しかし北部である豊岡市にもフタスジサナエやタベサナエが分布しています.合わせて例年とはちょっと違った出現状況を感じるこの時期のトンボの様子も確認することにしました.

まずはホンサナエのようすから.ホンサナエは5月8日に観察に出かけたときに,例年と違った行動をとっていることを報告し,それは,まだ繁殖開始初期のせいかもしれないと考えました.あれから5日ほどたった今日の様子はというと,例年通りのオスたちの動きが観察できました.地面に止まったり水面上をホバリングするように飛んだりしていました.ただ個体数は例年より少なかったようです.


▲9時過ぎ,いつも通りの活動をしていたホンサナエのオスたち.▲

ということで,フタスジサナエたちを探しに行くことにしました.最初の池はヒシの葉が浮かび,やたらトラフトンボが多い池でした.池がやや大きいせいかトラフトンボは軽く10頭以上は飛んでおり,交尾態も2ペア入って来ました.クロスジギンヤンマ,モノサシトンボの羽化直後,クロイトトンボ,シオカラトンボなどがいましたが,トンボ相は割合単純でした.目的のフタスジサナエは見つからずじまいでした.


▲トラフトンボは今が盛りといった感じであった.ちょっと例年より遅い感じか?▲


▲モノサシトンボの羽化間もない個体.同じ状態のものが数頭見られた.▲

次は少し標高の高いところへ,ダビドサナエを探しに行くことにしました.最近ダビドサナエの姿が見られないのが非常に気になっています.本格的には幼虫調査が一番いいのですが,今の時期は成虫を調べるのがいいでしょう.上流部の流れをのぞいてみましたが,全く出会うことがありませんでした.そこもシオヤトンボとアサヒナカワトンボだけです.もう少し中流よりがいいのかもしれません.


▲上流部にはシオヤトンボとアサヒナカワトンボがいるばかり.11:00ごろ.▲

ダビドサナエに出会うことができませんでしたので,近くの池に行ってみました.ここも過去には調査されていて,タベサナエが記録されています.池は水がほとんどなく湿地状態になっていました.ホソミオツネントンボとホソミイトトンボ,そしてシオヤトンボが活動していました.標高が高いせいか,ちょっと平地より時期的に遅い感じがします.平地のゴールデンウィークあたりのイメージです.タベサナエは確認できませんでした.


▲ホソミオツネントンボが軽く十数頭は活動していた.▲


▲ホソミイトトンボは2頭ほど確認できた.いずれも,12:20ごろ.▲


▲シオヤトンボも元気に活動をしていた.メスは池の外で撮影.▲

こういった調査は,転々と移動しながら,慣れない池のまわりを踏破するというパターンになります.普段行き慣れていないところは,車を止める場所を探すのにも時間がかかり,離れたところに止めて調査地まで歩いたりするので,これもまた時間がかかります.

再び平地に下り昼食を済ませて,コサナエ属調査の再開です.もう時刻は14:40になっていました.さすがに夏至も近いので,日が傾いているという感じはしません.そして次の池でやっとフタスジサナエとオグマサナエを見つけることができました.


▲豊岡市のフタスジサナエ.こんな北までやって来ているのだ.▲


▲豊岡市のタベサナエ.意識して見なかったら,コサナエで処理しそうである.▲

フタスジサナエは胸側の黒条が2本あって,前肩条もはっきりしているので,見間違うことはありませんが,タベサナエの方は一見するとコサナエと間違ってしまいそうです.今回はタベサナエを探すという意識で調査しているので慎重に見分けていますが,パッと見たらコサナエで済ませてしまうかもしれません.下の写真は別の日に撮ったコサナエの写真ですが,特に前肩条のないタイプについては,どうでしょう.感覚的にはコサナエの方がスマートで華奢な感じはしますが.

ーーー コサナエとタベサナエ ーーーーーーーーーーーーーーーーー


▲コサナエで前肩条のないタイプ.5月8日に豊岡市で撮影したもの.▲


▲コサナエ.ふつうは前肩条のある個体が多く,この場合はコサナエといえる.同上.▲

タベサナエのオスは副性器がデカいので,経験的にパッと見てこの個体がタベサナエであることが分かりましたが,厳密にはオスの場合尾部上付属器上にある突起を確認するのが間違いない方法です.


▲タベサナエオスとコサナエオスの尾部上付属器上の突起の有無.▲

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さて,タベサナエはこの次に訪れた池にもいました.これは上の比較写真左の個体です.


▲豊岡市のタベサナエ.時刻は15:36.少し陽の傾きを感じるようになってきた.▲

タベサナエのいた池には,ハラビロトンボ5頭ほど,クロイトトンボ数頭が見られました.確認できませんでしたが,オオイトトンボらしい色彩のトンボが飛んだのを目撃しました.

今回フタスジサナエやタベサナエの見つかった池にはコサナエは見つかりませんでした.このあたりは過去の報告と同じです.上の尾部付属器比較写真個体の生息地間の距離は,車で15分ほど(直線距離10kmほど)です.本当にフタスジサナエやタベサナエはコサナエとぎりぎり近くまで分布していますね.過去の報告によるとフタスジサナエとコサナエの分布は重なっていないとのことで,両種の分布限界の最短距離は4.4kmということです.なおタベサナエの方は一部コサナエとの分布の重なりの可能性が指摘されています(以上,宮崎,2023).

ということで,コサナエ属の調査を終え,最後にもう一度ホンサナエの様子を見に行きました.今日は早朝から調査に出ていることもあり夕刻の調査は行いませんので,姿を確認して終えました.


▲朝から晩までホンサナエはよく頑張るヤツだ.16:48.▲

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<参考文献>
宮崎俊行,2023.兵庫県北部のフタスジサナエの分布.Gracile (82):47-50.

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