続 トンボ歳時記
No.639. オオアオイトトンボの三重連.2018.10.7.

今日の予報は午後に晴れるということですが,午前中は雲がどんより垂れ込め,夕方に所用があるという,タイトなスケジュールしか組めない日になりました.3時間ほどしかなく,今の季節,午後に観察ができるトンボといえば,オオアオイトトンボしかありません.まだ少し早い感じもしますが,まあ,大丈夫でしょう.ただ,産卵のピークは15:00以降で,私が引き上げなければならない14:30はギリギリというところ.さて結果は...

到着して,池にせり出している樹木の枝を見上げてみました.しかし何も見えません.やはりまだ早かったか,と思いました.そんなとき,足下を,オオアオイトトンボのオス−オス−メスの三連結が飛びました.そしてすぐ前のヒメコウホネの茎に止まりました.いやはや,珍しいものを見たということで,気持ちは一気に盛り上がりました.今日のタイトルを「三連結」とせず「三重連」としたのは,この三連結トリオ,結構よく飛び回って,蒸気機関車の三重連を思い出させられたからです.

▲ヒメコウホネの葉柄に止まるオオアオイトトンボの三連結.

程なくこの三連結は樹上に上がりました.障害物のないところに止まってくれるので助かります.ただ少し遠いので,ピントを合わせるのが大変でした.そうこうしていると,不思議なもので,樹上に止まっている別のオオアオイトトンボが目にとまり始めるのです.まずは三連結のすぐ横に交尾態のペアがいるのに気がつきました.さらに,単独オスも樹上を結構飛び回っているのも見えてきました.この単独オスは,交尾ペアにつかみかかりました.三連結が飛び立ち,そのすぐ横を通り過ぎました.樹上ではいろいろとオオアオイトトンボの戦いが繰り広げていたようです.

▲樹上に上がって,枝にぶら下がる三連結.

▲三連結は少し移動,そのすぐ手前には交尾ペアがいた.

▲この交尾ペアに,単独のオスが攻撃を仕掛ける.

▲交尾ペアを攻撃するオスのすぐ横を「三重連」が飛ぶ.

三連結はまた止まりました.交尾ペアは少し場所を移動して交尾を継続しています.カメラを引いてみると,三連結と交尾ペアが同じ枝に止まっているのが分かります.

▲メスが枝に止まるようにして静止した三連結.

▲交尾は継続しているが,....

▲場所を少し移動して,さらに交尾が継続した.

▲三連結と交尾ペア.

交尾ペアはやがて交尾を解きました.以前の観察では,この時刻,つまり14:00過ぎには,交尾を解いてから産卵に移行せず,じっと枝に止まっているというのを見ています.このときは,かなり待ちましたが,結局産卵はしませんでした.後日もっと遅い時刻にそこを訪れたときは,産卵をたくさん見ました.そういった観察から,早くても15:00を回らないと,産卵を始めないように思われます.そういう経験をしているので,今日はここまでかと思いながらも,若干の期待を持って見続けていました.なんと,神様はいるものですね.このペア,少し移動して,産卵の姿勢をとったのです.写真を見ると,固い樹皮に産卵管を突き立てる力を得るために,6本の脚でしっかりと枝をつかみ腹部を折りたたむように曲げており,実際に産卵しているとみてもよいと思います.

▲腹部を曲げて産卵行動を始めたペア.

▲腹部の曲げ方から本当に産卵しているようである.

▲反対側に回って少し引いてみるとこんな感じ.

しかし,この行動は長続きせず,やがてメスは腹部を伸ばしてじっとし始めました.このまま30分ほど待ちました.ここにいることのできる限度です.でも,産卵行動はその後見られず.やはりこのまま15:00を過ぎて,夕方の気配が出てくるころに産卵を始めるのでしょうね.普通ならそれまで粘るのですが,今日はこれで終えなければなりませんでした.

▲産卵をやめてじっとしているペア.このまま30分以上じっとしていた後,飛んで移動した.

この木の上には単独オスが3,4頭,連結ペアが3ペアほどいて,あちこち移動していました.単独オスは連結ペアによくちょっかいをかけます.オオアオイトトンボは,こうやって樹上で繁殖活動をしているんですね.なお三連結は,途中で見失い,その後の運命は分かりません.