続 トンボ歳時記
No.567. 早春の兵庫県北部.2018.4.19.

今日はガンガンの快晴の予報.フェーン現象のせいか,県北部の方が気温が高くなり25度の予報.ということで,今日は早春の県北部の様子を見に行くことにしました.こんな日に限って朝よく眠れて,久しぶりの寝坊….,通勤渋滞に巻き込まれながらのんびりと運転し,県北部を目指しました.

最初はムカシトンボが羽化を始めていないかを確認に行きました.ムカシトンボは標高の高い源流域に生息しています.10時過ぎに着きましたが,気温はまだ20度を超えたくらいでした.2014年にムカシトンボの羽化を観察に来たときは,4月27日でした.そのときは羽化殻が着いていて,すでに羽化を終えていました.

   ▲2014年4月27日,今日の観察地と同じ場所で見つけたムカシトンボの羽化殻の一つ.

そこで,今日くらいには羽化しているかもしれないと予想して出かけたのですが,羽化個体も,羽化殻もありませんでした.もう少し後なのでしょうか.ムカシトンボは木漏れ日の差す薄暗い源流域を飛んでいる印象があります.この生息地は夏緑樹が中心の源流で,羽化が始まるこの時期まだ葉が開き始めなので,林床が非常に明るい.これなら太陽の光を受け,暖かい状況で羽化ができそうです.まあ,いずれにしても,羽化は間近でしょうね.

▲林床を覆う樹木はやっと芽吹いたばかり.太陽の光が林床にまで達して明るく暖かい.

ということで,平地のトンボたちを見に行くことにしました.県南部では,今年4月10日に,タベサナエやオグマサナエの羽化を確認していますので,コサナエの羽化の確認を目的としました.コサナエは5月5日にはたくさん産卵していますから,タベサナエやオグマサナエと同様に,多分羽化しているだろうという見込みです.コサナエの探索は,生息する池の奥の方にある,林縁の休耕田の草地で行いました.

今は新緑の季節でこの時期しか見られない緑色の世界,山桜も混じってコントラストを与えてくれていました.春の晴れわたった空のもと,本当に気持ちのいい観察でした.

▲コサナエやカワトンボを観察した,林縁の休耕田の草地.春いっぱいこの雰囲気が好きです.

見つけた成虫はメスが1頭だけでした.羽化殻は3個見つけました.もっと探せばあったのでしょうが,ホソミオツネントンボが多数産卵していましたので,そっちに気をとられて,探すのをやめてしまいました.こちらは後ほど紹介します.

▲コサナエのメス.同じ個体.今日羽化したという感じではない.

▲コサナエの羽化殻.腹部第10節は短い.

さて,この林縁の草地には,たくさんのニホンカワトンボが入り込んで止まっていました.歩くと,ひらひらと未熟な個体が飛び立ち,樹木の葉に上がります.ニホンカワトンボもすでにたくさん羽化していたということですね.

▲林縁の草地で成熟を待つニホンカワトンボのオスとメス.どの個体も成熟度が近い.

▲このように集団で止まっていて,近づくと,ひらひらと飛び立って,樹上へ上がる..

▲樹上に上がって止まっているニホンカワトンボのメスとオス.

ニホンカワトンボの中に,アサヒナカワトンボも混じっていました.アサヒナカワトンボの方は個体数が少なく,見つけたのはオスだけでした.1頭はまだ縁紋が白く未熟な個体でしたが,もう1頭はすでに流れに止まって縄張りを形成していました.縁紋は赤くなっています.

▲アサヒナカワトンボのオス.縁紋がわずかに赤みを帯び始めているのが分かる.

▲流れで縄張りを持つオス.縁紋も赤くなっていて,成熟している.

ここには,たくさんの未熟なシオヤトンボも入り込んでいました.日だまりの枯れ木には5,6頭の未熟個体が止まっていましたし,横にある湿地では未熟個体が飛び立ったりもしていました.その横の湿地には,1頭の成熟したオスがメスをつかまえて交尾をしていました.交尾が終わったメスは産卵せずに飛び去りましたので,まだ産卵する気がなかったのでしょうね.この成熟オス,十分に成熟しているように見え,かなり早く羽化していたのでしょう.

▲テネラルなシオヤトンボのオス.

▲処女飛行のあと止まったシオヤトンボのメス.今日もいくつか処女飛行個体を見た.

▲交尾するシオヤトンボ.オスは成熟していて,メスも複眼が透き通っているので成熟していると思われる.

▲交尾していたオス個体.もうしっかりと成熟しているように見える.

さて,最後になりますが,今までなかなか見つからなかった成虫越冬種の産卵活動を,今日は観察することができました.ホソミオツネントンボです.私の観察フィールドでは,ホソミオツネントンボは一番見つけにくいトンボです.しかし今日は,うじゃうじゃ状態,「兵庫のトンボたち」に載せるいい写真も撮れました.産卵しているペアの中で一つ面白かったのは,まだ水色になっていないメスとタンデムになって産卵しているペアがいたことでした.はじめはオツネントンボとの異種間タンデムかと思ってしまいましたが,間違いなくホソミオツネントンボのメスでした.

▲ホソミオツネントンボの交尾.風に吹かれながら,旗のように左右に振られていました.

▲ホソミオツネントンボの産卵.太陽の位置の関係で,みな同じ向きになっている.13:30ころ.

▲このメスはまだ青色になっていない.越冬状態の褐色をしているままで産卵をしている.これは珍しい?.

ホソミオツネントンボに混じって,ホソミイトトンボが1頭だけ飛んでいました.最後にこれを紹介して,今日の観察記を終わります.

▲ホソミイトトンボのオス.

あそうそう,シオカラトンボが飛ぶのを見ました.以上追伸.