新 トンボ歳時記
No.352. フタスジサナエの観察 2012.5.19.

今日はフタスジサナエの観察を行うことにしました.今年はコサナエ属のトンボを集中的に観察していますので,羽化の時を除いてふだんあまり相手にしてこなかったフタスジサナエに力を入れることにしました.

目的地に行く前に定点池に寄りました.まだ8時過ぎで,トンボの活動は活発ではありませんでしたが,ヨツボシトンボが10頭以上も池に出ていたり,まだトラフトンボも頑張っているようでした.朝露の着いた葉に止まるフタスジサナエも姿を見せましたが,すぐに樹上へ上がってしまいました.

ここへ寄った目的の一つは,4月15日に見つけたヤブヤンマの幼虫が多分終齢になっているだろうと予想していたので,これをすくってみることでした.

ごらんの通り終齢になっていました.スタジオ写真を撮るために一度持ち帰りました.自宅羽化させるかまた逃がしに来るかするつもりです.


さて,時間も8:30を過ぎ,目的のフタスジサナエを見に移動しました.最近はフタスジサナエがまとまってみられるところも本当に少なくなりましたが,ここはまだ池のまわりに結構な数のフタスジサナエが見られるところです.水田が放棄されてからさらに数が増えたような気がします.

産卵は10:00を過ぎてからと踏んでいるので,まずは周辺に憩っているオスやメスの観察から始めました.

オスたちはすっかり成熟して淡色部も薄緑色になっていました.道路に止まったり,樹木の葉に止まったり,草地に止まったりして過ごしていました.

メス達もオスに混じって憩っています.と,あるメスが,大きなガガンボを捕まえました.おいしそうな獲物です.ところが,メスがガガンボを捕まえたのを見たオスがあっという間にタンデムを形成し,交尾態になってしまいました.メスは大切な獲物を抱えたまま,交尾に応じるしかありませんでした.

さて,10:00を過ぎ,いよいよ産卵観察にチャレンジです.コサナエ,タベサナエと,10:30ころに集中的に産卵にやってきた成功体験があるので,フタスジサナエもたくさんやってくるだろうと思っていましたが,やはり成熟度が進んでいるためか,なかなかやって来ません.

なわばりにオスが入ってきたり,メスがやってきて思わせぶりに止まったりしましたが,このメスは産卵はしませんでした.このメスは体色も薄緑色をしていて,やや加齢を感じる個体でした.さて,10:50ころ,やっと1頭の産卵メスが入りました.予想と違って池にオーバーハングした樹木の下のうす暗いところで産卵をはじめ,光量不足であまりいい写真になりませんでした.

産卵にやってきたのはこれ1頭だけでした.待っている間,クロスジギンヤンマやトラフトンボが足元を飛び回っていました.クロイトトンボの移精行動を間近に捉えるというおまけが付きました.


12:00ころになり,集中力も限界に来ましたので,この近くでトンボを観察に行って帰ることにしました.

ここではタベサナエが結構目につきました.タベサナエというのは,流水,止水,そしてここでは湿地になわばりを形成しています.本当にあらゆる水環境に進出しているサナエトンボという感じです.

樹上にあがったり,地面に止まったり,タンデムになっていたりと,これまた色々なシーンに出会いました.これ以外では,シオヤトンボの数が多く,こちらは産卵シーンで飛水の決定的瞬間をとらえることができました.

幼虫もすくってみましたところ,ついているときはこんなもので,久しぶりにアオヤンマの幼虫をすくうことができました.あと,ヤブヤンマもいました.

とまあ,わずか半日あまりでしたが,効率のよい観察ができたようです.