■見分けのチェックポイント
クチクラは厚く,表皮は非硬い.触角は太く通常6節からなる.下唇前基節は四角い.下唇中片には中央欠刻がある.下唇側片の先端内側の角は円く,側刺毛・腮刺毛はない.腹部正中線両側の各腹節上に長毛の束が並び,特に第5−9腹節のものは長くよく目立つ.泥のついた羽化殻では突起物のように見える.石田(1996)および杉村ら(1999)には側棘がないと記されているが,少なくとも第8,9腹節には側棘が認められる.オスには,肛上片上に1対のコブのような突起物がある.メスにはそれは見られない.尾毛は太く,メスの場合は肛上片先端にとどかない.オスの場合はだいたい同じ長さである.
■分布と類似種
本州と九州,そして佐渡島に分布する.類似種はいないので,その生息場所の特殊さから,自ら採集したものを見まちがえることはないであろう.
■生態
幼虫の生態に関しては,藤本ら(1994)に非常に詳しく記されている.生息環境は,斜面の湧水地で,湿った土やコケが生えているような泥地に穴を掘って,その中で生活している.一つの巣穴には1頭の幼虫しか入っていない.穴の奥には水がたまっており,普段はそれに浸かっている.ときどき穴から顔を出している.餌は,サワガニの幼体やアブの幼虫を食べているのが目撃されている.幼虫の巣穴は,羽化のために幼虫が出て行って空き家状態になると,別の小さな幼虫が入りこむ.実際に生息地を訪れて幼虫をさがしてみると,こういう所には基盤岩が広がっていることが多く,穴を掘りやすい条件のポイントは意外と少ないので,再利用が積極的になされているのであろう.羽化間近な幼虫は夜間に穴から出て,周辺の草木によじ登って定位する.