ムカシヤンマ科は,世界的にみても,種数の少ない科である.北米,南米,オーストラリア,ニュージーランドなどに分布し,一種「ムカシヤンマ Tanypteryx pryeri (Selys, 1889)だけが,これらの国々から離れて日本に分布している.幼虫は,湿地の斜面などに穴をほって生活しており,半陸上生活である.したがって羽化殻も,水辺ではなく,そういった斜面の草についていることが多い.たいがい全身に泥が付着している.羽化殻は,通常水辺では見つからず,湿地などの斜面で,水がしたたり落ちているような所に生えている草や木に着いている.
01.クチクラが厚く,表皮は硬い.触角は太く,通常6節からなる.足も頑丈にできている.腹部には剛毛がたくさん生えているが,特に長い剛毛の束が,腹部背面の正中線外側に2列になって生えている.このうち第5−9腹節のものはよく目立ち,泥の付着した羽化殻では,突起物が並んでいるように見える(矢印).・・・ムカシヤンマ属−ムカシヤンマ
a.穴を掘って暮らすムカシヤンマの幼虫.b.ムカシヤンマの羽化殻.