■見分けのチェックポイント
羽化殻全長20−28mm程度(羽化殻が反っている場合見かけ上の全長はかなり短くなる:全形図).前肢,中肢の脛節に毛が列生する(幼虫写真参照).側棘は第8,9腹節にあり,背面から見た場合,第8腹節の側棘は第10節の後縁を越え,第9腹節の側棘は肛上片の先端部あたり,または少し越えるところまで伸びる.背棘はない.肛上片先端は肛側片先端より基部よりに位置する.肛上片背面正中線上の後半部に小さな棘が数本列生する.側刺毛は10−11本程度,腮刺毛は13−15本程度である.
■分布と類似種
日本各地に記録がある.しかし,北海道,本州の各記録については,南方からの飛来,またはそれが一時的に繁殖したものであろう.四国南部,九州南部では幼虫が冬を越し,定着しているという(杉村ら,1999).他に国内で定着の可能していると考えられるハネビロトンボ属は,ヒメハネビロトンボ,コモンヒメハネビロトンボの2種で,これらとは幼虫や羽化殻の形態が酷似しておりまず同定できない.ただし分布や飛来頻度から考えると,九州より北で採集された場合は本種である可能性が非常に高い.
■生態
沈水植生のある池に集まることが多いように思えるが,♂はコンクリートで固められたため池や,公園の池(写真),学校のプールなどの上を飛んでいたりすることも多い.幼虫は,写真のような池の沈水植物を網ですくうとたくさん入るので,沈水植物の中に潜り込んで生活していると考えられる.