■見分けのチェックポイント
羽化殻全長26mm程度.側棘は第8,9腹節にあり,第8腹節の側棘は第9腹節の後縁に達し,第9腹節の側棘は第9腹節長より長く,背面から見て尾毛の先端部あたりまで伸びる.背棘は第2−4腹節にある.石田(1996)は第10腹節にも背棘があると記している(白矢印).ウスバキトンボ幼虫を記載した多くの文献(朝比奈,1958・1959;広瀬,1962;石田ら,1985;石田ら,1988,杉村ら,1999の検索表;Lieftinck,1962;Hidemann & Seidenbusch,1993など)では,背棘がないと記されているが,筆者の手元の標本では今のところ例外なく見つかっている.しかし背棘がない個体がある可能性は否定できない.肛上片先端は肛側片先端をわずかに超える.側刺毛は12−15本程度,腮刺毛は15−18本程度である.下唇側片前縁の鋸歯はエゾトンボ属幼虫より深く大きい.
■分布と類似種
日本には,北海道の北端に至るまで,毎年南方から成虫が飛来し,1月半くらいで次の世代を誕生させ,その後数世代を繰り返した後,冬を越せずに消滅する.したがって分布記録は小さな島を含む日本全国といってよい.そういう意味で上記分布図には書ききれない.海洋を飛ぶようで沖ノ鳥島にさえ成虫の記録がある.特異な背棘配置と肛上片先端が肛側片先端を越えることによって,他種と混同することはほとんどない.外形的にはハネビロトンボ属の幼虫に似ている.
■生態
国内でどの地域まで幼虫が越冬できているかについては詳しく知られていない.近畿地方では,4月下旬に初見記録があり,以後11月くらいまで成虫を見ることができる.いわゆるパイオニア種と思われ,幼虫は,プール,水田,公園のコンクリート池,新しく造成されたため池など,他の生物が入り込んでいない,また絶えずリセットされるような,新しい水域に多い.