No. 926. 高原のイトトンボたち.2023.6.26.

トンボ観察旅行もいよいよ最終日になりました.今日はもう一度アマゴイルリトンボを見に行きます.結果的には,第一日目,第二日目もなんとか観察は出来たのですが,空はやはりどんより曇り空で,トンボたちの動きはもう一つ活発ではありませんでした.もともとの天気予報ではこの最初の二日間は雨模様でしたので,予報で晴れになるこの日にも観察を入れていたのでした.結果は大正解で,太陽がさんさんと降り注ぐ晴れの半日で,たくさんのトンボたちが活動していました.

そんな中,少数見かけたエゾイトトンボやルリイトトンボの状況が気になります.これらの観察も楽しみです.そしてさらにこの日私的には嬉しいことがあったのですが,これは最後に紹介しましょう.

まずはアマゴイルリトンボです.朝8:50ごろに現地に着きました.池をのぞいてみますと,もうアマゴイルリトンボがたくさん産卵を始めていました.晴れていると早いですね.


▲アマゴイルリトンボは複数産卵しているが,やはり見にくい場所で産卵している.▲

ただ今日は,前回ほど神経質ではなくて,私が動いても飛び立たずに産卵を続けるペアが見られました.


▲だいたいだが,横の位置から撮れた.▲


▲交尾も同じ場所で行われていた.▲

ここは写真になりにくい場所なので,場所を移動することにしました.そこは開けていてフトヒルムシロが繁茂しています.アマゴイルリトンボはあちこちで産卵しています.やはり晴れて日が差していないとだめですね.


▲開けているので,やっとのことで希望したようなアングルで撮れた.▲


▲数が多いと人を気にしなくなる傾向はアマゴイルリトンボも同じようである.▲

周辺にもそこそこ潜り込んでいました.


▲周辺にいたアマゴイルリトンボのオス(上)と未熟メス(下).▲

アマゴイルリトンボはこのようにたくさん池に出てきて繁殖活動をやっていました.これに負けないぐらい活動をしていたのが,エゾイトトンボでした.二日目に1頭だけ見たのですが,今日はたくさん飛んでいました.やはり晴れが重要だ.


▲エゾイトトンボのオス.▲


▲オオヒルムシロの群落の中で産卵するエゾイトトンボ.▲


▲足下で産卵するエゾイトトンボ.ちょっと手前の草が邪魔している.▲

晴れていると,トンボたちも元気なのですね,いろいろなトンボの活動が観察できます.エゾイトトンボのオスがアマゴイルリトンボのメスにアタックをしました.これにはどういう意味があるのか分かりません.エゾイトトンボのメスと勘違いしているのかとも思いましたが,交尾しようとするような動きではありません.餌と思って食らいついているのか? とも思ったりもしました.


▲アマゴイルリトンボのメスに挑みかかるエゾイトトンボのオス.▲


▲攻撃した後も遠巻きに様子を見ている.アマゴイルリは右前翅がゆがんでいる.▲

さて,今日一番の成果は,オゼイトトンボがいたことです.オゼイトトンボは全く期待していなかったために,はじめはエゾイトトンボばかりいるように見えていました.ここに来たとき最初にエゾイトトンボの交尾と思って写真を撮りましたが,出来を確認するためにカメラで拡大して見ていたときでした.なんと腹部第2節背側の黒斑がワイングラス形をしていたのです.これはオゼイトトンボの印です.


▲オゼイトトンボの交尾.▲


▲この交尾オスの腹部第2節を拡大したもの.▲


▲エゾイトトンボとオゼイトトンボの比較.特に腹部第2節背面の黒斑の違い.▲

2枚の写真を並べてみると,この黒斑以外にも違いが見えてきます.エゾイトトンボの方が一回り大きく腹部も太いです.また水色の部分もかなり広いです.オゼイトトンボは遠くから見るとオオイトトンボみたいに見えることがあります.眼後紋や後頭条の形も違います.オゼイトトンボの存在に気づいてからは,両者は区別して見ることができるようになりました.


▲オゼイトトンボのオスと未熟なメス.下はワイングラス形がよく分かる.▲

オゼイトトンボもタンデムになっている個体がそこそこ見られたのですが,オオヒルムシロの生えているところでは産卵せず,水生植物の根などの柔らかい基質で産卵しているようです.今日はこのオゼイトトンボの産卵記録に手こずりました.かなり離れたところに好みの産卵基質があるようで,写真に撮れるようなところではありませんでした.池に入ることも考えましたが,脚が沈んで抜けなくなったら命に関わるかもしれないので,初めての場所では危険は冒せません.


▲産卵好適場所には他のイトトンボが産卵に来て,オゼイトトンボを追い払う.▲

それでも時々は岸近くの産卵に適した場所にやって来るペアも見られました.しかし,そんな場所へはアマゴイルリトンボやエゾイトトンボもやって来て,上の写真のように,一番小柄なオゼイトトンボを追い散らします.もともとここへはアマゴイルリトンボを見にやって来たのですが,このときばかりは,アマゴイルリトンボが憎たらしい存在に思えました(笑).


▲タンデムのオゼイトトンボは結構いるのに産卵が近くで見られない.▲

結局産卵を記録することはできませんでした.そうこうしているうちに時間が経ち,今日は家まで帰らねばならないので,残念ですが,お昼前には現地を後にしました.なお,これ以外にルリイトトンボを見ていますが,1頭だけでした.写真にも撮っていませんでしたので,今日いたメンバー紹介と言うことで,前回の写真を掲げておきます.


▲ルリイトトンボもここにいた仲間だが,今日は1頭見ただけだった.2023.6.23. ▲

さて,これらご当地のイトトンボ類の中には,兵庫県でも見られる仲間が混じっています.クロイトトンボ,モノサシトンボです.


▲産卵するクロイトトンボ.どこででも仲間になっている.▲


▲羽化直後のクロイトトンボのオス.翅胸側面の斑紋が兵庫のものとは少し違う?▲


▲モノサシトンボの未熟メス.成熟した水色のオスもいた.▲

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最後に,イトトンボ類ではなく,不均翅類について,見た種を紹介しておきましょう.まずは,シオヤトンボ,コサナエです.春の生き残りという感じですね.ただコサナエは今が盛りのようで,今日も産卵に来ていました.シオヤトンボはオスの姿を見かけません.


▲シオヤトンボ.オスの姿はなかったものの,メスはまだまだ頑張っている.▲


▲コサナエのオス.前肩部に細い淡色の線が消失しているタイプである.▲

またアキアカネが羽化を始めていました.2頭見かけました.池から羽化をしているようです.


▲高原の池で羽化をしているアキアカネ.▲

さて,最後に正体不明のトンボについて紹介しておきましょう.今日は天気がよいせいか,池の岸から10m~20m離れた位置を,数頭のトンボが飛び交っていました.兵庫県なら,トラフトンボという判断を下しそうな飛び方です.しかしここは兵庫県を遠く離れた,エゾイトトンボがいるような高原の池です.写真を撮ってみましたが,あまりに遠く,拡大してもほとんど何か分かりません.その中でも比較的正体が明らかになりそうな2コマをお見せします.

まず一つ目,腹部の曲がり方や先端に行くほど太くなっているような形状,そして尾部付属器ががっちりしているように見えること,さらに複眼の緑色,胸部が金緑色に光っていること,などから,カラカネトンボと判定しました.額に一対の白い斑点のようなものが見えます.カラカネトンボにはこういう斑点はないはずですが,これは金属光沢の表面が光を反射してできたものと考えています.画像処理でコントラストを上げていますので.


▲正体不明のトンボその1.カラカネトンボと判定したがどうだろう?.▲

二つ目は上のトンボとは明らかに違うトンボに見えます.後ろから撮ったものです.腹部の中程が膨らみ先に行くほど細くなるような形状,尾部付属器がウサギの耳のように大きく開いていること,胸部がやたらに黄褐色に光っていること,などから,オオトラフトンボと判定しました.


▲正体不明のトンボその2.オオトラフトンボと判定したがどうだろう?.▲

これら二つの同定にはほとんど自信がありません.なお,観察地はこの2種が分布する地域です.自信のある方がおられましたら,また掲示板にでも投稿してください.

ということで,最終日は収穫があり,旅行の締めくくりとして,終わりよければすべてよしという感じで,元気に長時間車を運転して帰宅しました.でもやはり,疲れた...

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