今はトンボの端境期で,春のトンボが姿を消し,夏のトンボの出始めの時期です.この時期が最盛期のトンボの一つにキイロサナエがあります.今日はそれを見に行く予定でした.しかし現地に着くと,今年は発生数が少ないのか,パラパラとまばらにしかオスが止まっていません.トンボは,ある年突然数が少なくなることがあるので,あまり気にしないようにしたいですが,ちょっと心配ではあります.
キイロサナエがいたすぐ横の流れの畔で,未熟なアキアカネが草陰に止まっていました.数は結構いて,今が羽化期のようです.近くの休耕湿地で幼虫をすくってみると,たくさんはいりましたので,ここから羽化したのでしょう.
今日のもう一つの目的に,ホソミオツネントンボの幼虫採集があります.この春に紹介したように,たくさん産卵していたところがあるので,ここで幼虫を採集しようというわけです.ホソミオツネントンボの幼虫はどういうわけかいつもあまり網に入らないのですが,今日もまたその通りになりました.小一時間すくって,やっと1頭という感じでした.ネキトンボやショウジョウトンボやギンヤンマの幼虫がたくさん網に入ったので,これらに捕食されてしまったのかも知れません.
この幼虫,尾鰓がふぞろいです.おそらく失われて再生してきたものでしょう.他の捕食者に食いつかれたのかも知れません.アオイトトンボに似ていますが,尾鰓が違います.また大きさは,アオイトトンボの約半分しかありません.成虫の大きさに比べて幼虫がかなり小さいような気がします.
ということで,いちおう採れはしたものの,なんとなく消化不良の感じです.池ではショウジョウトンボが元気に飛び回っており,コフキトンボも少しだけいました.
ということで,まだ時間がありますし,端境期に最盛期が重なる数少ないトンボ,ハッチョウトンボを見に行くことにしました.このハッチョウトンボ,時間的にもお昼前で,ちょうど産卵時間帯になっていました.ほとんど待つことなく4,5回の産卵を観察することができました.写真とビデオに記録しました.
ハッチョウトンボは1m間隔くらいで止まっていて,それが縄張りの大きさのようです.他のオスが入ってくると,目にもとまらぬ速さでぐるぐると飛び回って追い払います.そんなとき,メスが入ってくると,それを捕まえて交尾します.交尾は十数秒と非常に短時間です.
もう一つ別のカップルでは,オスがやたらにメスに接近して警護しました.このカップルは交尾の写真が撮れませんでした.交尾が終わってオスがメスを放した後,このオスはメスの後方でホバリングし,その後飛んでいるときも止まっているときも,接近して警護活動を続けました.今度はそういったところを記録してみました.
メスが産卵を続けていると,やがて他のオスに見つかってしまいます.オスはメスのそばに付き添いながらも,まわりのオスを追い払いにかかります.メスは素知らん顔で産卵を続けます.まるで,「私の産卵の邪魔をしないように,交尾オスさんしっかりと他のオスを近づけないようにしてね.」と言っているようです.
しかし,オスがたくさんいる状況では,1頭のオスの力だけでは,次々にやって来る他のオスたちを追い払うことはできません.このメスもとうとう他のオスに捕まり交尾を強要されてしまいました.最初の交尾オスくんの努力は最後までは報われませんでした.
交尾直後のオスの静止がもっとも受精率が高いので,後半の卵は,2頭目のオスの子孫が大部分でしょう.しかし,この産卵は短時間で終了し,メスは湿地横の草むらに止まりました.ただ,やたらと腹部を曲げて,なにやら違和感を感じているような動作を続けました.
こんな感じで,中身は濃かったですが,時間的には40分ほどの観察でした.ホソミオツネントンボの幼虫をすくっている時間の方が長かったような気がします.ところで,まだ正午過ぎです.とにかく腹ごしらえをして,午後は,これもこの端境期に繁殖最盛期があって,ちょうど午後に産卵するモートンイトトンボを見に行くことにしました.
慎重に湿地の草の間を探しましたが,産卵しているらしいメスの姿はありませんでした.ただ何かのイトトンボが次々に羽化しているのが目に付きました.アジアイトトンボのように見えましたが,写真を撮ってみると,ホソミイトトンボでした.
そこにたくさん居たものを観察すると言う鉄則に従って,ホソミイトトンボの幼虫をさがしてみることにしました.ホソミイトトンボの幼虫は,出現期間が短いために,うまく採集することが難しいイトトンボです.網を入れてみると,案の定,ホソミイトトンボが入りました.この幼虫も非常に小さく,モートンイトトンボと変わりないほどです.十数ミリの体長しかありません.
ということで,700回目のブログは,目的外の成果があった一日の報告でした.