トンボノート
No.688. ムカシトンボの観察.2019.5.16.

5月の半ばが過ぎましたので,ムカシトンボを見に行ってきました. 本来はもっと早いほうがいいのですが, 今年はトンボの出現が遅いので,この日に設定してみました.天気予報は晴れでしたが,11時ころから曇り始め,もう一つパッとしない天気でした.しかしムカシトンボは結構飛んでいて,今が盛りという感じでした.

▲メスを探すように飛んでいるムカシトンボのオス.

9時過ぎに現地に入りました.すぐにムカシトンボのオスが入ってきました.しかし,その後はパラパラという感じでした.とにかく待つだけということで,メスがやって来るのを待ちました.10時過ぎ,はっきりとメスと分かる個体が,産卵基質となる植物をていねいに探すような飛び方をしました.

▲産卵基質を探しながら飛ぶムカシトンボのメス.

後を追いかけていくと,産卵を始めました.このムカシトンボ,普段あまり産卵しないような植物への産卵動作を行いました.例えばシダの表面や,大きな葉を持つ植物の葉柄などです.しかしすぐにムリだと判断したのか,最終的にはミツバ?の葉柄に産卵を行いました.今までの観察では,産卵植物は目で判断しているようで,それであまり失敗はないように見えるのですが,このメスは試行錯誤しているように見えました.まだ産卵経験が少ないのでしょうか.

▲シダの葉の表面に止まって産卵動作を行うムカシトンボのメス.
▲大きな葉を持つ植物のかなり太い葉柄に産卵するムカシトンボのメス.


▲ミツバ?の葉柄に産卵するムカシトンボのメス.

この後,空が曇ってきて,しばらくトンボの動きがありませんでした.それでも12時を過ぎたころから,メスがポツポツ入って来るようになりました.その中に近づいてもなかなか逃げない人なつっこいメスがいて,この娘としばらく時間を過ごすことにしました.ただ,この娘,やたら植物深くもぐり込むので,なかなか写真になりません.

▲草の中にもぐり込んで産卵を続ける人なつっこいムカシトンボのメス.
▲草を手で動かして見えるようにして撮影した.メスは全然動じず産卵を続けている.

ひとしきり写真を撮ったので,邪魔な草を手で動かしてみました.でも全然逃げません.でも,片手で草を押さえ,もう片手で撮影というのはあまりうまくいきません.しかも,草がいっぱいで,ストロボの光が草に遮られて,うまくトンボに届きません.仕方ないので,見通しのよいところに出てくるのを待ちました.産卵を始めてから30分たらず経ったとき,やっと,草の中から出てきて見通しのよいところで産卵してくれました.

▲30分ほど経ったとき,やっとさえぎる物のない場所で産卵をしてくれた.






▲葉の先っぽで産卵を続けるムカシトンボ.まわりをあちこち移動して撮影している.

今年は川のトンボが少ないと前に述べましたが,ムカシトンボに関してはそれを感じることはありませんでした.ムカシトンボの幼虫は,腹部をピタリと岩に貼り付かせ,石のすき間にもぐり込んでいますので,もともと流されることのないように適応しているようです.今日はここまで.