続 トンボ歳時記
No.564. サナエたち一気に羽化,シオヤは産卵も.2018.4.10.

今日は朝から快晴の一日でした.この2,3日寒の戻りで冷え込んで,その前は天候不順,少し間が空きましたが前回の観察から一週間.トンボたちは出てきているか!,観察に出かけました.

▲まずはシオヤトンボの生息する湿地のある池へやってきた.

まずはシオヤトンボ.4月3日に成虫が飛ぶのを見ましたので,もうかなり数が増えているのじゃないかということで,小野市の同じ場所に出かけました.いましたね.池の周囲の日だまりの中に止まっていました.まだ未熟な個体ばかりでした.オスもメスも入り交じって飛んでいました.全部で10頭近くを見ました.

▲未熟なシオヤトンボたち.上の2頭はオス,下の2頭はメス.

そんな中で,上の写真の湿地に,気の早いオスが縄張り活動をしていました.いやはや今年は早いですね.腹部に粉を吹いている個体は,別の場所でもう1頭見かけました.

▲腹部に粉を吹き,上の写真の湿地で縄張り活動をしていたオス.

さて,シオヤトンボがもはや縄張り活動を始めていましたので,これは春一番のコサナエ属,タベサナエが出ているのじゃないかということで,タベサナエが見られる加東市の方へ出かけてみました.いましたいました.日当たりの良い草地を歩くと,次々にひらひらと羽化直後のタベサナエが飛び立ちます.ざっと見ただけでも20頭以上はいたと思います.いや,トンボ屋にとってうれしい春のシーズン開幕の風景です.最近はコサナエ属も減って,こういう風景は見られなくなってきましたけど.冷え込んだ後の暖かい晴天の日というのが,一斉羽化を実現し,こういう風景を見せてくれたようです.

▲これが唯一見たタベサナエのメス.やってきて一番最初に見つけた個体である.

▲他は見る個体すべてオスであった.あまりにたくさんいたので見落としのある可能性は十分にある.

飛び回っている個体は,オスの方が圧倒的に多く,雄性先熟の可能性が示唆されました.あちこちにある浅い水たまりや湿地,溝川から羽化しているようでした.処女飛行に飛び立った個体も何頭か見ました.溝川では羽化殻も見つかりました.どの個体も翅がまだ完全に乾いていないような感じで,この数日寒かったことも考え合わせると,今日の午前中に一斉に羽化したように思われます.

▲上:羽化殻を見つけた水田横の溝川.下:そこで見つけたタベサナエの羽化殻.

ここで驚いたのは,シオヤトンボが交尾・産卵をしていたことでした.もっともメスはまだ十分に産卵ができるほどに成熟していないのか,弱々しく打水して,短時間で飛び去ってしまいました.4月3日に初見,4月10日に交尾・産卵というのは,気の早いシオヤトンボといえども兵庫県ではめずらしい記録といえるんじゃないでしょうかね.

▲交尾した後に産卵を行ったメス.

さて,シオヤトンボが産卵し,タベサナエがこれほどいるということは,同じように気の早いオグマサナエも羽化しているのではないかということで,さらにオグマサナエの生息する池に出かけてみました.

▲オグマサナエのメス.

いやはや,いましたね.オグマサナエ.このほかにもタベサナエも見られましたし,コサナエ属の処女飛行個体が何頭か樹上へ上がっていくのも目撃しました.

▲処女飛行の後着地したタベサナエのメス.

羽化している途中の個体がいないか,先の場所も含めて探してみましたが,羽化殻が見つかるばかりでした.タベサナエだけでなく,オグマサナエの羽化殻もありました.タベサナエは集団で羽化殻が着いていましたが,家に帰ってよく見ると,そのうち1頭は,中身の入ったもの,つまりこれから羽化を始めようとして個体でした.ちょっと早とちりしましたね.

▲タベサナエの集団羽化殻.白い矢印の個体が中身の入ったもの.

▲タベサナエの羽化殻.背棘が並んでいるのがはっきりと見える.

▲オグマサナエの羽化殻.採取して確認済み.フタスジサナエではない.

まあ,いずれにしても,暖かかった今日の一日,サナエトンボたちがたくさん出てきて,一気にトンボシーズンに突入という感じです.これから忙しくなりそうです.でも,成虫越冬種を全く見ていないのが不思議といえば不思議です.今日も,最初に行った池はそれらが目的だったのですが….

▲ヤマツツジ?の一種.春はあちこち色鮮やかである.他の木が茂る前に低木たちが花を咲かせているのだ.